紙の動物園 の商品レビュー
ケン・リュウの短編小説は、なぜこうも胸がしめつけられるように美しく哀しいのだろう。 タイトルの『紙の動物園』のようにSFというよりはファンタジイかな、というようなものもあるし、内容は様々なのに、どの短編も実に美しいのだ。 それはまるで、哀しみ矢苦しみといった感情が、昇華して珠玉に...
ケン・リュウの短編小説は、なぜこうも胸がしめつけられるように美しく哀しいのだろう。 タイトルの『紙の動物園』のようにSFというよりはファンタジイかな、というようなものもあるし、内容は様々なのに、どの短編も実に美しいのだ。 それはまるで、哀しみ矢苦しみといった感情が、昇華して珠玉になったかに思える。 ケン・リュウ作品のもうひとつの楽しみは、日本に紹介されるほとんどのSFが英米のものであって、白人視点であるのに対して、華人視点である、というところだろうか。歌人とはいわゆる中華系の人、という意味だ。 思えば中共は七十年間、民衆が塗炭の苦しみを舐めてきたところであり、当然、そこから他へなんとかして逃れようとした人々もいたと想像できる。そうした人々が、たとえばアメリカに渡って、どのように生きたかを考えると、それもそれでツライ環境だろうし、生き抜くためにはずるい手も使うんだろうな、と考えさせられるものが何編か。 また、西欧文明に対して、アジアの、たとえば華人の思想や文明はどういったものだったのかというコントラストを描いたものが何編か。 そのように分解していく事は容易だけれども、やはりそれはケン・リュウの魅力を正確に言い当ててはいないように思える。 結局のところ、辛く苦しいものを赤裸々に、リアルに描き出すかわりに、一歩退いたところで結晶させたというところに一番の魅力と価値があるのではなかろうか。
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これって、SF? それならば、私の中でSFが大変革! 人と、生きることと、文明と。 生きることはシンプルなはずなのに、そうではないことも沢山。 そうでないから気づかせてもらえる数々が、この作品には詰まってる。
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胸を締め付けられるような、少し物悲しく重たい空気を感じてしまうのは どこか西洋もしくは勝者の力・ルールに抑えられ、すがりながらも、 必死に後を追い、並ぼうとする、もしかするとその中で自らのルーツや歴史をも 否定したり捨てねばならない東洋・東アジアの読者だからだろうか。 新しい世界...
胸を締め付けられるような、少し物悲しく重たい空気を感じてしまうのは どこか西洋もしくは勝者の力・ルールに抑えられ、すがりながらも、 必死に後を追い、並ぼうとする、もしかするとその中で自らのルーツや歴史をも 否定したり捨てねばならない東洋・東アジアの読者だからだろうか。 新しい世界の中で失われた/失われつつある過去への『愁』『惜』 (それが薄いの:真逆は『心智五行』かな)が奥底に潜み 単に前をむいてさえいれば手に入る・降り注ぐ明るい未来ではなく 振り返った根っこからの「流れ」も感じさせる短編集だと感じた。 そして第二弾のタイトルが『もののあはれ』と来たものだ。
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表題の「紙の動物園」だけでなく、どれも世界観が素晴らしかった。特に「結縄」と「文字占い師」が良かった。 SFにあまり馴染みがない人にもオススメ。
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SFとかそういうジャンル分けをぬきにしても、東洋的な感覚に溢れた素晴らしい短編集。 紙の動物達が動くのを観てみたい。
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予備知識なく、ハヤカワ文庫SFっぽくないタイトルと表紙につられて購入した短編集。 著者は1976年中国生まれ、パロアルト育ち。ハーバードを卒業しマイクロソフトで勤務したのちにハーバード・ロースクールを卒業したという経歴。 どの話も簡単に読めるショート・ストーリーだけど、世界観...
予備知識なく、ハヤカワ文庫SFっぽくないタイトルと表紙につられて購入した短編集。 著者は1976年中国生まれ、パロアルト育ち。ハーバードを卒業しマイクロソフトで勤務したのちにハーバード・ロースクールを卒業したという経歴。 どの話も簡単に読めるショート・ストーリーだけど、世界観や視点が独特なものとなっている。それぞれの物語の終わりを過度に引っ張りすぎることなく、その後の展開を読者が想像することとなる。この本に収録されている話のほとんどが、中国・アジア・漢字といったアジア要素を取り込んだサンエンスフィクション物語となっている。 別の単行本も読んでみたい。
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一昨年に単行本が刊行された、著者の日本オリジナルの短編集「紙の動物園」を二分冊して文庫化した一冊目です。 訳者あとがきによれば、文庫化に際し収録の並びも変えられていて、本作は「ファンタジイ篇」とも呼べる7篇を、今月刊行予定の「もののあはれ」が「SF篇」ともいうべき8篇を収めている...
一昨年に単行本が刊行された、著者の日本オリジナルの短編集「紙の動物園」を二分冊して文庫化した一冊目です。 訳者あとがきによれば、文庫化に際し収録の並びも変えられていて、本作は「ファンタジイ篇」とも呼べる7篇を、今月刊行予定の「もののあはれ」が「SF篇」ともいうべき8篇を収めているようです。 ファンタジイ色が濃いといいつつ、決して明るい楽しいそれらではなく、30〜50ページ程度の短編のほとんどが、重く暗く悲しく切ない現実の影を突きつけてくるものでした。 読み進めながら、打ちのめされ、言葉を失い、頭を抱え、泣きたくなってしまう…さながら誰かに胸ぐらを掴まれて揺すられ続けているような読書体験でした。 読後は、平凡ながらも当たり前に暮らしていけていることへの感謝もジンワリと胸に広がりました。 淡々としていながら衝撃作でした。 「もののあはれ」も読みます。
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たぶん表題作とか『文字占い師』みたいのが得意分野なんだろうけど、個人的には『心智五行』『愛のアルゴリズム』とか好き。 『心智五行』のパーソナルAIアーティかわいすぎかよ。
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PHBで同名タイトルを見た時は迷っていたのを文庫で見かけたので購入。 ケン・リュウの他の作品も読んでみたくなった。
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