デンジャラス の商品レビュー
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日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。 その文豪の創作の源は彼の築き上げる「家族帝国」の女たちであった。3人目の妻―松子、その妹重子、そして重子の嫁―千萬子。 その女たちは彼の創作活動の源でありながらも、彼の個性と生き様に翻弄され、四角関係のなかで喘ぎ、悦び、落胆するという煩悩の炎を燃やし続けてゆく。 谷崎の生涯については教科書レベルでの知識しかなかったが、今回、桐野の描き切る谷崎の「家庭帝国」での谷崎の生き様に驚嘆するとともに、重子を通して女の怖さ恐ろしさを見せつけられるが、重子はまた魅力的でもあった。 (内容紹介)から 君臨する男。 寵愛される女たち。 「重ちゃん、ずっと一緒にいてください。死ぬときも一緒です。僕はあなたが好きです。あなたのためには、すべてを擲つ覚悟があります」兄さんはそのまま書斎の方に向かって歩いて行ってしまわれました。 その背中を見送っていた私は思わず目を背けたのです。これ以上、眺めていてはいけない。 そう自戒したのです。(本書より抜粋) 文豪が築き上げた理想の〈家族帝国〉と、そこで繰り広げられる妖しい四角関係―― 日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。 人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる。
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「細雪」の雪子のモデルと言われる谷崎潤一郎の妻松子の妹重子の目から見た谷崎と彼を取り巻く女達のどろどろした,なまぐさい心模様.物語と現実の人間関係が交差し虚構が実生活を侵食する.面白い.
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谷崎潤一郎の私生活と作品がリンクしているってことは聞いていたけれどここまで?どこまでがフィクションなのか史実なのか。桐野さんの技で味わい深くのめり込む。一気読み。 「細雪」の登場人物に重ね合わせより一層楽しめる。谷崎潤一郎本人の気持ちの行き場が不明なのがまた高評価ポイント。知らないままでいた方が良い場合もあるので。 未読の谷崎作品もますます気になるところ。
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谷崎潤一郎と彼を取り巻く女たちを描く1冊。妻、妹、息子の嫁など谷崎潤一郎が本当に愛していた女は誰なのかを軸に谷崎を巡る女たちの嫉妬、優越感、嫌悪感、そして空しさを作者ならではの女性の描き方でじっくり(と言うかじっとり)見せている。「細雪」のモデルにもなっている女性たちだけに再度「...
谷崎潤一郎と彼を取り巻く女たちを描く1冊。妻、妹、息子の嫁など谷崎潤一郎が本当に愛していた女は誰なのかを軸に谷崎を巡る女たちの嫉妬、優越感、嫌悪感、そして空しさを作者ならではの女性の描き方でじっくり(と言うかじっとり)見せている。「細雪」のモデルにもなっている女性たちだけに再度「細雪」を読むとまたひと味違った谷崎作品になるかもしれない。
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おもしろかった!今まで谷崎潤一郎の本は1冊も読んだことがなく、武者小路実篤とごっちゃになっていて、なんの興味も持てずにいたけれど、早速「細雪」を読んでみたい。その前に千萬子さんとの往復書簡集も。
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谷崎潤一郎の代表作「細雪」に登場する三女・雪子のモデルとなった信子の視点から描かれた物語。 谷崎作品は、本で読んだと言うより、映像で子供の頃、観た印象。もちろん「細雪」も…華麗に描かれていた4姉妹の実状を思い知らされたようで、あまり読後感は良くない。 戦前、戦時中、そして戦後を生...
谷崎潤一郎の代表作「細雪」に登場する三女・雪子のモデルとなった信子の視点から描かれた物語。 谷崎作品は、本で読んだと言うより、映像で子供の頃、観た印象。もちろん「細雪」も…華麗に描かれていた4姉妹の実状を思い知らされたようで、あまり読後感は良くない。 戦前、戦時中、そして戦後を生き抜いた人たちの物語を戦後生まれの自分が理解出来るはずもなく、終始、女の小さな嫉妬が描かれる部分は目を背けたくなる部分も。 嫉妬を描いたら上手い作家さんとは、うまく噛み合ってた作品だと思う。
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谷崎潤一郎。。。 普通ではないとは思っていましたが、こんな背景があったんですね。 思春期のころドキドキしながら読んだ「痴人の愛」。 再読しよかな。 でもね、あらためて桐野さんの重さと暗さは天下一品。 また、タイトルも絶妙で私には絶対につけられない・・・
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本書に名前の挙がっている谷崎の作品は「細雪」以外全部読んでて、「細雪」読んでない私が言うのも烏滸がましいですが、谷崎作品よりゾワッとしました。小説の中にしか生きられない人々、小説に書かれたことが現実になってしまう人生、そのことに一喜一憂しながら抗えない人々。ミステリー小説の趣もあ...
本書に名前の挙がっている谷崎の作品は「細雪」以外全部読んでて、「細雪」読んでない私が言うのも烏滸がましいですが、谷崎作品よりゾワッとしました。小説の中にしか生きられない人々、小説に書かれたことが現実になってしまう人生、そのことに一喜一憂しながら抗えない人々。ミステリー小説の趣もあります。 重子が谷崎の肩に足を置き引導を渡すシーン、描写といい、会話といい、最高にゾクゾクしました。「痴人の愛」も真っ青。 桐野さんて本当に多彩で近著は円熟味も増して、読みやすいのにすごく深く、ずっしりとした読後で圧倒されます。是非ノンフィクションも書いて貰いたいです。
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君臨する男。寵愛される女たち――。谷崎潤一郎が晩年に作り上げた理想の〈家族帝国〉で繰り広げられる妖しい四角関係の行く末とは? 桐野夏生が、日本文学史上最も危険で貪欲な文豪の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる!
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