不在 の商品レビュー
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今はもうこの世に存在しない父からの呪縛。 亡き父の遺言で実家の屋敷の整理をしながら、幼い頃の記憶に苛まれる明日香。 あの屋敷の中で自分の存在を認められたくて仕方がなかった、途方もなくささやかな願い。 彩瀬さんの描く明日香の「愛」はなんてハードなのだろう。 炎のように身体中に激しく燃え広がり愛しい人を縛り付ける。 そして一度広がった愛の炎は止めることが出来ず相手も自分自身も苦しめる。 苦しみもがき迷った末に、自分を見失っていた明日香がようやく自分を取り戻した先にある「きれいな景色」は、夕焼け色に染まった空。 幼い頃からの呪縛を解いて造り上げた居場所は、明日香なりの慈愛に満ちた「愛」ある場所だと思った。 苦しい、難しい。また間違えるかもしれない。だけどずっと、続けていく。
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「眠れない夜は・・・」以来2作目のまる作品。 結論から言って、この人の長編は正直きついかも。主人公の明日香は被害者意識が強くて、子供じみていて、かなり面倒くさい。自分以外の人間の心の痛みを顧みようとせず、ただ、「私はこんなに愛してるのに・・・」と自分勝手なこと極まりない。 そんな彼女が遺品整理を契機に過去と向き合い、父の別の顔を知ることで過去のわだかまりと決別し、一人で前に進んでいくという物語なのだけど、そこまでに至るまでの彼女の思考や行動を延々と読まされるのはかなり重い。 文章も、これが作者の持ち味なのかもしれないが、技巧に走った表現が散見され、慣れていないからか読みづらい。 途中でピアノの部屋に出てくる男の子の正体もよくわからず、消化不良。 登場人物も結局、だあれも好きになれず読了。爽やかな気持ちにもなれず残念でした。
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うーん。難しいなぁ。 なんだか読むのがつらいというか、重くてかなかなか進まなかった。 主人公の明日香がこわくて、縛られてる感情がぞっとした
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描写の一つ一つがとても丁寧に描かれていて、割と重苦しいのに美しさと丁寧さと怖さが相待ってとても緊密していた物語だった。 もうそこにはいないのに、過去の記憶さえも曖昧なのに、不在者の与える影響が、恐ろしかった。アスカの心が静か壊れて行く様が怖かった
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感想が難しい。 大きな事件も展開もないけれど、丁寧な描写とことばが淡々とした文章の中に凛としていて、伝わってくるものがありました。
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難しい作品でした。言葉自体はそんなに難しくないし、ストーリーとしても読みにくさは感じられない。でも、誰にとっての、何の、どういう「不在」なのかがとても難しかった。ただ、冬馬が出て行くことを選んだ理由は、よく分かりました。何か一つに辿りつくために、何を捨てるのか、何を失くすのか、その過程さえも自分の意のままにはならない。ただ、血縁というのは苦しいもので、似たくない所が似てしまうのはとても良く分かる。少し生ぬるい血の臭いがする彩瀬さんの作品とは違った読み応えがありました。
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不在(もうこの世にいない)の人が与える影響というのは、生きている人よりも強いんじゃないかとたまに思う。生きていれば何度でもその人の印象というのは変わる、変わることができる。けれど面と向かっていなければ、自分の記憶の中のその人物しか頼れるものがない。ひどく不安定で、心もとない気がす...
不在(もうこの世にいない)の人が与える影響というのは、生きている人よりも強いんじゃないかとたまに思う。生きていれば何度でもその人の印象というのは変わる、変わることができる。けれど面と向かっていなければ、自分の記憶の中のその人物しか頼れるものがない。ひどく不安定で、心もとない気がする。 明日香も父の遺品整理を進めるうちに、屋敷の物や父と関わりのあった人とつながることで父の輪郭がぼんやりと浮かび上がってくる。しかし、それが明日香を余計に苦しめることにもなる。家族のあるべき形、普通な家族。自分と自分の家族は果たしてその枠にはまっていたのだろうか? この物語の中でたびたび登場する「味方」という言葉が心にこびりついている。味方とはなんだろう。明日香にとっての味方は、必ずしも自分をいい方向に導いてくれる味方ではない気がした。そういう意味では、緑原は本当に彼女の味方だったのではないだろうか。一言一句を肯定する。都合のいい味方ではなく、いいと悪いを明示してくれる相手が本当の味方だと思った。 主人公の明日香は、正直あまり好きなタイプの人間ではない。正しい愛情(と表現していいのかわからないが)を受け取らず、成長しても恋人の冬馬に対する愛情が歪んでしまう。自分の庇護下に置き、「愛」とはこういうものだと押し付けてしまう。第三者として読んでいるとひどく間違っている気がするけれど、きっと誰もがこんな風に考えたことがあるのではないかとも思う。心の中にある不在を埋めるための避難所のようなスペース。彼女も自分のことを愛せていたら、きっと違う形になっていたのかもしれないなぁ。 彩瀬さんの長編は久しぶりな気がする。相変わらずうっとりするような言葉選びと流れるような文章がたまらない。個人的には明日香が冬馬を観察しているときの描写がとても好き。
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例えば、誰かの存在が自分に影響を与えるとして、その人がいるから自分の考え方なり生き方なり人生そのものが変わる、もしくは変わったということがある。それは二人の間の関係、が基になる。 けれど、そこにいない人によって、あるいはいないことによって影響を受け続ける、ということもある。 主人...
例えば、誰かの存在が自分に影響を与えるとして、その人がいるから自分の考え方なり生き方なり人生そのものが変わる、もしくは変わったということがある。それは二人の間の関係、が基になる。 けれど、そこにいない人によって、あるいはいないことによって影響を受け続ける、ということもある。 主人公の明日香の人生が大きく揺らいでいくのは、二十四年も会わずにいた父親の死によってである。 幼い時に離婚によって離れてしまった父親や、「家」からの影響など全然ない、と思っていた彼女が徐々に自分の中にあった「父親たち」を自覚していく過程に心がざわつく。このざわつきは何だろう、と自分の中にある何かを探す。自分が育った家の、育ててくれた両親の、そして祖父母たちと自分の関係をたどる。 楽しかった、幸せだった、笑顔の思い出の日々。その思い出の間にはさまる黒いもの。あえて見つけなければそのまま気づかずに通り過ぎていくような、小さな黒いもの。それを取り出すのはいつだろう。いや、もう取り出さなくてもいいんじゃないか。このまま、見ないふりで生きていこうか。そんなことを考えながら本を閉じる。 「家族」と聞いて一番最初に「笑顔」という言葉を思い浮かべられる人は読まなくてもいいかもしれない。 気づかないでいたい黒い小さなものを知っている人には、きっと刺さる物語。そして、多分、救いになる物語。
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