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さよなら、田中さん の商品レビュー

4.3

185件のお客様レビュー

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2020/05/07

工事現場の仕事をしている母親と二人で暮らす12歳の花実には、生まれたときから父がなく、どんな人かも知らされず、写真さえ見たことがなかった。お父さんは犯罪者の可能性もあるかも、と冗談を言ったときの母の反応から、それが真実だと感じた彼女は、その後小学校の周りに現れた不審者が自分の父親...

工事現場の仕事をしている母親と二人で暮らす12歳の花実には、生まれたときから父がなく、どんな人かも知らされず、写真さえ見たことがなかった。お父さんは犯罪者の可能性もあるかも、と冗談を言ったときの母の反応から、それが真実だと感じた彼女は、その後小学校の周りに現れた不審者が自分の父親ではないかと考え始める。ところがその男に話しかけられた彼女は、彼が、彼女のではなく、隣のクラスの女の子優香の前父だと知る。懇願されて再会のために協力する花実だったが、その三日後、彼が会社の資金横領で逮捕されたことを知るのだった。 この「いつかどこかで」の他、同じく花実目線の「花の実もある」「Dランドは遠い」「銀杏拾い」と、同じクラスの男子信也に起きた事件を中心に花実親子を描いた「さよなら、田中さん」の5編を収録。 思春期を迎え、貧しさや父親の不在に悩みながらも明るく力強く生きる母娘の姿を描く。 *******ここからはネタバレ******* 著者は14歳とは思えないほどうまいです。特に最初の4編は構成も見事で、とても面白い。 どんな人か知らされていない父親は、犯罪者の可能性もあるわけで、それを不安に思ったり、母親の再婚のために奮闘したけどだめで、残念に思っていたら、もしかしたらその再婚話は、保険金目当てだったのかも知れなかったり、遊園地に行くために蓄財に励みながらも「遊ぶ金欲しさ」に犯罪を犯す中学生のニュースを見て、自分も同じだと思って諦めるとか、銀杏を拾いに行った神社で同級生の七五三に遭遇して、母親が頑張って七五三をしてくれた、とか。 お金と情に絡む、ちょこっとブラックで、ちょこっとほっこりするエピソードです。 タイトルの「さよなら、田中さん」は、お母さんの再婚が決まって彼女が「田中さん」じゃなくなったからだと思っていましたが、最後の話だけが信也の話で、彼が田中さんと「さよなら」だったんですね。 この話だけはちょっと異質で、私には蛇足に感じでしまいました。なんか、たくましい田中さん母子をただ讃えているような印象です。 漫画チックな表紙絵も残念。この絵から何を汲み取ってもらいたかったの? この若さで、これだけの作品を仕上げる力のある著者の今後にますます期待してしまいます。

Posted byブクログ

2019/04/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

話題の中学生作家のデビュー作。児童文学なのかな、と読み進めて行ったら、2篇目の「花も実もある」で心を射抜かれました。 小学六年生女子の心情を、賢しらげでなく適切な言葉にしていく表現力、語彙力に感動しました。最後の1篇は同級生の男の子の語りで描かれていて、それはそれで視点が切り替わって良いのですが、もっともっと花実ちゃんの語りを聞いていたい、と思わされました。

Posted byブクログ

2019/04/23

とにかく明るく前向きな家族。 学校のイジメの問題なども、花ちゃんがいれば起きないんだろうね。 悲しいことがあったら飯を食え!は大人にでも通用する格言だ!

Posted byブクログ

2019/04/24

ひょえー! 中学生ですと! この濃密な中身を! 中学生ですと! この豊かなキャラクターを! 中学生が書き切っている。 お婆さんは引き込まれましたよ! 「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ」 ≪ 笑ってろ 今...

ひょえー! 中学生ですと! この濃密な中身を! 中学生ですと! この豊かなキャラクターを! 中学生が書き切っている。 お婆さんは引き込まれましたよ! 「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ」 ≪ 笑ってろ 今日の日だけは 飯を食え ≫

Posted byブクログ

2019/04/14

こんなに泣ける本、久しぶりに読んだ。 号泣。 これを中学生が書いたなんて信じられない。 とんでもなく凄い才能。 自分自身を反省。ひたすら反省。 申し訳ない。

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2019/04/14

子供が書いたのか〜と読む前に侮っていたこと、ごめんなさい。一気読みしました。めっちゃ面白かったです。

Posted byブクログ

2019/04/06

中学生作家のデビュー作 とても中学生とは思えない表現力に驚かされた 主人公(小学6年生)を取り巻く環境を一人称視点によって表現している 主人公の年相応に素直な感性や、小学生ながら大人びた考え方などがうまく表現されており、大人には描けない作品になっていると思う

Posted byブクログ

2019/03/30

小説を書くって、ある程度の経験が必要だと思い込んでいた。いろんな感情を自分の中の引き出しに溜めておいて必要な時に取り出して表現するのかと思っていた。語彙力があるのはお勉強で補えるだろうけど、大人も惹きこまれるような感情の表現を一体どうやってその若さで身に着けたの?天才なの?特に表...

小説を書くって、ある程度の経験が必要だと思い込んでいた。いろんな感情を自分の中の引き出しに溜めておいて必要な時に取り出して表現するのかと思っていた。語彙力があるのはお勉強で補えるだろうけど、大人も惹きこまれるような感情の表現を一体どうやってその若さで身に着けたの?天才なの?特に表題作は、自分も中学受験の経験者だったので思い出して三上君の境遇に胸が苦しくなった。『悲しい時、腹が減っていると、余計に悲しくなる。辛くなる。そんな時はメシを食え。もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったらその一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べて、その一食分生きるんだ。そうやってなんとかしてでもしのいで命をつないでいくんだよ』このお母さんの台詞に思わず涙が……。これから、いろんなことがあると思うけれど、それも小説の糧にして、このままいい作品を書いて行って欲しいなと思える作家さんの誕生に立ち会えた気分です。

Posted byブクログ

2019/03/16

いや、これ小学生が書いたという「設定」の小説だったら、上手すぎてリアリティがないって言うところですよ。 会話も物語運びもテンポがいいし、最後に語り手を変えてまとめるところも本当に上手い。子どもにしては上手いというのとは違う。大人のプロの作家でももっとつまらない小説書く人いっぱいい...

いや、これ小学生が書いたという「設定」の小説だったら、上手すぎてリアリティがないって言うところですよ。 会話も物語運びもテンポがいいし、最後に語り手を変えてまとめるところも本当に上手い。子どもにしては上手いというのとは違う。大人のプロの作家でももっとつまらない小説書く人いっぱいいますからね。 最後の語り手の少年の母親はお受験ママにはよくあるタイプだけど、出来の悪い(と本人は思っている)子どもにとっては唯一無二の母親で、その身勝手さを許す心が子どもにはあるというのが、切ない。 この才能がこれからどうなるかわからないけど、大人はせっつかず見守ってほしい。 お母さんが、高校も行ってなくて、肉体労働で娘を養っているのが訳ありの感じで気になる。 学校に行ってないわりに物知りだし。 予想以上に良かった。(それでも★3なのは、私の読んだ小説の中では特にずば抜けたレベルではないから。作家だから年齢に関係なく評価します。)

Posted byブクログ

2019/03/01

なんというか、吉本ばななの「キッチン」を思い出すような話だった。 貧乏な母子家庭のお母さんと娘さんが中心の話で、 貧乏エピソードも満載で苦労も多いけど、 でも「生きていることの良さ」みたいなものが、 話のあちこちから、あふれているような、そんな話だった。

Posted byブクログ