はじめての沖縄 の商品レビュー
著者との出会いは、社会学者としての仕事であるブルデューのディスタンクシオンを解説したテレビ番組とそのテキストだった。本書は、社会学分野での質的研究やフィールドワークの過程から生まれた、大変親しみやすい副産物のようだと思う。読了後、作者が綴ったような社会学的な眼差しを体得できれば、...
著者との出会いは、社会学者としての仕事であるブルデューのディスタンクシオンを解説したテレビ番組とそのテキストだった。本書は、社会学分野での質的研究やフィールドワークの過程から生まれた、大変親しみやすい副産物のようだと思う。読了後、作者が綴ったような社会学的な眼差しを体得できれば、豊かな生活が送れるような気がした。具体的な視座は、例えば「境界線」という「人びとの歴史的経験や日常的な生活世界を規定し、出会いや葛藤を演出」する概念(p.19)、「立場性」(p.23)、「沖縄の内部に存在する、階層的な分断と反発」といったものである。今後、私たちが様々な視角で社会学的に沖縄を考えても、「私たちはは『単純に正しくなれない』のだ、という事実」(p.242)に気づかされる、という見通しも得ることができた。
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岸先生の語りと沖縄の方々の語り。知っていたようで何も知らなかった沖縄のこと。知ろうとすることの、知ろうとし続けることの大切さを思った。
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若いときに沖縄の魅力にはまり、沖縄に恋い焦がれる「沖縄病」にかかった著者は、その後社会学者になり、沖縄で生活史の社会調査も行うようになった。そして、沖縄の人びととの付き合いや聞き取りの調査を通して、沖縄についていろいろなことを考えてきた。本書はそんな著者が沖縄について考えたころ...
若いときに沖縄の魅力にはまり、沖縄に恋い焦がれる「沖縄病」にかかった著者は、その後社会学者になり、沖縄で生活史の社会調査も行うようになった。そして、沖縄の人びととの付き合いや聞き取りの調査を通して、沖縄についていろいろなことを考えてきた。本書はそんな著者が沖縄について考えたころを書いた本。 基本にあるのは、沖縄と本土の非対称性。ウチナンチュとナイチャー、日本でありながら本土と境界のある沖縄、差別されている沖縄。 多くの沖縄の人びとの「語り」を著者は聞く。「その語りは、沖縄の失業率や成長率、労働力率、産業構造といった経済的な指標や、あるいは復帰運動や基地反対運動といった政治的な問題、あるいは、武力侵略、沖縄戦、米軍による統治、日本復帰といった歴史的な出来事などの、沖縄独自の「歴史と構造」の問題へと、私たちを導いていく」(163頁)。このような生活史が語る人生の物語と、巨大な歴史や構造の物語とを、架橋しなければならないと、著者は考えていく。 文化的DNAや気候風土、沖縄人気質といったもので、「沖縄的なもの」、「ほんとうの沖縄」といったものに安易に還元しがちであるが、著者は沖縄の「歴史と構造」に結び付けて考えなければならないという。 平易な文章、著者撮影のたくさんのモノクロの写真と、サクサク読み進めることができるが、本書を読んでいると、特に本土の人間に対して、とても重い問いかけがされていると感じます。沖縄のことを考える上で、多くの示唆を与えてくれると思います。
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日本と沖縄の間の境界線 沖縄を語る際にありがちな「民族や文化に帰結させる本質化」や無邪気なラベリングをすることなく、向き合って語り、そして理解しようとする これは沖縄に対してだけではなく、ラベリングが持て囃される現代のあらゆる語りに当てはまるんだと思う
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岸さんは、本当に、人間一人一人、人間という存在が好きなのだなと思う 岸さんの本を読むと、たびたび、その視野の広さ、思考の深さ、驕らなさに感銘を受けるし、こんな自分でも何か頑張ろう、という気持ちになる かけがえのない個人、なんのごまかしも嘘もなく思っている人なのだと思う そうい...
岸さんは、本当に、人間一人一人、人間という存在が好きなのだなと思う 岸さんの本を読むと、たびたび、その視野の広さ、思考の深さ、驕らなさに感銘を受けるし、こんな自分でも何か頑張ろう、という気持ちになる かけがえのない個人、なんのごまかしも嘘もなく思っている人なのだと思う そういう気持ちが彼の学問へのエネルギーになっているのだと思う そういう人がいて、自ら見た景色を、考えたことを伝えてくれるのがとても嬉しい
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他人に親切にするためには何かのルールを破らないといけない。 みんなそれぞれ辛いところがある。それに寄り添う? 一人旅は何を得に行っているのだろうか? 自分の欲望がまざまざと目にできる瞬間。 普通の瞬間が何よりも尊いが、それは写真に映らない。 再会の意味。 男性性と搾取。 語り聞く...
他人に親切にするためには何かのルールを破らないといけない。 みんなそれぞれ辛いところがある。それに寄り添う? 一人旅は何を得に行っているのだろうか? 自分の欲望がまざまざと目にできる瞬間。 普通の瞬間が何よりも尊いが、それは写真に映らない。 再会の意味。 男性性と搾取。 語り聞くことでしか他の人のことは理解できない。
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沖縄をフィールドワークしてきた岸政彦のエッセイである。フィールドワークとはまた違った口調である。ウチナンチューという言葉が多くなり、ヤマトンチューとの区別がよくわかる。観光ガイドよりも役立つ。
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今年沖縄ひとり旅を満喫して以降、沖縄のことを改めて考えなければと思い、この本を手に取った。 「沖縄の独自性を、亜熱帯や『民族的DNA』に還元するような本質主義的な語り方を、一切やめること。そして、できるだけ世俗的に語ること。」 頭では理解していたつもりだったけど、身体的なレベル...
今年沖縄ひとり旅を満喫して以降、沖縄のことを改めて考えなければと思い、この本を手に取った。 「沖縄の独自性を、亜熱帯や『民族的DNA』に還元するような本質主義的な語り方を、一切やめること。そして、できるだけ世俗的に語ること。」 頭では理解していたつもりだったけど、身体的なレベルではわかっていなかったと思い知らされたし、戦後政治的にも経済的にもさまざまな困難を乗り越えてきた沖縄の人の「たくましさと知恵」を無視して接することはやめようと思った。 沖縄のこれまでと今、これからについて考え続けなければいけない。 そしてまた、沖縄に行きたくなった。
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面白い本でしたが、作者のTwitterがしんどすぎて……。 再読する気が失せた。 本当にもったいないのでネットやめたほうがいいかと。
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冒頭にも書いてあるが、たしかにめんどくさい本。 しかし憧れの沖縄、大好きな沖縄、拗らせている沖縄、沖縄らしさ、ナイチャーから見た沖縄などさまざまな沖縄がさまざまな人の視点から存在する事がよくわかる。 沖縄らしいとは、いったい。その言葉こそが差別なのか。 ああ面倒くさい。
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