口笛の上手な白雪姫 の商品レビュー
子供たちなどイノセントをささえとして、ささやかながら無二の才を持つ悲しくも愛おしい人たちの短編。いつもの感傷的なファンタジーではあるが、より抑制的で良い。文体がそもそも美しく、だからむしろストーリーが味わいの邪魔になることもあるくらいだ。文体を声になぞらえる一遍もあった。これは常...
子供たちなどイノセントをささえとして、ささやかながら無二の才を持つ悲しくも愛おしい人たちの短編。いつもの感傷的なファンタジーではあるが、より抑制的で良い。文体がそもそも美しく、だからむしろストーリーが味わいの邪魔になることもあるくらいだ。文体を声になぞらえる一遍もあった。これは常々この作者にこそふさわしい。読んでいるだけで、脳の深い場所に浸透するのだ。音楽以外でこの功をもたらしてくれることはまれ。
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装丁のクロヌマタカトシ氏の作品があまりにも小川洋子世界観の景色過ぎる う、美しい…… 短編集で小川洋子小川洋子してるんだけども、長編ぽい雰囲気だったな…
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小川洋子さんの発想力と表現力に満ちた短編集8編。またいつかじっくり読み返したいと思った。 「かわいそうなこと」 かわいそうなことの着眼点に引き込まれた。シロナガスクジラと月の対比や、ツチブタ、ライトの彼のかわいそうさにも。 「仮名の作家」 あまりにも好きすぎるとこういう思考に...
小川洋子さんの発想力と表現力に満ちた短編集8編。またいつかじっくり読み返したいと思った。 「かわいそうなこと」 かわいそうなことの着眼点に引き込まれた。シロナガスクジラと月の対比や、ツチブタ、ライトの彼のかわいそうさにも。 「仮名の作家」 あまりにも好きすぎるとこういう思考になるのかもしれない。最後に我に返った感じがした。
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小川洋子さんの小説は安心できる。 読み始めればすぐに、小川さんの世界にスルッと入り込むことができる。 1ページ目早々の『何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものではないことにちゃんと気づいていた。両手に載るほどの大きさなのに、何を企んでいるのか分から...
小川洋子さんの小説は安心できる。 読み始めればすぐに、小川さんの世界にスルッと入り込むことができる。 1ページ目早々の『何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものではないことにちゃんと気づいていた。両手に載るほどの大きさなのに、何を企んでいるのか分からないふてぶてしさと思慮深さを併せ持っていた。』という黒電話の描写から、小川さんらしさが全開だ。 更に今作は、「こんなお話もお好きでしょ」と言って蔵出しの品を並べてくれたようで、「はい、大好物です」と返したくなる。 そんな中で『亡き王女のための刺繍」は、少しだけビターな味わいだ。 りこさんは「私」が子供の頃に服を仕立ててもらっていたお店のお針子さんだ。縮めて私からは「りこさん」と呼ばれる。 子供の私は「りこさん」が大好きだが、りこさんにとってはどうだろう。 13歳の私が学校の宿題である、ハンカチへの刺繍の肩代わりを頼む。りこさんによって美しく仕上げられたイニシャルは、しかし触れただけてスルスルと解けて糸に戻ってていってしまった。りこさんがフレンチノットステッチ(糸止め)をわざとしなかったのだ。 名前で呼ばれぬ「お針子さん」が、“イニシャル”の刺繍の依頼に込めた複雑な想いにも取れるし、妹に“王女さま”の座はとうに譲り渡している私が、子供時代を脱ぎ捨てていく象徴にも思えるーりこさんの刺繍は子供達の護符なのだからー。 小川さんは何も説明せず、ただ刺繍が解けていく様を美しく描写するだけなのだけれども。 50年の付き合いの中で、私にも、りこさんにも子供はいないことが会話から分かる。 何となくりこさんは独身を通しており、私は子どもを欲しても妊娠しなかったような雰囲気を、勝手に感じる。 二人は時は違うが、大変なお産を乗り越えて無事に生まれた子どものために、ツルボランを刺繍のモチーフに選ぶ。 冥界の地に咲く花を刺繍するとき、“あなたの生はいつも死と隣り合わせなの”と赤子の耳に囁くようなひやりとした感触を覚える。 『亡き王女のための刺繍』というタイトルもまた、ショーケースで古びていく私の子供時代への、もしかしたら生活苦で恵まれなかったりこさんの子供時代への、そして生まれてこなかった私の子供への哀悼にようにも思えてくる。 この一編だけで、やっぱり小川洋子さんは特別だ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
先回りローバ 亡き王女のための刺繍 かわいそうなこと 一つの歌を分け合う 乳歯 仮名の作家 盲腸線の秘密 口笛の上手な白雪姫 短編集。 おとぎ話モチーフ好きなので、 白雪姫に惹かれて、作家借り。 不穏なお話が多かった。 レミゼが好きだから、 「一つの歌を分け合う」が臨場感あってよかった。 そういう観点で観るレミゼ、新鮮。 亡き王女のための刺繍も 明示されない悪意にドキドキした。 最後のお話、不幸になる子がいなくて ホッとしつつ、彼女は一体何者だろう?という 疑問は残りつつ、いつしか消えていくのかな?
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この人の言葉は美しい! そして、優しい 行間から小川洋子って、こんな人なんだなぁっていう人柄が滲み出てくる 文章には須らくその人の本音が溶け込んでいると思った
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静かな雰囲気の短編集。毎晩、寝る前にお話を一つずつ読みました。どのお話も大人のための童話みたいな感じでした。私が1番好きなのは「盲腸線」かな乗ってみたくなりました。廃線になりませんように。
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孤独、だけどブレないし、芯がある。 周りが見えず一直線、だけど自分の意思に忠実に生きている。 そんなキャラクターが多くて好感を持てた。 特に、大好きな作家の作品を丸暗記し、更に架空の作品を作り上げ、作家と自分が思い合っていると錯覚してしまう主人公は、狂気的で、主観的な描写のみで...
孤独、だけどブレないし、芯がある。 周りが見えず一直線、だけど自分の意思に忠実に生きている。 そんなキャラクターが多くて好感を持てた。 特に、大好きな作家の作品を丸暗記し、更に架空の作品を作り上げ、作家と自分が思い合っていると錯覚してしまう主人公は、狂気的で、主観的な描写のみで表現されていた。周りからの見え方が気になってしょうがないが、知りたくない気もした。 彼女は一般的には変わった人かもしれないが、本人はとても幸せなんだと思う。
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孤独と向き合う人たちに焦点をあてた、優しい物語たち。 どこか童話のような、幼い頃からずっと心の支えになってくれているような懐かしい記憶。 切なくて、何とも言えない温かい空気を感じる。 老婆をカタカナで「ローバ」と呼んだり、お針子さんを「りこさん」、曾祖父のことを「ひいちゃん」と...
孤独と向き合う人たちに焦点をあてた、優しい物語たち。 どこか童話のような、幼い頃からずっと心の支えになってくれているような懐かしい記憶。 切なくて、何とも言えない温かい空気を感じる。 老婆をカタカナで「ローバ」と呼んだり、お針子さんを「りこさん」、曾祖父のことを「ひいちゃん」と呼んだりするところが素敵だなと思った。 人ってこんな寂しさの一歩手前で生きているのかなと思う。 表題作は、公衆浴場の脱衣場で赤ん坊の世話をする小母さんの話。 ただひたすら赤ん坊のためだけに我が身を捧げている話が心に残った。
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柔らかくてどこか寂しいお話が詰まっている。なんでもないようなことからアイデアを膨らませ、文章力で説得力を持たせる小川洋子さんの手腕は相変わらずすごい。 表題作が一番好きですね。
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