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「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明 の商品レビュー

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34件のお客様レビュー

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2023/04/30

本書はイェール大学で教鞭を執る日本人経済学者が、経営学の泰斗であるクリステンセンの研究を、経済学的見地から定量的、理論的に深掘りした、という本になります。クリステンセンの書いた『イノベーションのジレンマ』は世界中でベストセラーになった本ですが、この著者が指摘しているように、書かれ...

本書はイェール大学で教鞭を執る日本人経済学者が、経営学の泰斗であるクリステンセンの研究を、経済学的見地から定量的、理論的に深掘りした、という本になります。クリステンセンの書いた『イノベーションのジレンマ』は世界中でベストセラーになった本ですが、この著者が指摘しているように、書かれている内容自体はかなり定性的で、他の経営学のフレームと比較しても科学性に乏しいというような批判はありました。 そのような背景のもと、著者は経済学の専門家として、クリステンセンの世界観をモデルに落とし込んだと言うことになります。内容は確かに経済学の知識がある方が望ましいですが、そうではなくとも理解できるように書かれていると思いました。また私自身経済学の論文を読むことはたまにあるのですが、この著者が述べているような構造になっていることをあらためて認識できました。その意味で非常に勉強になりました。 本書はクリステンセンのかなり抽象的な記述を具体的、科学的にしてくれているという点で有意義なのですが、インパクトというか一般の人々への訴求度合いについてはやはりクリステンセンの語り口の方が有効と言わざるを得ません。クリステンセンは最近では“How will you measure your life?”といった本も書かれていますが、文章力、表現力が非常に高い。ハーバードでは彼の授業はいまだに人気が高く、その理由は彼の語り口にあるといいます。普遍性、再現可能性という意味で経済学の役割は非常に高いですし、「数字に語らせる」ことは大事だと思うのですが、他の人間への訴求となると、最後は人間力が大事で、抽象的、個別的であったとしてもそういう語り口の方が人々の印象に残ってしまうのが、人間の難しさでもありおもしろさでもある、と本書を読んで感じました。

Posted byブクログ

2022/04/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

イノベーションのジレンマの本。認識を深めるべく読書。本質的な構造を平易にわかりやすく紐解いてくれている良著。 メモ ・代替性がある場合、共食いの分だけメリットが減少する。 ・抜け駆け、守備的m&a。くいとめによって、そうしない場合に失われる分だけ、そこに投じるコストの価値が生じる。既存事業が大きく支配的である方が、既存側の取得インセンティブが、新規側の継続インセンティブを上回る。 ・

Posted byブクログ

2021/02/01

イノベーターのジレンマはどうして起きるか。 共喰い現象=新しい製品が、既存のヒット商品のシェアを奪う。 置換効果=既存企業は、新商品によって失うものが大きいのでイノベーションに本気になれない。 競争効果=既存企業は、他社の新規参入によって失うものが大きいので、本気で独占的地位を守...

イノベーターのジレンマはどうして起きるか。 共喰い現象=新しい製品が、既存のヒット商品のシェアを奪う。 置換効果=既存企業は、新商品によって失うものが大きいのでイノベーションに本気になれない。 競争効果=既存企業は、他社の新規参入によって失うものが大きいので、本気で独占的地位を守ろうとする。 世の中の競争はほとんどは不完全競争なので、ゲーム理論でないと分析できない。 ライバル数は少ないほどいい。 近視眼的な判断をする理由=人や組織の惰性、過去の成功体験に引きずられがち。ビデオチェーン店のブロックバスターはオンライン配信化には成功した。しかし既存店を切れなかった。大企業の情報伝達効率の低下。 インテルはメモリ事業から撤退。メモリのインテルは死んで、CPUのインテルに生まれ変わった。 コダックはデジタル化には成功していたが、フィルム事業の利益率が高かったため、手放せなかった。 貯めるのに時間がかかる資源を資本と呼ぶ。人材、知識、ブランド、関係。、など。 1、新製品と旧製品の代替性が高いと、需要の共喰いが発生して新商品に切り替えずらい。 2、とはいっても、ライバルの参入を許すと、市場の独占度が下がるので、早く新技術を導入すべきである。 3、研究開発能力は既存企業も新規企業も優劣は付けがたい。 相関はデータの中に、因果は頭の中にある。 操作変数法(既出の変数以外の操作変数が存在すれば、それを操作することで、本当の因果関係がわかる)。 共喰いの度合いは、需要の代替性(弾力性)で測れる。 クールノー競争(生産力競争)とベルトラン競争(価格競争)。同質財で価格競争しているがそれなりの利益が出ている状態=生産力を競っている=クールノー競争。 イノベーションのジレンマを解決する方法 1、新事業部を分社化する。しかし、実際はうまくいかない。新規部門に移籍する社員がいない、など。 2、M&A。シスコシステムズはこの方法で成長した。しかしアメリカでも失敗のほうが多い。 3、成功しても旧部門を切れない。武田薬品はビタミン事業を2001年以降にやっと売却した。 4、生き延びるためには、いったん死ぬ必要がある。 5、株主と経営者の最適が違う。新世代の技術のために現在の有望事業をやめるのは、株主にとっては大損。 共喰いがあるのであれば、どこかで主力事業を切り捨てる必要がある。損切りと創業、の繰り返し。 政策でイノベーションを促進できるか。 官製ファンドは、ゾンビ企業を生き延びさせるだけ。 特許の制度を使えば可能か。知的財産権を保護してもイノベーションが促進できるとは限らない。ロダイムの3.5インチHDDの特許の件。最終的には認められなかったが、ライセンス料を支払う会社もあった。

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2020/12/31

20200715 クリステンセン氏の有名な『イノベーションのジレンマ』を経済学的視点で、定量的に解明した返歌。 自身も曲がりなりに経済学部出身で、需要や供給、動学的視点での研究は興味深かった。 今一度エッセンスを述べると、既存企業は、競争によって利益が落ちないよう(数量効果・価格...

20200715 クリステンセン氏の有名な『イノベーションのジレンマ』を経済学的視点で、定量的に解明した返歌。 自身も曲がりなりに経済学部出身で、需要や供給、動学的視点での研究は興味深かった。 今一度エッセンスを述べると、既存企業は、競争によって利益が落ちないよう(数量効果・価格効果)、①抜け駆けの誘引は高い(供給サイド)。また、②開発能力(投資=動学的観点)においても、既存アセットを行かせる事で新規企業よりも優位な点が多い。しかしながら、既存企業の既存事業がある事で、車内的な制約や株主からの制約を受け、③共食い(置換効果=需要サイド)に尻込みしてしまう問題がジレンマであった。これだけでもインサイトに富む命題である。一般的には、経営者の無能や政府の規制の欠陥と思われるが、優良であるがゆえに制約というジレンマに悩むという、常識を超えた示唆だったからだ。 その示唆に対して、伊神氏はもう一歩踏み込み、実証研究のプロセスとして①データ分析、②実験、③シミュレーションをやってみせた点が鮮やかである。結果を見るだけでも有益だが、そのステップ(構造化→進むための思考法)を追体験できたことは、より有益であった。全てを吸収しきれたわけではないが、進み方の考え方こそ心にとどめ、自分なりの思考様式ができるよう励みたい。 //MEMO// クレイテンセン教授の名著であるイノベーションのジレンマの経済学的解明という。クリステンセン教授は、どちらかというとビジネスケーススタディから導き出した命題であったが、伊神氏は経済学的に証明するというのか。 ゲーム理論や、統計学など、理論で上記命題が証明できたら非常に面白い。そしてやはり、企業も自身も優良であり続けることは、停滞を意味するということを一層肝に銘じるであろう。

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2020/05/12

・既存企業はたとえ有能で戦略的で合理的であったとしても、新旧技術や事業間の共喰いがある以上、イノベーションに本気になれない ・共喰いを容認し、推進する必要があるが、株主利益に反する可能性がある ・イノベーション促進政策には期待できないが、IT系産業は競争と技術革新のバランスがいい...

・既存企業はたとえ有能で戦略的で合理的であったとしても、新旧技術や事業間の共喰いがある以上、イノベーションに本気になれない ・共喰いを容認し、推進する必要があるが、株主利益に反する可能性がある ・イノベーション促進政策には期待できないが、IT系産業は競争と技術革新のバランスがいい感じだった 経済学的とはどう言うことなのだろう。ゲーム理論や回帰分析を使うこと? ・なぜイノベーターのジレンマが起きるのか  →共喰い ・どうすればいいのか  →共喰いok、失敗ok

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2020/04/26

 Yale大学の若き経済学者による、教育的な自伝である。  「イノベーターの経済学的解明」のタイトルにつられて購入した。私は前半の「イノベーター」の部分に着目していたが、本書における著者自身の力点は後半の「経済学的解明」に置いていたように思う。  著者が自身の博士論文を以て経済...

 Yale大学の若き経済学者による、教育的な自伝である。  「イノベーターの経済学的解明」のタイトルにつられて購入した。私は前半の「イノベーター」の部分に着目していたが、本書における著者自身の力点は後半の「経済学的解明」に置いていたように思う。  著者が自身の博士論文を以て経済学の全体像を感覚で理解できるよう提示している。需要・供給・均衡・限界といった基礎的な概念から、差別化と競争、社会厚生、静学/動学、実証研究の形態の各トピックまで、幅広く紹介している。非常にスピーディーで熱のこもった筆致であるためか、サクサク読める。  経済学はしばしば、「モデルが現実的でない」との批判を受ける。しかし本書は、その批判が筋違いであることを示す。「モデルが現実的でない」と考えるのは、そもそもその理論の有用性を理解していないからだと断じる。そこに自身の問いが発さればこそ、その問いと背後の文脈に応じたモデルが活きてくる。イノベーターのジレンマをはじめとする諸々の社会的現象を、単純なモデルによって説明することの意味を、次のように説いている。 「世の物事や人の感じることを言葉で言い尽くすのは土台無理な話だが、それにも関わらず人は言葉やその他諸々の手段を使って、何かを表現し伝えようとする。方程式やギリシャ文字だけで経済活動(やそれを含む有象無象)を表現し切ることは難しい。難しいというか、そもそも現実世界の『枝葉』を削ぎ落して単純化するためにモデルという箱庭を作ったわけだから、数式自体には『現実』がほとんど登場しない。それにも関わらず、数式の行間を読み、背後の事物に想像力を働かせることは可能である。」(第10章)  既存企業にとっては、既存事業と新事業の共喰いを乗り越える必要がある旨を一連の実証分析から示唆した後、その背後に潜む現実に対して想像力を発揮させていく。その想像力の発揮はまさしく、洗練された問い/仮説と、モデルによる頑健な裏付けがあるからこそ、意味を成すものに思えた。  冒頭で掲げられた問いに対する結論は、凡庸なものであった。それでは長々とした論証は無意味だったのか?と筆者は問う。答えは当然、「否」。以下は引用である。 「『結論』や『解答』そのものに、大した価値や面白みはない。そうではなくて、 ・そもそもの『問い』 ・その煮詰め方、そして ・何を『根拠』に、いかなる『意味』において、その『答え』が言えるのか、 つまり『どんなことを、どんなふうに考えながらそこに到達したのか』という『道のり』こそが、一番おいしいところであり、大人に必要な『科学』というものだ。」  ここが著者の最も伝えたい主張であるに違いない。というのも本書は、「経済学を初心者に向けて紹介する本」以上に大きな意味を持っているのだ。そうではなくてむしろ、著者自身の研究を例にしながら、いかに知的好奇心を探求する営みが楽しく、(もしかすると)尊い行為であるかについて力説した書である。  そして上記の引用はまさしく「結論」に他ならない。そのためここだけを見てもあまり響かないかもしれない。しかし、著者の具体的な研究とその背後にある頭の使い方と意志を追体験することで、その結論は格段に説得力が増す。  自分の日々の営みに自信が持てなくなった時に、帰ってきたい一冊。

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2020/02/17

終わりの方で「既存企業に欠けていたのは能力ではなく、意欲」とまとめられている。それをここに書くのはネタバレになるが、ただ、そのネタが重要なのではなく、なぜその結論に至るのかが重要。話の展開の面白さもあって、巻末に挙げられた参考書「ミクロ経済学の力」にも引き続く。

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2019/12/16

頭の悪い僕にはちょっとアカデミックで骨が折れた、、けど 結論は納得する。 個人的に、既存企業にとっての"共食い"のうち、リソースとして有りがちなのは人材だと思う。 有望な人材を主流の事業に置くか、新規事業に置くか。 おそらく大半は前者にしてしまっていて、だか...

頭の悪い僕にはちょっとアカデミックで骨が折れた、、けど 結論は納得する。 個人的に、既存企業にとっての"共食い"のうち、リソースとして有りがちなのは人材だと思う。 有望な人材を主流の事業に置くか、新規事業に置くか。 おそらく大半は前者にしてしまっていて、だからこそイノベーションが起きないんじゃないかなぁ。 だとすると、異動ももちろんそうなんだけど 採用からこれまでとぜんぜん違う人材を見極めて、増やしていく必要性に迫られる。 ところが社会的には少子高齢化、売り手市場。 なかなか思うような採用もできなくなっちゃいました… っていう日本の状況を妄想してました。

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2019/11/16

既存企業がイノベーションに本気になれない理由 「研究開発能力が高くても、合理的かつ戦略的であっても、新旧製品が共喰いを起こしている」 つまり、「能力」の問題ではなく、「意欲」の問題 「創造的破壊を生き延びるには創造的『自己』破壊の必要が有る」 「生きる為には死ぬしかない」

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2019/09/10

古典「イノベーションのジレンマ」を(勝手に)アップデート。計量経済学によって実証的にイノベーションを検証した筆者の論文、を一般向けに解説した本でもある。「イノベーションのジレンマ」は大半がインタビューや文献を考察の元にしており、「無能だから失敗した」のか「失敗したから無能と判断さ...

古典「イノベーションのジレンマ」を(勝手に)アップデート。計量経済学によって実証的にイノベーションを検証した筆者の論文、を一般向けに解説した本でもある。「イノベーションのジレンマ」は大半がインタビューや文献を考察の元にしており、「無能だから失敗した」のか「失敗したから無能と判断された」のか、これでは循環論法に陥りかねない。また人は意図して、そして意図せずに自分にも嘘をつくので、語られたことだけで論理を構築するのは危うい。 内容は音楽で言うなればA→B→A'のような形式で、まず序幕で背景や本書での要旨、著者の問題意識を読者と共有する。実はこの時点でほぼ解答はでているのだが、しかしそこに数字による裏付けはない。そこでBにおいて、現実の雑然としたデータから、モデルに合わせて必要な数字を抽出し、当てはめる。ここは相当噛み砕いてはいるものの、元が論文なのでかなり高度な内容も含んでいる。そしてA'の結論は、驚くようなものではない。著者も言うように、当たり前のことを当たり前にこなすのが一番むずかしいのだ。しかし、そこに数字による裏付け、モデリングがあるかないかは全然異なる。 数学モデルであれば、仮想的なシミュレーションを行うこともできるし、現実が違う挙動をしたときに修正することもできる。 「真のコストを他のデータから逆算する『顕示選好の原則』で数値を計算する」おそらくこれが古典的な経済学の考え方で、むしろ自分はそれよりも先に行動経済学の本を読んでいたので、行動経済学がどのような問題意識で生まれたのか、ということもわかって気がする。

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