月まで三キロ の商品レビュー
理系の物語とは知らずに手に取った。 科学や宇宙の少し難しい言葉が出てくるけど、自然科学の知識に興味が湧いた。 短編集のそれぞれの主人公は、自分の人生を振り返る時期だったり、進むべき道に迷っていたりする。 そこに、科学や宇宙がうまくかみ合って、進みだすきっかけを与えてくれている。 ...
理系の物語とは知らずに手に取った。 科学や宇宙の少し難しい言葉が出てくるけど、自然科学の知識に興味が湧いた。 短編集のそれぞれの主人公は、自分の人生を振り返る時期だったり、進むべき道に迷っていたりする。 そこに、科学や宇宙がうまくかみ合って、進みだすきっかけを与えてくれている。 読後はあたたかい気持ちになれる物語。
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※このレビューにはネタバレを含みます
タイトル「月まで三キロ」にひかれて読了。 静岡県浜松市天竜区の県道360号線に「月Tsuki 3km」の道路案内板は実際にあります。 その道路案内板を素材にした「月まで三キロ」は、死に場所を探してタクシーに乗った男を運転手は山奥へと誘う物語、他5編の短編。 「月まで三キロ」――― この先に「月に一番近い場所」があるんです。樹海を目指した男が、そこで見たものは? 「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。 「星六花」 「アンモナイトの探し方」 「天王寺ハイエイタス」 「エイリアンの食堂」―――「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。 「山を刻む」―――「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする。 「さっきも言いましたけど、赤ん坊の月は、地球のそばにいるじゃないですか。幼いころは、無邪気にくるくる回って、いろんな顔を見せてくれる。うれしい顔、悲しい顔、すねた顔、楽しい顔、さびしい顔、全部です。でも、時が経つにつれて、だんだん地球から離れていって、あんまり回ってくれなくなって、とうとう地球には見せない顔を持つようになる。裏の悪い顔って意味じゃないですよ。親には見せてくれない一面っていうのかな。月の裏側みたいに」(35頁「月まで三キロ」) 「私はそのとき思い知った。わかるための鍵は常に、わからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何がわからないかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないを、きちんとわけるんだ」(110頁「アンモナイトの探し方」) 「科学に限らず、うまくいくことだけを選んでいけるほど、物事は単純ではない。まずは手を動かすことだ」(120頁「アンモナイトの探し方」) 「山って、いいだろ」 聴いた瞬間、わたしの足だけが止まった。 山って、いいでしょ―――。 その台詞を、わたしは言ったことがない。 なぜわたしは、今まで一度も、あの子たちを山に連れてきてやらなかったのか。なぜわたしは、自分の人生を生きているところを、あの子たちに見せてやらなっかのか。なぜわたしは、二人の前で、押しつけがましいほどに山の魅力を語ってやらなかったのか。 わたしの一番大きな失敗は、きっとそれなのだ―――。(248頁「山を刻む」)
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どの物語も劇的にドラマチックな展開が待っているというわけではなくて、ステーキを食べようと意気込んで食事に臨んだら出てきたのは肉じゃがだったみたいな印象。読んだ直後は味が薄いような気がしてても、思い返して反芻してみると味わい深い美味しい料理だった。 良質な短編が多かったけど、...
どの物語も劇的にドラマチックな展開が待っているというわけではなくて、ステーキを食べようと意気込んで食事に臨んだら出てきたのは肉じゃがだったみたいな印象。読んだ直後は味が薄いような気がしてても、思い返して反芻してみると味わい深い美味しい料理だった。 良質な短編が多かったけど、特に印象に残ったのは「山を刻む」。日々こなすべき日常に忙殺されるけど好きな事を忘れない意味、幾つになってもリスタートしていいんだという気持ちにさせてくれた。
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科学の蘊蓄と家族の悩みを描いた六編の短編集。 どの話も両者が上手く結びついていて斬新でした! 月、雪、アンモナイト、堆積物、素粒子、火山ーあまりに理系的な説明だとつまらなくなりそうですが、本の中で説明を聞く登場人物たちのように興味を持って読めたのに驚き。 さらに家族のことで悩ん...
科学の蘊蓄と家族の悩みを描いた六編の短編集。 どの話も両者が上手く結びついていて斬新でした! 月、雪、アンモナイト、堆積物、素粒子、火山ーあまりに理系的な説明だとつまらなくなりそうですが、本の中で説明を聞く登場人物たちのように興味を持って読めたのに驚き。 さらに家族のことで悩んだり傷ついた心の描写が見事で、この作者さん只者ではないですね。 大満足の一冊でした。
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どの話も読みやすい。1話で一気に引き込まれて物語の世界に入り込んでしまった。研究するっていいなと思わせてくれる作品でした。
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感想 科学は人の心を救うのか。そのために自然現象と人間への理解が必要。それも不十分。最後は人間が救い上げる。科学の知識も技術も添え物。
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主人公たちが自然科学に触れ、周りの世界との向き合い方が少し変わっていく。そんな物語の短編集。 科学のことは全く詳しくなかったけれど、時々ネットで調べたり画像を見たりしながら読むのも楽しかった。 自然界のものや現象を人生と重ね合わせたり、科学が物の見方を変えるヒントになったり。自...
主人公たちが自然科学に触れ、周りの世界との向き合い方が少し変わっていく。そんな物語の短編集。 科学のことは全く詳しくなかったけれど、時々ネットで調べたり画像を見たりしながら読むのも楽しかった。 自然界のものや現象を人生と重ね合わせたり、科学が物の見方を変えるヒントになったり。自然や科学は壮大で繊細で複雑で、けれども身近な存在なんだよ、と優しく教えてくれるような一冊だった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
この先に「月に一番近い場所」があるんです――。 樹海を目指した男が、そこで見たものは? 「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。 死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。 「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。 妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性客が、小学生の娘に語った言葉の真意。 科学のきらめきが人の想いを結びつける短篇集。 (アマゾンより引用)
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理系よりの短編集です。 ほのぼのしながらあったまれる作品でした。 私が好きなお話は雪のお話です。
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8月の銀の雪を以前読んで面白かったのでこちらも読んでみた。 8月の〜と同様に科学の知識が各ストーリーに散りばめられているのだが、そのどれも押し付けも無く、理系の知識が一切無い私でもすっと入ってくる面白さ。ストーリーの面白さや読みやすさと共に科学の知識が裏付ける生命や自然科学の神秘...
8月の銀の雪を以前読んで面白かったのでこちらも読んでみた。 8月の〜と同様に科学の知識が各ストーリーに散りばめられているのだが、そのどれも押し付けも無く、理系の知識が一切無い私でもすっと入ってくる面白さ。ストーリーの面白さや読みやすさと共に科学の知識が裏付ける生命や自然科学の神秘や美しさを体験できる。 個人的にはタイトルの月まで3キロ、エイリアンの話と山を刻むが面白かった。
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