コンビニ人間 の商品レビュー
「芥川賞受賞作」と帯にあったので身構えて読みましたが、どこかコメディじみていて面白かったです。主人公と白羽さんはぶっとんでたけど共感できるところはいくつかありました。「普通」ってよく使う言葉だけど逃げ場が無くなってきつい。
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「普通」の定義は不確かに揺れていて、人は虚しくその中心に吸い寄せられるように「擬態」しているのかもしれません。それが上手いか下手か、だけの問題。その中身は考え方によってはスカスカなのかもしれません。だけど、見方によっては十分な個性があるのかもしれません。サカナクションの「アイデン...
「普通」の定義は不確かに揺れていて、人は虚しくその中心に吸い寄せられるように「擬態」しているのかもしれません。それが上手いか下手か、だけの問題。その中身は考え方によってはスカスカなのかもしれません。だけど、見方によっては十分な個性があるのかもしれません。サカナクションの「アイデンティティ」をお供に。 恵子は死んだ小鳥を見て「かわいそう」と思うのではなく「食べよう」と考えるような子供でした。慎重に思考するにしても、前者の方が「子供らしい」「常識的」「普通」なのでしょう。だけど、他の子供たちが死んだ小鳥のために花を摘む行為を見て、花に対する無自覚な残虐さと小鳥への憐れみに矛盾を感じている姿はある意味で聡明です。それに、「食べよう」という言葉はその対象が小鳥であるばかりに不気味がられましたが、人間は沢山の他の動物を食べて生きています。動物は共生するものでもあり、観賞の対象でもあり、資源でもあります。ここでの恵子の抱える問題の一つは、彼女もまた、他の子供たちの思考を想像することは出来ない、というところです。「擬態」までは出来ても「共感」は出来ません。その原因は、彼女の徹底した物事への無関心です。ゆえに、表面的にはそれらしく装って社会に混ざることが出来るけれど、一対一で接することになった途端、粗が露呈して「異物」と見なされてしまいます。 そんな中、恵子にとって一番「擬態」しやすかったのがコンビニ店員でした。36歳の彼女はコンビニ店員としてはきっと相当優秀です。それでも、彼女はあくまで表面的に装うことしか出来ていないようです。確かに、仕事上の知識や経験は全くもって他に応用される気配はありません。そのためか、彼女は36歳という年になっても、中身が空洞のような人のままです。自他両方への無関心がそうさせるのでしょうか。 恵子は、自分と他の人達をきっぱり分けて、他は自分とは明らかに違う者として描写します。それは、家族をはじめとする周りの者に自分が異質な存在だと言われ続けてきたからこそなのですが。ただ、果たしてそうなのだろうか、という疑問がぼんやりと残ります。まず、意地悪な目でみると、恵子以外の人が「普通」だとすれば、何とも虚しいものがあるのです。どの人も、中身らしい中身は無さそうなのです。確かにいかにも「普通」らしい人生を歩んでいる側の人が何人も出てきます。だけど、恵子がもう少し毒舌なら「しょーもな」位言いそうな具合です。むしろ「普通」らしい人達も、実はそれぞれに「普通」に上手いこと「擬態」している、と考える方が少しはマシにみえます。 では、中身らしい中身は無ければいけないものなのでしょうか。それが、意外と要らないのかもしれない、焦らなくてもいつの間にか出来上がっているものなのかもしれない、というのがオチ、と読むと明るすぎるでしょうか。 質の高い物語ゆえ当然だと思いたいけれど、まだまだ咀嚼しきれていないし、思うところも、ぐちゃぐちゃな状態で頭にふわふわ漂っています。フラストレーション。一番消化不良なのが白羽さんという存在。でも、考え始めると、楽しくはなくて、何だか辛くなる一方なので、この辺りで閉じておきます。
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会社員やバイトなど仕事してることで1日のサイクルが決められてることが多い人たち。その枠から外れた時の人間性の書かれ方が面白い。 枠から外れると生きにくい世の中。 現代社会のシステムを冷静に見つめた話だった。
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気持ち悪さが勝ってしまって面白いとは思えなかった。 主人公が周りから、結局おかしな人と思われているのか普通の人と思われているのかわからなかった。 途中までは持ち物や外見などをちゃんと気にしている普通の人と思われてるように読めたが、あの男と同棲しているとバレた途端にやっぱりおかしいと思っていた、みたいな態度を周りがとりだしてかなり混乱した。 女性は見下している相手とあんなに仲良さげにできないと思う。 最後まで普通の人になれなかったのは良かったと思うが、それ以外は、作者の言いたいことをキャラクターに言わせているだけのようで不愉快だった。
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一人旅した際、新札幌の駅で買って、函館に着くころに読み終わりました。 世の中にはいろんな人がいる。 発達障害やアスペルガー、うつ。 自分だけは別、まとも、なんて人は1人もいなくて みんななにかしら個性がある。 私は人生の中で大切なことは 勉強を頑張ることでも、お金持ちと結...
一人旅した際、新札幌の駅で買って、函館に着くころに読み終わりました。 世の中にはいろんな人がいる。 発達障害やアスペルガー、うつ。 自分だけは別、まとも、なんて人は1人もいなくて みんななにかしら個性がある。 私は人生の中で大切なことは 勉強を頑張ることでも、お金持ちと結婚することでもなく、 自分の個性が生かせるところに身を置く努力をすることが 一番大切なことだとおもう。 主人公はそれをさらりとやり遂げていて、 清々しく応援したくなりました。
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自分が気づかず迫害している存在、社会からはみだした者 社会の枠組み常識から外れたものはすべておかしいと一瞥する。「修正されますよ」の一言が刺さった。 社会から“ムラ”から追い出されるとしても自分が自分でいられればそれでいいんじゃないか、周りと違くてもそれを自分で責めないで受...
自分が気づかず迫害している存在、社会からはみだした者 社会の枠組み常識から外れたものはすべておかしいと一瞥する。「修正されますよ」の一言が刺さった。 社会から“ムラ”から追い出されるとしても自分が自分でいられればそれでいいんじゃないか、周りと違くてもそれを自分で責めないで受け入れた方がずっと楽だ。 社会との付き合い方、自分の在り方を教えてくれる一冊 アイデンティティはなにか ページ数は他書に比べて少ないのでサラッと読み終えることができた。
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他人から仕事人間と呼ばれる人間にはある種主人公の様な考え方の側面があるのかもしれない。わざわざ言葉にしなくてもお互いに分かり合える世間に蔓延する最大公約数の普通に背を向けた時別の基準が必要になりそれが働く事とイコールになると仕事人間が出来上がる。一般的には揶揄する様な響きがあるが...
他人から仕事人間と呼ばれる人間にはある種主人公の様な考え方の側面があるのかもしれない。わざわざ言葉にしなくてもお互いに分かり合える世間に蔓延する最大公約数の普通に背を向けた時別の基準が必要になりそれが働く事とイコールになると仕事人間が出来上がる。一般的には揶揄する様な響きがあるがそれはとても幸せな事なのでは無いだろうか。
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芥川賞受賞作。そういえばそうだった。なんか妙に納得。 コンビニ人間。上から下まで朝から夢の中までコンビニでできている主人公。でもこれが本人にとって幸せならいいのかなー。少し違和感を感じたけども。でもだからと言って白羽の言動にも納得できないけども。うーん。
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周りのことに気にしすぎて、周りに合わそうとしてもしんどいだけ。深いメッセージが込められた話で、いろいろ考えさせられた。主人公がかかわってる人間から、ボロカスな事を言われてるのに、柳の如くサラッとかわしてるところに感心した。すごい精神力だなと思った。自分もこういうテクニックがあれば。
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人は、ある組織に所属してこそアイデンティティが確立される。その意味では、本書の主人公は決して特異でないし、むしろ共感ま生まれる。筆致はよく、ストーリーまたも飽きずに一気に読める、が、それだけ。読後、心に残るものは多くない。 なぜか、西加奈子の漁港の肉子ちゃんを思い出したが、あれほ...
人は、ある組織に所属してこそアイデンティティが確立される。その意味では、本書の主人公は決して特異でないし、むしろ共感ま生まれる。筆致はよく、ストーリーまたも飽きずに一気に読める、が、それだけ。読後、心に残るものは多くない。 なぜか、西加奈子の漁港の肉子ちゃんを思い出したが、あれほどのインパクトは無論ない。図書館の予約数が半端ないので文庫を購入したけれど、購入するほどでもなかったかな。買ってその価値があったなあ、と思う本は本当に少ない。残念ながら。
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