琥珀のまたたき の商品レビュー
姉はオパール、下の弟は瑪瑙、真ん中の男の子は琥珀。 「こども理科図鑑」の中から選ばれた新しい名前がつけられたのは、それまで住んでいた家を引き払い、昔パパが仕事用に使っていた古い別荘へ引っ越した時だった。 すべてのはじまりは、妹が死んだこと。 妹のいない世界を生き抜くための、帰り道...
姉はオパール、下の弟は瑪瑙、真ん中の男の子は琥珀。 「こども理科図鑑」の中から選ばれた新しい名前がつけられたのは、それまで住んでいた家を引き払い、昔パパが仕事用に使っていた古い別荘へ引っ越した時だった。 すべてのはじまりは、妹が死んだこと。 妹のいない世界を生き抜くための、帰り道のない旅。 たくさんの図鑑に囲まれた生活。 オパールはダンスを踊り、瑪瑙は歌をうたう。 ママはツルハシを担いで仕事に出かける。 最も大事な禁止事項は「壁の外には出られません」 とても普通ではない、風変わりな状況なのに、ここでの生活のひとつひとつが愛おしく思えて仕方がない。 品位を失うことなく語られてゆく閉ざされた世界を、思わず息を潜めながら読んでいた。 琥珀の描く「一瞬の展覧会」とは何だったのだろう。 あの古びた別荘で、きょうだいが一緒に過ごした7年余りの間のささやかな風景が、おとぎ話のように深く心に刻まれてしまうような、ほんとうに美しい物語だった。
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絵画や建造物などのアート作品を読んでるような感覚 なんだろう、わかる人にはわかる世界観というのかな… とても繊細な文章で情景や心情を表現しているが、それが控えめな起承転結と共に長々と続いているので、読み進める気力が少し薄れ、ちとしんどかった ま、こういったものの趣味嗜好は人そ...
絵画や建造物などのアート作品を読んでるような感覚 なんだろう、わかる人にはわかる世界観というのかな… とても繊細な文章で情景や心情を表現しているが、それが控えめな起承転結と共に長々と続いているので、読み進める気力が少し薄れ、ちとしんどかった ま、こういったものの趣味嗜好は人それぞれなので… 個人的には苦手でした ストーリーの面白みを求めず、アンバー氏のような感覚になって彼らの呼吸を感じるのが、この本の楽しみ方なんだろうな かなり前に読んだ『博士の愛した数式』も、こんな感じだったっけかな? もやっとした記憶はあるんだが、あまり覚えてないな
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不思議な物語だった。なぜこの物語が書かれたのか、ずっと疑問に思いつつ読んでいた。 文章は小川洋子さんのいつもの詩のような文体で大好きだが、不思議さが拭えない読後感だった。
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読み終わり、本を閉じたあと、しばらく自分に現実味がなくなった。自分も3人と同じ様に壁の中にいた気持ちでいたからか、細々と続いていた生活が突然ブツっと途切れて、心が追いつかない感じ。琥珀もこんな気持ちになったのだろうか。事情ごっこで琥珀の話した国際逆子連盟。裏返った靴下や上下逆さまになった絵、ひっくり返った椅子が間違った姿ではなく、逆の世界。逆の姿からでしか味わえない驚きがあると。この部分がこの物語の核に近いような気がした。外から見たら、末娘を亡くし精神を病んだ母親が残りの子供を監禁した残酷な話に見えるが、本人達の内情は、母親は子供を守る為に愛情を注ぎ、3姉弟は限られた中でも寄り添い充実した生活を営み、外が思ってる様な悲痛感はない。結局どこに視点を置くかで、いくらでも世界が違ってくる。現実でも通ずるものがあるなとと気付かされた、重厚感のあるそんな本でした。
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はじめの方はママの行動の薄気味悪さとそれに付き合わされる子供たちがかわいそうで読むのがしんどかったけど現在の琥珀の様子が徐々に明かされてくると、この美しく儚い子供たちの未来はどうなってしまうのかが気になってたまらなくなった。 彼の幸せはあのお家の中だけにあったんだろうね。妹の描写がとても繊細で、こんな表現をどうして思いつくんだろう…!と小川洋子さんの凄さを感じました。
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自分たちの世界がすべてであること。比べる世界がないこと。それがもたらす穏やかさ。 と同時に、それがどれだけ危ういものか。 一般的には悪とされることであっても、当事者たちは真剣に生きているだけなのかもしれない。 善悪で割り切ることの難しさを感じた。
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オパール、瑪瑙、琥珀の3人。生贄になったオパールの人形、犬に顔を舐められて死んだ可哀想な妹。 家族みんなで家を飾り、外にいる魔犬から身を隠す。ひっつき虫、喘息の子を背に乗せる、働き者のロバ、
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末の娘を亡くし病んでしまった母親によって監禁された3人の姉弟のお話。…というのはあくまで周りからしたら事実だけ聞くとそのように見えると言うだけであって、渦中の姉弟にとってきっとそんな気は毛頭ない。 そのくらいただの普通の日常だったものが、成長していく過程で少しずつ崩れていく。 ただ琥珀が、ずっと禁則事項を大事に大事にしているのがとても切なく感じた。 ずっとずっと子どものままでと願いが込められたかのような小さな服、密やかな小さな声 どうか幸せになって欲しい
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母親は子供達を守るつもりで壁の中に閉じ込めた。しかし長女は年長だったために壁の外の記憶があり、成長と共に母親から離れていく。 壁の中の世界しか知らない琥珀は、最後まで母親の教えを守り大人になる。 読後はどうしようもなく悲しくなり涙が溢れたが、周りが可哀想な境遇だと決めつけることは出来ないと思った。大人になっても図鑑の中に家族を描き続ける琥珀にとっては、あの閉ざされた壁の中での生活が幸せだったのだろう。
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好きな作家でも面白くないものは面白くないと言わざるを得ず。若干構成に趣向を凝らしがちな作家ではありますけれども、それが全て裏目に出て、かつ、ストーリーも?てな感じ。 漂う空気感はこの作家独特のものですが、ちょっとこの作品はいただけませんでした。
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