すべての、白いものたちの の商品レビュー
ノーベル賞受賞した作家のさくひんだよと、娘に勧められて読んだ。 白といっても、韓国には清潔な白のハヤンと生と死の寂しさをこもごもたたえた色であるヒンがあって、著者が書きたかったのはヒンについての本だと言う。 突然生まれた赤ん坊の生と死から始まり、白いものをめぐる幻想的ともいえる作...
ノーベル賞受賞した作家のさくひんだよと、娘に勧められて読んだ。 白といっても、韓国には清潔な白のハヤンと生と死の寂しさをこもごもたたえた色であるヒンがあって、著者が書きたかったのはヒンについての本だと言う。 突然生まれた赤ん坊の生と死から始まり、白いものをめぐる幻想的ともいえる作品だった。
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著書の後書きがなければ、その構造は窺い知ることができなかった、という意味で読者を選ぶ。 確かに入れ物としての文章だ。託すものがない人は拒まれる。託すものがある人はのめり込む。その意味で何重にも危険だ。
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まさに詩のような物語。私はこの本の素晴らしさを形容する言葉を持たない。 通奏低音としての「白いものたち」 レイモンド・カーヴァーの「ささやかだけれど、役に立つこと」(a small good thing)想起しました。 初期の吉本ばなな(サンクチュアリ、TSUGUMI等)も...
まさに詩のような物語。私はこの本の素晴らしさを形容する言葉を持たない。 通奏低音としての「白いものたち」 レイモンド・カーヴァーの「ささやかだけれど、役に立つこと」(a small good thing)想起しました。 初期の吉本ばなな(サンクチュアリ、TSUGUMI等)も思い浮かべたりした。
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限りなくエッセイに近い、詩のような文体の、私小説なのかな?読む前表紙がなんの写真なのか分からなかった。これ産着かぁ。 途中で異なる紙質になるのが印象的。
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対話によってスリリングにストーリーを運ばせるのではなく、言葉になるかならないかといった実に思念の微細な動きの端緒をすくい取ってそれを言葉にして行くいとなみが為されていると映る。語り手が「白」と認識するものたちによって記憶におけるさまざまな思い出の断片は再統合され、そして甘美な響き...
対話によってスリリングにストーリーを運ばせるのではなく、言葉になるかならないかといった実に思念の微細な動きの端緒をすくい取ってそれを言葉にして行くいとなみが為されていると映る。語り手が「白」と認識するものたちによって記憶におけるさまざまな思い出の断片は再統合され、そして甘美な響きを帯び始める。ぼくはスットコドッコイなのでこの典雅な記憶と政治性(そう、著者の目線はモノローグ的な語りにおいても「外」「他者」を見ている)においてリルケやあるいはゼーバルト的ですらあるなと思わされた。語りに溺れていない誠実な一作だ
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なんと読み終わった日にハンガン、ノーベル文学賞受賞!!!嬉しすぎる〜 エッセイともいえるし、詩集ともいえるようなそんな本だった。読みだしてしばらく経ったタイミングで、カヴァンみたい?と一瞬思ったのだけど、その後、ヴェイユみたいだなあと思っていて、ふとした瞬間に金子みすゞのようだとも思った。 私は後半に行けば行くほど好きだった。 「白い骨」 痛みのために、彼女は全身のX線撮影をした。海の底のような群青色をした写真の中に、白くかすれた骸骨が一体、立っている。人の体の中に、石の物性と似た硬いものが控えているのが、驚くべきことに思えた。…人間は肉と筋だけでは存在しえないと思うと、不思議に安堵するのだった。 「砂」 そうして彼女はしばしば、忘れた。 自分の体が(われわれ全員の体が)砂の家であることを。 絶えず壊れてきたし、壊れつつあることを。 指のあいだをひたすら滑り落ちていく、砂だということを。 「白髪」 鳥の羽毛のように髪が真っ白になったら昔の恋人に会いに行きたいと言っていた、中年の上司のことを彼女は思い出す。すっかり年をとって、一本残らず完全な白髪になったら…一度だけ会いたい。 もう一度あの人に会いたいときが来るとしたら、きっとそのとき。 若さもなく肉体もなく、何かを熱望する時間がすでに尽きたとき。邂逅のあとに残されたことはただ一つー体を失い、ほんとうの訣別が来る、そのことだけというとき。 「魂」 魂があるとしたら、目に見えないその動き方はきっとあの蝶に似ているだろうと彼女は思ってきた。… 「わかれ」 しなないで しなないでおねがい。 言葉を知らなかったあなたが黒い目を開けて聞いたその言葉を、私が唇をあけてつぶやく。それを力こめて、白紙に書きつける。それだけが最も善い別れの言葉だと信じるから。死なないようにと。生きていって、と。
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韓国文学を読みたいなと思って、その代表格であるハン・ガンによる本著を読んだ。小説と詩、散文の境界を漂うような繊細な作品だった。白をモチーフにするのは物語の定石だが、言葉を尽くして描かれた白の世界に魅了された。 三つの章から構成されており、それぞれの章はさらに細分化された文章の集積となっている。読み終えると全体像はなんとなく見えるが、そこに物語性を見出すというより、詩を読んでいる感覚に近かった。しかも、そのどれもが静謐で読書でしか得ることができない余韻があった。 白をテーマに、これほど多角的に描写できるのは、作家の鋭い洞察力があってこそだ。同じ白だとしても、そこにはグラデーションがある。単行本は複数の種類の紙で造本されており、物語の内容が物理的に表現されていることにアガった。 あとがきを読むと、私小説のようで実体験をベースに小説が書かれていることが伺える。白いものを見て考えたことが、まるで呟くように綴られており、心の奥深くに迫ってくる印象を受けた。それは、主人公の母が経験しら死産の具体的な描写に要因するのだろう。亡くなった子どもが生きたかもしれない人生を自分が生きているのだ、という業のようなものが全編に漂っていた。本著は一種の息抜きのように書かれたようなので、他の骨太な作品も読んでみたい。
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生後数時間で逝った姉への弔辞、姉の代わりに生を受けた自分への戒め、生と死を連想させる白に覆い尽くされる街で、死者の魂を静かに感じる日々…をつらつらと、白を基調に描かれている。 視覚や触覚にも働きかける装丁など、主張しすぎない斬新な表現が心地良い。 でも、大半が何言ってんのかわから...
生後数時間で逝った姉への弔辞、姉の代わりに生を受けた自分への戒め、生と死を連想させる白に覆い尽くされる街で、死者の魂を静かに感じる日々…をつらつらと、白を基調に描かれている。 視覚や触覚にも働きかける装丁など、主張しすぎない斬新な表現が心地良い。 でも、大半が何言ってんのかわからない。忙しすぎる日常のなかでさらりと読むものではないらしい。
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生死終始、表裏 ってな事で、ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』 『白』に纏わる短編集?詩集?ジャンルは何になるんかな? 心して読まないと、白い世界、はたまた黒い世界へ持って行かれる感覚に陥りそうで、恐怖のあまり流す様に読んだ。 短い文章ば...
生死終始、表裏 ってな事で、ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』 『白』に纏わる短編集?詩集?ジャンルは何になるんかな? 心して読まないと、白い世界、はたまた黒い世界へ持って行かれる感覚に陥りそうで、恐怖のあまり流す様に読んだ。 短い文章ばかりで、じっくり読み返したい気持ちが湧き上がるけど、読み返すと闇に引き摺られて戻れなくなる様な気がして逃げながら読んでた。 言葉の威力って言うんかな、怖かった。 始まりの白。終わりの白。 白って真反対の意味も持ってるなぁって 産まれた時は真っ新な白で、生きてくうちに色んな色を塗り重ねて、死ぬ時には白に戻るんかなぁと 雪の降る日に外でじっくり読んでみたいかな 2022年23冊目
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1回では全てを把握できないかも。 決して明るい話でも読みやすい話でもないのに、読みやすいのは、散文的なリズムが文章全体にあるから。リズムがあることで必要以上に重苦しくもなく読めた。そして、言葉の美しさがすっと入ってきた。多分、訳が素晴らしいのだと思う。もし原文で読めたらきっともっ...
1回では全てを把握できないかも。 決して明るい話でも読みやすい話でもないのに、読みやすいのは、散文的なリズムが文章全体にあるから。リズムがあることで必要以上に重苦しくもなく読めた。そして、言葉の美しさがすっと入ってきた。多分、訳が素晴らしいのだと思う。もし原文で読めたらきっともっと美しいハングルの響きを感じられるんじゃないかな。
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