骨を彩る の商品レビュー
前の話に登場した人が次の話で語り手になる。 こういう話、好きです。 語り手から脇役になると印象が変わるのが不思議。 どの話もしんと染みてよかったです。
Posted by
すべてに満ち足りて生きている人はいない。この連作短編集で思ったことだ。 亡くなった家族のことに想いを巡らせながら生きている人。拠り所を見つけて、何事もないかのように生きている人。自分にないものを持っている人に、嫉妬したり、関わりを絶ったりして、今の自分を正当化して生きている人。...
すべてに満ち足りて生きている人はいない。この連作短編集で思ったことだ。 亡くなった家族のことに想いを巡らせながら生きている人。拠り所を見つけて、何事もないかのように生きている人。自分にないものを持っている人に、嫉妬したり、関わりを絶ったりして、今の自分を正当化して生きている人。表向きはうまくやってるようでも、本当は辛いことを秘めている人。本当の自分を出せない人。自分を守るために人を蔑んでいる人。自分ではどうしようもないことを抱えている人。この登場人物達のことを知るにつれて、誰もが自分にないものを抱え、悩みながら生きていることについて考えた。 読後、改めて見ると、キラキラしたイチョウの葉っぱが降る表紙が、この物語を包んでいるように思えた。
Posted by
本編も当然ですが、最近解説を読んで、作家先生は、言葉を形にするのが凄く上手なんだと改めて実感します。当たり前ですが。 解説であるように、物語それぞれが「寡黙」ではあるが、それでいて「鋭利」であり「優しい」。読んでよかったです。 桐野夏生さんの「日没」からの、振れ幅、最高かよ。
Posted by
一話一話読み進めるごとに書かれている感情が、より生々しく感じた。 育ってきた環境の違いで、わかりたいのにわかりあえない。 そういう経験は自分もあったし、ズキズキと古傷が痛む感じがした。 自分の経験としては、いつもカッターシャツがシワだらけで、名字が3年で3回かわった子とか、日常会...
一話一話読み進めるごとに書かれている感情が、より生々しく感じた。 育ってきた環境の違いで、わかりたいのにわかりあえない。 そういう経験は自分もあったし、ズキズキと古傷が痛む感じがした。 自分の経験としては、いつもカッターシャツがシワだらけで、名字が3年で3回かわった子とか、日常会話はしつつも深く踏み込めなかったもどかしさがある。 確かにその子からしても踏み込めなさを感じていたのかもしれない。 どこまで踏み込むのか、大人になっても迷うことは多々ある。 子供がそういう問題に直面していたら声をかけるのか、どうしようかと考えてしまった。
Posted by
なんて繊細な物語なんだろう。 主人公を変えつつもクロスオーバーしていく物語。 心に何かしら「ない」を抱えた人たちの物語は他人事とは思えず、心に響く。 どの話にも自分の欠片を見つけた。 人間の外側から見える姿と本質の部分って同じようで少し違うんだと思う。 外側から見える姿は角度を変...
なんて繊細な物語なんだろう。 主人公を変えつつもクロスオーバーしていく物語。 心に何かしら「ない」を抱えた人たちの物語は他人事とは思えず、心に響く。 どの話にも自分の欠片を見つけた。 人間の外側から見える姿と本質の部分って同じようで少し違うんだと思う。 外側から見える姿は角度を変えると全く違って見えるけれど、本質の部分って見えないけれど確固としたものなのではないだろうか。本質=骨なのかな…と私は思った。 彩瀬まる作品、読まなきゃ。
Posted by
言葉を選び、選びながら寡黙に テーマは“喪失” 10年前に妻であり母親を亡くした、父娘を中心とした連作短編集 「指のたより」 妻を亡くした後、娘との生活を大切に暮らしてきた父親に心惹かれる女性が現れる 妻の日記に残された言葉 誰もわかってくれない 亡くなる前の記憶と妻の出てくる...
言葉を選び、選びながら寡黙に テーマは“喪失” 10年前に妻であり母親を亡くした、父娘を中心とした連作短編集 「指のたより」 妻を亡くした後、娘との生活を大切に暮らしてきた父親に心惹かれる女性が現れる 妻の日記に残された言葉 誰もわかってくれない 亡くなる前の記憶と妻の出てくる夢が交差する 最後の「やわらかい骨」 こちらは、高校生の娘の視線 父親との生活に過不足はないものの、自分では気が付かないほど本来の母親の不足 宗教家一家の転校生との短いけれど篤い交流 この章は、若くも深い感情が静かに描写されていて、若い世代にお勧めしたい 「古代のバームロール」 父親と親しくなりそうだった女性 彼女の高校時代の友人達の現在 「ばらばら」 前作の女性の友人 器用に生きていそうな彼女の子育ての悩み 育った家庭のトラウマ 旅先で甘え上手な少女と出会う 「ハライソ」 前作の少女とゲーム内の友人の大学生 架空の世界の友人との現実世界の相談 それぞれは、短編なのにきちんと物語が変わる 繋がってはいくけれど、別の喪失に観点が変わる 描ける世界が広いなと思いました
Posted by
そのまま描かれている訳ではないのに、なぜか心にストレートに響くみたいな、そんな小説でした。 みんな黒を抱えてる、わざわざ見せないし、だから他の人のそれにも気づかない、そしてそれを忘れちゃうから羨んでしまったり、憎んでしまったり、踏み込んでしまったり。どっちが悪いとかじゃない、違う...
そのまま描かれている訳ではないのに、なぜか心にストレートに響くみたいな、そんな小説でした。 みんな黒を抱えてる、わざわざ見せないし、だから他の人のそれにも気づかない、そしてそれを忘れちゃうから羨んでしまったり、憎んでしまったり、踏み込んでしまったり。どっちが悪いとかじゃない、違う部分にはあまり触れず、加減しながら付き合っていくのが利口。それが全てではないと思うけど、とても良いお話でした。
Posted by
偶然死を身近に感じる機会が多かった時に読んだ。どんな言葉でも言い表すのは難しいけど、生きることと死ぬことについて上手く飲み込んで自分の中で折り合いがついた作品だった。
Posted by
自分が感じたこと、思ったことは否定しなくていいし、好きになったり嫌いになったりは自分で決めたいという気持ちにも大賛成。ただ、それを自分の外に出す時に、共感を強要したり、わかってもらえないことを攻めたりするのは違う。 あくまで、私の気持ちは私の気持ち。 それでも、わかって欲しくなっ...
自分が感じたこと、思ったことは否定しなくていいし、好きになったり嫌いになったりは自分で決めたいという気持ちにも大賛成。ただ、それを自分の外に出す時に、共感を強要したり、わかってもらえないことを攻めたりするのは違う。 あくまで、私の気持ちは私の気持ち。 それでも、わかって欲しくなってしまう時はあって、自分の気持ちを外に出した時に、わかろうとしてくれたり、わからない時はここがわからないって言ってくれたり、自分に寄り添ってくれたり、だけど、相手は相手なりの考えや言葉で話してくれて、その雰囲気というか、そこの感覚が似てる人と、だんだん一緒にいるようになるんじゃないかな。それが幸せにつながっていくと素敵だなと思う。
Posted by
指のさきが引っかかったり引っかからなかったり、それでも前に進んでいく。 ろっ骨の間からじんわりしみてくるような、最後にぱっとイチョウ色が目の裏に浮かぶようないい本だったな。
Posted by