パレートの誤算 の商品レビュー
柚月裕子さんの作品ということで、内容をまったく知らずに手にした本。 ”パレート”って何だろうと思っていたのだが… 市役所の社会福祉課で新米ケースワーカーとして働く牧野聡美。 尊敬する先輩ケースワーカー山川が生活保護受給者宅の火災現場から遺体で発見された。 聡美はその謎に迫るのだ...
柚月裕子さんの作品ということで、内容をまったく知らずに手にした本。 ”パレート”って何だろうと思っていたのだが… 市役所の社会福祉課で新米ケースワーカーとして働く牧野聡美。 尊敬する先輩ケースワーカー山川が生活保護受給者宅の火災現場から遺体で発見された。 聡美はその謎に迫るのだが… 生活保護とうい重いテーマ。 読み応えがあった。 タイトルにもなっているパレートとは、パレートの法則のこと。 『パレートの法則』 イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した統計モデル。 80タイ20の法則とも呼ばれていて、ある分野における全体の8割を、全体の一部である約2割の要素が生み出しているというもの。たとえば、社会経済だったら、全体の2割程度の高額所得者が社会全体の8割の所得を占めるとか、マーケティングだったら、2割の商品が8割の売り上げを作るといわれている。 似たようなものに『働き蟻の法則』がある。 ありを使って実験したところ、ある一定数のよく働く蟻と、働かない蟻に分かれる、というデータが出た。そこで、働かない蟻を取り除き、働く蟻だけにしてみた。勤勉な蟻だけにしてみると、そのなかの2割程度は、働かなくなる。 どちらの法則も知らなかったが、面白い!
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部下思いのベテランケースワーカー・山川が、殺された。なぜ、どうして、誰に... 本作は、生活保護受給を巡る社会派ミステリーです。 社会福祉課の所属になった新人の牧野 聡美(まきの さとみ)は、同僚の小野寺と、事件の謎を追う。 内部の妨害や様々な困難の中から見えてきたのは、...
部下思いのベテランケースワーカー・山川が、殺された。なぜ、どうして、誰に... 本作は、生活保護受給を巡る社会派ミステリーです。 社会福祉課の所属になった新人の牧野 聡美(まきの さとみ)は、同僚の小野寺と、事件の謎を追う。 内部の妨害や様々な困難の中から見えてきたのは、生活保護を巡る深い闇... いろいろ伏線はありましたが、後半の山場、牧野さんが、拉致され危機に陥った時、タッチの差で救いの手を差し伸べた若林刑事の登場に、ホッとしました。 (『孤狼の血』にも、通じるかも?) 最後、冊子にある女学生の投稿に、胸が熱くなりました。 『将来、ケースワーカーになりたい。』 【追記】 表題にある「パレート」の法則ですが、確かに、人間社会は、法則や数式で成り立っているものではないかも知れませんね...。
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生活保護費の不正受給や貧困ビジネスがテーマ。 幸いなことに私の身近にはない話で、いろんな意味で興味深い。 でも、普通の女性が死にそうな目にあっても、同じ仕事を続けられるものなのか。 まぁ、物語ですからね。
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生活保護係のケースワーカーを主人公にした、本格的な生活保護ミステリーである。映画「虎狼の血」が面白かったので読んだのであるが、舞台津川市は、明らかに広島県呉市をモデルにした映画(呉原市)と同じ場所と思われる。山陽方言圏の私としては、親しみのある内容(作者の出身は岩手県らしい)。 ...
生活保護係のケースワーカーを主人公にした、本格的な生活保護ミステリーである。映画「虎狼の血」が面白かったので読んだのであるが、舞台津川市は、明らかに広島県呉市をモデルにした映画(呉原市)と同じ場所と思われる。山陽方言圏の私としては、親しみのある内容(作者の出身は岩手県らしい)。 生活保護受給者の何人かを知っている私としては、興味あるテーマであり、どのように料理したのかを見守ったという感じ。結果は、大枠では正しいが、部分的には「この作者もそうか」とがっかりした、という感じ。 ミステリー部分は、大枠では予想通りに進んだので、ここでは述べない。テーマ部分について書く。書いても別に面白さは減少しないと思う。 最後にある登場人物が言う。 「たしかに生保のあり方には、問題が多い。不正受給やら貧困ビジネスが、あとを絶たない。でも、生保という行政の制度があったから、育つことができた子供がいたことは確かだ。さまさまな理由で、自分の力で生きていけない人は、いつの時代にも必ずいる。そういう人を救うために生保は、必要な制度だ。言うなれば、生保は自分の力で生きていけない人のー社会的弱者と呼ばれている人たちの最後の命綱だ。その命綱を、悪用する奴らを俺は許せない」(420p) そのことに異論は一切ない。しかし、作者はかなり生保について調べているはずなのに、私でさえ知っていることに言及しない。ここに出てくるケースワーカー(専門家)の言葉を借りて反論しないばかりか、彼ら自身がそのように認識しているかの如く、ミスリードするように物語を構成している。 曰く。(1)生保の金を受け取ったその足で、パチンコに並んだりする者がいる。と書いているが、パチンコ依存症だった場合は、アルコール依存症と同じ「病気」であることの認識がない。(2)テーマ的に「不正受給」について延々と書いているが、あることを書いていないから普通に読んだら不正受給は全体の1割から2割はいる印象を受ける。実際は、1%にも満たないし、そのほとんどは家族の子供のバイトの申告漏れ等の制度無理解によるものが多いのである。(3)生保受給者に同情してお金を立て替える場面を美談的に描いているが、規則的にもやってはいけないことであるが、受給者の自立を促すということでも「絶対やってはいけない」悪影響しか及ばさないことである。 建前は正しいけど、本音の所で、この作者生保制度のことをホントにわかっているのか?わかってないだろうなあ。
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狐狼の血が素晴らしかったので、少し残念。展開がゆっくりなのと、少し強引さを感じました。タイトルにもしっくりこない感じがしました。
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ケースワーカーの山川が殺され、そのあとを引き継いだ新人職員の牧野聡美は、山川のあとを継ぎます。 仕事熱心な山川でしたが、牧野が受給者を訪問するうちに、山川がヤクザと関係を持ったいたのではないかと疑惑を持ち始めます。 生活保護とヤクザとの関係。 闇に潜む罠とは。 パレートの誤算とい...
ケースワーカーの山川が殺され、そのあとを引き継いだ新人職員の牧野聡美は、山川のあとを継ぎます。 仕事熱心な山川でしたが、牧野が受給者を訪問するうちに、山川がヤクザと関係を持ったいたのではないかと疑惑を持ち始めます。 生活保護とヤクザとの関係。 闇に潜む罠とは。 パレートの誤算というタイトルが、深い意味を持っていることが最後に分かります。
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柚月裕子さん二冊目、生活保護を題材とした社会派ミステリー。焼死体で発見された先輩ケースワーカーの業務を引き継いだ新米主人公は事件にヤクザが絡む不正受給の陰を見出すが―。生活保護の実態や貧困ビジネスについて綿密な取材を重ねた印象を受け好印象。著者の人に対する暖かさが伝わるような文章...
柚月裕子さん二冊目、生活保護を題材とした社会派ミステリー。焼死体で発見された先輩ケースワーカーの業務を引き継いだ新米主人公は事件にヤクザが絡む不正受給の陰を見出すが―。生活保護の実態や貧困ビジネスについて綿密な取材を重ねた印象を受け好印象。著者の人に対する暖かさが伝わるような文章運びは心地が良かった。反面、整理整頓されすぎて二時間ドラマのお手本の様な登場人物、ストーリー展開なのが勿体ない。ただ、取り調べシーンは「孤狼の血」の片鱗が見えるくらいに警察小説している。
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タイトルがよかった。 もひとつ、なんだろ。 切れ味鋭くても。 と、期待を込めて。 山川さん、小野寺さん。 若林警部補。 そして、聡美ちゃん。 キャラ、よかったぁ。
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生活保護を受ける人々に忍び寄る暴力団の影。ケースワーカーが殺され、同僚の死を独自に調べ始める聡美たちにも危険が迫り…。 小野寺さんの「自分たちの職分を尽くすことだ」や、若林さんの「俺たちの仕事は自分の首を守ることじゃない。俺は自分に課せられた責務を果たすだけだ」の台詞に痺れた。 言葉にするのは簡単だけど、実行するのは難しい。小野寺さんにしても、若林さんにしても、そして山川さんや聡美ちゃんも、みな一生懸命己の職分を果たそうとする(しかもそれが当たり前だ、と認識している)姿は、凄惨な事件ではあったけど、一服の清涼剤になった。
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福祉事務所の生活保護担当のケースワーカーが殺害された。業務を引き継いだ主人公が事件の真相に迫るミステリー。 生活保護制度の闇をうまく絡ませて物語を進めている。どのエピソードも本当にありそう。だからすんなり読める。でも、これというインパクトには欠けるかもしれない。 悪くはない。むし...
福祉事務所の生活保護担当のケースワーカーが殺害された。業務を引き継いだ主人公が事件の真相に迫るミステリー。 生活保護制度の闇をうまく絡ませて物語を進めている。どのエピソードも本当にありそう。だからすんなり読める。でも、これというインパクトには欠けるかもしれない。 悪くはない。むしろいい小説だと思うが、柚月さんに期待するものはこの程度ではなくなってしまっている。
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