国宝(上) の商品レビュー
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ー鳴り止まぬ喝采、この花道はどこまでも続く 〈あらすじ〉 極道の親を持ち、小さい頃に死に別れ、預けられた先で芸を磨くこととなった喜久雄。あっという間に歌舞伎の世界に魅了され、もっと踊りたい、もっと先へ行きたいと思う喜久雄。十代の頃から、栄光と苦渋のある青年期を経て、それでもまだ高みへ。兄弟同然として育った俊介との出会い、別れ、人生の中での紆余曲折があり、歳を重ねる。それでも変わらぬ舞台への熱意。さあ今日も幕があがる。 〈感想〉 すごいものを読んでしまった、、、。というのが背表紙を閉じた後の一番の気持ちです。 まず、独特な語り口調で物語が始まり、読者の私たちは観劇しているような気持ちで喜久雄の人生のページをめくってしまい、全くの未知の世界の歌舞伎にもいつのまにかのめり込んでしまいます。正直、歌舞伎の世界の何たるかが全く分からない人でも面白く読めてしまうのが凄すぎます。 明暗のある、というよりも圧倒的に苦しいことの多かった人生の中で、喜久雄にとって舞うこと芸をすることだけはいつまでも変わらず、こんなにも人は何かに魅せられることがあるのか、と思って羨ましいとは軽々しく言えない程の熱量に恐ろしくもなりました。 そして圧倒的な美。美しさの真髄がここにあるような気がします。 吉野龍田の花紅葉 更科越路の月雪も 夢と覚めては跡もなし 最後の演目と喜久雄とこの詩が信じられないくらいに相まって、言葉にならない気持ちになりました。 激烈なまでの存在感なのに、この人はからっぽなんだ、私たちはそれに魅せられているのか、これは夢なのか、、、。 最後のシーンで、この物語をずっと語り口調で紡いでいたのはもしかして、、、と思ってしまいました。 とにかくすごいものを読んだということです、、。 ※上下巻同じ感想です。
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任侠、戦後の混乱、梨園、テレビ映画お笑いの芸能の時流の移り変わり、興業の世界。。 濃厚な昭和の匂いの中で、ヤクザの後継ぎボンボンが唯一無二の歌舞伎役者になるまでの波瀾万丈な人生の始まりの、10代から30代の青春篇。 歌舞伎役者一家の、血、家柄、血統をめぐる葛藤。 大人の余裕とは違...
任侠、戦後の混乱、梨園、テレビ映画お笑いの芸能の時流の移り変わり、興業の世界。。 濃厚な昭和の匂いの中で、ヤクザの後継ぎボンボンが唯一無二の歌舞伎役者になるまでの波瀾万丈な人生の始まりの、10代から30代の青春篇。 歌舞伎役者一家の、血、家柄、血統をめぐる葛藤。 大人の余裕とは違うけど、キツイ現実をあっさり受け入れるギリギリで清濁飲み込む姿がいじらしくて、喜久雄に感情移入してしまって、心穏やかでいられない。面白い!次が気になる!
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司書仲間に勧められ手にした1冊。歌舞伎好きは勿論、そうでない人も是非。 任侠の世界に生まれながら歌舞伎界に没入し、数奇な運命に翻弄されながらも、一心不乱に駆け抜けた主人公の人生。清濁合わせ飲んで流れていく大河のようなこの小説に身を浸してみると、我々の人生も泡沫の流れに浮かぶ儚い命...
司書仲間に勧められ手にした1冊。歌舞伎好きは勿論、そうでない人も是非。 任侠の世界に生まれながら歌舞伎界に没入し、数奇な運命に翻弄されながらも、一心不乱に駆け抜けた主人公の人生。清濁合わせ飲んで流れていく大河のようなこの小説に身を浸してみると、我々の人生も泡沫の流れに浮かぶ儚い命だと思え る。黒子を被りながら4年間裏方を取材した吉田修一の大作である。
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ちょいと久々に吉田修一の作品読んでみましたよ、という感じですね。どんな話なんだろうなあ、、、「国宝」というくらいだから、まあ、日本の文化のなんかの話なんだろうなあ、、、と思いながら読みましたが、ほほう。歌舞伎の話なのですね。 上巻を読んだ感想としては、、、うむ。普通、かなあ?というところですね。もちろん、あの吉田修一ですから、当然勿論面白い。うむ。面白いです。ただ、、、ちょっと、吉田修一が好きだからこそ、「あれ?面白いには面白いけど、ちょっと、、、予想ほどは、、、面白くないなあ、、、すまん。初期期待値が高すぎたか」と思ったのも事実。 吉田修一さん、ワガママ言ってすみません。でも、あなたの作品が大好きだからこそ、前期待値では、もっと面白いもんだと思ってしまってました。ゴメンナサイ。いやうん、面白いんですけどね。そこは間違いないんですけどね、、、すみません。もっと、超面白い感じなのだろう、と、勝手に思ってたんだなあ~。期待値90点、結果感想は70点、ってな感じですね。 物語の雰囲気としては、他の吉田さん作品で言いますと、「平成猿蟹合戦図」に近い感じかなあ?と思いました。こう、どシリアスでは、無い感じ。結構ホンワカしてますよね。そのホンワカ感、読み始めて案外早い時点で分かりました。「あ、この物語は、安心して読んでいい作品だ」という感じ。 「悪人」や「怒り」とは、違う方向性の作品ですよね。ちなみに僕は「悪人」や「怒り」の方向性が抜群に大好きなので、どうしても、そっち方面を求めてしまうんだよなあ~。すみませんね。 あと、なんと言いますか、NHKの朝ドラマみたいな安心感、ホンワカ感、ありますよね。うん。読んでて「ああ、朝ドラやなあ~」って思ってましたずっと。個人的に。的外れな感想かもしれませんが、ま、そう思ったのは僕の中での揺るがない真実なのです。 下巻も、基本的には、安心して読むことができそうだなあ、と思っております。ドキドキとかは、しないと思う。安定して安心して読み進めるんだろうな、と思っておりますね。
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吉田修一。長崎市出身の芥川賞作家。話は、長崎市の思案橋あたりから始まります。 語り口が上手。長編ですが、話の展開が早いです。一度お会いしていろいろ聞いてみたいですね~。
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3.3最初は、引き付けられたが、歌舞伎に興味がないので、後半失速した。下からの、主人公の再生に期待する。
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今のところ、今年1番面白かった本。 斬新な言葉遣いで、巧みな表現力により、まるで自分がその場面にいるように情景が浮かび上がってきました。講談を聞いてるようとも言えます。 歌舞伎の知識がなくても十分楽しめる大作です。
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吉田修一さんの作品はパークライフ以来かもしれない。 昭和38年、原爆投下被害の経験を受けた者が多くいる長崎の料亭から話は始まる。ヤクザの組長の一人息子である立花喜久雄は、組の新年会で歌舞伎舞踊である『積恋雪関扉』を遊女墨染で舞う。その場には歌舞伎役者二代目半二郎も列席しており、彼の運命が大きく動く(続く) 中学生で背中に彫り物を入れ、タバコを飲み、彼女の家に転がり込み、親友の徳ちゃんは留置所行き。現代の価値観では先が暗くなるように思うが、当時は情報流通が乏しい故にやり直しがきく時代だったのかもしれない。 兄弟の契りを交わした徳ちゃん、長崎から上阪してきた彼女春江、大阪というおおらかな街で出会った多くの人々。喜久雄の明るい青春時代が始まる。
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本当に面白い。 朝夕の通勤時間だけなのに1週間で読み終えました。 早く下も読みたいです。 オススメです。
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ナレーションのような語り口調で進む物語。 初めは慣れないなと思いつつ、途中からガッツリ世界観に浸る。 主人公の喜久雄は極道の息子として育ち、その後歌舞伎の世界へ。 歌舞伎は世襲ばかりだと思っていたから、こんな事もあるのかと少し驚く。 飄々としているようで歌舞伎への思いは熱い喜久...
ナレーションのような語り口調で進む物語。 初めは慣れないなと思いつつ、途中からガッツリ世界観に浸る。 主人公の喜久雄は極道の息子として育ち、その後歌舞伎の世界へ。 歌舞伎は世襲ばかりだと思っていたから、こんな事もあるのかと少し驚く。 飄々としているようで歌舞伎への思いは熱い喜久雄。 頑張れ。這い上がれ。 下巻へ。
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