冬虫夏草 の商品レビュー
「家守綺譚」の後日談にあたる本作は道行に出会う方々との交流にほのぼのしました。地図を開きつつ今いるのはこのあたりかと愉しんだという朋友に倣い、電子辞書を手に植物や語彙の意味を調べながら読んだので時間こそかかりましたがとても楽しい読書となりました。
Posted by
他では味わえない面白さ。じわじわと染み入る趣。こういう作品はとても好きです。もっと読みたい。 会話の言葉遣いもすっと耳に入ってくる。
Posted by
『家守奇譚』の続編です。前作では家の周りしか動いていなかった征四郎が、今度は愛犬ゴローを探しに鈴鹿の山の奥まで散策します。 途中宿泊した旅館や民間の人々との交流、河童やムジナやイワナが人間の姿でまことしやかに人の間に紛れている不思議な世界、何度も読み返してしまいたくなる。
Posted by
「家守綺譚」を読んだのは随分前なので、遠い記憶を探り探り… 河童や天狗、イワナなんかの人間世界への溶け込み方が、あまりにも自然なので、現実にもそういう人でないものが混ざって生活しているのではないかと錯覚してしまう。
Posted by
家守綺譚の登場人物や世界観は残しながらも、今回は紀行文のような趣き。 南方熊楠がヒントかな、と思われる人もチラリ登場。 地方の伝承や自然に囲まれた人々の暮らしぶり。 思っていたのと少し違って感じたのは、そのための説明部分の多さのせいもあるのかもしれない。 それらと関わりながら、や...
家守綺譚の登場人物や世界観は残しながらも、今回は紀行文のような趣き。 南方熊楠がヒントかな、と思われる人もチラリ登場。 地方の伝承や自然に囲まれた人々の暮らしぶり。 思っていたのと少し違って感じたのは、そのための説明部分の多さのせいもあるのかもしれない。 それらと関わりながら、やはりペースは綿貫征四郎。 悲哀やちょっとした不気味な予感を味わいながらも、いかにも彼らしい旅だった。
Posted by
解説を読んで ーなるほど と思った。 前作の「家守綺譚」を読んでいる時も、本作も特にハラハラドキドキがあるわけではないのに、読み進めてしまう心地良さは何だろう?と思っていた。 綿貫さん、そしてその周りの方々、現時点の現実で生活をされていたとしたら ー自分ワールド持ち過ぎ...
解説を読んで ーなるほど と思った。 前作の「家守綺譚」を読んでいる時も、本作も特にハラハラドキドキがあるわけではないのに、読み進めてしまう心地良さは何だろう?と思っていた。 綿貫さん、そしてその周りの方々、現時点の現実で生活をされていたとしたら ー自分ワールド持ち過ぎの方々だよなぁ と遠巻きにしてしまいそうだ。 でも、現実を生きながら世界の狭間?隙間?を感じて生きて行ける彼らが羨ましい私は、前作も本作も心地よくさせてもらったのだろうなぁ。 植物図鑑が欲しくなりました。
Posted by
梨木果歩はいくつか読んだけれど、やはりこの綿貫の話が一番好き。家守奇譚を読んでからいったい何年たっているのか。家守奇譚が高堂の家を中心にした話だったのに対し、こちらは綿貫が犬のゴローを探して旅に出る編。相変わらず龍だとか河童だとかがさらりと出てきて、ちょっと古めかしい文章も合わせ...
梨木果歩はいくつか読んだけれど、やはりこの綿貫の話が一番好き。家守奇譚を読んでからいったい何年たっているのか。家守奇譚が高堂の家を中心にした話だったのに対し、こちらは綿貫が犬のゴローを探して旅に出る編。相変わらず龍だとか河童だとかがさらりと出てきて、ちょっと古めかしい文章も合わせて極上のファンタジー。各章の題名になっている植物も、知らない植物はどんなものかと調べながら読んで、楽しい。泉鏡花や漫画の蟲師なんかに通じる世界。 瀬田の唐橋と竜王の話で小泉八雲の「鮫人のなみだ」を、千種街道の部分で杉谷善住坊の信長暗殺失敗がちらっと出てきて大河ドラマの「黄金の日々」で川谷拓三が一躍有名になった時のことなどを思い出したりした。機会があればこの綿貫の歩いたところを歩いてみたい。
Posted by
『家守絢譚』の続編。 綿貫征四郎が、失踪した犬のゴローを探して、鈴鹿の山中に分け入る。 その道々で、人々と出会い、イワナの夫婦が営む宿屋の話やら、お産で亡くなった菊さんの話やら、不思議な話を聞いていく。 ゴローは龍神のために働いているようなことが分かっていくが、まだすべての謎が...
『家守絢譚』の続編。 綿貫征四郎が、失踪した犬のゴローを探して、鈴鹿の山中に分け入る。 その道々で、人々と出会い、イワナの夫婦が営む宿屋の話やら、お産で亡くなった菊さんの話やら、不思議な話を聞いていく。 ゴローは龍神のために働いているようなことが分かっていくが、まだすべての謎が明らかではない。 ということは、まだ続編がある? 龍神と聞くと、『しゅららぼん』を思い出すけれど、人と植物、動物の境をふわりと越えていくこの小説の雰囲気は独特。 むしろ泉鏡花の『高野聖』のような雰囲気を感じる。 土地のたたずまいや暮らしも感じられる。 地名はどれくらい架空のものなのだろう? 白州正子の『かくれ里』と並べて読んでも面白いかも。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
梨木さんの作品で一番好きなのが「家守綺譚」。次が「村田エフェンディ滞土録」です。もちろんこの作品も大好きになりました。 神やら幽霊やら妖怪までもが、すぐ隣にいる世界観。怖いわけでもなく日常に溶け込んでいます。 不思議なイワナの宿、いなくなったゴロー。気がついたら物語もだいぶ終わりに近づいていました。 とにかく感動的なゴローとの再会!ラブストーリーでもこんな感動的なシーンはないのでは?
Posted by
生半な人間よりもよほど人望(?)厚い忠犬ゴローが姿を消した。飼い主である綿貫は、ゴローを探し鈴鹿の山中へと分け入ってゆく。 綿貫を迎えたのは、山々を豊かに彩る秋の花実。そして赤竜の化身、天狗、宿を営むイワナの夫婦、河童の親子、産褥で死んだ若い女の幽霊……。 夢と現、現世と幽世と...
生半な人間よりもよほど人望(?)厚い忠犬ゴローが姿を消した。飼い主である綿貫は、ゴローを探し鈴鹿の山中へと分け入ってゆく。 綿貫を迎えたのは、山々を豊かに彩る秋の花実。そして赤竜の化身、天狗、宿を営むイワナの夫婦、河童の親子、産褥で死んだ若い女の幽霊……。 夢と現、現世と幽世との曖昧な境界線を、綿貫は越えたのか、そうでないのか。 神や妖怪、動物の化身、自然の精霊たちが当たり前に人間たちと混じり合い、自然の恵みをともに享受しながら生きる豊穣の世界の冒険譚。 亡き友・高堂の家を守る物書き・綿貫征四郎を主人公とした『家守綺譚』の続編。 ――(前略)そのときどき、生きる形状が変わっていくのは仕方がないこと。それはこういう閉ざされた村里に住む人びとでも同じことです。人は与えられた条件のなかで、自分の生を実現していくしかない。 夏と冬では生きる形が違う冬虫夏草になぞらえた、季節や時代、そして世界がかわるごとに姿を変えて変化してゆくものたちの、永遠の営みを豊かに描く『冬虫夏草』。読めば、静かで、豊かで、もう失われた世界が眼前によみがえる。 道道で綿貫が村人たちからふるまわれる食べ物がどれもこれも、質素、素朴そのものだが、いかにも滋味あふれて美味しそう。 村の人びとの生活のたつき、習慣、価値観。ああ、かつて日本とはこういう形であったのか、としみじみと、知らないのに不思議と懐かしい気持ちがわいてくる。 ところでこの舞台となった場所は、ゆくゆくはすべて水没する運命にあると高堂は言う。それはいったいどういう意味なのか。いつの時代に起こることなのか。 この、鄙びて豊かな世界が喪われる。不吉な予言を残して物語は終わる。 綿貫も、ゴローに「手に負えぬ煩いは放っておけ」と言う。 この物語に続きはあるのか、どうか。とても気になる。終わるのが、失われるのが名残惜しい一冊。 ところでゴロー、君はそこで何をしていたの?
Posted by