眩 の商品レビュー
彼女と私を考えた。 少し似ていて、決定的に違っていて、彼女は私の師匠にはなるかもしれない、同年代なら親友にはなれないけど、ライバルにはなれるかもしれない。 志すものは違えど、無二のライバルに。 それは自分を高く見積もりすぎかしら、「あんたなんか眼中にありゃしねぇよ」と嗤われるかし...
彼女と私を考えた。 少し似ていて、決定的に違っていて、彼女は私の師匠にはなるかもしれない、同年代なら親友にはなれないけど、ライバルにはなれるかもしれない。 志すものは違えど、無二のライバルに。 それは自分を高く見積もりすぎかしら、「あんたなんか眼中にありゃしねぇよ」と嗤われるかしら。 そんなことを考えた。 彼女の生き様は私には決して真似できないものではあって、美しくも不格好で誇り高い絵師の生き様だった。 時折あまりに女の思考回路に虫酸が走ったこともあったけど、最後の数章のお栄は生き生きとしてこれぞ葛飾応為なのだと思った。 波乱であったとしてもいい人生を生きたのだろうと思うこの物語の最後がとても美しくてとても清々しいと思う。 いい作品を読めた。 作中の葛飾北斎の言葉を自分自身のために残しておこうと思う。 「たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。」 私も忘れてはいけない言葉だと思う。 まだ三流であったとしても、玄人でありたい。 これからも高みを目指す、玄人であり続けたい。
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葛飾北斎の娘である応為の物語。たばこやお酒を嗜み江戸っ子のきっぷのいい姿が気持ちいい。 絵に対する姿勢もいい。 同年代の友達のような感覚で読む。
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余韻の残る良い話でした。場面転換が激しくて途中着いて行くのに苦労したところはありましたが、その分主人公の生き方の迫力は増したと思います。親しい人たちが去って行くところは寂しかった。絵画は何も分からないのですが吉原格子先之図は素晴らしいと思います。
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朝井まかてさんらしい今回も、化粧っ気のない女性のストーリーでした。エピソードが絵の名前ごとに別れていて、絵をネットで検索して見ながら読むと面白かったです。天然の絵の具で絵を描くことは一苦労である事がわかり、自分の中で昔の絵の価値がグッと上がりました。
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葛飾北斎の娘、応為の視点で彼女自身と北斎の絵にかける想いを綴った作品。 いずれかの代表作が完成するまでの過程を描きながらも作品そのものへの描写ではなく、あくまでそれが完成するまでの過程を父娘の生き方を交えて辿っている。 各作品の肝となる部分が、もしかしたらこんな背景から生まれたも...
葛飾北斎の娘、応為の視点で彼女自身と北斎の絵にかける想いを綴った作品。 いずれかの代表作が完成するまでの過程を描きながらも作品そのものへの描写ではなく、あくまでそれが完成するまでの過程を父娘の生き方を交えて辿っている。 各作品の肝となる部分が、もしかしたらこんな背景から生まれたものかもと想像しながら読むと、小説と浮世絵の2つを同時に味わえるような非常に贅沢な一冊でした。 ここまで深みのある作品となったのは、朝井さんの絵に対する視点の賜物だと思います。
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始まりからぐいっと引き込まれ、晴れ晴れと終わる。小気味よい一冊だった。 決して明るく楽しい日々が描かれているわけではない。思うようにいかないことの方が多く、理不尽に苦しめられ、親しく心を通わせた人たちとも死に別れ、富にも名誉にも縁がないまま、年老いていく。こう書けば鬱々とした暗い...
始まりからぐいっと引き込まれ、晴れ晴れと終わる。小気味よい一冊だった。 決して明るく楽しい日々が描かれているわけではない。思うようにいかないことの方が多く、理不尽に苦しめられ、親しく心を通わせた人たちとも死に別れ、富にも名誉にも縁がないまま、年老いていく。こう書けば鬱々とした暗い物語になりそうなものなのに、そう感じないのは、北斎もお栄も、自分の人生を自分の生きたいように生き切っているからなのだろうか。
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ずっと読みたいと思っていた本。この夏に北斎展を見に行く機会があったので、今だ!と思い手に取った。とても良かった!!時代物?を読むのは久しぶりだったので、独特の言い回しや語彙は調べながら…(勉強になった)江戸の人々の生き生きした様子や人情、季節の移ろい、何といってもお栄のサバサバし...
ずっと読みたいと思っていた本。この夏に北斎展を見に行く機会があったので、今だ!と思い手に取った。とても良かった!!時代物?を読むのは久しぶりだったので、独特の言い回しや語彙は調べながら…(勉強になった)江戸の人々の生き生きした様子や人情、季節の移ろい、何といってもお栄のサバサバした感じが読んでいてスカッとした。 お栄は色彩感覚に優れていたらしいのだが、文章中の色彩表現、描いている動きの表現は豊かで楽しかった。読了後、各章の題になっている作品を調べたら驚いてしまった。『夜桜美人図』『吉原格子先之図』、お栄が探究した灯籠の光と影の描き方に感動した。なんて幻想的で美しいのだろう。ぜひ調べてみてほしい。 物語は、父と娘、母と娘の親子関係から、淡い(?)恋、甥とのいざこざなどなど…読み応えあると思う。善次郎いい男らしいけどどんな顔だろう…妄想が広がる…
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お栄さん、格好良かった。善さんとの関係は切ないけどなんか分かる気がする。 時太郎が憎い。 本物を見てみたいな 「もう六十かもしれないが、先々のあたしから見たら、今日のあたしがいっち若いじゃないか」
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なおなおさんの北斎本レビューおしゃべりで、みんみんさんからお勧めされてお取り寄せ。みんみんさんありがとうございます! カバー装画 「吉原格子先之図」 時代小説読めるかなと心配してたけど、ページをめくるのが楽しくて夢中に。 章ごとにドラマをみているような臨場感。 お栄の生き様、枠に...
なおなおさんの北斎本レビューおしゃべりで、みんみんさんからお勧めされてお取り寄せ。みんみんさんありがとうございます! カバー装画 「吉原格子先之図」 時代小説読めるかなと心配してたけど、ページをめくるのが楽しくて夢中に。 章ごとにドラマをみているような臨場感。 お栄の生き様、枠にはまりきれない才能と心意気が格好いい。絵師としていろんな材料で色を創る場面が真剣勝負。酒が強いお栄と甘いものに目がない北斎親爺どのとの掛け合い。人たらしの善次郎(渓斎英泉)がとても魅力的。純黒朱「びろうどみてえな深い光」の話をしている善次郎との魂が通い合ったような時間。いちは三味線、ゆきは琴、なみは胡弓という三人の合奏を聞きながらの宴。夜桜美人画に対する善次郎の相対するような絵、「井のはたの、桜あぶなし、酒の酔」。シーボルトからの西画の依頼に対するやりとりに腕試しと呟く。馬琴の叱咤激励と柚子の卒中薬のお見舞いという粋な計らいと奇跡的な親爺どのの復活。富嶽三十六景の誕生の様子や日課獅子に向き合う親爺どのの姿勢を見つめるお栄。どの場面も生命力があって絵師としての生涯に疾走感があり、作品を途中調べたりして味わうことも楽しい。「その名にふさわしい絵をいつか、ものにするために。描こう。」
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とにかく面白かった。北斎の娘がかっこよすぎる。男前すぎる。 最後の数ページ、なんだかぐっと来てしまった。 なんか、背中を押してもらえた感じ。 なんか、素晴らしい読後感。
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