長いお別れ の商品レビュー
認知症が背景にある小説で暗くなりがちなテーマなのに、導入章ともなる『全地球測位システム』の章が明るく巧みに誘ってもらった。老々介護家族の見本のような中で妻の曜子が陽気。それぞれ3人の娘が居る。長女〈茉莉〉は米西海岸に住む。次女〈菜奈〉は近くに住んでいるが妊娠中。末っ子の芙美〉は独...
認知症が背景にある小説で暗くなりがちなテーマなのに、導入章ともなる『全地球測位システム』の章が明るく巧みに誘ってもらった。老々介護家族の見本のような中で妻の曜子が陽気。それぞれ3人の娘が居る。長女〈茉莉〉は米西海岸に住む。次女〈菜奈〉は近くに住んでいるが妊娠中。末っ子の芙美〉は独身。3人の孫も登場する。それぞれが「うるせぇな」とぶつぶつ言いつつも父の東昇平を愛していることが分かる。 家族って何だろうと自問してしまう。 遠住みの90歳母を想いながら介護真っ最中の私。幸いにまだ母は『長いお別れ』と呼ばれる認知症ではないが迫っている。 昇平を囲む家族が自分がやれる範囲で係わっているのを参考にできる。 最終章『QOL』でアメリカの学校に通う孫・崇が不登校になり、校長先生と話す会話で閉じられる。 構成が良いと思う。実は昇平も校長だった。 人の死は皆が生きていく場所場所でつながっていけると信じさせてもらえた。
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認知症になった元中学校長の夫と、寄り添う妻。家を出て暮らしそれぞれに父母と関わる3人の娘。 認知症を暗くならずに描く、とあって確かにそういうタッチで描かれているのだけれど、私には認知症はどう書いたって悲惨な状況だ。 ユーモラスに描かれているけど、作ったばかりの入れ歯をすぐに壊され...
認知症になった元中学校長の夫と、寄り添う妻。家を出て暮らしそれぞれに父母と関わる3人の娘。 認知症を暗くならずに描く、とあって確かにそういうタッチで描かれているのだけれど、私には認知症はどう書いたって悲惨な状況だ。 ユーモラスに描かれているけど、作ったばかりの入れ歯をすぐに壊されたり失くしたりされたらとか、紙パンツの中のうんこを取り出して自分のベッドに並べられていたらとか、夜中に3回も洗濯機を回す羽目になったらとか、こういうのが物語の中の話でなく我が身に起こったらと思うと、亡くなった父の病気も思い出し、とても気楽に苦笑いしながら読めないな。 私のような歳になると、誕生日には「これまで何年生きてきた」ではなく「これから後どれくらい生きるだろう」ということを思わされ、こういう本を読むと、自分はどのような死に方をするのだろうと恐ろしくなる。 終章、QOLの観点から人工呼吸器や胃瘻の話も出てくるが、父の時に問われたことを思い出し、自分や自分の身内がそういう状況になった時、どのようになるのか、するのかと思いが巡る。 物語の中では、体中にチューブをつけて意識なく生き続けたいと、夫は、父は望まないだろうと家族は結論付けるけど、自分もそうした生き様と家族を得れただろうか。 妻は、この人が何かを忘れてしまったからと言ってこの人以外の何者かに変わってしまったわけではないと喝破するが、確かに、言葉も記憶も知性の大部分も失われたとしても、長い結婚生活の中で二人の間に常に、確かに存在した何かをもって、夫婦のコミュニケーションは保てるものだと、それは本当にそう思いたい。
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認知症のお父さんと、その妻、3人の娘を中心とした話でした。わたしの父親も認知症患者なので、わかるわかる、とうなづいたり、時にとても切ない気持ちで読む進めました。 ただ、ところどころにユーモアや愛情が散りばめられており、あまり悲惨な読後感ではなかったです。 父親とも、こんな風に接し...
認知症のお父さんと、その妻、3人の娘を中心とした話でした。わたしの父親も認知症患者なので、わかるわかる、とうなづいたり、時にとても切ない気持ちで読む進めました。 ただ、ところどころにユーモアや愛情が散りばめられており、あまり悲惨な読後感ではなかったです。 父親とも、こんな風に接したい、わたしもユーモアと愛を大事にしたい、そんな風に思えた一冊でした。
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【映画化決定! 中央公論文芸賞、日本医療小説大賞のW受賞作】認知症を患う東昇平。遊園地で迷子になり、入れ歯は次々消える。ときにユーモラスな事態を起こしながら、病気は少しずつ進んでいく。
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