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ある奴隷少女に起こった出来事 の商品レビュー

4.1

129件のお客様レビュー

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2024/09/15

 「奴隷」と聞いて何を思うか。  奴隷制は良くないと赤ん坊の頃から刷り込むように教えられて来た。子どもながら、人を暴力的に従えることは悪いことなんだな、と実にフワッとイメージしていた。だからこそなのか、友人間では「お前は奴隷な」と冗談まじりに言い合いその言葉の重みを今日まで考えた...

 「奴隷」と聞いて何を思うか。  奴隷制は良くないと赤ん坊の頃から刷り込むように教えられて来た。子どもながら、人を暴力的に従えることは悪いことなんだな、と実にフワッとイメージしていた。だからこそなのか、友人間では「お前は奴隷な」と冗談まじりに言い合いその言葉の重みを今日まで考えたことはなかった気がする。  先日、少年十字軍について調べているときだった。この十字軍は最終的に奴隷商人に売り飛ばされる結末を辿るのだが、ふと「奴隷って一人あたりいくらなのだろうか」と考えてしまった。そこから妄想を膨らませていき、奴隷の暮らし扱われ方など知りたくなった。そして読まずに部屋の片隅に置きっぱなしにしていた本書を思い出した。  奴隷制の一番の問題点は、奴隷を実際にどう扱うかということよりも奴隷を所有物とみなしているところだと言う。いかに奴隷を人間的に扱おうが、「彼ら」を物とみなしている見方・考えそのものが悪だとするものだ。  この論理は本書を読めばピタリと当てはまることがわかると思う。けっきょく人間的な扱いがなされていたとしても主人から解放されない限り、「彼ら」が自由を感じることはできない。いつまでもその首に鉄の鎖が繋がれたままなのだ。  そしてこの「解放」という言葉は実に曖昧である。奴隷制における「解放」とはどのような意味合いを持つのか、それが表していることは何なのか。本書を読み実際に感じとっていただきたい。  「奴隷」という言葉があまりにも浸透しすぎて、その言葉の重みが蔑ろにされている。y=ax +bと言えば一次関数の方程式とわかるが、その内容を理解している人はどれくらいいるだろうか。それと同じで、奴隷制=悪と短絡的に考える習慣が、奴隷という言葉を形骸化させているのではなかろうか。奴隷制は非人道的な行いだと刷り込む教育の在り方は否定せずとは言え、もう少し生徒に考えさせる授業であっても良いのではないか。  頭から何かを否定する習慣は必ず身の破滅を招く。奴隷制の知っていること知らないこと、それらを整理した上で何が最も許されざる部分なのかを考える。それができるようになれば、奴隷制を超えた真に多様な社会を受容することができるように思う。

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2024/08/03

奴隷制度が悪なのは明白だが、奴隷制度の廃止にも戦争が必要だったことを考えると、社会ってそうそう変えられないのかね。。。

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2024/07/28

フィクションを読んでいるような気持ちになるほど、壮絶で波乱に満ちた内容だった。 奴隷制の実態と「自分の人生を生きるとはどういうことか」を見せてくれた著者に感謝したい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 読者よ、わたしの物語は自由で終わる。 絶対に屈しない。自由を勝ち取るまで...

フィクションを読んでいるような気持ちになるほど、壮絶で波乱に満ちた内容だった。 奴隷制の実態と「自分の人生を生きるとはどういうことか」を見せてくれた著者に感謝したい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 読者よ、わたしの物語は自由で終わる。 絶対に屈しない。自由を勝ち取るまでは――残酷な運命に立ち向かった少女の魂の記録。人間の残虐性と不屈の勇気を描く奇跡の実話!

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2024/06/13

アメリカが奴隷制度を廃止する前、南部アメリカで奴隷として生まれた少女の半生の実話。本人が北部に逃亡し、晴れて自由の身になったのちに自身で実話として出版したが、文章力の高さから白人が実話の体で書いたフィクションとしてあつかわれ、100年以上の時を経て実話と証明された数奇な本。 筆...

アメリカが奴隷制度を廃止する前、南部アメリカで奴隷として生まれた少女の半生の実話。本人が北部に逃亡し、晴れて自由の身になったのちに自身で実話として出版したが、文章力の高さから白人が実話の体で書いたフィクションとしてあつかわれ、100年以上の時を経て実話と証明された数奇な本。 筆者の人生も数奇で壮絶。 美しい筆者は主人一家の主人に貞操を狙われ続け、執拗な嫌がらせを受ける。筆者が選んだ自分を守る道は、自分を支援してくれそうな別の白人男性の子供を身籠ること。二人の子を産んだ筆者は、子供をいずれ自由の身にするために自身の逃亡という道を選ぶ。しかし主人の筆者に対する執着はすざまじく、主人が亡くなるまで筆者はその影に怯え、悩まされ、戦い続けることとなる。 逃亡生活の最初の7年間は、自由黒人である祖母の家の屋根裏にてすごす。 立つこともできず、筆者があけた覗き穴以外に光が入らない、暑さも寒さも過酷で雨すらしのげないその空間で、体はボロボロになってそれでも耐え続ける。その家で暮らす自分の子供にすら自身の存在を気取られてはならない、いつ終わるともわからない逃亡生活。 7年ののち、仲間の采配により北部に渡船で逃亡し、その後は出会う人に恵まれて自分と子供2人の自由を勝ち取る。 白人の都合で自身や大切な家族の運命はいつでも一瞬で暗転する可能性に脅かされ続ける人生を強いられ続けた半生。実際に奴隷として一生を終える人たちは一生それが続き、そういう人たちがその時代、何人いたのだろう。 筆者はその中で冷静に自身と子供のためにその時できる最善と思われる選択をとり続ける。とても勇気があり、冷静で、聡く、家族思いで希望を捨てない筆者の半生は、創作と言われても仕方がないほどのインパクトがあった。 また、筆者が伝えた、奴隷制度は白人も不幸にする、という考えが印象的だった。 私もその時代の白人として生まれていたら、黒人を人として扱わないような人間にきっとなっていたのだろう。夫が黒人奴隷と子供を次々作っていく事実に心を削られ、黒人女性に嫉妬し嫌がらせしその人たちを殺めていたかもしれない。

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2024/05/24

『鞭で打たれる痛みには耐えられる。でも人間を鞭で打つという考えには耐えられない』という箇所が印象的だった。 初めて読む奴隷についての書物。だが考え直してみると、奴隷で読み書きができる人は少数だから、もしかしたら真っ当なのかもしれない。 思っていたよりもずっと酷く、むごい。奴隷主に...

『鞭で打たれる痛みには耐えられる。でも人間を鞭で打つという考えには耐えられない』という箇所が印象的だった。 初めて読む奴隷についての書物。だが考え直してみると、奴隷で読み書きができる人は少数だから、もしかしたら真っ当なのかもしれない。 思っていたよりもずっと酷く、むごい。奴隷主によって奴隷への接し方、扱い方は様々だが、どのような思想、社会背景の中でも、良いことと悪いことの判断がつく教養のある人でありたいと改めて思った。 人を売り買いし、「所有する」のは今では不思議な感覚だが、それが当たり前だった時代があるのが恐ろしい。 弱者が卑怯なことをしても、他に責められる人はいない、いたとしてもその状況を許容し生み出している社会のシステムが悪い。抑圧された側の狡猾さは、それが暴君に対して持てる唯一の武器だという箇所が、印象的だった。この見方はなかった。

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2024/03/26

この本との出会いは、ほんの偶然、時間をつぶすためだったという訳者の堀越ゆき氏同様、私も、実家のある田舎の小さな小さな書店で、時間つぶしのために手に取ったことだった。 翻訳本、それも北欧ミステリー好きなのに、その書店にはそれの類が無く、仕方なく、、、期待もなく、、、海外コーナーわず...

この本との出会いは、ほんの偶然、時間をつぶすためだったという訳者の堀越ゆき氏同様、私も、実家のある田舎の小さな小さな書店で、時間つぶしのために手に取ったことだった。 翻訳本、それも北欧ミステリー好きなのに、その書店にはそれの類が無く、仕方なく、、、期待もなく、、、海外コーナーわずか十数冊の中から選んだ一冊だった。 しかし、読み出したら止まらず一気読み。 作家でもない一人の奴隷少女によって書かれた彼女の過酷な実体験を綴った本作は、アメリカの古典名作ベストセラー・ランキングで上位というから納得である。 自由を得るために、彼女が選び自らに課した運命は、あまりにも悲痛なものであり、その痛みは想像を絶する。 最後に訳者によって語られる彼女の身内のその後には、言葉も失ってしまった。 彼女自身が持つ崇高な魂と、恵まれた有難い人々との出会いによって培われていく才気によって、過酷な運命を自ら切り開いていく彼女の強さから、生き方を学べたことは、この本を世に送り出してくださった歴史学者のイエリン教授や訳者の堀越氏に感謝しかない。 彼女が手にしようとした差別からの解放のための運動に対して、現在のアメリカの大学、航空業界、医療業界においては何%かの割合で黒人を受け入れることが義務付けられている。それは果たして、彼女が望んだ解放なのか?平等なのか? 彼女の自由を買い取るつもりでいる心優しい夫人の行為に対して、彼女は「自分の心が啓発されていくに従い、自分自身を財産の一部だとみなすことは、ますます困難になっていた。自分を痛ましく虐げた人々に金を払うことは、これまでの苦しみから、勝利の栄光を奪いとることのように思えた。」と考える。現代においては、有色人種であれ、女性であれ、各自の努力の上に手にしたものを最上で尊いと受け止めていくことが、彼女の生き方に近い気がした。優遇は、彼女の求めた平等や解放ではないはずだ。 彼女の如き、気高い精神を持ち、常に努力を怠らず、自己を磨いていきたい、と思えた。 私にとって、時間つぶしが珠玉の一冊となった。

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2024/02/16

アメリカのかつての奴隷制度の、人を人として扱わない惨さ。ノンフィクションであることが怖いくらい。 体を伸ばすこともできない屋根裏部屋で7年間、死と隣り合わせで隠れて生活をしたり、北部に無事逃げてからも”持ち主”であるドクターフリントの追手から逃げながら生活をしたり、、 その中で...

アメリカのかつての奴隷制度の、人を人として扱わない惨さ。ノンフィクションであることが怖いくらい。 体を伸ばすこともできない屋根裏部屋で7年間、死と隣り合わせで隠れて生活をしたり、北部に無事逃げてからも”持ち主”であるドクターフリントの追手から逃げながら生活をしたり、、 その中でも生きることを諦めずに、また多くの人と助け合いながら自由を獲得する姿はかっこいいと思った。

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2024/01/21

奴隷制のあったアメリカで実際に奴隷として虐げられた黒人女性の手記。淡々と語られる奴隷所有者の仕打ち、また、南部州だけでなく北部州にもある社会全体の差別意識に心が痛めつけられる。奴隷という身分で産まれる中でも、男性以上に女性が人生で抱える不幸が大きいという主張は奴隷制度のない現代社...

奴隷制のあったアメリカで実際に奴隷として虐げられた黒人女性の手記。淡々と語られる奴隷所有者の仕打ち、また、南部州だけでなく北部州にもある社会全体の差別意識に心が痛めつけられる。奴隷という身分で産まれる中でも、男性以上に女性が人生で抱える不幸が大きいという主張は奴隷制度のない現代社会にも通じるところか。

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2024/01/07

感想 当たり前に尊厳はない。何も起こらない。今日も明日も希望はない。絶望もできない。淡々と繰り広げられる地獄。今はもうなくなったのか。

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2024/01/04

奴隷制について無知だったのが微知ぐらいになった気がする。今まで奴隷船の中の不清潔さとか、鞭ちのさとかばかり旨がいってたけど、この本は鞭打ちみたいな体罰的な苦痛よりも言葉とか女性ならではの苦痛が大きくて奴隷制の本当の闇の部分を見たように感じた。 、読んでると勝手にフ ィクションだと...

奴隷制について無知だったのが微知ぐらいになった気がする。今まで奴隷船の中の不清潔さとか、鞭ちのさとかばかり旨がいってたけど、この本は鞭打ちみたいな体罰的な苦痛よりも言葉とか女性ならではの苦痛が大きくて奴隷制の本当の闇の部分を見たように感じた。 、読んでると勝手にフ ィクションだと思ってるけど、、ふとこれが本当の話だったと思い出してその度にこの作品の重要さを痛感した。多分、これはほんの一部だろうから もっと奴隷制について知識を深めたくなった

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