デンジャラス の商品レビュー
細雪、読んでみたくなった。 舞台で演劇をやっていた印象があるけどこんなドロドロした女達の話しとは全く想像してなかった。まさに題名どおりデンジャラス。
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タイトルと作者に惹かれて読み始めたら、なんと谷崎潤一郎の王国に暮らす女性たちの話。しかし興味深く読めた。細雪を読んでみたい。
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谷崎潤一郎の3番目の妻・松子の妹で、「細雪」の雪子のモデルと言われる重子を主人公に、晩年の谷崎と周囲の女性たちを描いた小説。松子、重子に加えて、松子の連れ子で重子の養子となった清一の嫁、千萬子の3人の女性が主要な登場人物。千萬子は、最晩年の谷崎潤一郎が愛した女性と言われ、「瘋癲老人日記」に颯子として登場する女性のモデルと言われている。また、谷崎と千萬子は、大量の手紙のやり取りをしていたが、それらは、「谷崎潤一郎=渡辺千萬子 往復書簡」として出版されている。 本作品「デンジャラス」に登場する主要人物は、上記の女性たちを含め実在の人物であり、また、小説の中の出来事も実際に起こったことをなぞっているようであるが、物語としては、完全に桐野夏生の創作したフィクションである。 本小説のクライマックスは、物語の最後に、重子が谷崎潤一郎に対して、千萬子との関係で意見をする場面である。この場面のあと、谷崎潤一郎は、千萬子に手紙を書くのをやめたとしている。その中で、 重子に千萬子との関係を責められた谷崎潤一郎は重子に土下座をし、重子は谷崎潤一郎を足で踏みつける。 【引用】 私は足袋を穿いた右足を、兄さんの左肩の上に置きました。兄さんがぴくりとして身じろぎします。 「なら、千萬子はどないするんや」 足先に力を籠めます。兄さんの肩は固くて岩のよう。 「千萬子とはもう二度と会わないようにいたします。明後日、千萬子が東京に来たら、私は会わずに熱海に帰ります。どうぞ私を信じて、お許しください」 【引用終わり】 松子・重子は谷崎潤一郎よりも、かなり年下とは言え、既に五十代。千萬子は二人の子供の世代であり、まだ若い。かつて、松子・重子をモデルに谷崎潤一郎は小説を書いたとされている。それを、松子・重子は、自分たちは谷崎潤一郎に愛されていたのだ、少なくとも谷崎潤一郎の関心の中心にいたのだと解釈する。ところが、谷崎潤一郎の関心は、千萬子に移り、毎日のように手紙をやり取りし、また、彼女のために京都に新しく家を建てたばかりか、自らと彼女の関係をテーマにした「瘋癲老人日記」という小説を書く。その愛情と関心が、松子・重子から千萬子に移ったまま谷崎潤一郎は亡くなったと世間一般には解釈されているようだが、実は、谷崎潤一郎の心の中にいたのは重子であったと桐野夏生は解釈して、それを小説にしたのが、この作品だ。この解釈が、桐野夏生の創作したフィクションである。 「瘋癲老人日記」の中で、谷崎潤一郎がモデルとなっていると解釈されている「卯木老人」は、千萬子がモデルの嫁の「颯子」の美しい足に惚れ込んで、その足の指をしゃぶらせて貰うシーンがある。上記の、重子が土下座をした谷崎潤一郎を足蹴にする場面は、もちろん、そのシーンを意識して描かれた場面であろう。 しかし、この場面も小説全体の中に位置づけると、唐突な印象をまぬがれない。この場面の前まで、重子が谷崎潤一郎を足蹴にしたことはないことはもちろん、引用場面のような、ぞんざいな口のききかたをしたこともない。しかし実際には、谷崎潤一郎は重子に足蹴にされることを心待ちにしていたし、重子も谷崎潤一郎を支配することを望んでいたのだろう。そのような潜在的な欲望が、この場面として描かれ、千萬子よりも重子を谷崎潤一郎は欲望していたという解釈なのだろう。 私自身は、実は谷崎潤一郎の小説を読んだことはなく、松子・重子・千萬子という谷崎潤一郎を囲む女性たちのことも全く知らなかった。しかし、そういったことを知らなくても、この小説は全く問題なく読める。 小説の中で、桐野夏生は重子に、「瘋癲老人日記」の嫁の足を卯木老人がしゃぶる場面を、「私は"老人の性"とは、かくも妖しいものだったのか、と驚きを覚えたのです。」と語らせているが、上記の引用場面で、重子もその妖しさにつかまってしまったということなのかもしれない。
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谷崎潤一郎を主人とする一家の中で妻の妹がヒロインで谷崎の創作意欲を掻き立てるミューズの役割をしていた経緯を描く。細雪、鍵での裏話やヒロインから養子の妻へのミューズの世代交代の危機感から谷崎の晩年の作品群の裏話が知れて興味深い。
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谷崎潤一郎も、「細雪」も未知の世界でしたが面白く読みました。 当時の女中さんがいる文豪一家の暮らしぶりなども興味深く読めましたし、おそらく、原本より、私には読みやすかったので、得した気持になりました。
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昭和の大文豪・谷崎潤一郎をとりまく親族の人々の人間模様を描き切った本作。 狭い世界ながら、小説のモデルになる事で世間と繋がり、その中で自分の生きる精神的支柱を守りながら過ごしていく様がとても力強かった。 心に残った一文。 『千萬子が二十一歳という若さでありながら、すでに心を整え...
昭和の大文豪・谷崎潤一郎をとりまく親族の人々の人間模様を描き切った本作。 狭い世界ながら、小説のモデルになる事で世間と繋がり、その中で自分の生きる精神的支柱を守りながら過ごしていく様がとても力強かった。 心に残った一文。 『千萬子が二十一歳という若さでありながら、すでに心を整える術を知っていた』というくだり。 余談だが、この千萬子さんが2019年までご存命だったということに、改めて驚いた。
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谷崎の周りの女性たちが主人公。誰もが、谷崎に感情を乱され翻弄されながら、谷崎の一部になっているところがおもしろい。
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何かの書評番組で谷崎潤一郎の「細雪」の続編的作品だと知って、映画やTVドラマで見てきたので興味が湧き読んでみた。確かに「細雪」の続編とも言える実録谷崎潤一郎一家とも言える作品であるが、これもまた著者の一方的分析のみであり今は亡き谷崎に反論のしようもない、その辺は昨今の三流週刊誌の...
何かの書評番組で谷崎潤一郎の「細雪」の続編的作品だと知って、映画やTVドラマで見てきたので興味が湧き読んでみた。確かに「細雪」の続編とも言える実録谷崎潤一郎一家とも言える作品であるが、これもまた著者の一方的分析のみであり今は亡き谷崎に反論のしようもない、その辺は昨今の三流週刊誌のゴシップ記事のようで、下世話な一般大衆には受けそうである。この頃の日本作家と言えば私小説ばかりで面白みに欠けるものばかりになって、文学の衰退が感じられたが、やっと最近になって文学にも多様性が出てきて世界にも御せるようになった。
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*君臨する男。寵愛される女たち。文豪が築き上げた理想の“家族帝国”と、そこで繰り広げられる妖しい四角関係―日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる* 谷崎潤一郎作品を読み込んでいたなら、きっと興味深いお話なんだろうと思う。こういう時代が谷崎作品を生んだのですね。
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谷崎潤一郎『細雪』その後譚でもあり、モデル問題のようでもあり、小説とは何かをひも解いていくのでもある、のがこの小説です。 語り手、主人公「重子」が『細雪』の3女「雪子」であると明かされるところから始まります。あのたおやかで楚々としているのに、芯の強そうなところが見える美人。神...
谷崎潤一郎『細雪』その後譚でもあり、モデル問題のようでもあり、小説とは何かをひも解いていくのでもある、のがこの小説です。 語り手、主人公「重子」が『細雪』の3女「雪子」であると明かされるところから始まります。あのたおやかで楚々としているのに、芯の強そうなところが見える美人。神秘的なのか、やはりうちを分け入ると自意識過剰なのか? 谷崎潤一郎という作家の老境・晩年(アラカンから七十代終わりで死ぬまで)の作家としての心境、書きざまを周りの女性から描いてもいます。 それにしても妻の妹、妻の連れ子の娘、妻の連れ子の息子の嫁、女性お手伝いさんが5~6名、と常に女性に囲まれて暮らす作家のその精力の旺盛さには並々ならぬものがあります。小説を書くために「ぎんぎらぎん」だったのか、もともと強いお人だったのか。周りの人々は危険性を感じながらも魅せられていくのはよほど個性的にすごい人だったのでしょう。それともお作品の方だけがすごかったのでしょうか。 桐野夏生さんの文章は相変わらずそつのないものでわたしにとっては読みやすいのでございました。
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