歪んだ波紋 の商品レビュー
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どんどんうまく、深くなっていく。これから先が本当に楽しみ。 元神戸新聞の記者という経歴(大新聞でなく)を生かしてくれる作品をいつか書いてくれると期待していたが、ここで来たかという思いがする。 ずっと応援しているが、ここ数作の飛躍の仕方がすごい。 次も社会派の骨太のやつを頼みます。 「黒い依頼」のラストページが忘れられない。
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ゆるく繋がった5つの短編は、そのタイトルが松本清張へのオマージュとなっている。 黒い依頼 共犯者 ゼロの影 Dの微笑 歪んだ波紋 共通するのは「誤報」と「虚報」。 メディアの多様化、リアルとフェイクの入り交じった溢れる情報の中で、我々受け手側は何を選び、どう消費していくのかが問われている……という、ありふれた、ともすれば退屈な物語に思えたラスト十数ページ、この作品はその姿を変え、恐ろしい現実となって襲いかかる・・・ 怖い作品だ。 報道に携わる者への危機感だけでなく、我々受ける側の姿勢も厳しく問われている作品だと思う。 分かりやすく、面白い情報だけがPV(ページビュー)を増やし、広く浅い情報を大量消費するだけの大衆が、報道を危機に陥れ、情報操作を可能にしているのかもしれない。 「情報の広がりが規則正しい波紋を描いていた時代は、完全に幕を下ろした」 これがありえない妄想だと誰が言えるだろう。
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元新聞記者の著者の真骨頂。「罪の声」と本作で完全に一流作家の仲間入りだと思います。虚報・誤報の話かと思いきや、許永中を伏線にしながらマスコミ権力の失墜を狙うグループを描き、第四の権力の虚像を炙り出す。見事な作品です。もう今から次回作が楽しみです。
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ジャーナリズムのあり方を問う連作社会派小説。 「黒い依頼」 「共犯者」 「ゼロの影」 「Dの微笑」 「歪んだ波紋」 の5編収録。 各話が主人公である新聞記者or元新聞記者の視点でマスコミの問題を描く手法にて、報道について深く考えさせられた。 新聞の虚報に始まり、TVのやらせ、週刊誌の捏造、ネットのフェイクニュースと取り上げていて、読後は報道が信じられなくなります。 特に書下ろしの最終話でそれまでの物語や登場人物が深く関わりあい、ジャーナリストの矜持が試される展開になります。 作者はポスト松本清張、山崎豊子を目指していると思われ、確かに骨太で手応えのある硬派な社会派小説であり、今後の作品も期待したいです。
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レガシーメディア。今、私たちが「事実」もしくは「真実」として受け取っている情報がどこかで誰かによって取捨選択され、書き換えられ作り出されているものだとしたら。そしてその歪んだ情報によって人生を捻じ曲げられた人がいるとしたら。いったい誰がどうやってその償いをするのか。いや、そもそも...
レガシーメディア。今、私たちが「事実」もしくは「真実」として受け取っている情報がどこかで誰かによって取捨選択され、書き換えられ作り出されているものだとしたら。そしてその歪んだ情報によって人生を捻じ曲げられた人がいるとしたら。いったい誰がどうやってその償いをするのか。いや、そもそも真実を知ることがなければその歪まされた人生さえ闇の中のはず。償いなんて生じない。 間違った情報が次々と拡散していく怖さ。SNSの持つ力を実感として得ている今、この小説は二重にも三重にもその怖さを突き付けてくる。 頭も心も柔らかい若い世代はきっと「歪んだ」情報によって動かされていく。怖い。怖くて仕方がない。
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