活版印刷三日月堂 庭のアルバム の商品レビュー
やっぱりこのシリーズはいいなぁ。今までの巻では「亡くなった」としか書いていなかった弓子さんのお母さん(カナコさん)ですが、今回はカナコさんの友人視点の話もあり、亡くなっていても、カナコさんはずっと弓子さんの側に寄り添っているようでした。また、弓子さんのことが気になる男性も現れて、...
やっぱりこのシリーズはいいなぁ。今までの巻では「亡くなった」としか書いていなかった弓子さんのお母さん(カナコさん)ですが、今回はカナコさんの友人視点の話もあり、亡くなっていても、カナコさんはずっと弓子さんの側に寄り添っているようでした。また、弓子さんのことが気になる男性も現れて、次巻では新しい展開があるかも?と期待ができます。「この人の言葉に、この人と家族がこの世界にいたことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ」
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人にはそれぞれ、懐かしく感じる風景や出来事などがあると思う。それが景色であったり音であったり、あるいは香りであったりと様々だが、ふとした時に何かがスイッチになって懐かしく思い出すものだ。 大人になってからそうやって“ふと思い出す懐かしい景色”のことを「原風景」と呼ぶらしい。原風景...
人にはそれぞれ、懐かしく感じる風景や出来事などがあると思う。それが景色であったり音であったり、あるいは香りであったりと様々だが、ふとした時に何かがスイッチになって懐かしく思い出すものだ。 大人になってからそうやって“ふと思い出す懐かしい景色”のことを「原風景」と呼ぶらしい。原風景は屋外の景色だけではなく、屋内の景色も含むのだろう。藁葺き屋根の古民家であったり、古い家屋の土間であったり、町工場の機械が動く音であったりと、人の数だけそれぞれの心に刻まれた景色がある。 また、原風景に限らず思い出に残る景色と言うのはたくさんあって、そういった懐かしい景色を思い出すたびに、歳をとるというのも案外悪くないなと思ったりする。 私の思い出の景色のひとつに、小さな印刷工場の室内がある。小学生の頃に仲の良かった友だちの自宅が、小さな印刷工場を営んでいた。学校帰りに遊びに行っては、ガチャンガチャンと大きな音を出しながら力強く動く印刷機械の迫力に見入ったものだ。 当時はまだ活版印刷が使われていた時代だが、そんな景色を懐かしく思い出させてくれるシリーズの最新刊が出た。ほしおさなえさんの書かれた「活版印刷三日月堂 庭のアルバム」だ。埼玉県川越市にある小さな活版印刷所を舞台に、活版印刷をめぐる素敵な物語が連作短編集という形で綴られた一冊だ。 内容(「BOOK」データベースより) 小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い。しかし三日月堂を続けていく中で、弓子自身も考えるところがあり…。転機を迎える、大好評シリーズ第3弾!ブクログ1位、読書メーター1位、第5回静岡書店大賞、第9回天竜文学賞、4冠! 物語の始まりは、小さなタウン情報紙の取材だった。川越市にある昔懐かしい映画館が、昔懐かしいウエスタン特集を行おうと企画。それを取材しに行ったところ、チケットを街の小さな活版印刷所にお願いするという話を聞きつける。 そこで作られた活版印刷製のチケットが縁となり、次々と活版印刷所の三日月堂に人が集まる。そして、それぞれに素敵な出会いや気付きを得ながら、三日月堂の店主である弓子の物語へと繋がっていく。 人と人とは見えない縁で結ばれているんだなと思わされる内容であり、何気なく使っている言葉は一つ一つが意思を持っているんだなということを考えさせてくれる一冊だった。 今回発刊された書籍でシリーズ3作目だが、累計で14万部を突破しているというのだからブクログや読書メーターで1位をとっているというのも納得だ。活版印刷の魅力が詰まっているだけではなく、言葉や文字自体の持つ魅力を余すことなく伝えてくれる。このシリーズを読むと、無性に活版印刷で刷られた印刷物をみたくなってしまうのだ。 シリーズ第4弾が今から楽しみだ。
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震災に言及している部分で、印刷会社の高齢の会長が八木重吉の詩の活字を組んでいたという件。当時90近かった私の祖父も普段と同じように畑に種を蒔いていた光景を思い出した。 弓子が今後活版印刷とどう向き合っていくのか、明確な目標みたいなものがみえて、また彼女の活動を見守っていきたいと思った。
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川越の活版印刷所を軸に廻る物語も三冊目。相変わらずの安定感あるハートウォーミングな中篇が並ぶが、その中にこれまであまり感じなかった恋の気配が漂い始め、また印刷所自体の変化も起こりそうで、今後の物語の変化を予感させた。 ある意味、これまで以上に「印刷」に踏み込んでいく感があり、と...
川越の活版印刷所を軸に廻る物語も三冊目。相変わらずの安定感あるハートウォーミングな中篇が並ぶが、その中にこれまであまり感じなかった恋の気配が漂い始め、また印刷所自体の変化も起こりそうで、今後の物語の変化を予感させた。 ある意味、これまで以上に「印刷」に踏み込んでいく感があり、とはいえ小難しくはないのだが、個人的にはすごく楽しい。活版印刷のイベントとか知らなかった。 作中に出てきた八木重吉の詩も、詩の苦手なワシでもスッと入ってくるすてきな言葉が紡がれており、新たに知ることの多い一冊だった。
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一編の中で作られた印刷物が、次の一編につながっていく。 鎖のようにつながっていく、連作小説集。 その中心は、活版印刷所を一人で切り盛りする弓子さん。 これまではあまり弓子さんが自身の物語という趣はなかった。 でも、この巻では弓子さんの母、カナコさんの話が紐解かれる。 そして、弓...
一編の中で作られた印刷物が、次の一編につながっていく。 鎖のようにつながっていく、連作小説集。 その中心は、活版印刷所を一人で切り盛りする弓子さん。 これまではあまり弓子さんが自身の物語という趣はなかった。 でも、この巻では弓子さんの母、カナコさんの話が紐解かれる。 そして、弓子さん自身が主人公となり、盛岡へ。 お祖父さんの古時計ならぬ、大きな印刷機をいよいよ稼働させられそうな雰囲気になってきた。 そして、弓子さんの印刷機の特訓を支える、盛岡の印刷会社の孫息子、悠生とも、新しい展開がありそうな…。 次巻で新しい展開があるのかな? あるいは、新しい旅立ちが描かれて、終わってしまうのか? そういうストーリーへの興味は脇に置いておいて、実は今回好きだったのは、女子高生楓のおばあちゃんの庭の話。 万葉集を好んだおばあちゃんのために、おじいちゃんはそっと万葉の歌人たちが詠んだ植物を庭に植える。 それ自体もすてきな話だが、引用される歌がいい。 悠生のお祖父さんが、震災後組み続けたという八木重吉の詩もそうだけれど、ほしおさんは引用の名手だと思う。 この詩、この歌って、こんなによかったっけ? 小説の中に引用されることで、言葉が立ち上がってくる。 さすが詩人でもある書き手だなあ、と感服。
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「チケットと昆布巻き」に登場する、大手に就職した友人達に引け目を感じる主人公の心の内が良く描けていて、最初の一話目から上出来なら先細りかな?と舐めていたら、次も、その次も、全部良くって心に沁みるものばかりだった。なんか泣けたし。
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今回も第二弾からお話し繋がってるかなあ〜? (*・ω・*)wkwk 「チケットと昆布巻き」 月刊めぐりん、川越でシアター川越の取材 シアター川越、西部劇上映会 「我らの西部劇」v(^o^)/繋がった 「カナコの歌」 月刊めぐりんの川越取材で三日月堂も取材され、その取材記事をみつけた弓子のお母さんの大学時代のサークル仲間の親友のお話し 「庭のアルバム」 サークル仲間の娘さんのお話し 「川の合流する場所で」 庭のアルバムの楓ちゃんと参加した活版印刷イベントで盛岡の印刷会社の人と知り合う! 今回は弓子のお母さんの詳しいお話しと いよいよ、平台が!!! キタ━━━━(゚∀゚)━━━━↑↑↑↑↑(笑) 最後に少し弓子の恋愛話もはじまる予感が♡ いろいろ心に刺さるものが。 今回は“生きる”とはどういうことなのかということを強く感じた 「チケットと昆布巻き」 主人公の竹野の自分の現状を不満に思う気持ちに共感するところがあって、竹野と一緒に考え方のアップデート体験 話してみないと人のことはわからない 守りに入っていない人は、考え戦っている 私も戦っている!! 「カナコの歌」 私は聡子側の人間、裕美側にはなれない・・・(ーー。持てないという悔しさ、悲しさ・・・ 「庭のアルバム」 楓のやさしい、ほんわかしたおばあちゃんになりたいけど、つい余計なことを言ってしまうおばあちゃんのことば “まあ、仕方ないね。わたしは、わたし。楓もそうだよ。一生楓として生きていくしかない。だれも代わりはいないんだから、それを放棄したら、無責任だろう?” 無責任だろうということばに 絶句レベルに はっ?!!っとした・・・わたしはわたしに責任を持ってわたしとして生きているのか・・・? 「川の合流する場所」 身近な人の死を経験した弓子と悠生の会話 “わたし、ずっと心のどこかで、生きているのは、明るい、素晴らしいことだって思ってたんです(略)” わたしもずっとそう思っていた・・・ 弓子“生まれてしまったから生きてるだけ。(略)” 悠生“人生はきっとただの苦しい道なんだろう(略)” のことばに現実をつきつけられた。
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仕事のやりがいをどこに感じるかを根底のテーマに感じた1冊でした。1、2巻はファンタジックに感じるところが多かったけど、現実世界にアウトプットしていく力強さを感じて、読んでいてとても励まされました!
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連作短編4編 どの編も一区切りしつつ,バトンを繋げていき,「庭のアルバム」「川の合流する場所で」ときて,物語は活版印刷始動へ大きく踏み出した.詩集や句集など,ぴったりだ.どんな本が登場するか,それも楽しみな次巻である
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シリーズ3作目。 今回もとても丁寧な仕上がりでした。 このシリーズが好きなのは 古いものも新しいものも 大切にしようとしているところ。 多分、手段を選ぶ前の過程を 大切にしているからかなぁと思うのです。 軽いわけではないけれど、重々しくもなく 丁度いい塩梅で心に入り込んでくる...
シリーズ3作目。 今回もとても丁寧な仕上がりでした。 このシリーズが好きなのは 古いものも新しいものも 大切にしようとしているところ。 多分、手段を選ぶ前の過程を 大切にしているからかなぁと思うのです。 軽いわけではないけれど、重々しくもなく 丁度いい塩梅で心に入り込んでくる感じがします。 そして、弓子が真面目なのがいいなぁ。 生活が真面目っていうか。 仕事、丁寧だし。 幼い頃に亡くなった母が読んだ短歌が 今、弓子の前で蘇る。 いいお話だった。 母の生まれ育った町で弓子が 「お母さん」と声を出すところで 胸がキューってなったよ。 いよいよ、大きなうねりがきそうな 次作が楽しみです。
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