ある奴隷少女に起こった出来事 の商品レビュー
自分がこの時代に南部で生きていたら、奴隷制を当たり前のように思ってしまっていたかもしれないと思うと怖い。
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1840年前後のアメリカの奴隷制度の中で、横暴な(ほぼストーカー)のヒヒ爺の圧力屈することなく自分を貫き通した勇気ある黒人女性の物語です。 1863年の奴隷解放宣言まで20年以上待たねばならない時期に、一番弱い立場の少女が知恵と勇気を振り絞って奴隷制度に抗おうとします。黒人は人間...
1840年前後のアメリカの奴隷制度の中で、横暴な(ほぼストーカー)のヒヒ爺の圧力屈することなく自分を貫き通した勇気ある黒人女性の物語です。 1863年の奴隷解放宣言まで20年以上待たねばならない時期に、一番弱い立場の少女が知恵と勇気を振り絞って奴隷制度に抗おうとします。黒人は人間ではなく、牛馬のように取引される資産であり、逃亡するという事は持ち主の資産を目減りさせるとんでもない事なのでありました。 先日流行った映画「グリーンブック」では南部をツアーで回る黒人ピアニストが、あらゆる場所で白人から迫害されるシーンが有ります。あちらは既に黒人の権利もある程度あり、法的には自由であるが、人種差別が色濃く残る地域ではいつまでも汚泥のように差別が残っていく事が描かれています。 この本ではリンダという少女がいかに自由を勝ち取ったか、という事が一番重要であり奴隷制度の悲惨さに眉をしかめるよりも、彼女から勇気をもらう事の方が多い本かもしれません。高潔な彼女の姿と、その周りの肉親や仲間たちの暖かで誇り高い姿に胸打たれます。 この本の中で印象深かったのは、奴隷制度があることによって、白人社会も腐敗し欺瞞に満ち溢れて、人格的に破壊されていくという事に言及していたことでした。この高度な思考を、虐げられた一人の奴隷の少女が産み出したというのが驚愕です。 夫は奴隷女性を性的に自由にすることを夢想し、息子はその姿を見て育つので似姿になるでしょう。妻は、夫が奴隷女性に性的な感心を示すことに嫉妬、怒りを貯めこみ。その貯めた怒りは夫ではなく奴隷に向ける。こんな負のスパイラルに居ることが豊かな事とは言えません。 人が人を支配し罰を与える。誇りを踏みにじり、親子の情すら無視して商品、資産として管理、売買する。これを法的に認められている世界にもし自分が生まれ、白人として彼らの生殺与奪の権利を有しているとしたら、高潔に生き抜ける人がどれだけいるでしょうか。 この滑稽な程汚い白人の資産家達を本当に笑う事が出来るのか、自分自身の胸に手を当てても確たる答えは出ません。 親から奴隷を相続したとして、彼らに温かく接することは可能だし、そう悪い持ち主にはならない自信はあります。しかし彼らを自ら解放するとは自分自身思えません。 時代と境遇、教育など色々な事が足されて人格が形成されるので、その時代の思考を超える思考を出来る人が時代を変えていくのでしょう。 その時代に生きていた人が特別残忍だったり冷たかったりする訳ではなく、あくまで状況によるものだと思います。 閑話休題 この本は出版から120年程見向きのされず。こんなに理路整然とした文章を奴隷女性が書ける訳が無い。白人の創作だと言われていました。 そして後年の研究で、実在の元奴隷女性が書いた事が認められたそうです。 この本は皆に読んで欲しいし、今でも差別的な言動を繰り返している人たちがいかに滑稽かを客観視する為に必要なものだと思います。 混乱している世の中だからこそ、国や人種や性別それ以外無数に存在する属性を認め合う第一歩として、過去の愚行に目を向ける事が重要だと思います。 何故かといえば、今現在の自分の姿が100年後の人々に当然と映るかは分からないからです。それを想像するには過去と現在と未来を冷静に見つめる心が必要だと思うからです。これこそがエンパシー(共感)というやつではないでしょうか。
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内容も衝撃的だが本作が歴史の中に埋もれてしまっていた時代背景、ラベリングに嫌悪感...。しかし、同時代に生きていたら同じように思えるのか、甚だ疑問。法律だから、制度だから、決まりだから...。無自覚に、無関心を装っているかもしれない。忘れた頃に読み返す本になりそうだ。 「鞭で打た...
内容も衝撃的だが本作が歴史の中に埋もれてしまっていた時代背景、ラベリングに嫌悪感...。しかし、同時代に生きていたら同じように思えるのか、甚だ疑問。法律だから、制度だから、決まりだから...。無自覚に、無関心を装っているかもしれない。忘れた頃に読み返す本になりそうだ。 「鞭で打たれる痛みには耐えられる。でも人間を鞭で打つという考えには耐えられない」
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人権が法律で守られていることが、どれほど大切なことか痛感出来る本 途中何度も、この本がノンフィクションであることを思い出さないといけないほど苛酷な話。 人権教育にこの本が使われるようになると良いと思う。 世の中で広くこの本が読まれることを願います。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
購入済み 読了 内容(「BOOK」データベースより) 好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。 130年後のベストセラー。 発売時に売れていたらどれだけ作者の助けになっただろうに。 この時代、所有者が奴隷をレイプできなくなっていたのには正直驚いた。 この逃亡劇は作者の精神力の強さの賜物。 奴隷解放を経験できたことは嬉しく思う。 ただ別の白人の愛人になる、っていうのがよくわかんない思考回路ではあるけれど、好きでもない男の子供を産む決断とは、想像がつかない精神状態だったと思う。 差別は、ある。 その気持ちと折り合う方法なり、知識は必要なんだと思う。 根底にあるキリスト教が支えになっていたのも印象的な作品でした。 Incidents in the life of a slave girl by Harriet Ann Jacobs
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奴隷制の過酷な環境を生きた自伝。 いろいろと難しいのだろうが、肝心なところをはっきり書かない手法がわかりにくく、実際に言ったのかと思いきや『と言いたかった』などの表現に?となることが多かった。
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つい150年ほど前にアメリカで行われていた非常な歴史、奴隷制度。国がオフィシャルに黒人を奴隷として堂々と扱えること。彼らにとっては、生きるも死ぬのも同じ死を意味するような生活だったことだろう。アメリカでは、もちろんすべての生徒にこうした奴隷制度を教えているわけである。今後このよう...
つい150年ほど前にアメリカで行われていた非常な歴史、奴隷制度。国がオフィシャルに黒人を奴隷として堂々と扱えること。彼らにとっては、生きるも死ぬのも同じ死を意味するような生活だったことだろう。アメリカでは、もちろんすべての生徒にこうした奴隷制度を教えているわけである。今後このような人間を人間とも扱わぬようなことがあってはならない。だからこそ、アファーマティブアクションという制度をとって、人種やマイノリティに偏りがなくなるように国がサポートをしていく制度はとても良い案だと思う。(この制度を使って悪事を働く者もいるが…) 日本でもきちんと自国の歴史を正確に学ぶべきことである。私たち日本人が、どのようにしてアジア人を苦しめたか。日本は、西洋人(白人)を崇拝するかのように自動的に自分たちより上、アジア人や黒人は下と順位付けする。(知り合いが中国人のことを笑いながらチャイニーといっていてゾッとした。どう考えても差別的なネーミング)こんな考えは排除しないといけない。どんな人種だって、同じレベルであって同じように接することが当たり前だと言える社会でありたい。
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私は何も知りませんでした。奴隷制度がこれほどまでに過酷で辛い制度だったとは。この本の筆写は身を持って私に教えてくれたのです。人間はいくらでも傲慢で残忍になれることを。もし自分が少女のような立場なら、生きることをあきらめていたでしょう。そしてもし自分が奴隷を所有する立場なら、ここに...
私は何も知りませんでした。奴隷制度がこれほどまでに過酷で辛い制度だったとは。この本の筆写は身を持って私に教えてくれたのです。人間はいくらでも傲慢で残忍になれることを。もし自分が少女のような立場なら、生きることをあきらめていたでしょう。そしてもし自分が奴隷を所有する立場なら、ここに出てくるアメリカ人と同じように人を所有することに抵抗なく、朝から夜まで働かせ、財産として平気で売買してしまうのではと何度も考えさせられました。つらい話の救いは主人公リンダの決して負けない強い心です。まるでドラマのような展開に思わずひきこまれてしまいました。手に取って読んでよかった名作でした。
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150年以上前の黒人差別の過酷さを浮き彫りにする。アンネの日記同等、歴史的価値があるが人間の根本心理や行動についても考えられるし、物語としてもよくできており引き込まれた。白人の子供を宿すための交渉の部分がデリケートに描かれすぎておりそこに至る経緯や心情が曖昧で気になる。 発掘され...
150年以上前の黒人差別の過酷さを浮き彫りにする。アンネの日記同等、歴史的価値があるが人間の根本心理や行動についても考えられるし、物語としてもよくできており引き込まれた。白人の子供を宿すための交渉の部分がデリケートに描かれすぎておりそこに至る経緯や心情が曖昧で気になる。 発掘された本書はアメリカでベストセラーとなっているとのこと、とても良い傾向に思う。決して過去のことと片付けることができない、今もある様々な差別を改めて考える機運になることを祈りたい。
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壮絶過ぎてどんどん読んだ。リンダの強さももちろん素晴らしいけども、周囲の人々の温かさがすごい。言葉通り命がけの日々、私だったらさっさと折れてしまいそう。 それにしても、風と共に去りぬのあの感じは一体なんだったのか。南部の社会の閉塞感は共通しているけど、オハラの人の親切や親愛の情...
壮絶過ぎてどんどん読んだ。リンダの強さももちろん素晴らしいけども、周囲の人々の温かさがすごい。言葉通り命がけの日々、私だったらさっさと折れてしまいそう。 それにしても、風と共に去りぬのあの感じは一体なんだったのか。南部の社会の閉塞感は共通しているけど、オハラの人の親切や親愛の情は、奴隷からすると内心鼻白むものだったのか。そういえば、スカーレットはナチュラルに黒人を下に見てたっけな。 奴隷制度は所有者である人間にとっても悪だ、という言葉に深く頷いた。
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