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すべての、白いものたちの の商品レビュー

4.3

43件のお客様レビュー

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2020/10/10

紙好きにはたまらない装丁の本でした。 表紙のモノクロ写真。産着の白さが放つ哀しみ。(読むと分かるのだが…) 見返しも前と後ろでは紙が違う。本扉の前に挟まれた小さな紙、本文も何種類もの紙に綴られている。純白に何らかの別の色がほんの少し混じった感じの白。オフホワイト。その色合いも手触...

紙好きにはたまらない装丁の本でした。 表紙のモノクロ写真。産着の白さが放つ哀しみ。(読むと分かるのだが…) 見返しも前と後ろでは紙が違う。本扉の前に挟まれた小さな紙、本文も何種類もの紙に綴られている。純白に何らかの別の色がほんの少し混じった感じの白。オフホワイト。その色合いも手触りも違う、さまざまな表情を持った白い紙たち。 紙を撫でながら読んだ。 「白いものについて書こうと決めた」から始まるこの話。おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり…白いものを取り上げながら、その白に別の色がほんの少し混じるようにハン・ガンの想いが混じり、哀しみが漂う。 あとがきを読んで納得した。 「私の母語で白い色を表す言葉に『ハヤン(まっしろな)』と『ヒン(しろい)』がある。清潔な白「ハヤン」とは違い「ヒン」は、生と死の哀しみをこもごもたたえた色。私が書きたかったのは「ヒン」についての本だった。」とあった。 すべての白いものたちの中に、祈りを求めているように感じた。

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2020/09/22

今求められているのはこういう世界なのか…とても繊細で個人的。他人事なのだけれど想像力で入り込める。白いものがこんなにも溢れている、韓国という国の文化。やはり近くて遠い国。

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2020/09/06

微妙に変わっていく白い紙たちに手伝ってもらいながら色々な白い情景に静かに包まれ、何とも言えない不思議な感覚が味わえる。悲しさを感じたのに癒されたんだ、と後から気づく詩のような本。

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2020/08/27

透明で澄んでいて密度の濃い空気感の作品だなと思った。そして、美しい。読んでいるとその情景が浮かぶどころか、その中に引っ張り込まれる感じ。自分まで静まっていくようで、とても好きだと思った。韓国の方の作風としては少し意外に感じた。

Posted byブクログ

2020/08/11

一つの節が長くて4頁程度。でも、1節読むごとに一息いれたくなる。動いた心をしばらくそのままにしたくなる。文の連なり、描写の連なり、思いの連なりが美しい。訳文に使われる言葉も美しい。作者の思いが静かに伝わってくる。

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2020/04/19

この本を読んでいる間、誰かの中を漂っているような気持ちになれる。あたりの白さ、手元の白さ、暗がりの明るさ、真っ白な中に浮かんでいる私がいる。

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2020/02/07

書店で手に取ったとき、最初の数ページと「ドア」を読んで衝撃をうけて思わず購入したのだが、読むのに覚悟が要るような気がして長らく積ん読していた。 読む時の体調や心境で全然ちがった受け取り方をしてしまう詩集みたいな本だった。 日常の泥臭さとか現実を引き倒すような感じではなくて、何...

書店で手に取ったとき、最初の数ページと「ドア」を読んで衝撃をうけて思わず購入したのだが、読むのに覚悟が要るような気がして長らく積ん読していた。 読む時の体調や心境で全然ちがった受け取り方をしてしまう詩集みたいな本だった。 日常の泥臭さとか現実を引き倒すような感じではなくて、何歩も引いた目線と時間軸から語っている。阿弥陀如来が3メートルから5メートルくらいの上空から生き物を見下ろしてる感じ。著者の方は仏教徒なのだろうか。何も信じていないとも書いてあったけど。仏教的ななにかを感じる。 それから5種類の紙で印刷されてるのは何故?バラバラの日記や断片のようなものだから?特にP113からP160までは真っ白なページが挟まれているのは、もっとも象徴的な白、漂白された象徴としての白を描いた部分だからだろうか。あまりにも真っ白だからそのあとに続く結婚式で他界している親へ向けた白い衣装を燃やす節や、いたかもしれないお姉ちゃんの節がくると突然暖かくて驚く。ここがようやく「あたたかい血が流れる」っていう部分なのかな。生まれ壊され再生し、復活するそういう道筋をを辿る本だった。 つきたての餅や炊きたての米、白菜のいちばん奥のあかるく白いところがどんなものだか直感的にわかる文化圏に育ってこの作品を読めてよかった。

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2019/12/04

真っ白な喪の話。白という共通項で変奏される様々な白いものたちは、互いに互いを喚起させ合う。ポーランド の街に重ね合わされた私と姉さんの身体。「生き延びた古い柱や壁が、その上に積まれた新しい壁や柱とふしぎな形で抱き合っているーーそんな形で生きてきた人。」もうここにはいない誰かと生き...

真っ白な喪の話。白という共通項で変奏される様々な白いものたちは、互いに互いを喚起させ合う。ポーランド の街に重ね合わされた私と姉さんの身体。「生き延びた古い柱や壁が、その上に積まれた新しい壁や柱とふしぎな形で抱き合っているーーそんな形で生きてきた人。」もうここにはいない誰かと生きるために、自身の肉体のうごめきと損なわれない部分を探る。生きてほしいと声をかけること、この身の内に未だ存在してほしいと願うことは、ひとつの喪のあり方なのかもしれない。

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2019/11/15

登場人物のパーソナルな語りであるはずなのに、今ここに存在していない者や事へ思いを巡らせることで遥か彼方まで射程を延ばした物語になっていると感じました。言葉にするのが難しいものについて語っているのに、それが優しく詩情豊かに表現されていて凄い文学だと思います。

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2019/11/13

冒頭にハン・ガンはこう書いている。 「白いものについて書こうと決めた」 その言葉通り、彼女が思う白いものが次々と語られてく。 雪、霜、霧、白樺、白夜、笑顔、病気、生、死。 様々な白い紙で束ねられたこの本のように、 幾重にも重ねられた白い言葉たちの痛みと光。 いつかこの本を抱...

冒頭にハン・ガンはこう書いている。 「白いものについて書こうと決めた」 その言葉通り、彼女が思う白いものが次々と語られてく。 雪、霜、霧、白樺、白夜、笑顔、病気、生、死。 様々な白い紙で束ねられたこの本のように、 幾重にも重ねられた白い言葉たちの痛みと光。 いつかこの本を抱え、 真っ白な雪原の中吐く白い息を見つめられたらな。 すべての本好きな人の書棚に。

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