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蒲生邸事件 新装版(下) の商品レビュー

4.3

41件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2026/01/13

ただのタイムスリップミステリーものかと思って読むと、付いていけなくなるのが二・二六事件ごろの日本の情勢知識でした。ただ、苦戦しながらも読み切ることで抜群のストーリーを味わうとともに、歴史的知識を増やせたことに感動してしまいました。 昭和十一年について詳しく考えたこともなかったけ...

ただのタイムスリップミステリーものかと思って読むと、付いていけなくなるのが二・二六事件ごろの日本の情勢知識でした。ただ、苦戦しながらも読み切ることで抜群のストーリーを味わうとともに、歴史的知識を増やせたことに感動してしまいました。 昭和十一年について詳しく考えたこともなかったけれど、その時代の人々が現代の私たちとそう変わりない人間らしさで生きていた描写に納得しました。激動の時代だったからと言って誰もが思想家や活動家だった訳ではないし、日常があって当たり前。 時の細部の調整を辞めて人間らしく生きることを目指した平田や、命の終わりまで愛する人々のために時間旅行を駆使した黒井の考え方はどちらが正解ということもなく苦悩の末の決断だったというのが印象に残りました。タイムトラベラーでなくても、行ってきた善意に意味がないと諦めて自分らしく生きるか、大した意味がなくても行動し続けることにするか、後者がかっこいい気がしてしまうけれどどちらを選んでも現実は厳しかったり。。 後半に進むにつれ面白さが加速する作品だったので、読み切れて本当に良かったです!

Posted byブクログ

2025/12/12

タイムトラベル系の話は一歩間違えるとドン引きしてしまうリスクがあるので、最初は少し不安でしたが、すんなり読めました。 とにかく人物の描写が上手いですし、ストーリの流れも良かったです。流石推理小説界の女王ですね。

Posted byブクログ

2025/12/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

蒲生邸事件を再読。2回くらい読み返しているし、もう全部覚えているんじゃないかと思いながら読み始めたけれど、ほぼ内容を忘れていて、新鮮な気持ちで夢中になり、そのまま読了。宮部みゆきさんの新刊を追いかけていた時期の作品で、初めて読んだのはもう30年くらい前になる。それでもまったく古さを感じず、やはりすごい作家さんだなぁと改めて思う。 受験に失敗し、予備校の試験を受けるために上京していた田舎の青年が、滞在していたホテルの火事をきっかけに、昭和初期の二・二六事件の真っただ中へタイムトラベルしてしまう物語。時間旅行の能力を持つ平田という男とともに、思いがけず歴史の渦中に放り込まれる。初読の頃は主人公とほぼ同年代だったため、尾崎孝史の幼さをあまり意識していなかった。でも今読むと、大学受験を終えたばかりなのに東條英機のことをほとんど知らない点や、敬語をうまく使えないところなど、行動の端々に幼さが見えて驚かされた。それでも、「千と千尋の神隠し」のように、目の前で起こる過酷な状況を受け止め、乗り越えながら成長していく主人公の姿には強く引き込まれる。無知な若者が、きちんと考える力を持った知的な若者へ変わっていくところに、素直に感動を覚えた。 二・二六事件とは別に、タイムスリップした蒲生邸でも事件が起こり、その背景を推理していく展開も面白い。思いもよらぬ結末で、最後まで飽きることなく読ませる。物語の軸は太平洋戦争開戦間近の重苦しいものだけれど、結末まできちんとまとめられていて、ぱーっと愉快な気持ちになりつつ、時間の流れの厳しさに涙して読了。やっぱり名作だなって思った。

Posted byブクログ

2025/11/08
  • ネタバレ

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この小説は、「タイムトリップ」というSF的な設定を物語を展開させる核心要素に置いて、この永遠のテーマを描き出している:「過去へ戻れば、歴史は変わるのだろうか?」 この問いは、わけがわからないうちにタイムトリップされた主人公孝史にとっても、タイムトリップしたことがない読者にとっても、非常に難しい。しかし、作中のタイムトリッパー「平田」はかなり早い段階で答えを出してくれた。彼の答えは否定的なものである。 私たちが変えるのは、ごく細部の修正にすぎない、という。「歴史」は自ら行きたい方向へ行くからだと、彼は言っている。これは歴史を擬人化してからの意見とも捉えるが、裏を返せば、人間の積み重ねによって成り立った歴史だからこそ、簡単に崩されないのである。 だがそうなると、一つの疑問が浮かび上がってくる。過去が変わないなら、主人公をタイムトリップさせる理由は何だろうか。つまり、孝史の存在意義は何だろうか、ということである。 読みながらいろいろなことを考えて、最後に辿り着いた結論だけを言えば、過去に戻ることは、現在を生きるためだ、と思う。 現実世界では、過去に戻れない、過去は変えられないだけではなく、過去を理解することそのものでさえ、とても手間がかかるプロセスである。しかし、それは「現在」と「過去」を繋ぐプロセスでもある。 記憶を抱える人物や物事に謙虚にi事向き合い、一つ一つの大切な出来事を丁寧に紐解いていくことは、すなわち「今自分がここに立っている」所以を知る手がかりであり、現在にいる自分の存在を再確認する、大変意義深い作業なのである。

Posted byブクログ

2025/10/04

もし今日が歴史のターニングポイントだったら? 歴史の転換点といわれる二・二六事件、学校でもさらっとしか習わなくて主人公孝史同様詳しく知らない人の方が案外多いのではないだろうか。 本書はそんな意図もあるのか孝史を通じて追体験し分かりやすく描かれている。 ちょっと退屈気味だった上巻...

もし今日が歴史のターニングポイントだったら? 歴史の転換点といわれる二・二六事件、学校でもさらっとしか習わなくて主人公孝史同様詳しく知らない人の方が案外多いのではないだろうか。 本書はそんな意図もあるのか孝史を通じて追体験し分かりやすく描かれている。 ちょっと退屈気味だった上巻と打って変わって 下巻は話の展開が面白くなってきた。 蒲生大将の事件が自決か?殺人事件なのか? 謎が次から次へ出てきて複雑に絡みあい読み手を夢中にさせる。 そして相変わらず孝史の性格と態度にはイラっとさせられる。特に鼻高々で推理を披露するシーンにムカッとしてしまうのは私だけ? 二人のタイムトラベラーの能力の考え方の違いやタイムパラドックスの制約、まがい物の神としての葛藤を二・二六事件、これから起きる戦争と絡めSFファンタジーとしても奥深さを感じた。 私的には主人公が英雄、勧善懲悪とはいかなくとも、もう少し二・二六事件に深く踏み込んでもらいたかったかな。(タイムトラベルの制約、歴史改変に繋がるから難しいのかも) 終章で戦中、戦後を必死で生き抜いた蒲生邸の 人達のその後の人生やちゑの手紙に想いを馳せるシーンは切ない面もあったが良かった。 時が経っても繋がる変わらない想いとあたたかさが心に染みる。 最後は黒井の血縁者が訪ねてくるとかそんな結末も期待したのだが、そこはちょっと残念である。 気になったのが平田と孝史の別れの際に交わした何気ない会話での表現のしかた。 「SF映画好きなんだ。ジュラシックパークを二回見た。ゴジラが観たかった。」 歴史という大きな力を人の力ではどうにもならない怪獣に例えたのかなと、そう考えるとちょっと面白い。考えすぎ? もし今日が歴史のターニングポイントだったら、あなたは気付きますか?そんな問いが本書には含まれている。 作中では、これから起きる悲惨な戦争に向かっていくにもかかわらず誰も気付かない国民の姿に未来を知っている孝史の叫びたくなる気持ちが痛い程伝わってくる。 ロシアとウクライナの紛争も気付いた人はいたのだろうか。以前読んだ『ズーラの日記』ではいきなり明日から戦争になりますと学校で伝えられた様子が描かれていた。 過去の出来事から教訓として学ぶ大切さ、世界の情勢や動向に目を向けたり戦争体験者の話に耳を傾ける。 本書はそんな気付きを与えてくれる良書。 さすが「読み継ぐ記憶」に選ばれた作品。 もしかしたら気付かないだけで今日という日が 歴史のターニングポイントかもしれない。 二・二六事件を扱った三島由紀夫の作品や恩田陸のSF小説『ネジの回転』、北村薫の『鷺と雪』読み比べてみるのも面白いかも。

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2025/09/26

歴史は過去のもので、いくら変えようと思っても変えられない。 下巻は宮部みゆきらしくミステリー色が強くなり一気読み

Posted byブクログ

2025/08/26

宮部みゆき作品は本書が初めて。背景の描写が丁寧で、その分、ストーリー展開が緩やか。下巻に入って様々な謎が緩やかなペースを崩さず、回収されていく。結局、一気読み。

Posted byブクログ

2025/08/04

終章 孝史 の締め方が良かった。 人生観の変わった登場人物たちのそれぞれの余生。素晴らしく生きた。 私も入院して死にかけたことがあり、その時に人生観が変わりかけたが、すぐいつもの日常に戻ってしまった...。人生観が変わることはいろんな機会にあると思う。この本を読むこともそんな機会...

終章 孝史 の締め方が良かった。 人生観の変わった登場人物たちのそれぞれの余生。素晴らしく生きた。 私も入院して死にかけたことがあり、その時に人生観が変わりかけたが、すぐいつもの日常に戻ってしまった...。人生観が変わることはいろんな機会にあると思う。この本を読むこともそんな機会になり得る。 宮部みゆきはやっぱりいいな。

Posted byブクログ

2026/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

めちゃくちゃ泣いてしまった。 語彙力なくて何も言えないけれど、なんとなく人間の無力さとか愚かさを思い知った。 『歴史はただ進んでいくだけ、人間はその中のパーツにすぎない。』 主人公が二・二六事件を過ごすなかで経験したいろんなことがなんか突き刺さってきた。 竹槍事件を初めて知った。 A級戦犯とされる東條英機も、その時代では英雄で、人々に賞賛されてきた。蒲生大将は日本の未来を見て東條を批判しただけで、その時代を見て国の行末を予想したのではない。それを語る貴之の台詞が切ない。『父は未来を見たんだ。結果を知っていたんだ。知った上で、何も知らずに生きた人たちが、これから成すことを批判したんだ。父ひとりだけが、言い訳を用意したんだ。抜け駆け以外の何者でもないじゃないか。』 すごく共感した。戦犯とされている軍人たちも、あの時代、国を懸命に動かしただけ。彼らは間違っていたのかもしれない、けれど未来を知っている私たちは誰もそれを批判できないと思った。人間は歴史の中で生まれては消えていく存在で、歴史はただその方向に進んでいくだけ。平田もそう言っていたが、そんな彼は竹槍事件での悪辣な召集を受け入れた。 自分はこの時代で生きなければいけない、この時代をひとりの人間として生き抜くんだと言っていた平田。彼は人間となって死んだ。 臆病者だった貴之も、この時代を、戦争を生き抜き、臆病者ではなくなって人生を終えた。孝史がふきからの手紙を読んで貴之に賞賛を送るシーンでは涙が出そうになった。 『そうか、貴之は戦争を生き抜いたのか。孝史はその事実を噛み締めて、貴之のために微笑した。やったじゃないか、あんた。』 孝史はこの時代にやってきて最初は少しも役に立たなかった。でも、周りと関わりその時代の人間として生きていくうちに、だんだんと成長していった。 『ふと、さっきまで町を歩いていた時の自分のていたらくを思い出した。銃を担いだ兵士を目にしただけで震え上がってしまい、屋敷に帰り着いた時には涙目になっていた尾崎孝史。だけど俺は、この時代に慣れてないんだ。日本に軍隊があり、軍人が武器を持って町を闊歩している時代に慣れていないんだ。しょうがないじゃないか。』 自分がこの時代にいれば、何かできただろうかと考えた。孝史と同じ状況で、何ができただろうか。きっと何もできないと思う。 貴之から、君は何も知らないんだなと言われ、自分たちがバカにしていた歴史オタクの友人を思い出した孝史。何も知らない自分を恥ずかしく思ったのは、私も一緒だった。無力さを痛感した。

Posted byブクログ

2025/07/24

あまり歴史小説は趣味ではないが、楽しくライト層にも読めるように仕立てられた作品であると言えると思う。ただ、主人公がふきとの愛情に近い絆を築く過程がよく分からなかった。主人公の人間性も見えにくかったし、なぜふきとそこまで深い信頼関係が生まれるのかも共感できず、よくあるミステリー、S...

あまり歴史小説は趣味ではないが、楽しくライト層にも読めるように仕立てられた作品であると言えると思う。ただ、主人公がふきとの愛情に近い絆を築く過程がよく分からなかった。主人公の人間性も見えにくかったし、なぜふきとそこまで深い信頼関係が生まれるのかも共感できず、よくあるミステリー、SF小説の演出にとどまっているなという印象は受けた。良くも悪くも、想像の域を出ない作品ではあったものの、長編小説としては読みやすく情景描写も丁寧であるため、読書を始める導入の一冊としては充分優秀だと思う。とはいえ、ベストな一冊とは言えない。

Posted byブクログ