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紙の動物園 の商品レビュー

4

154件のお客様レビュー

  1. 5つ

    51

  2. 4つ

    53

  3. 3つ

    30

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    1

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2020/05/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

衝撃をうけたSF短編作品集。どれも秀逸。作者はプログラマーでもあり、中国の近現代史への洞察を豊かな理系の知識で提起している。タイトルにもなっている紙の動物園は号泣したが、SFとして設定に衝撃を受けたのは「太平洋横断海底トンネル記」こんな設定にしていいんだ、歴史変えちゃっていいんだ、と鳥肌がたつ思いで読み進めた。それは歴史が変わってたらどうなってたんだろう?と想像せずにはいられない人が、私たちと海をはさんだ向こう側にいるということ。 これからグローバルに活躍したいと思っている若者やシステム畑の人におすすめ。世界史が苦手だった私のような人も、歴史がいまにどうつながっているのか、という目線できちんと学びたくなるはず。

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2019/01/05

紙の動物園の母の手紙、文字占い師の甘さんの「中国人は長いこと、語って聞かせられるような幸せな話を持っておらんのだ」、あまりにも悲しくて胸がいっぱいになる。

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2018/12/25

表題作『紙の動物園』が秀逸。思春期に感じる親への羞恥や憤慨と母親の真意が、ルーツや言語というさらに複雑なフィルターを介して、物悲しく切なくすれ違う。胸が抉られるようだ。中国系アメリカ人という著者の生い立ちが生み出した絶妙な作品である。ほかもケン・リュウ氏ならではの柔らかく幻想的な...

表題作『紙の動物園』が秀逸。思春期に感じる親への羞恥や憤慨と母親の真意が、ルーツや言語というさらに複雑なフィルターを介して、物悲しく切なくすれ違う。胸が抉られるようだ。中国系アメリカ人という著者の生い立ちが生み出した絶妙な作品である。ほかもケン・リュウ氏ならではの柔らかく幻想的な作品だか『紙の動物園』には一歩二歩及ばず。

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2023/08/10

ものすごくソリッドでくっきりしたフィクションなのに色々な余地を残しながら読める短編ばかりでとても面白かった

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2018/11/19

作者の発想の多彩さ、そして(翻訳者の技量もあると思うが)文章の流れのうまさ、に魅せられて一気に読み終えてしまう。なかなかこの感慨を伝える言葉がない。 多くの作品でアジアの歴史や、アジアと西洋文化の歴史の断片が織り込まれている。しかし、単にその歴史の傷を取り上げるだけではなく、そこ...

作者の発想の多彩さ、そして(翻訳者の技量もあると思うが)文章の流れのうまさ、に魅せられて一気に読み終えてしまう。なかなかこの感慨を伝える言葉がない。 多くの作品でアジアの歴史や、アジアと西洋文化の歴史の断片が織り込まれている。しかし、単にその歴史の傷を取り上げるだけではなく、そこに一捻りを加えて、掘り下げている。ああ、なかなかうまく表現できない。でも、表現できないくらい、イイ。素晴らしい。

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2018/10/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

7編収められていて、表題作が評判らしいが、僕はその内容のせいか、最後に読んだせいか「文字占い師」が印象に残った。 僕は男女の愛より、暴力的なものに惹かれるのかもしれない。

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2018/10/03

短編7話が収録されている。過去や未来の現実にファンタジーが織り込まれた詩的な世界に、話が進むにつれその現実の裏側の厳しさも見えてくるという構成が多い。 印象に残ったのは『結縄』。異文化の人間の素朴さや無知に付け込んで搾取し破壊し、自分たちのルールを押し付け自分たちだけが富を享受し...

短編7話が収録されている。過去や未来の現実にファンタジーが織り込まれた詩的な世界に、話が進むにつれその現実の裏側の厳しさも見えてくるという構成が多い。 印象に残ったのは『結縄』。異文化の人間の素朴さや無知に付け込んで搾取し破壊し、自分たちのルールを押し付け自分たちだけが富を享受しようとする西洋社会。これは先住民族からあらゆる物を奪い取った南北アメリカの植民の歴史を思い出させる。そして現在も世界中でこの構図が見られる。『心智五行』も話の方向性としてはこれと似ている。 各話で評価が異なるので平均して星4つぐらい。

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2018/09/16

中国人作家のSF、として読みました。やはり日本人とはちょっと違う感性が新鮮でもあり、それでいてこのワビサビといってもいいような静かな風景が近しくて、非常に興味深かった。日本や台湾のことも、とても詳しいので、国籍不明な感じさえします。好きです。

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2018/07/23

SFというよりはファンタジーのような気がするし、賞をとったのは、着想というより東洋的エッセンスが織り込まれていて、それが西洋人には珍しく感じたからではないのかと思ったが、しみじみとした感じ、移民第一世代と第二世代のずれにからむ悲哀はよく伝わる。

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2018/06/18

「紙の動物園」 不寛容がルールのこの世の中で、家庭だけは治外法権たりうるものだ とはいえその優しさが これから世に出て行かなくてはならない子供たちにとって 足枷にもなってしまうわけだ 狭い世界で生きてる母親には、そのことがまったく理解できず 故に、その死をもってしか息子との和解が...

「紙の動物園」 不寛容がルールのこの世の中で、家庭だけは治外法権たりうるものだ とはいえその優しさが これから世に出て行かなくてはならない子供たちにとって 足枷にもなってしまうわけだ 狭い世界で生きてる母親には、そのことがまったく理解できず 故に、その死をもってしか息子との和解がかなわなかったのだとすれば とても寂しいことである 「月へ」 難民たちは、市民権を勝ち取るために 高い倍率の競争をくぐり抜けねばならなかった だから入国審査では、同情を集めるため盛りに盛った身の上話を披露する 法の正義にこだわる主人公の弁護士には そういう嘘が許せなかった そのこだわりが不寛容…と言っていいものかどうか この場合、難民たちが母国に対して 不当なまでの悪魔的イメージを貼り付けているのも確かなのである 「結縄」 未開文明の困難に付け込んで、純粋な人々に友達のふりをして近づき 文化を「共有化」したあげく その謝礼として与えた種籾の使用料金を、翌年から取り立てるという 陰険な征服者としての資本主義を書いている しかもこの連中 どうやら相手の言い分を都合よく簒奪する形で 著作権まで否定しようとしているのだった ネオリベは「他者」の権利などまるでおかまいなしである 「太平洋横断海底トンネル小史」 世界恐慌を受けて、天皇裕仁が発したトンネル工事の提案により 日本、中国、アメリカの戦争は回避され ヨーロッパにおけるファシズムの台頭も未然に防がれた しかしそのかわり、太平洋の地下には数々の悲劇が埋もれていった その歴史には、海底火山や地震、それに飛行機への言及が一切欠けており 作者からのある含みを感じさせる やがてすべてに蓋をして、封印するのが世界の意思ではないのか 「心智五行」 完全無菌状態の実現した世界で 宇宙旅行者が遭難し 流れ着いた星で原住民と交流するうち 腸内フローラの重要性を学ぶ 「気」とバクテリアを関連付けたところが面白い 「愛のアルゴリズム」 しゃべる玩具の人形を開発していた女が 我が子を死産し、自分も子供を産めない身体となったとき エゴを見失って世界にリアリティを感じなくなったというか すべての人間は 人形と同様にパターンのプログラムで動いているのではないか という疑念にとりつかれ それでだんだんおかしくなっていく話 「文字占い師」 テキサスから台湾に引っ越してきた中国系の女の子が 米軍基地内の学校に通いはじめる しかしそこでいじめにあって、鬱々と毎日を送っていたところ 偶然、占い師の老人と知りあって 不寛容な心を映し、人を狂気へと追いやる魔法の鏡を授けられる …そこまでして人は、わかりあう必要があるのだろうか

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