ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと の商品レビュー
文化人類学の先生からの推薦、至極の一冊だった。私の日常やそれを支える社会を、全く異なる概念でとらえる文化人類学を学ぶことは、脳髄を揺さぶられるような感覚だった。 これまで持っていた文化の概念を壊されながら、自分の見方、当たり前と思うことが「異なる」だけでなく「そもそもない」社会を...
文化人類学の先生からの推薦、至極の一冊だった。私の日常やそれを支える社会を、全く異なる概念でとらえる文化人類学を学ぶことは、脳髄を揺さぶられるような感覚だった。 これまで持っていた文化の概念を壊されながら、自分の見方、当たり前と思うことが「異なる」だけでなく「そもそもない」社会を知り、強い刺激を受けた。 今後も自分にあって他者にないもの、必要としないもを知ることで、我々のものの見方の根底を知り、不穏な気持ちを抱く原因の追求を楽しみたい。
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わたしたちよりもはるかに豊かに、素直に生きられているプナン。当たり前に疑問を持つきっかけになる。ニーチェについても学びたい
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タイトルの通りの内容なので、「ルポルタージュ」ではないかも。何に分類したらいいのかわからない。エッセイでもないし。とにかくタイトルの通り、人類学者の著者が、プナンというボルネオ島に住む人々に密着して気づいたことを、ニーチェの哲学と織り交ぜて、そもそも人間とは、生きるとは何なのか、現代人の、文明的な生活が本来あるべき人間の姿なのか?と考察しながら書いている。 ちょっとニーチェの引用が難しすぎて読むのに時間がかかってしまったが全体的には面白かった。 プナンは定住することも、家や土地を所有することもなく、森のなかをうろつき、狩猟採集をして暮らす。子どもは学校に行かない。そもそも所有するという概念がなく、あるものはみんなで分かち合う。人よりも高い能力を獲得して優位に立つとか、豊かになりたいという欲求もない。 人間はいつからそのような欲求をもつようになったのか? プナンの生き方が文明的でないとか、人間らしくないと言えるのか? トイレで排泄するという習慣もない! 著者が何かを持って彼らのコミュニティーを訪問すれば、当然のようにそれをみんなのものとし、ありがとうもなく、壊してもごめんなさいもない。 とっても興味深いですな。 最後の方で、年に何度か訪問していたのにコロナで数年あいて再訪したとき、スマホとWi-Fiが導入されていたっていうくだりもかなり面白かった。 プナンはそんなものに興味をもたないかと思ったら、マレーシア政府の政策?で無料で配られたスマホとWi-Fiを駆使して、彼らはエロ動画を見ていた笑!文字の読み書きができないので、音声チャットで獲物がどこでとれるかという情報をやりとりしたり。 ニーチェは難しくても、知らない世界を覗き見られるという読書の楽しみを存分に与えてくれる一冊でした。
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文化人類学をイメージするのに最良の入門書かもしれない。著者の具体的な経験や観察と文化人類学の学問的知見が、内容的にも文章的にも無理なく接続・展開されていて、とても面白く読める。プナンの人々の暮らしを経験することで、今の自分たちの暮らしの常識や価値観が相対化される様を、ニーチェの思...
文化人類学をイメージするのに最良の入門書かもしれない。著者の具体的な経験や観察と文化人類学の学問的知見が、内容的にも文章的にも無理なく接続・展開されていて、とても面白く読める。プナンの人々の暮らしを経験することで、今の自分たちの暮らしの常識や価値観が相対化される様を、ニーチェの思想と結びつけて語るのも新鮮で、それはそれでなるほどと思わされる。「所有」「自我」「言語」等について思考実験でなくフィールドワークによってラディカルに探究していくことの面白さといったらない。
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プナンの生活を通じて、すべての価値観・すべての常識・すべての当たり前を問い直すきっかけになる本。 「大いなる正午」に出くわす経験。
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立教大学で教鞭を取る文化人類学の著者がプナンという狩猟採集民族について書いた本。 プナンとは、ボルネオ島(マレーシア、インドネシア、ブルネイの三つの国から成る)に暮らす、人口約一万人の狩猟採集民である。彼らは今日でも、資本主義社会の一端に巻き込まれながらも伝統的な社会を持ち続け...
立教大学で教鞭を取る文化人類学の著者がプナンという狩猟採集民族について書いた本。 プナンとは、ボルネオ島(マレーシア、インドネシア、ブルネイの三つの国から成る)に暮らす、人口約一万人の狩猟採集民である。彼らは今日でも、資本主義社会の一端に巻き込まれながらも伝統的な社会を持ち続けている。 本書で紹介される通り、彼らの生活は我々の生活と何もかもが違う。 プナンの社会には、「おはよう」もないし、「ありがとう」もない。「ごめんなさい」もなければ、時間という概念もない。ないない尽くしである。 プナンは常に生活をひとつの共同体で完結させているので、我々が使う交感言語(伝達機能を持たないが、一体感を生み出すような社会的な機能を持つ話し言葉)を使う必要がない。だから、「おはよう」「さよなら」という言葉がない。 プナンは死と隣り合わせの厳しい自然に生きているので、あらゆる物を分け合い、協力することが当たり前なので、プナン語には何かをもらったときの「ありがとう」にあたる言葉がない。 プナンは「反省」をしない。 共同体の中のだれかの過失でみんなが損害を被ったとしても、当人の能力や行動が追求されることはない。失敗は個人の責任ではなく、以後の共同体としてのおおまかな方針に反映されるだけだ。だから当人も反省することはない。「ごめんなさい」にあたる言葉もない。 上記のように、プナンの社会は我々の社会とはまったく似つかないものである。 どちらが良いとか優れているとかではなくて、根本の発想からして違っている。そしてそれぞれの社会は相手方の社会の在り方から学ぶことが多くあるだろう。 プナンが「反省」をしないのは、彼らに発展や向上を目指すという目的がないからだと著者は述べる。 なぜ反省が必要かというと、ある事柄において「次はもっと上手くやろう、効率よくやろう」という価値観があるからだ。この根底の発想がない以上、反省する必要がないのだ。 必要がないから、存在しない。これは自明だ。 このことは特に我々に示唆を与えてくれる。 資本主義の専制の下、我々の社会は断続的で際限のない発展を続けてきた。しかし、現在我々はその成長の限界を目の当たりにしている。顕在してきたあらゆる環境問題、倫理的問題は成長主義の限界を示している。 その中で、脱成長主義にシフトしていくためにはプナン社会の考え方がその一助になるのではないか。そう感じた。 本書は、まったく未知の社会のイデオロギーを紹介し、読んだ人に新たな視点を与えてくれる本だと思う。少し長いが、読んでみて損はない良書。
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海外で仕事をする身でありながら、よくなんでこんな事がわからないんだ、なぜこうしてしまったんど、と思うことがある。 自分が育ってきた極小な世界から抜け出して本当に他者のカルチャーを、単純に面白がり、敬意を持って接する大人になりたいものだ、、、と思った。 そして、それは遠くに行かな...
海外で仕事をする身でありながら、よくなんでこんな事がわからないんだ、なぜこうしてしまったんど、と思うことがある。 自分が育ってきた極小な世界から抜け出して本当に他者のカルチャーを、単純に面白がり、敬意を持って接する大人になりたいものだ、、、と思った。 そして、それは遠くに行かなくても、親きょうだいでも、直面することなんだな。。。 大いなる正午。に妙に関心。
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現代社会でがんじがらめになっている、そんな人たちが読んだら概念ぶち壊される、そんな本 国が違えば、価値観は変わる 時代が違っても、価値観は変わる そんなことは知っていたけど、国どころじゃない、民族であっても、価値観は変わる そういったことに何故気付けなかったのかと自分の思考回...
現代社会でがんじがらめになっている、そんな人たちが読んだら概念ぶち壊される、そんな本 国が違えば、価値観は変わる 時代が違っても、価値観は変わる そんなことは知っていたけど、国どころじゃない、民族であっても、価値観は変わる そういったことに何故気付けなかったのかと自分の思考回路の狭さに呆れ果てました ニーチェも気になる、そんな作品
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ボルネオ島のプナンの人と暮らして著者が考えたことが書かれている。興味深かった。 ボルネオ島の森でプナンと一緒に暮らすことは、「大いなる正午」を垣間見る経験だった。 「大いなる正午」という比喩はニーチェの言葉で、「真上からの強烈な光によって物事が隅々まで照らされ影が極端に短くなり、影そのものが消えてしまった状態。」のこと。「影が消える」とは、世界から価値観がすべてなくなってしまった状態である。おおいなる正午とは、真上から強烈な光に照らされて影の部分がない、善悪がない状態である。 世界には固定された絶対的な価値観が存在しないということを、体験をとおして理解したと言っている。 私たちは、一生をかけて何かを実現したり、今日の働きで何かが達成されたりすることをひそかに心に描いて働いている。ところが、プナンは、これこれのことを成し遂げるために生きるとか、将来何かになりたいとか、世の中をよくするためい生きるとか、生きることの中に意味を見出すことはない。 なので「反省しない、感謝を伝えるべき言葉がない、精神病理がない、薬指という言葉と概念がない、水と川の区別がない、方位・方角がない」、、、という、わたしたちにとって「あるべきこと」がプナン社会にはない。とても興味深い。
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各章の最初にニーチェの言葉が引用されています。 それがとても良い。ニーチェの言葉は説得力あるし、元気出る! パースペクティヴィズムという概念があることを初めて知りました。 自分が生き物をじっと観察する時にやりがちなこと。 今、私に見られている対象物(生き物)がその瞬間何を考えて...
各章の最初にニーチェの言葉が引用されています。 それがとても良い。ニーチェの言葉は説得力あるし、元気出る! パースペクティヴィズムという概念があることを初めて知りました。 自分が生き物をじっと観察する時にやりがちなこと。 今、私に見られている対象物(生き物)がその瞬間何を考えてどう感じているのか、見ている私との関係は今どんな風か。 これ、パースペクティヴィズムの端くれちゃうの?!ちょっと出来てた気がして嬉しくなった笑 自然の中で、ただ自然の声を聞き狩猟して食べ物を得て暮らすプナン。 個人の所有欲という人間の本能かもしれない部分を幼い時期に徹底的に潰し、共同体の一員として平等に分配して皆で利益を受けるシステム。簡単なようでこれを当たり前にすることが私たちにはどれほど難しいということがこの本を読むと痛感する。
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