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人類と気候の10万年史 の商品レビュー

4.4

64件のお客様レビュー

  1. 5つ

    26

  2. 4つ

    25

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

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2018/03/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

年縞から気候を読み解く話の恐ろしく誠実な積み上げと後半のかなり荒っぽくも感じられる推論のギャップが面白い。 安定相と周期相と乱雑相のある周期的な展開、という気候論はなかなか直観にフィットする。乱雑相には狩猟採集経済のほうが強いのもおそらくそうだろう。今更狩猟採集はできにくいが乱雑相の対応が問題というのもおそらく正しい。多様性を取っておこうよ、が最後に来るのが肩透かし感がある。でも、今何かあるというわけでもないのだから仕方ないか。

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2018/02/18

水月湖の年縞から導き出した素晴らしい成果を分かりやすく解説している好著だ.著者の前作「時を刻む湖」は既読だったので,状況は知っていたが,本書では花粉の化石の分析から水月湖周辺の15万年の植生の変遷を示している(p128).その図から杉が周期的に繁茂と枯渇を繰り返していることなどを...

水月湖の年縞から導き出した素晴らしい成果を分かりやすく解説している好著だ.著者の前作「時を刻む湖」は既読だったので,状況は知っていたが,本書では花粉の化石の分析から水月湖周辺の15万年の植生の変遷を示している(p128).その図から杉が周期的に繁茂と枯渇を繰り返していることなどを指摘し,この現象がミランコビッチ理論と合致していることを示している.素晴らしい.氷期の終わり,11600年前,人類が農耕を始めなかった理由付け(p185)は非常に説得力があった.

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2018/01/03

メディアや世間で騒がれている異常気象や温暖化というワードに対して、認識にいつも違和感を感じていて、その背景をしっかり学びたく手に取った。素人にわかりやすく、例えなどをふまえながら解説されていて好感をもった。現代の気温変化は氷期に比べると安定していること、それゆえに農耕が繁栄したこ...

メディアや世間で騒がれている異常気象や温暖化というワードに対して、認識にいつも違和感を感じていて、その背景をしっかり学びたく手に取った。素人にわかりやすく、例えなどをふまえながら解説されていて好感をもった。現代の気温変化は氷期に比べると安定していること、それゆえに農耕が繁栄したこと、水月湖が偶然の産物で年稿蓄積されていること、植生は気候を反映していることが興味深かった。

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2017/12/13

「地球温暖化防止」に関わる報道を見聞きすると頻繁に違和感を感じる。 いわく「歴史的責任」「共通だが差異ある責任」「将来世代への倫理的責任」などの他者への責任追及。 化石賞授与など、誰かを糾弾し晒しあげるやりくち。 しかし、追い求める理想の世界の姿は、運動の先にあるのかどうか。...

「地球温暖化防止」に関わる報道を見聞きすると頻繁に違和感を感じる。 いわく「歴史的責任」「共通だが差異ある責任」「将来世代への倫理的責任」などの他者への責任追及。 化石賞授与など、誰かを糾弾し晒しあげるやりくち。 しかし、追い求める理想の世界の姿は、運動の先にあるのかどうか。 相当程度確からしさに欠けることを根拠に過激に運動する。 騒いでいる人たちは、本当に地球温暖化防止を追い求めて運動しているのか。 そう信じるのはナイーブな見方ではないか。 地球温暖化防止は、二酸化炭素排出抑制・防止の別名と言ってよいだろう。 つまり、化石燃料を利用し、経済活動を行う権利の分捕り合戦ともいえるもの。 国家間の経済戦争という表現を使う人もいる。 しかし、化石燃料の浪費や枯渇、結果として生み出される二酸化炭素の濃度上昇は、不可逆的な変化であることは間違いないので、慎重な態度で臨むことが必要であることは間違いないと思う。 「地球温暖化防止」「化石燃料の有効活用」は大切な論点を含むものだけに、その議論の際には、感情的な、扇情的なものいいは差し控えるべきではないか。 日本の世論の形成に大きな影響力を持つメディアの皆さんにも、冷静な評価軸を持ってもらうため、環境省やWWFのプレスリリースを見るだけでなく、こうした、学術的な考察を分かり易く紹介した本を読んでもらいたいもの、と思った。

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2017/11/12

湖底の堆積物の年縞を詳しく調べることで、過去10万年もの気候の変動が明らかに。天文学的な気候の周期変動のメカニズムが分かりやすく紹介されており、人類による温暖化を理解する上でも重要な知見。

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2017/08/07

地道に日本の小さな湖の堆積物を調査した結果、10万年分の気候の変動の歴史からいえば、地球は寒冷期に向かっており、文明による温暖化がなければ、もっと寒くなっていたらしい。 自然の力は、人間の力をはるかに超え、大きな寒暖を繰り返している。学者さんの根気強い作業に頭が下がります。

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2017/04/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 大変勉強になった。  温暖化は徐々に進むというわけでないかも知れない、比較的短期間で大きな気候の変化が起きるかも知れない、....という考察は、すごく面白かった。2年続き、3年続きで天候不順が生じることもあり得ると書かれていて、読者として、食糧の備蓄をどれくらい持っておけばよいのかとか、食料生産のための水資源の確保をどうすればいいのかとか、考えさせられることが多かった。年縞の本は、これで3冊読んだが、研究が大きく進んだんだなぁと感じた。

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2017/04/14

この本の作者が携わった福井県南部の水月湖の堆積物試料(この5万年の気候変動を知る上で世界で最も正確な年縞堆積物試料)から分かる、人類が活動しているこの10万年にどういう気候変動があり、今後、言えることは何かを、水月湖堆積物試料が世界一となる苦労話と共に語っている本。とても勉強にな...

この本の作者が携わった福井県南部の水月湖の堆積物試料(この5万年の気候変動を知る上で世界で最も正確な年縞堆積物試料)から分かる、人類が活動しているこの10万年にどういう気候変動があり、今後、言えることは何かを、水月湖堆積物試料が世界一となる苦労話と共に語っている本。とても勉強になる知識ばかりある本なので経緯や薀蓄を書いていると写本ぽくなってしまうので、書かれていることを自分なりに解釈したメモを備忘録まで以下に記しておく。 ・地球の気候は地球と太陽の位置関係によって数万年単位では一定の法則性を持っているよう(ミランコビッチサイクル)だが、それ以下の短い期間や超長期間なると複雑な要素が相互に影響しあう典型的な非線形、カオスとなり本質的に予測は不可能である。(youtubeで「2重振り子」の映像を見ると簡単な要素同士でも掛け合わせると複雑系になってしまうことが直感的に理解できる) ・この500万年ほどの傾向は地球は寒冷化に向かっていることであり(ヒマラヤができたことが原因の一つか?)、寒さは堆積効果があるので(例えば氷河)、容易にはその傾向は収まらない。 ・数十万年のスケールで見た場合、正常な状態とは「氷期」のことであり、現代のような温暖な「間氷期」はむしろ例外的状態である。 ・今回の間氷期は例外的に長く続いており、これはむしろ人間の諸活動によって(要するに温暖化活動によって)維持されている可能性がある。 ・間氷期の、特に気候の相転移が起こる前の安定した気候の時代だったからこそ、未来の予測が可能であり、予測が可能であったから現代文明は構築された。逆に気候が不安定な時代や氷期に文明社会が生まれた形跡は一度もない。(それでも人類は生延びていたが) ・相転移による気候変動は極めて大幅(数度の変化)であり、極めて短期(3年とかで)行われる可能性がある。そういった、現在の人間が引き起こす気候変動よりもっと激しい気候変動を内部から発生させる力を自然は潜在的に持っている ・文明ではなく、生物としての人間はそれらの劇的な気候変動を乗り切れる、圧倒的な適応性を持っているので、安定的な間氷期時代の文明でだけで世の価値を決めきるべきではない。 いやあ、俯瞰でものを見る、という意味でこれほど為になる本もそうそうないように思えました。

Posted byブクログ

2017/04/08

著者の中川毅氏は、古気候学、地質年代学を専門とし、立命館大学古気候学研究センター長を務める。 本書は、敢えて分ければ大きく2つのトピックから成っている。ひとつは、著者がリーダーとなって進めてきた、福井県にある水月湖の湖底の堆積物の研究結果が、2012年に地質学における「世界標準時...

著者の中川毅氏は、古気候学、地質年代学を専門とし、立命館大学古気候学研究センター長を務める。 本書は、敢えて分ければ大きく2つのトピックから成っている。ひとつは、著者がリーダーとなって進めてきた、福井県にある水月湖の湖底の堆積物の研究結果が、2012年に地質学における「世界標準時計」に採用されたドキュメントであり、もうひとつは、水月湖の研究によって解明された事実を含めて再現された、過去15年の気候変動の歴史がどのようなもので、それが将来の気候を予測するにあたり如何なる示唆をもたらすのかという分析・考察である。 私が注目したポイントは以下である。 ◆従来から様々なアプローチで気候の将来予測が行われており、その一つとして、1920年代から支持される、地球の軌道要素と気候を結び付けて考えたミランコビッチ理論などがあるが、気候予測においては、「これまでの傾向が今後も続く」と考える線形モデルも、「二度あることは三度ある」と考える周期的モデルも、直感的に過ぎる。 ◆ある種の複雑な系(例えば、株式市場や人間の健康状態)は、安定相と周期相と乱雑な相が存在し、それらが予想不可能なタイミングで急激に切り替わる(相転移する)ことがあり、安定期から相転移する場合には前触れがあるように見える。グリーンランドの氷床から得られたデータをもとに再現された過去6万年の気候変動を見ると、気候変動もそうした系のひとつと考えられる。 ◆福井県の三方五湖のひとつである水月湖は、濁流によって土砂が流れ込まず(流れ込む川がない)、湖底に生き物が棲んでおらず(湖底に酸素がない)、長い時間存在し続けたという珍しい特徴をもち、その結果、湖底には、1年に1枚ずつ溜まる「年縞」と呼ばれる地層が45メートル(7万年分)溜まっている。水月湖プロジェクトでは、この年縞堆積物を完全な形で回収することに成功し、2012年に、放射性炭素(14C)年代測定の標準換算表IntCalに採用され、過去5万年までを対象とする地質学の「世界標準時計」になった。そして、水月湖の年縞堆積物に含まれた花粉の分析によって、過去15万年の、水月湖周辺の植生景観が再現され、更に気候変動が明らかになった。 ◆最後の氷期が終わってから、現在まで既に1万1,600年に亘り安定した気候が続いており、今の温暖期は歴史上例外的な長さである。現代の「安定で温かい時代」がいつかは終わるというシナリオにおいて、気候変動が「カオス的遍歴を示す非線形の大域結合系」だとすれば、演繹的に予測することは現実的ではなく、その一方で、近年は「何十年に1度」という自然災害が毎年のように起こっていることは、何かの予兆のようにも見える。 水月湖プロジェクトにより明らかになった過去の気候変動を踏まえつつ、近年の異常気象と将来の気候変動について考えるきっかけを作ってくれる良書である。 (2017年4月了)

Posted byブクログ

2017/03/15

日本の世界標準、水月湖!人間が氷期の到来を遅らせている?氷期の特徴は気候が不安定なこと。今の温暖で安定した気候はいずれ終わるらしい。

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