坂の途中の家 の商品レビュー

角田光代(著者)

2023/10/25

弁護側と検事側が真逆の捉え方をしている説明を受けた時、自分が裁判員だったらどう判断するだろうか？きっと被害者や加害者に感情移入して苦しくなるだろうと思う。
人は同じ言葉をかけられても、その人の精神状態や性格によって受け取り方が違う。
まっすぐに素直に言われた通りに受け取る健やかな人もいれば、被害妄想や自信の無さから言葉の裏を読んだり、嫌味に感じたりもする。
妊娠、子育て中は特に不安になりやすい時期だと思うし、そのあたりの描写も切実だった。
屈託が無く、青空みたいな夫が実はジワジワと妻の自信を奪っていく精神的なDVである事に恐怖を感じたし、娘が自分よりも賢く広い世界で活躍するのを認めまいとする母親にも恐ろしさを感じた。
子育てと裁判員の負担に押しつぶされそうになっている里沙子の不器用な生真面目さに、こんなにマイナス思考で大丈夫？と心配になったが、日々の生活の中で夫から少しずつ自己肯定感を奪われている事と生い立ちから、その理由がわかる。
夫や親との関係性に改めて気づいた里沙子の今後の生き方が知りたくなった。

2023/10/01

最後までずっとモヤモヤしっぱなしな話だった。
主人公の言動も分かるような分からないような。
夫婦なんて、他人なので完全に分かり合えることはないだろうし。
血が繋がっている母子だって関係性は様々だ。
一番共感したことは、話し合いの場で自分だけがおかしい事を言っているのではないかという恐怖と誰も理解してくれないかもしれない孤独感だ。
人前で自分の考えを正しく表現でき、違う考えを持つ人の話を理解できるか、まったく自信がない。
裁判員の仕事に興味を持つきっかけにはなった。

2023/08/22

２歳の娘を持つ専業主婦の里沙子。
そんな里沙子が、乳幼児虐待事件の裁判員裁判の補充裁判員に選ばれる。
同じような境遇の母親に、里沙子はいつしか自分を深く重ねて行く。
そして、１０日に及ぶ裁判の中、娘は２回乗り継ぎをして義父母の家に預けるという日々を過ごし、里沙子は疲労を溜めて行く。
そんな中で、愚図る娘に辛く当たる自分や夫の自分へ向けられる視線、実母との関係等、様々な過去から現在までのことが頭の中をグルグルと回る。
人は思い込みや小さな誤解から、大きな深溝みはまることがある。
そんなつもりではないのに…どうしてそんな風に取られてしまうのか…
そんなことを深く深く考えてしまう人は精神的に参ってしまうこともあるだろう。
とにかく重い…

2023.8.22

2023/08/07

登場する裁判員たち、理解力がない感じがした。
心の機微が読み取れない感じ。
ハラスメントって、何だろう。

2023/07/27

難しい内容を文章で表現するのはさらに難しいのを見事に完結したのは素晴らしいと思う。
ニュアンスの話で感覚で感じることを文章にするのは読む側も想像力が必要になる。
少しでも自分とズレてたら分からない。
人によってはさっぱり分からない人もいるだろう。
ただ、感覚を、ニュアンスを伝えようとして読みにくかったのも事実。
もっとわかりやすい表現で嫌ミスな内容にするのは簡単だけど、この微妙な嫌ミスを表現するには、これぐらい丁寧に描写しないといけないのかな。

2023/06/11

「八日目の蝉」に続き自分において角田さんの２作品目。凄い深いところでのモラルハラスメントがテーマの作品。

読んでて辛い作品だった。読んでいて深く考えさせられた。
男の自分でも思い当たる事が多くある。
モラハラ的な言葉や態度は幾らでも人に与えているのではないか？それは自分を肯定する為にとる態度や発する言葉ではないとは言いきれない。

という事は少なからず自分も一緒だと気付く。

なんだか怖くなってきて、気持ち悪さがつきまとう作品だった。
知らず知らずに与えているであろう数々をどうしていけばいいのか？
わからないまま読み終えてしまった。

楽観的に「自分らしく」なんて言ってられない、だけど「自分らしさ」を大事にしたい自分もいて厄介だが…

うまく言えないが今後の対人関係の中でとても大切なフィルターを一枚追加させてくれた、そんな気がしている。

2023/05/28

角田さんの文章は、読みやすいので夢中で読んでしまうけどしっかり精神は抉られる。夕方からぶっ通しで読んでこの時間。そして眠れない。感想書きたくてアプリも入れちゃう。

序盤から何となしに感じた｢嫌な感じ｣の正体がだんだんと分かってくるのはホラー小説を読んでいる気分になった。途中何度か心臓がバクバクした。

その｢嫌な感じ｣が歪んだ愛情と着地したところで、驚いたけれど不思議と納得感があった。父が母に対して発した、本人曰く悪気のない、皮肉や嫌味の理由が分かった気がした。でもやめなー？
そんな状況でも、私はザラザラを身に受けず、なにも背負わず巣立ったので、改めて母の努力に頭が下がる思い。

話の本筋と全く関係ないけど、子供の駄々のこね方の解析度が高すぎて、ほんとすみません……ってなった。身に覚えがありすぎる。やり直せるならやり直したいし、お母さんマジありがとう。
世の中の子育て中の方々もマジお疲れ様です。

2023/05/07

初めての角田先生
幼児虐待の裁判話は重いなぁと思いましたが自経験にも重なることが多く引き込まれました。

幼児を死なせてしまった受刑者と裁判員に選ばれた主婦、それぞれの夫や両親、心理描写が繊細
女性として生きてきて、母親になって自分中心から子供中心の生活になり、思い通りにいかないことが多くて、周りから色々責任のない言葉を言われ、苦しくなってしまうこと。妻もそうだったんだろうなぁ、、、私も愚痴ばかりでいい夫じゃなかったなぁって今更ながら反省。

2023/04/29

オーディオブックで完読。
角田光代さんは女性の繊細な心の動きを描く天才だと思う。
私自身も小さな子供がおり、主人公や被告人の切羽詰まった気持ちは痛いほど理解出来、誰にも頼ることの出来なかった主人公や被告人に対して同情してしまう。もちろん、何があっても子どもを虐待するのは間違っているが。
旦那や義理の母親や保健師の何気ない言葉、それも本人たちには悪気もなく、むしろ良かれと思って言ったこと、したことが、産後すぐや子育て中の母親には傷付くことだったり、怒りに繋がることは私にも覚えがある(実際、義母から送られてきた息子への服を捨てたこともある)。
母親業って、女性がどれだけ頑張ったって出来て当たり前。出来ないと減点。
男性は抱っこしてるだけなのにイクメンと呼ばれる。
周りに相談できる人がいない女性にとっての子育ては本当に辛い。
ストーリーの中で、主人公の生活や被告人の生活に自分の生活や子育て環境を重ねながら読み進めていくと、なかなか重たくて辛かった。自分の中にあった重いモヤモヤが言語化され目の前に出されて直視するのは苦しかった。

2023/03/01

・重かった
・保健師時代思い出して、作中で出てくる「質問してもまともな回答返ってこない新人保健師」はわたしだ‥と思って申し訳なく感じた
・自尊心をジワジワ傷つけるDVがあるの初めて知った。その啓発を作者の方はしていたのかな？すごいなと思った
・女性の心情の変化とかうまく想像できるように表現されていてすごいなと思った