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日本人の勝算 の商品レビュー

4.1

121件のお客様レビュー

  1. 5つ

    38

  2. 4つ

    42

  3. 3つ

    30

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

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2019/04/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

デービッド・アトキンソンさんの本。 「マル激 トーク・オン・デマンド」といういつも観てるインターネットニュースで本人の話を聞いて、すごく面白かったので手に取った本。 いやー、目から鱗が落ちまくりでした。 マル激の中でも、「実は日本の高度経済成長は人口が増えただけだった」という衝撃の事実を聞いたのもビックリだったけど、この「最低賃金が上がっていないことが日本の低成長の原因」という話も新鮮だった。 何より、最近経済の本を複数読んでて、財政再建派の人やリフレ派の人の話がどうにも納得できなかったのが、この本読んですごく腑に落ちた。 (つまり、この本は「経済」の本) 財政再建派に比べると、まだリフレ派の話の方が納得できるとは言え、どうにも不信感がぬぐえなかったのだけど、その理由もはっきりした。要するに、借金(国債)を返せるかどうかの話ではなく、リフレ派の話は、今後も人口が増加し続け、かつ世界の中でもかなり特殊な国「アメリカ」を想定した話でしかない、ってことが違和感の正体だったわけだ。だからこそ、物価が上がった現在も賃金が上がらずデフレを脱出できていない。日本は人口が減り続けてるので。 (しかし、本当に日本の知識人ってアメリカしか見てないんだな。。) この本を読めば、これからの(バブル後の)日本はアメリカを手本にしても意味がないことがはっきりわかる。なぜなら、日本はこれから少子化と高齢化のダブルパンチを食らうからである。アメリカとは全然状況が違う。 ただ、リフレ派の人たちが言ってることや、この本で語られてる問題の本質は同じように思う。 「経営者」だ。 もっと言うと「無能な経営者」だ。 バブル崩壊以降、ひたすら賃金カットだけを行い、政府から優遇(甘やか)され続けた経営者が、この低成長の一番の原因である。 この本の提言では、まず強制的な最低賃金UPにより経営者に生産性向上の圧力をかけて、さらに、成人の「再教育(スキルアップ)」が重要と説く。特に経営者の「意識改革」が重要。バブル期の成功体験がいまだに忘れられない世代が日本のガンだと常々思ってたけど、この本読んでさらにその思いを強くした。 そう考えると、現状の政策は色々おかしい。 外国人労働者の受け入れ拡大は、労働賃金のさらなる低下を招くだけだし、働き方改革や女性活躍も、「社会政策」の意味合いが強くて、「経済政策」という位置づけではない。これは、この本でも語られているように、「最低賃金」は経済産業省ではなく厚生労働省の管轄、というのも、確かに大きな要因だと思える。 個々の政策がチグハグで何というか方向性がない。 これからの問題に対処するために「経済成長をしよう」という方向性がまず重要。 そのための賃金UPであり、生産性向上であり、それが、年金・医療・社会保障費や借金の問題改善にもつながる。 今の政策では、今まで同様、経営者を甘やかすだけである。 次の選挙では、この争点で政策を訴える候補者に投票しようと思う。 (・・いないかもしれないが。。。)

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2019/03/30

デービッド・アトキンソンさんの本は”新・観光立国論”、”新・所得倍増論”に続き3冊目ですが、データを多用した客観的且つ科学的な日本経済分析は秀逸です。高齢化及び人口減少は予測出来る未来ですので政府や企業は”生産性向上”に向け今からしっかりと対策を立てないといけないですね。著者の主...

デービッド・アトキンソンさんの本は”新・観光立国論”、”新・所得倍増論”に続き3冊目ですが、データを多用した客観的且つ科学的な日本経済分析は秀逸です。高齢化及び人口減少は予測出来る未来ですので政府や企業は”生産性向上”に向け今からしっかりと対策を立てないといけないですね。著者の主張する”最低賃金の引上げ”については時給100円アップとかではなく一気に1,000円位アップしてみたらどうなんですかね~。

Posted byブクログ

2019/03/26

デービッド・アトキンソンの3冊目。過去2冊は五つ星をつけ、そろそろ飽きるかと思っていたが、ギリギリ五つ星。人口減少の問題は十分わかったが、対策論については弱いなぁと思い出してきたところ、対策を生産性向上にしぼり、最低賃金アップにほぼ絞って論じた点が目新しい。もとは最低賃金アップに...

デービッド・アトキンソンの3冊目。過去2冊は五つ星をつけ、そろそろ飽きるかと思っていたが、ギリギリ五つ星。人口減少の問題は十分わかったが、対策論については弱いなぁと思い出してきたところ、対策を生産性向上にしぼり、最低賃金アップにほぼ絞って論じた点が目新しい。もとは最低賃金アップには懐疑的であったが、本書の論拠をよんで、テストケースとしてありだと思い始めたくらいインパクトはある。さて、いっぽうの人口維持にすいてはどうすれば?そこは示されていなかった。高齢化社会では、放置していても絶対に人口増加インセンティブは働かない。高齢者資産に課税し、子供一人あたりに対してのベーシックインカムを出すべき、というのが個人的な意見。うちは子供いないけれど。

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2019/03/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者のデービッド・アトキンソン氏は、元ゴールドマンサックスの金融調査室長。日本への造詣深く、現在は日本の小西美術工藝社の社長。 感想。 たいへん参考になりました。 備忘録。 ・2%のインフレ目標設定や、大規模な金融緩和が行われたが、物価上昇率は目標に届かず。 ・人口増減は物価に影響。主なメカニズムは、人口増→不動産価格増(物理的な制限があり不動産戸数はすぐに増えないので)→物価増。反対に、人口減→不動産価格減(人口減でも不動産戸数はすぐに減らない)→物価減。 ・量的緩和のロジックは、通貨量増→物価増→総生産増→景気回復。しかしこれが効果的なのは人口増基調で、金さえ増えれば需要も増える、というのが前提。 ・マッキンゼーの分析が興味深い。過去50年の経済成長率は3.6%だったが、その内訳は人口増加要因が1.8%、生産性向上要因が1.8%で半々だと。 ・著者の分析によれば、  米国:成長率2.38%=人口増0.98%+生産性1.40%、  EU:成長率1.64%=人口増0.26%+生産性1.38%、  日本:成長率0.88%=人口増0.11%+生産性0.77%。  →米国が欧州を抜いた主因は人口増。   日本の経済成長も、戦後の人口増の効果大。今後人口減まっしぐらの日本は大丈夫か? ・生産性を図る指標として、労働者一人当たりのGDPを採用している。2016年のデータで米国が世界9位、日本はイタリアやスペインにも劣る29位。 ・著者は、日本の生産性の低さの一因に、中小企業の多さを挙げている。様々な研究で企業規模と生産性の間の強い相関関係が確認されているらしい。尚、日本の20人未満企業で働く労働者の割合が20%で、米国は11%、ドイツは13%。 ・日本人は中小企業好きだが、著者は、企業規模を大きくすることのメリットを理解して欲しいとのこと。例えば、女性労働者の増加・活躍は、国全体のGDPを挙げる上で有効だが、女性が長く多く活躍できるためには、ある程度の企業希望は必要だろう(時短勤務や急な欠勤に対応するのにとか)。生産性を追求すると、企業規模が必要になってくるとの主張。 ・また、人口減→国内需要減&労働力減→企業数減の流れは必然。それに対して無理に企業数を維持(=供給維持)すると、価格競争が絶えず、コスト抑制のために人件費が削られ、更に国内需要減へと。。 ・著者の提言する処方箋は、強制的に最低賃金を上げること。企業経営者に人件費増でもやっていく方法を考えさせる。最低賃金を上げると、企業の行く末は生産性向上or価格転嫁or利益減少にいずれかしかなく、結果、技術革新等で生産性を上げた企業が成功し、更に雇用を増やし、企業規模を大きくする。 ・先行例として、成功したイギリス、失敗した韓国。韓国の失敗は最低賃金の上げ幅が大きすぎかつ急ピッチだと著者は分析。 ・ビックマック指数。日本は1つ3.5ドル。米国5.28、ドイツ4.80ドル、韓国4.16、中国3.25ドル。材料費はそんなに差がないはず、寧ろ地代は日本が高い筈、でも易いのは人件費が相対的にみて削られているのでは。

Posted byブクログ

2019/03/16

世界でも類を見ない少子高齢化社会で日本はどこに向かうのか?タイトルにもあるこれからの日本の勝算はどうすれば見いだせるのかを教えてくれる面白い一冊です。 特に中小企業の経営者の方に読んでいただきたい本です。 経済成長は「人口増加要因」と「生産性向上要因」の二つに分けられます。日...

世界でも類を見ない少子高齢化社会で日本はどこに向かうのか?タイトルにもあるこれからの日本の勝算はどうすれば見いだせるのかを教えてくれる面白い一冊です。 特に中小企業の経営者の方に読んでいただきたい本です。 経済成長は「人口増加要因」と「生産性向上要因」の二つに分けられます。日本で確実に起こる前者での減少分を後者でどう補うかがこれからの日本の課題とおいて本書は進んでいきます。 この本の面白さは、生産性向上がなぜ起こらないのかをデータを示し説明しているところにあると思いました。最低賃金の底上げが生産性向上をもたらすと強く主張しています。 他にも日本人が誇りとしている技術革新が生産性向上と弱い相関しかないなど考えを改めるいいきっかけになる本でした。

Posted byブクログ

2019/02/22

少子高齢化を迎える日本は生産性を上げることが唯一の生存戦略である。具体的には中小・零細企業淘汰/最低賃金の継続的な引上げ/中高年の再教育等である。ビックマック指数がタイより低い日本外食デフレ現象は、今後転換期を迎えると考える。

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2019/02/17

よかった。労働者の質と生産性の不一致の問題がいちばんのイシューということがよくわかった。これからは政治の民間の胆力と柔軟性が問われるフェーズだ。

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2019/02/17

日本の未来について新たな視点を与えてくれる一冊。中小企業が多すぎるというのはなるほどなーと感じた。経営は賃上げすべきという論にも説得力がある。

Posted byブクログ

2019/02/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

日本が経済発展を遂げ、現在の先進国にまで成長できたのは、実は人口増加要因が非常に大きい。世界経済のトップを走るアメリカのビジネスモデルに倣い、背中を追い続けることはこれまでは間違いではなかった。 しかし人口減少というターニングポイントを迎えてしまった今、規模の経済を追求することから早々と脱却し、生産性を高める欧米型の社会へシフトしていかなければならない。 現在の日本人の生産性の低さと、人材のポテンシャルの高さが、日本経済を再浮上させるための鍵だと筆者は述べている。 国が主導となり、 1. 最低賃金を引き上げる 2. 中小企業の合併や連携を後押しし、企業規模を拡大する 3. 就業者を継続的かつ強制的に教育・訓練する 4. 労働人口1人当たりの生産性を向上させる 5. 余剰となっている供給を輸出に振り分ける 著者のいずれの主張も、豊富なデータや論文に基づいたものであり、大変説得力があった。氏は日本人にはまだ、勝算があるという。あとは国が厳しい現実真正面から受け止め、日本の未来を変える覚悟を持てるどうかではないだろうか。

Posted byブクログ

2019/02/26

様々な研究成果に基づいて、人口が減少する中で経済成長するために、生産性を向上していかなければならない日本のとるべき政策について提言している。 端的に言えば、持続的な最低賃金の上昇を経済政策として行うということだ。 儲かった結果を事後的に分配することによって最低賃金を決めるのではな...

様々な研究成果に基づいて、人口が減少する中で経済成長するために、生産性を向上していかなければならない日本のとるべき政策について提言している。 端的に言えば、持続的な最低賃金の上昇を経済政策として行うということだ。 儲かった結果を事後的に分配することによって最低賃金を決めるのではなく、最低賃金を上げ続けると言うプレッシャーを経営者にかけ続けることによって、企業が生産性を向上していくことを求めると言う政策だ。 日本の人材は極めて有能なのに、所得が恐ろしく低い。経営者にとってこんなに楽なことはない。無能な経営者は、この状況にあぐらをかいている。あるいはこの状況を保つことにのみ知恵を使っていると言う事かもしれない。 最低賃金の上昇にふさわしく生産性を向上できない経営者は市場から退場を求められるであろう。企業は合併されて、企業規模は次第に大きくなっていく。企業規模が大きくなることが生産性の向上に寄与する。この時少なくなるのは経営者のポストだけだ。優れた経営者はこの危機を乗り越える知恵を発揮するだろう。 韓国の例などを挙げて、最低賃金の上昇が失業率の上昇をまねくと言う反論があるが、これは端的に誤解だと、さまざまな研究成果から本書では述べられている。様々な思い込みがこの国を覆っているのである。 「国連の定義では、Entrepreneurとは「市場に変化と成長を起こすような新しい発想の創出、普及、適用を促す人。チャンスを積極的に探って、それに向かって冒険的にリスクを取る人」となっています。」(p.271) だとすれば、日本で最もアントレプレナーシップに欠けているのは、これから企業を起こそうとする人たちなどではなく、すでに企業の経営者に収まっている人たちだ。彼らの怠慢が日本の生産性を極めて低い状態に押し止めているのだ。 やらなければならないことがこんなにクリアなのに、これが実現できそうな気があんまりしない。でもあきらめてはいけないだろう。

Posted byブクログ