すみれ屋敷の罪人 の商品レビュー
ここ最近で読んだ本の中でトップに入るレベルで面白かった。 戦前の煌びやかな一族の秘密、荘厳な世界観、そして登場人物全員が優しい…。それがまた切ない。
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降田天さんの作品を読むのは初! 鮎川さんと萩野さんの二人からなる作家ユニットとのこと。漫画家ユニットは想像つくけど、作家さんの場合はどんな感じで書き上げていくのか気になるところ。 関係者の証言だけで紡がれ、結末へと向かっていくミステリーは結構好き。“あれ、この人ちょっと思い込み...
降田天さんの作品を読むのは初! 鮎川さんと萩野さんの二人からなる作家ユニットとのこと。漫画家ユニットは想像つくけど、作家さんの場合はどんな感じで書き上げていくのか気になるところ。 関係者の証言だけで紡がれ、結末へと向かっていくミステリーは結構好き。“あれ、この人ちょっと思い込みが激しいな”と感じる人が必ずいたりして面白い。 それぞれのキャラクターに不自然さがなくて、ついつい話に引き込まれた結果、まんまと「え!!」と驚かされた私でした。 敵を欺くにはまず味方から。切ない。 第13回このミス大賞も受賞しているということで、受賞作の「女王はかえらない」も読もうと決めた。
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あらすじ 製薬会社社長の屋敷から白骨死体が2体見つかる。刑事西ノ森は当時屋敷に関係していた女中・使用人・家具職人の息子・料理人の娘から話を聞く。当主には3人の娘、書生がいたが、戦争が激しくなるにつれてバラバラになっていった。自由な長女、生真面目な次女、音楽学校に進んだ三女。さらに長女が連れてきた女中ヒナはわけありだ。軍への招集、憲兵の追って、火事などの出来事に見舞われる。 初めて読んだ作者。二人組のユニットで、女性か男性か知らない。お屋敷時代ものって退屈かなーと思っていたけど、登場人物一人一人が丁寧に書かれていて読みやすい。戦時中に没落していく名家って暗い設定だけど、登場人物たちなりに一生懸命生きている様子が伝わってきて、むしろ温かい気持ちになった。
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最初は、登場人物の意外な裏の顔が、事件後の証言で明らかになっていく、よくある推理ものかと思ったが、良い意味で裏切られることになった。 おそらく、もう一度読めば、また違った味が出るかもしれないが、初読の感想としては、推理ものとして、様々な謎が散りばめられて、じっくりと楽しめるし、...
最初は、登場人物の意外な裏の顔が、事件後の証言で明らかになっていく、よくある推理ものかと思ったが、良い意味で裏切られることになった。 おそらく、もう一度読めば、また違った味が出るかもしれないが、初読の感想としては、推理ものとして、様々な謎が散りばめられて、じっくりと楽しめるし、後半は、人間ドラマとしても読み応えがあった。なるほど、証言者の順番も、上手いことミスリードを誘っているわけですね。 また、推理ものにおける人間ドラマで、時折、考えさせられるのが、「人の犯した罪が許されることもあるのか?」ということで、これが上記の裏切られた理由にもなっていて、この要素のある推理ものに、おそらく私は弱い。 ただ、冷静に考えれば許されるわけがないのは分かっているのだが、物語を読み進めていくにつれて、一瞬でも思ってしまったりすると、物語の素晴らしさも感じるし、私自身の価値観が無意識に入り込んで、つい感情移入してしまう。今作については、親子愛になるのかもしれないが、時に、作られた法規的なもの以上に、感情が上回る気持ちを止められない。こういう思いをすることに、「人間とは?」みたいなのを感じ、興味を覚える。 欲を言うと、回想における昭和初期の雰囲気を文体で、あまり感じられなかった点があるが、主題には影響していないと思う。他の作品も読んでみたい。
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意外な展開で最初に思っていた展開とは全く違う終わり方だった。 優しい人たちが集まった悲劇。 とても切ないミステリーです。
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どうしようもなく狂っているのに、不思議と美しいと感じてしまう。お屋敷の良かった時代から崩壊へ。それは哀しいし、罪を被って生きている人達の苦しみは想像もできないけど、醜い中に気品が溢れる良い作品でした。
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すみれ屋敷から2体の白骨死体が発見される。 すみれ屋敷を取り巻く、主人、3人の娘、忠誠を誓う使用人たち。 それぞれが護りたいもののために、嘘をついていく。 戦時中という辛い時代背景も相まって、哀しいけど、読み終わった後はすっきりした。
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かつてはすみれが咲き誇り、美しい三姉妹が暮らしていた瀟洒な洋館。そこから発見された複数の白骨。その屋敷でかつて何があったのか。永い時を経て掘り起こされる過去の記憶と、事件の真相。戦時中に起こったさまざまな悲劇を交えながら、それでもどこかしら美しく語られるスリーピング・マーダーミス...
かつてはすみれが咲き誇り、美しい三姉妹が暮らしていた瀟洒な洋館。そこから発見された複数の白骨。その屋敷でかつて何があったのか。永い時を経て掘り起こされる過去の記憶と、事件の真相。戦時中に起こったさまざまな悲劇を交えながら、それでもどこかしら美しく語られるスリーピング・マーダーミステリ。 夢のような美しい屋敷に徐々に立ち込める暗雲と、やがて起こったらしい何らかの事件。現代では年老いた証言者たちの、それでもその記憶の中に鮮烈に残る物語は実に魅力的です。だけど本当は何が起こっていたのかは当然のことながらなかなか明かされず。この真相はそう見抜けるものじゃないなあ……予想以上でした。 あまりにも哀しい、切なすぎる物語。しかしそれでもまるきり不幸な物語という気はしませんでした。読後にはあくまでも、在りし日のすみれ屋敷の美しさばかりが残る心境です。
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フォロワーさんのレビューで知った作品。初読み作家さんと思っていたら、この作家さんは「偽りの春」を読んでいた。 旧紫峰邸で見つかった三体の白骨体について、西ノ森という刑事がかつての紫峰邸を知る人々を訪ねて当時の話を聞いていく。 それぞれの話は次第に過去に遡り、紫峰邸の様々な悲劇や...
フォロワーさんのレビューで知った作品。初読み作家さんと思っていたら、この作家さんは「偽りの春」を読んでいた。 旧紫峰邸で見つかった三体の白骨体について、西ノ森という刑事がかつての紫峰邸を知る人々を訪ねて当時の話を聞いていく。 それぞれの話は次第に過去に遡り、紫峰邸の様々な悲劇や危険な兆候を露にしていく。 しかし一方でそれぞれの証言には偽りや敢えて話さなかった部分があり、更には西ノ森も刑事ではないことも分かり、不穏な空気になっていく。 紫峰邸にある日突然現れた新しい女中、三姉妹のうちの長女と次女の関係悪化、三女の精神的破綻、そして戦地から帰還した主人の無惨な変化。 そして不幸へまっしぐらの紫峰家にとどめのような事件が起こる。 一体白骨体で見つかったのは誰なのか、一体誰が『罪人』なのか。 酷い火傷を負って頭巾と手袋を着ける生活になった娘たち…という設定には入れ替わりか?とワクワクしたが、予想したような陰惨さとは違っていた。 細かな点で無理を感じる点はあるが、全体的には物悲しい紫峰家の物語だった。 穏やかで優しい主人にも理性ではどうにもならない業があったし、窮屈そうで生きづらそうな三姉妹もそれぞれ情や才能がある。 善意や正論が人の幸せに繋がるのなら誰も苦労しない。罪を犯したから悪人、悪意を持っているとも限らない。 ここまでしなければならないのかと思う一方で、こうするしかないことが積み重なることもあるのかとも思う。 何かがどこかで狂ってしまった…ということだろう。 ミステリーとして、というよりは紫峰家の悲劇の物語という印象が残った。
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旧名家の敷地内から発見された2体の白骨。戦前戦時中のかつての時代背景が漂う中、失われて久しい根底からの主従関係での思いのやりとり、それに伴う切ない嘘が何とも言えない想いにさせた。 スミレにちなんだ美しい三姉妹、演じた一人の娘。そして娘を大事に思う父親。少しのズレがこんな結末を迎えるのかと思うと切ない。悪人が一人もいないことが、よりいっそう拍車をかけた。
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