いつかの人質 の商品レビュー
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芦沢さんの作品好きなんですよね。 面白かったです。 まずとにかく、モヤッとさせるのが上手い。 ミステリー部分は丁寧に組み立てられているため真相にとてもスッキリとできるのに、読後のこのモヤモヤ感。それが好き。 なんと言うのかな、人間の嫌な部分、見たくない部分、を描くのが上手いよなあ。 江間夫妻や優奈、優奈の母もですね。決して根っからの「悪人」では無いのだけど、それぞれにとても傲慢に感じる。 でもそれは、きっと誰もが持っているもので、それが見方によっては、描き方によっては、気持ち悪くて押し付けがましい傲慢さとして感じられる。怖いなあ。自分の中にもあるんだろうな、直視するのが怖いだけで。 終わり方も、個人的には物凄くモヤる。 いやお前、結局諦めきれないんかーい!とw あれだけ逃げておいて、結局、もしかしたらいつかは…って、そこでタイトル回収するんかーい! なるほど。「いつかの人質」は過去誘拐され、再び誘拐されてしまう愛子のことでありながら、「『いつか』(というものに囚われた、という意味で)の人質」は優奈だった、ということなのかな。 解説読む感じ、単行本とはラストが違うらしいのでちょっと気になる。「やっぱり夢を追うラスト」は明るいエンドなのかもしれないけど、私にはめっちゃ後味悪く感じた。後味悪いの大好物なので良いんだけど。 そして、作中1番サイコなのはやっぱり礼遠。 人の気持ちがわからない、一部の才能が突出、目的のためには手段を選ばず計画的に物事を進める。いやー良いねぇ。1番やばいわ。 本人としては本当に純粋に正しいと信じてるんだけど、「頑張って!君ならできる!一緒に夢を叶えよう!頑張ろう!!」て成功してる本人に言われ続ける絶望よ…そしてどんなに逃げても何としてでも追いかけてくるとか…。 「あたまのおかしい夫に追いまわされて、身の危険をかんじた」は事実なのよw でも礼遠は優奈を庇うための方便だと思っているし、優奈もそう思ってしまっているよね? いやほんとに怖い。真っ直ぐで真っ白な猛毒だ。綺麗な悪意、とでも言うべきか? 優奈や優奈の母、宮下夫妻の自己愛や傲慢さは「人間らしさ」だと思えて、モヤモヤ感含めて理解できるけど、礼遠は違う。 優奈は礼遠を、凄すぎて自分では釣り合わない人、と思ってるようだけど、それは違う。 妻がホスト通いで借金してたら怒るのが人間だよ。 この「どっかおかしい」礼遠は、結局のところ優奈に依存していたってことなのかなぁ…。 そのために、全盲の女子中学生を誘拐してスタンガン当てて暴力振るう訳でしょ。まじでやばすぎ。 愛子ちゃんがもう、ただただ可哀想。 そんな中でも健気に成長していく愛子ちゃんはほんと、作中唯一の純水のような存在。 宮下夫妻が愛子ちゃんの気高さに引き上げられるように、家族として幸せになってくれることを願うのみです。 色々と考えさせられ、ミステリーとしての面白さもあり、モヤモヤ感も味わえてお得な1冊でした。
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冒頭からめちゃめちゃ面白くて引き込まれたけど 読み進めているうちに失速 最初にだいぶ期待してしまった分 ちょっと物足りなかったかも でも、真相が気になって気になって ただ、目の見えない愛子目線のシーンは 手に汗握る… そこは完全に闇の世界が描かれているので 視界の情報がない分...
冒頭からめちゃめちゃ面白くて引き込まれたけど 読み進めているうちに失速 最初にだいぶ期待してしまった分 ちょっと物足りなかったかも でも、真相が気になって気になって ただ、目の見えない愛子目線のシーンは 手に汗握る… そこは完全に闇の世界が描かれているので 視界の情報がない分、読み手もかなりの恐怖を感じる もっとあの時にこうなっていたら。。。 というイヤミスは多いけど、 よくこんなシナリオが書けたな~と思う 芹沢央さん作品引き続き楽しみます
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ミステリものの冒頭って、情報が整理されるまで疑問ばかり積み重なって乗り切れずに焦ったくなることが多いのだけど、本作は視点がめまぐるしく変わるのと、展開スピードが早いので、読んでいて爽快感!勢いよく読了してしまった。礼遠がもっているミステリアスで掴みきれない雰囲気に、見えないのに魅了されていた気がしている。 合間で入る週刊誌のインタビューがいい味出している。 礼遠と優奈の出会いのシーンに感動したのに、傍からの冷めた視点たるや。客観的視点が加わるだけで、礼遠と優奈の人物像が一段とくっきりした。 あとは優奈といい、愛子の父陽介といい、 人間の暗い心の動きを捉えるのが上手だなあと思った。 言葉と裏腹のことを思ってることって普段からあるよね、 週刊誌のインタビュー然り、他者からみえるその人ってなんて一面的なものなんだろうと。 優奈の行動までは共感できないけど考えはよく理解できた。第三者から自分に紐づけられる「夢」が重石になることってあるよね、夢ってほどでなくても、周囲の期待を意識してしまうと、自分が好きでやってたはずのものが、いつのまにか他者のためにやるようになってしまう感じ。 気付けば好きなフリしてるような感じになって、それに後ろめたさを感じて、、 好きな夫が自分の夢の先にいて、なのに100%善意で自分に期待してる、しかも自分達には夢による繋がりしかない、追い詰められてしまうのも当然だなあと。 って優奈の心情が分かるのに、終盤まではずっと礼遠視点で、わたしも礼遠と一緒に、「一体何がいけなかったんだろう」って思って読み進め、最後のシーンで初めて気付く。おもしろい。
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盲目の少女・愛子が誘拐された。12年前にも誘拐された過去をもつ愛子は、同じ犯人にさらわれたのか。 様々な登場人物の視点で話が進むが、「視えない」緊張感から一気読み。粘着力高めの母親はここでも健在でした…
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人物ごとの視点で話が進む。この先どうなるんだろうと思ったところで、違う人物の視点に移る。そのため先が気になって、なかなか中断できない。最後まで勢いがあった。 文庫版で読んだが、単行本とはラストが変わっているという。同じ物語でも、ラストが違えば話全体の印象が変わるだろうから、2度...
人物ごとの視点で話が進む。この先どうなるんだろうと思ったところで、違う人物の視点に移る。そのため先が気になって、なかなか中断できない。最後まで勢いがあった。 文庫版で読んだが、単行本とはラストが変わっているという。同じ物語でも、ラストが違えば話全体の印象が変わるだろうから、2度目は原作の単行本で読むのもおもしろそう。
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過去の間違いの様に起こってしまった誘拐の被害者が、忘れた頃違う犯人にまた誘拐される。可哀想でならない愛子の運命。犯人もそんなことのためにやってしまうのかと驚いた。ちょっとストーカー的?しかも虐げ方が読んでいて辛かった。人生はふとした瞬間から有り得ない方向に向かってしまう
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う〜ん、気持ち悪い話だった。 二人の世界の中だけで盛り上がって、その為なら他人がどうなろうとどうでもいい、という感覚。そして最後も、その気持ち悪い二人がハッピーエンドになるような予感。 話は面白いけれど、登場人物二人に対する嫌悪感で読後感が良くなかった。 加筆 他の作品を読んで...
う〜ん、気持ち悪い話だった。 二人の世界の中だけで盛り上がって、その為なら他人がどうなろうとどうでもいい、という感覚。そして最後も、その気持ち悪い二人がハッピーエンドになるような予感。 話は面白いけれど、登場人物二人に対する嫌悪感で読後感が良くなかった。 加筆 他の作品を読んで、ちょっと考えが変わったので。 ハッピーエンド、ではなく、サイコパスに魅入られてしまった女性のこれからを考えるとぞっとする。そういう話だったんだろうな、と。どちらにしろイヤミス。
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12年前に誘拐に巻きこられた少女…また誘拐… 妻がいなくなった… 少女、少女の父、妻の夫、警察の視線で物語は紡がれ… 少女を誘拐したのは誰?動機は?警察とは? 芦沢先生の著書は二作目。 サスペンスなら、芦沢先生をオススメしたいな。 一番の被害者は誰か…
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#読了 幼い頃誘拐された愛子が、12年後再び誘拐される。あまりの理不尽さと、2度目の誘拐中のあんまりな扱いにかわいそうすぎて読むのが辛かった。1度目の誘拐は偶発的なもので、誘拐犯の方に誘拐の意思がなかったことも辛いね。どんなに焦ったことだろう、と。しかも大怪我まで負わせ、失明させてしまう。 愛子は失明してしまうけれど、それを感じさせないほど明るい。2度目の誘拐でもその経験を通してさらに強く成長し、家族の違和から抜け出そうとする姿が希望だった。 一方、2度目の誘拐の関係者たちの生産性のない関係に気持ち悪さを感じてしまう。犯人の生きづらさがそのまま誘拐の動機になっているだろうことは、いたたまれない気持ちになった。
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偶発的に起きた誘拐事件。それから12年後に、被害者だった少女愛子は再び何者かによって連れ去られる。警察はかつての誘拐事件の犯人の娘である優奈に容疑をかけ行方を追うが‥。 ひとつの誘拐事件の被害者とその家族、加害者のその家族。彼らが事件の後どんな人生を歩んで、どんな家族を作ってきた...
偶発的に起きた誘拐事件。それから12年後に、被害者だった少女愛子は再び何者かによって連れ去られる。警察はかつての誘拐事件の犯人の娘である優奈に容疑をかけ行方を追うが‥。 ひとつの誘拐事件の被害者とその家族、加害者のその家族。彼らが事件の後どんな人生を歩んで、どんな家族を作ってきたのかが丁寧に描かれる。 なかなか見えてこない動機に気を取られているうちに、登場人物たちの心が少しずつ変化していく。 ミステリーなのに辛さを残さない読後感。
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