ある奴隷少女に起こった出来事 の商品レビュー
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たいへんな作品です。 160年前のアメリカで実際にあった話。というか、奴隷だった少女による自伝。当時のアメリカでは、「奴隷の黒人」イコール、読み書きができるはずがない。自伝を書けるはずがない、奴隷の黒人は無知でバカだ。と思われていたので、これが本当の話だとはだれも思わなかった。物事を大げさに描いた、白人によるフィクションだと思われていた。 この「自伝」では、主人公のリンダは奴隷の身分ではあったが、知的で敬虔なクリスチャンである祖母の影響を受け、白人目線で言えば「奴隷らしからぬ」立ち居振る舞いをする特別な黒人だった。読み書きもでき、自己を見つめ、良く生きようと懸命に運命に立ち向かった。そして、奴隷制の悪を見抜いていた。憎むべき白人の「奴隷所有者」を前に、「奴隷制が人間をダメにしている」と考えていた。 彼女の数奇な運命。 執筆後、彼女の存命中にこの自伝が注目されることがなかったことが、非常に残念に思われる。 翻訳者のあとがきにも心を打たれる。 良い本に巡り合えました。
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19世紀の米国南部の奴隷だった著者が、持ち主の性的要求から逃れるために別の白人男性との子どもを産み、子どもと自分の自由を求めて逃亡、7年間の屋根裏での生活を経て北部の黒人自由州へと逃れる。その後も執拗な捜索の手を逃れ、周囲の理解ある人々の助けもあり、自由黒人の身分を手に入れる。 ...
19世紀の米国南部の奴隷だった著者が、持ち主の性的要求から逃れるために別の白人男性との子どもを産み、子どもと自分の自由を求めて逃亡、7年間の屋根裏での生活を経て北部の黒人自由州へと逃れる。その後も執拗な捜索の手を逃れ、周囲の理解ある人々の助けもあり、自由黒人の身分を手に入れる。 長い間創作であると思われていた本書が、20世紀も終わりになって様々な事実が裏付けされ、米国で古典のベストセラーになったという。訳者がキンドルで偶然見つけた原書に感動し、初めて訳したという。 いろいろな意味深い作品だった。
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奴隷少女の体験がここまで鮮明に残っていることはすごいびっくりした。世界史で表面的に奴隷制は知っていたが、この本を読むことで、奴隷制がどのように人々に影響を与えていたかがよくわかった。こんな本が残っていたことが本当にすごい。
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悪に対峙する気高さ、愛する存在を守る一心で全てを犠牲にして賭す強さ、罪悪の根源を俯瞰する聡明さ。実話であることを信じたくないほど残虐だけど、後世に残されてこうして現代になって読めるようになってよかったと思う一冊。
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想像以上にひどくなかったり酷かったり…という感想でした。よくあるレディース漫画にあるみたいな、いきなりレイプされまくったり、拷問されまくったりみたいなことはなかったけど、やはり『人権』はないなと思った。あくまで『財産』として大事にされている感じ。主人公やおばあさんたちが、キリスト...
想像以上にひどくなかったり酷かったり…という感想でした。よくあるレディース漫画にあるみたいな、いきなりレイプされまくったり、拷問されまくったりみたいなことはなかったけど、やはり『人権』はないなと思った。あくまで『財産』として大事にされている感じ。主人公やおばあさんたちが、キリスト教をめっちゃ信仰してて驚いた。征服者の宗教だし、信仰しててもほぼいいことないで…と罰当たり?なことを考えながら読んでた。
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大学の課題図書で読んだ。アメリカ南部の奴隷制度がどのようなものだったかを1人の少女の実体験を通して学ぶ。子供が目を覚ました時、生きて良かったのか、死んだ方がこの子のためだったのではないかという母親の心境に強く胸を打たれた。
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奴隷少女として働かされた著者による自伝的ノンフィクション。白人医師の奴隷として性的虐待などを受けながら数十年育てられた、自らの苦しみの人生を語っている。自由を手にいれるため、祖母の家の狭い屋根裏に7年間も隠れ続けていたという事実には驚嘆した。非常に読みやすい訳で、彼女の息づかいが...
奴隷少女として働かされた著者による自伝的ノンフィクション。白人医師の奴隷として性的虐待などを受けながら数十年育てられた、自らの苦しみの人生を語っている。自由を手にいれるため、祖母の家の狭い屋根裏に7年間も隠れ続けていたという事実には驚嘆した。非常に読みやすい訳で、彼女の息づかいが聞こえてくるようである。本書では生々しい描写はあえて避けられているが、希望を捨てずに生き抜いた彼女の不屈の精神は、多くの人に希望を与えてくれるのではないだろうか。
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奴隷制は、黒人だけではなく、白人にとっても災いなのだ。それは白人の父親を残酷で好色にし、その息子を乱暴でみだらにし、それは娘を汚染し、妻をみじめにする。(p.84)
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・たまたま手にした本 ・「過去の制度」として自分の中にあったものが具体性を増した。近しいバイアスや視点は今にも通じる。自分自身にもないのか「人として」何を見てどうあるべきか、改めて振り返りたくなる。 ・彼女なりの闘いかた、制度や社会に屈しない姿、それを支援する人々の存在、ありたい...
・たまたま手にした本 ・「過去の制度」として自分の中にあったものが具体性を増した。近しいバイアスや視点は今にも通じる。自分自身にもないのか「人として」何を見てどうあるべきか、改めて振り返りたくなる。 ・彼女なりの闘いかた、制度や社会に屈しない姿、それを支援する人々の存在、ありたい形を思い描き貫く強さを感じた。
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奴隷として生を受けた女性のノンフィクション小説。 奴隷主による肉体的・精神的な虐待。現実逃避の一手段としての妊娠などなど。彼女の手記として主観的に描かれており、そのため、リアルだった。 白人を信頼できない描写などありありとしていた。 ただ、少し叙述的には読みにくいところは少しあった。 奴隷主からの逃亡劇、屋根裏での7年間に北部への旅。成功し、このような物語を残してくれている幸運に感謝したいとは思う。 また、壮絶な物語として受け止めることはできたが、想像できない世界すぎて共感はできなかった。
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