橋を渡る の商品レビュー
読了したとき、まさか、こういう展開⁈と驚かされた。許せないことが起きてしまった時、人はどうするのだろう。人生はある日、突然に暗転する。登場人物それぞれの描き方が非常にリアルで面白かった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
まさに橋を渡るような読書体験だった。春、夏、秋と橋を渡った先には奇妙な冬の景色がある。それは虚構に違いは無いが、我々自身の選択によってはある意味有り得る未来図とも言える。 初めの三篇は極平凡な純文学的作品に見える。iPS細胞、東京都議会野次問題、雨傘革命、マララ・ユスフザイ、東京オリンピック等等、当時としてはタイムリーだったのだろう、リアルと地続きの距離感と世界観で物語は展開する。日常に潜む言語化し難いモヤモヤを抉りながら。人間ってこういうところあるよね、みたいな。それぞれの掌編の繋がりは稀薄で、態々一つの作品としてやる意味あるのかな、なんて考えたけれど……。 最終章「そして、冬」に於いて物語は一気に七十年後の未来へと飛躍する。そこはユートピアともディストピアともつかない「不感の湯」のような妙な心地のする世界だった。まるで承前三篇の答え合わせのようだが、果たして正しく解答は導き出せたと言えるだろうか。 文明は発達し、寒暄を忘れ、もはや不感症のようになってしまった冬を抜けると、再び祝福の春が巡ってくる。 善人なおもて往生を遂ぐ。況や悪人をや。独り善がりの正義は時として取り返しのつかない過ちを犯す。然しそんな過ちを回避する為には、自分の信じる正しさを貫き、時に世界すら敵に回して戦う勇気が必要にもなる。正義とは利己や保身ではなく、利他と公共の為に戦う力だ。 而して戦う為に必要な武器は殺意でもミサイルでもない。一冊の本が、或いは一本のペンがあればそれだけで人間は戦える。そうして戦う人は皆、子供も教師も関係無く、一人の気高い兵士だ。 本書を読み了え、今一度橋を渡り、虚構から現実へと帰還を果たせば、橋の向こうには違う景色が見えていることだろう。
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前半と後半で話が全く違う作品 前半の 日常を丹念に描く作品から 後半のSFの切り替えに驚く どの時代も どの歴史の1ページでも どこでも 人は迷いながら 生きていくのだと 思った
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ネタバレになるけれど、2015年から70年後の世界が描かれていて、構成といい、文章といい、とても面白かったけども、わたしが経験した70年後の世界はもっと面白いのかも。 つまり今、82だから12の時から、現在70年後の世界にいるってこと。 12歳の時(1953年)は今普通に使っ...
ネタバレになるけれど、2015年から70年後の世界が描かれていて、構成といい、文章といい、とても面白かったけども、わたしが経験した70年後の世界はもっと面白いのかも。 つまり今、82だから12の時から、現在70年後の世界にいるってこと。 12歳の時(1953年)は今普通に使っているものは無かったか、初期段階。 例えば、テレビジョンの放送が始まって、ブラウン管のでかい箱を駅頭で見上げた記憶。 電話は黒いダイヤル式、冷蔵庫は氷で冷やし、たらいで洗濯(14歳ころ一層式洗濯機ハンドル絞りつきになった)などなど... 人間関係の世界はっていうと、それも変遷だ。社会機構、体制様変わり。 LGBTSなど無いような世界、いや闇の中か忖度の世界だった。 セクハラはあった、けど、それも闇の中か忖度の世界だった。 離婚が少なかったけど、夫婦関係も問題が内包してだけ、などなど...。 しかし、ゆっくりと浸かってきているので、自分がどの位置にいるか自覚しないだけ。 そう、すっかり慣れている自分にびっくりだ!
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最後の章がいらないかも。 解説にはこの章の意味が書かれていたが。ぶっ飛び過ぎて、それまで読んでいたことが、無駄になった気がする。しかも。なんとなく素人っぽさのある文で、残念な思いになった。 わかる人にはわかるんだろうなあ。
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多少はぼかす事が普通だが、当時のニュースがそのまま使っていた事が面白かった。確かに、こういう事あったなあ、と懐かしい気分になった。
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3.0 最後の伏線回収に向けての物語。伏線張りすぎかなあ。売れなくなっても聴き続けるロックバンドのように読み続けたい作家。読んだ方が良いかと聞かれたら、読んだ方がいいと答える。
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世間の評判ほど言うほど悪くはなかった印象。 前半3部はまさに吉田修一といった感じでスイスイ読み進められる。 問題の最終章、 まさにフロム・ダスク・ティル・ドーンばりに、 一気にジャンルが変わっていく。 ここで躓くということなのだろう。 だが、過去とされる所謂現代の物語も引き継がれ...
世間の評判ほど言うほど悪くはなかった印象。 前半3部はまさに吉田修一といった感じでスイスイ読み進められる。 問題の最終章、 まさにフロム・ダスク・ティル・ドーンばりに、 一気にジャンルが変わっていく。 ここで躓くということなのだろう。 だが、過去とされる所謂現代の物語も引き継がれ、 さらにユートピアともディストピアとも言えない未来を 見せられ、それがやけにリアルに感じたのは確か。 欲を言えば、もう少し伏線の回収をしてもらいたかったとこだが、 それは愛嬌。物語に蛇足はいらない。そういうことだ。
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各章に主人公がいて、その目線から出来事や家族や友人が語られる。 ささいな事もあるし、深刻な事も。 そして各章でなんだか中途半端に終わった問題が 最終章で回収される。 回収の仕方がSFチックな事に好き嫌いは あるだろうけれど、私はこのお話しのSF味は 好きだと思った。 ただ、もっと...
各章に主人公がいて、その目線から出来事や家族や友人が語られる。 ささいな事もあるし、深刻な事も。 そして各章でなんだか中途半端に終わった問題が 最終章で回収される。 回収の仕方がSFチックな事に好き嫌いは あるだろうけれど、私はこのお話しのSF味は 好きだと思った。 ただ、もっと回収して欲しかった。
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新宮明良・歩美、赤岩篤子・広貴、里見謙太郎・薫子の3組が絡むエピソードが展開し、最後に70年後の世界が出現するという奇想天外なストーリーだが、楽しめる著作だ.佐山京二教授の研修成果が実現されて、サイトと呼ばれる人種が出現している未来の世界が、なんとも奇妙な感じだが、実現性も感じら...
新宮明良・歩美、赤岩篤子・広貴、里見謙太郎・薫子の3組が絡むエピソードが展開し、最後に70年後の世界が出現するという奇想天外なストーリーだが、楽しめる著作だ.佐山京二教授の研修成果が実現されて、サイトと呼ばれる人種が出現している未来の世界が、なんとも奇妙な感じだが、実現性も感じられる.謙太郎が対馬で太鼓を叩く場面が何故か印象的だった.
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