琥珀のまたたき の商品レビュー
許されないことなのかもしれない。 でもそれは誰にとってだろう。 ママの言いつけを守り、壁の外へ出ることのなかった6年と少し。 話の中でそれぞれの葛藤はあるものの、とてもしなやかに伸び伸びと生きている子供たち。 どっちかといえば、ママが一番この壁の中に捕われてるのではないかと思う。...
許されないことなのかもしれない。 でもそれは誰にとってだろう。 ママの言いつけを守り、壁の外へ出ることのなかった6年と少し。 話の中でそれぞれの葛藤はあるものの、とてもしなやかに伸び伸びと生きている子供たち。 どっちかといえば、ママが一番この壁の中に捕われてるのではないかと思う。 外の人間たちは彼女を断罪しただろう。 だけれども彼女は本当に彼らを守りたかった。 そう思えてならない。 彼らだけの遊びと約束と秘密を作り慎ましく生きていたその時間は悲しさをまといながらもかけがえなく過ぎていたと思う。 読み進めていくうちに、不穏な景色が少しづつ含まれていく。 ほんの少しの変化が起きるたび、どれかひとつでも違っていたらもっと長く生活が続いたかもしれない。反対にどれか一つが欠けたら、もっと早く終わりを迎えたかもしれない。 前半は伸びやかに、後半はジリジリとゆっくりと、そして素早く読み手に訴えかけている。 どんどん動悸が早くなると同時に言葉の残酷なまでの美しさにページをめくっていく指が早くなった。 まだ続いて欲しい気持ちが読み終わっても残っていました。
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末娘を幼くして亡くした母親が『魔犬』から守るためオパール・琥珀・瑪瑙の3姉弟と夫の残した別荘へひっそりと暮らす。 3姉弟は壁(別荘)の内側から出ることなく、図鑑とともに日々を送る… ↑この過去と現在を行ったり来たりの物語り。 (琥珀) 正直…最初はしんどかった〜。 それが見る...
末娘を幼くして亡くした母親が『魔犬』から守るためオパール・琥珀・瑪瑙の3姉弟と夫の残した別荘へひっそりと暮らす。 3姉弟は壁(別荘)の内側から出ることなく、図鑑とともに日々を送る… ↑この過去と現在を行ったり来たりの物語り。 (琥珀) 正直…最初はしんどかった〜。 それが見る見るうちに引き込まれ、最後は一気に。 6年8ヶ月間、子供たちの成長・心の動き・感情…そしてママのこだわり。 素晴らしかった。
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小川洋子さんの作品は、まるで絵画を観たかのように、全体の印象が強烈に焼き付き、そのタッチを思い出すように細部が蘇る。そして、いつも「妊娠カレンダー」にその原点があったことを確認する。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
冷静に、客観的に考えると、”異常”と思われる愛の形。わかってはいても、家族が揃って静かに過ごすことのできる時間が、あたたかく見えてしまい、”監禁”という言葉に出会うと胸が鋭く刺された。 そして一人になっても、絶対のルールを守りながら、家族を思い続ける琥珀が、愛しくて苦しい。 面白くて読み続ける、というよりは何故か惹きつけられていて、気づけば終盤。最後には”また少し、人間を、そして物語というものを好きになった気がする”。(大森静佳さん解説より)
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残酷なのに正しい気がして、そして美しい。 小川洋子さんの描く物語には、そういう印象を抱くことが多い。 この小説も実はとても残酷なストーリーなのに、童話を読むような感覚で読み進めていた。 オパール、琥珀、瑪瑙と、元々とは違う名前を途中でつけられた3人のきょうだいは、世間から隔絶され...
残酷なのに正しい気がして、そして美しい。 小川洋子さんの描く物語には、そういう印象を抱くことが多い。 この小説も実はとても残酷なストーリーなのに、童話を読むような感覚で読み進めていた。 オパール、琥珀、瑪瑙と、元々とは違う名前を途中でつけられた3人のきょうだいは、世間から隔絶された別荘に閉じ込められて暮らしていた。 ママがおかしくなったのは末妹がとある疾患で死んだせいなのだけど、ママは娘が魔犬に殺されたと信じこんでいる。 その出来事がきっかけで、他の子どもたちが同じ目に遭わないために今の暮らしを始めた。 とても不自由に見えるけれど、置かれた環境の中で3人のきょうだいはとても楽しく暮らしているように見える。 そして琥珀の瞳の奥にいつしか末妹の姿が見えるようになって…。 ただただ静かで、美しくて、哀しい。 感動や派手などんでん返しがあるわけではない。だから読む人によってはとても退屈な小説なのかもしれない。 小川洋子作品の中でも、とりわけ淡々と進む小説のような気がした。 幸福は人それぞれで、他人の尺度で測れるものではない。ひとつの形しか知らずそれに守られて生きていれば、与えられたそれが幸福だと思うものなのかもしれない。 だけど僅かな外の世界に触れるごとに、違う形もあるのかも?と考えるのは当然のこと。 ここまで極端な環境じゃなくても、気づかないうちにそう思い込みながら生きていることってある。安全な中にいる幸福か、打ち破った先にあるものを見に行くか。 そういう物語ではないかもしれないのに、今の自分に重ね合わせて、ついそんなことを考えてしまった。
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母一人子3人の奇妙で切ないフィクション。オパール、琥珀、瑪瑙など子供のネーミングの良さ、子供の世界の楽しさ儚さ、現実の哀しさ、これらが織り交ざって絶妙な物語となっている。読んだ後にこの世界観の余韻に浸っていたくなる。
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閉じられた世界で、常識的に考えれば彼らは自由を奪われ不幸なきょうだいなのかもしれない。けれど三人はみんなその世界をいつくしみ、大切に生きている。幻想的で美しい物語でした。
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社会から浮いていそうな人に、小川さんはいつも名前を与えて意味をつける。彼らの目線からみる狭い世界がとても広く、魅力的に見えてしまう。 否定も肯定もせず。その狭い世界のことと、広い世界のことを、同じ質感で物語るお話。
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何かがあった時、知らせるのは私じゃない誰か。 知らない人。関係のない人。 この生活は本当。 まわりの心は嘘。 ぜんぶ知らないから。 勝手に思っていることだから。 だから喋る。自分のことを。 聞いてほしい。自分の感情を。 共有したい。自分じゃない誰かと。 それは静かに。不気...
何かがあった時、知らせるのは私じゃない誰か。 知らない人。関係のない人。 この生活は本当。 まわりの心は嘘。 ぜんぶ知らないから。 勝手に思っていることだから。 だから喋る。自分のことを。 聞いてほしい。自分の感情を。 共有したい。自分じゃない誰かと。 それは静かに。不気味に。 だけど清廉に。 いなくなっても共有した感情は 忘れないから。生々しく。鮮やかに。
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現実的ではない不思議な世界の話を読んでいるようでした。ロバの名前がボイラーっていうのがかわいいです。
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