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カゲロボ の商品レビュー

3.5

89件のお客様レビュー

  1. 5つ

    9

  2. 4つ

    25

  3. 3つ

    42

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    1

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2019/11/15

そんなとき、突然、「なに見ているのよッ」と声をかけられたのだった。チカダには、不機嫌そうな顔でにらんでいるその女子が、生々しく思えた。ようやく生きている者に出会えたと思った。しかし、それでもまだ本物かどうか確信を持てなかった。オレをだまそうとそうとしているのではないか。やっぱりす...

そんなとき、突然、「なに見ているのよッ」と声をかけられたのだった。チカダには、不機嫌そうな顔でにらんでいるその女子が、生々しく思えた。ようやく生きている者に出会えたと思った。しかし、それでもまだ本物かどうか確信を持てなかった。オレをだまそうとそうとしているのではないか。やっぱりすべては、映画のようにスクリーンに映った幻のようなものではないか。チカダは、そのまやかしのスクリーンを切り裂いて、その向こうにある本当の世界を見たかったのだ。切りつけるというより、目の前にあるホットケーキのような太股に線を引くようにカッターナイフを走らせただけだった。(197p) 今朝、14歳の少年が小さな女の子をカッターで切りつけたというニュースを見た。「誰でもいいから殺すつもりだった」と言っているらしい。この「あせ」という短編とのつながりは一切ない。けど、この近未来を描いているような不思議な短編集は、今朝のニュースを見たあと「つながっている」と思った。 読む前は、リード文を読んで近未来の監視国家を描いた小説かと予想していたが、違っていた。近未来ではない、もっと広く、そして深刻な「現代」の「傷ついた人たち」を描いていた。 全ての短編に通じているのは、何故か日常の中に変なロボットが存在している「らしい」ということが描かれていることだけだ。それは、大抵は一つの回答のない問題を解くための「1本の補助線」である。いじめにしても、社会福祉にしても、運命にしても、それはいつもそれ「らしい」けど、よくわからないものだ。 カッターの少年のホントの「心」はわからない。けれども、チカダのようなお父さんが居れば良いな、と思った。 2019年11月14日読了

Posted byブクログ

2019/10/22

人間そっくりなカゲロボが、身近にいる、私たちを見張っているかもしれない !? ロボットが出てくる短編集。 クラスメートの誰かがカゲロボかもしれない、という話だけで1冊読みたかったなぁと思った。 その発想が、とても面白い!と思ったから。

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2019/10/10

近未来の日常を描いた短編集。後半は心温まる話もあるのだけれど、如何せん最初の数編の印象が重苦しくて苦手。

Posted byブクログ

2019/10/12

読みやすかった。 短編集。 現実とは違う、SFとまでは言わない、少し不思議なお話しだった。 読み終わると心が暖かくなるような、前向きになれるような話しだった。

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2019/10/09

ロボットが出てくる、というテーマのもと集められた短編集。不穏な空気、不協和音を感じるような話が多い。前半に収められた話の登場人物が、後半に収められた話に再び出てきたりも。後半に、印象的な言葉がいくつか出てきた。最後、慰められるような終わり方なのは良かった。表紙に描かれている女の子...

ロボットが出てくる、というテーマのもと集められた短編集。不穏な空気、不協和音を感じるような話が多い。前半に収められた話の登場人物が、後半に収められた話に再び出てきたりも。後半に、印象的な言葉がいくつか出てきた。最後、慰められるような終わり方なのは良かった。表紙に描かれている女の子2人の話もとても良かった。

Posted byブクログ

2019/09/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ラストの”きず”は胸に迫るものがあった。被災地に近づくにつれて言葉を失い静まり返る車内や、隣家で電気がついた時の歓声でその喜びが伝播して笑顔になる件だとか、東日本大震災の時のことを思い出して、すごく伝わるものがあった。 この世にはいいことも悪いこともみている人がいる、というのがカゲロボというファンタジーな存在ながらリアルなものとして捉えられた。 ”あし”の章で賢が阿部さんに「お前、よくがんばってたよ」と声をかけ、その言葉に阿部さんが涙をこぼした件がすごく好き。人は誰かの一声でこんなにも救われるんだなと感じられた。

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2019/09/13

「カゲロボ」 木皿泉 2019/3 2019/7/27読了 初めて行った佐々木書店book cafeにて 7/22に購入。 普段選ばないような本を手に取れるような センスの良いbook caféだから起きたような出会いの本でしたが… 「木皿泉」繊細な文体で纏わりつくような...

「カゲロボ」 木皿泉 2019/3 2019/7/27読了 初めて行った佐々木書店book cafeにて 7/22に購入。 普段選ばないような本を手に取れるような センスの良いbook caféだから起きたような出会いの本でしたが… 「木皿泉」繊細な文体で纏わりつくような作風は やっぱり女性作家だと思ってたらなんと! テレビドラマ脚本家のご夫婦お2人の共著だとのこと… 和泉務 妻鹿年季子 ご夫妻が 「木皿泉」さんの正体でした。 脚本家かぁ… 他の作品も読んでみて 再度評価させていただこうと思っています。

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2019/09/04

日常に、人に気付かれず人や金魚、猫などのアンドロイドが紛れ込み、一石を投じる話。読みやすく、素直な気持ちで読んでいくと、自分自身も気付かられるものがある。

Posted byブクログ

2019/09/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

木皿泉さんのロボット?に纏わる短編集。 たまに短編同志が繋がっていたりして面白い。 カゲロボというロボットが人々の悪事を みんな見ているという都市伝説を扱う「はだ」 いじめられっこがいじめっこを深く考えずに 陥れていく「あし」 76歳のきままな友子が突然巻き込まれる 不思議な事件を扱う「めぇ」 不登校の中島かわりの箱を世話することに なったツチヤの心の変化の物語「こえ」 65歳で終末医療の病院に入院することになった 有子の物語「ゆび」 自分とそっくりのロボットがいると知って 母親からの理不尽な扱いに怒り そのロボットと逃亡を図る中学生のミカの 物語「かお」 「あし」で陥れられたいじめっ子チカダの 子供の心が問題をおこす「あせ」 アンドロイド猫、通称アンネコのハクマイが なくなってしまい悲嘆にくれる明日美の物語「かげ」 このかげの中で「幸せは何かが起こることだけ ではない、何かが起こらない幸せもあるのだ」 という言葉があって、すごく共感した。 殺そうとした人が殺そうとしたその日に 地震の被害にあい、会いに行って 手伝いをしてしまうマナミの物語「きず」 これだけの短編が入っている。 どの話もあっさりと終わるのだけれど 心の水たまりに石を投げられたような「すーん」 という余韻を残す物語ばかりでとても良かった。

Posted byブクログ

2019/09/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

SFは苦手ジャンルなんやけど、なんか話題作っぽいねぇ、というミーハー心から手に取ってみたが、やはり合わなかったようだ。「カゲロボ」は様々な姿で、ひっそりと人間を監視しているロボットである。現実とSFの世界観を取り入れた連作短編集だが...。1話目は可もなく不可もなく、と読み進めていたが、2話目で動物(動物ロボット?)虐待のようなシーンがあり、受け付けなくて終了。装丁の可愛くて読み易い雰囲気とは裏腹に、ちょっと薄気味悪さが透けて見えるなんとも不思議な感じの本。とりあえず私は苦手でしたわ...(新刊発掘本)

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