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服従 の商品レビュー

3.4

43件のお客様レビュー

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2017/12/20

これはただのSF小説ではない。個人・国家・自由といった概念がこれからどのような変貌を遂げるのか、ウェルベック独自の視点で読者に提示する傑作である。私の理解では、この作品のテーマは先進国における個人主義・自由主義の未来であると考える。重要なのは「服従」というタイトルで、多様性の中で...

これはただのSF小説ではない。個人・国家・自由といった概念がこれからどのような変貌を遂げるのか、ウェルベック独自の視点で読者に提示する傑作である。私の理解では、この作品のテーマは先進国における個人主義・自由主義の未来であると考える。重要なのは「服従」というタイトルで、多様性の中で自由を謳歌していた個人がその自由によって疲弊し自己を見失い、共同体的なしがらみに「服従」することで「自由疲れ」からの解放と生の実感を得るという筋書きになっている。 「フランスにイスラーム政権が誕生!」「社会をリードする知的エリートがイスラームに服従!」という設定はセンセーショナルだが、よく読むと服従する先は何もイスラームに限った話ではなく、それこそ伝統的なキリスト教でもよかったことがわかる。その証拠に、「中世キリスト教文明が1000年も続いたこと」が、「近代文明が高々200年しか続いていないこと」と対比して描かれ、「近代社会に対する中世キリスト教文明の偉大さ」が賞賛される場面が多くある。本書の主人公はキリスト教の聖地を訪れ心の平安を求めようとするが、上手くいかず修道院を後にする。ウェルベックが「服従先」としてあえてイスラームを設定したのは、人々の思想や行動に対する拘束力・人々が進んで身を委ねようとする求心力を、今のキリスト教に見出せなかったからに相違あるまい。 個人的に尊敬する佐藤優氏が解説を寄せているが、「イスラームによるヨーロパの統合がウェルベックの作業仮説であり、知的エリートはとかく権威に服従するものだ」という氏の見立てはどこか的が外れているように感じる。 私は、本書はヨーロッパ統合の問題ではなく個人の生きかたを問いかけているのだと考える。より正確に言うと、「このままでは本書のような社会がやってきますよ、読者の皆さんはそれでいいんですか?」といった感じだろうか。本書で描かれる世界がすべて現実のものとなるということはないとは思うが、本書を構成する様々な要素は現実社会に大きな影響を与えることとなる気がしてならない。

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2017/11/26

フランスにて極右政党とイスラム穏健派政党が首班を争うことになったら、 という設定のもとに、 大学で教授を務める主人公の姿が描かれる。 政治の動きを実名政治家も用いながら説明しており、 フランス人にとってはかなりリアリティの高い作品なのだろうと思わされる。 正直なところ、読後感は...

フランスにて極右政党とイスラム穏健派政党が首班を争うことになったら、 という設定のもとに、 大学で教授を務める主人公の姿が描かれる。 政治の動きを実名政治家も用いながら説明しており、 フランス人にとってはかなりリアリティの高い作品なのだろうと思わされる。 正直なところ、読後感はすっきりしない。 これが実際に起きる出来事なのか、 といわれるとかなり確率が低いのでは、とも思う。 しかし本題は、その政治・社会的な混乱の中、 「服従」を選択するエリート層に対する批判なのではないだろうか。 日本だとここまでの思考実験は難しいのだろうな、とも思う。 左だ右だという形式にとらわれて、 本質的な危機があることに気付けない。 申し訳ないが、エンタメ・純文学を望むのであればお勧めしない。 ヨーロッパ圏での危機感やイスラムに対する不安感を感じたい方に教養の本としてお勧めする。 フィクションながらもノンフィクションのように感じさせる、 なんとも言えない小説。

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2017/11/21

この小説のことはユイスマンスを読んでから考えよう。というわけでKindleで「さかしま」を。(17.11.20)

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2017/10/29

主人公の研究対象であるユイスマンスのことをわからないとわからないんだろうな。。。と読みながら思った。これまで読んできた「闘争領域の拡大」「プラットフォーム」「ある島の可能性」とはなんか違う感じ。消化不良。

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2017/09/25

単行本が出た時からかなり話題になっていたウエルベックの最新作が文庫化……といっても、4月のことなので、随分と時間が経っているw ついつい後回しになってしまった。 あらすじや社会情勢に対応させた話は色々なところでされているだろうから置いておくとして、終盤で『O嬢の物語』が象徴的に使...

単行本が出た時からかなり話題になっていたウエルベックの最新作が文庫化……といっても、4月のことなので、随分と時間が経っているw ついつい後回しになってしまった。 あらすじや社会情勢に対応させた話は色々なところでされているだろうから置いておくとして、終盤で『O嬢の物語』が象徴的に使われているところがとても印象に残った。

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2017/07/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ウェルベック・ミーツ・イスラム教。 フランス大統領選の話だけど、政治ネタは3割くらい。セックスと食事の話が楽しい。 宗教やユイスマンスの話は、よく分からないなりに楽しい。 最近「一夫多妻制って制度化されてないだけで日本も実質そんなもんじゃ?結局、所得が高いやつが愛人とか囲ってるわけで」 って事を知っちゃって、せちがらい。

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2017/06/18

フランスの政治状況について全然知識がないため、読むのが難しかったです。もっと知識があれば、もっとこの本の魅力を味わえるのだろうなと思います。 フランス大統領選挙で、国民戦線とイスラーム同胞党が決選投票に挑み、イスラーム同胞党が勝利します。イスラーム同胞党は、フランス人の子弟がイ...

フランスの政治状況について全然知識がないため、読むのが難しかったです。もっと知識があれば、もっとこの本の魅力を味わえるのだろうなと思います。 フランス大統領選挙で、国民戦線とイスラーム同胞党が決選投票に挑み、イスラーム同胞党が勝利します。イスラーム同胞党は、フランス人の子弟がイスラーム教の教育を受けられる可能性を持たなければならないとしています。イスラーム教育は男女共学はあり得ず、ほとんどの女性は初等教育を終えた時点で家政学校に進み、できるだけ早く結婚することが理想とされます。教師もイスラーム教徒でなければなりません。 そんな社会になっても、思っていたよりは反乱、暴動が描かれていないように思いました。もちろん銃撃戦があったり、人が殺されていたりする場面もあったのですが、想像していたよりも少なく、報道管制の恐ろしさも感じました。最終的に主人公もイスラーム教に改宗を決めてしまい、そうやってどんどんイスラーム教が受け入れられていくのも恐ろしくなりました。 主人公については、孤独な人、という印象を持ちました。その場その場で誰かと付き合ってはいても、誰かと深く関わることはないのではないかと思ってしまったからです。

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2017/07/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公に共感できない。イスラムが政権を取ってからの描写は、女性の身から読むと、恐ろしくなるほど不安な IF の世界が描かれているが、ある意味男性にとっては、これってもしかしてユートピアなのか?それとも、この結末は大学教授のような知的エリートの人々が、政治に関しても宗教に関しても、あまり関心が高くないことに対する皮肉なのだろうか?

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2017/06/14

書店にて「文庫になってる!」と手に取り、そのままレジ直行。 イスラム教にヨーロッパが支配されたらどうなるのか、という挑戦的な内容の小説だということをテレビで知り、興味を持っていました。 ある程度哲学、文学、政治への素養がないと厳しいかもしれません。でも新聞の海外欄を読み通せる...

書店にて「文庫になってる!」と手に取り、そのままレジ直行。 イスラム教にヨーロッパが支配されたらどうなるのか、という挑戦的な内容の小説だということをテレビで知り、興味を持っていました。 ある程度哲学、文学、政治への素養がないと厳しいかもしれません。でも新聞の海外欄を読み通せるくらいの知識があれば問題ないと思います。 あとフランス人の作家のせいか(それは偏見でしょうか)ベッドシーンが多用されています。特に前半は。 読んでるときはちょっとくどく(っていうか主人公何してるんだよと)思っていましたが、あとから考えると、ヨーロッパの生命力を欲望として表現していたのかもしれないとも思えます。 ラストに非常に前時代的な結論が受け入れられてしまう様子は、何が正しいのかわからなくなる、足元が落ちていくような感じがしました。 失業者増加、賃金低下、出生率低下はすべて、イスラム教に基づき、女性が必要以上の教育を受けないこと、仕事につかないこと、一夫多妻制とすることによって一発解決してしまうという。 複雑です。

Posted byブクログ

2017/05/25

だらだらごちゃごちゃゆってるな感はあるけど笑それも含めておもしろかった。何となくの村上春樹感ある。絶対的な幸福は服従にある。イスラーム世界は創造主による創世は完璧、称賛と法への服従。人間主義とインテリは弱く脆い。

Posted byブクログ