骨を彩る の商品レビュー
少し前のなんなんさんのレビューに惹かれて買ってみた。 5つの話からなる短編の連作。 前の話に出た人が次の話では全く異なった感じの人として登場し、人というのは他人から見える姿からは推し量れないものを心の内で持て余しながら生きていることを改めて思わされる。 登場人物が持つ何か欠落し...
少し前のなんなんさんのレビューに惹かれて買ってみた。 5つの話からなる短編の連作。 前の話に出た人が次の話では全く異なった感じの人として登場し、人というのは他人から見える姿からは推し量れないものを心の内で持て余しながら生きていることを改めて思わされる。 登場人物が持つ何か欠落しているという思いは、境遇だったり親や子のことであったりと様々で、人と関わることによって痛みを感じたり少し満たされたり。そうした行きつ戻りつの胸の内の描写が、自分に同じことが起こっているわけではないけれど、とても生々しく感じられた。 それぞれの話で読み終わってもどのようにでも解釈できるようなところが残っているところも、人の心の在りようが単純なものではないことをよく表していたように思う。 息子への処し方に悩みながら自身の過去の記憶と向き合い欠落を埋めていく母親を描いた三話目と、幼くして母を亡くした少女が"普通"について模索する最後の話が、私には良かった。
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読んでいると、体の芯が震える。 自分の心の淵からこぼれ落ちていく何か。 それは安易な言葉で形容できない。 彩瀬まるさんはその形にならない言葉を丁寧に編み上げていく。 登場する人々は皆が皆、心に虚を抱えている。 それは簡単に埋めようも埋まりようもないもの。 だが、自分を形作ってく...
読んでいると、体の芯が震える。 自分の心の淵からこぼれ落ちていく何か。 それは安易な言葉で形容できない。 彩瀬まるさんはその形にならない言葉を丁寧に編み上げていく。 登場する人々は皆が皆、心に虚を抱えている。 それは簡単に埋めようも埋まりようもないもの。 だが、自分を形作ってくれた誰かやいまも隣で共に編み上げてくれる他者によって、何かを見つけていく。 それで解決したり、変わったりするわけではない。 ただ、そこにあるのだと知る。 それが明日へと自分を繋げる階段へと変わっていく。 静けさがありながら、真正面に虚を見据えた力強い一作であった。
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なんだこの小説。 いままで生きてきた時間の中で感じたことのある、 違和感、疎外感や、人と歯車が合わないと思った瞬間が、 全部詰まったような物語。 思い出して痛くて痒くて、胸を掻きむしりたくなる。 それでも、そんな経験が、今の自分を作っているのだと、 登場人物を自分を重ね合わせな...
なんだこの小説。 いままで生きてきた時間の中で感じたことのある、 違和感、疎外感や、人と歯車が合わないと思った瞬間が、 全部詰まったような物語。 思い出して痛くて痒くて、胸を掻きむしりたくなる。 それでも、そんな経験が、今の自分を作っているのだと、 登場人物を自分を重ね合わせながら、 息をつめて最後の1ページまで読み進めた。 ページを進める毎に、各章の登場人物たちに起こることに 怯え、次のページで起こりそうなことを想像して、震える。 どうか、この人の人生がうまく進んでくれ、 この人の不幸が降りかからないように、頼む頼む神様。 と、昔の自分を庇うように登場人物たちを見守った。 読み終わってすぐに、著者の別の本を購入しました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
この方の作品とは初対面。繊細な感情を大切に拾い集めるような文章が、心に染みる。 収録されている短編全てに、「骨」や「肉」という命や存在の比喩とも言えるキーワードが現れ、物語に深みを与えている。 お弁当のウィンナーがなくなっていた理由に思いを巡らしてしまう程、各章のさりげない繋がりも丁寧に仕込まれていて、より登場人物達を身近に、愛おしく感じた。
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初めて読む彩瀬まるさん。 登場人物それぞれの視点での話を集めた短編集だった。 外からは華やかで満ち足りた人生に見えても、その人の中には決して埋められない何かを必死で抱えていたりすることを、物語を通して感じました。 登場人物それぞれの幸せを切に願ってしまう、繊細で温かいお話だった。
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読み終えた時、こころがすごく温かくなった。 欠けたピースを欠けたもの同士でぎこちなく繋ぎ合わせて、でも形が違うから上手くはまらないんだけど、それはそれで良い、ピース同士が少し重なるだけで万々歳。
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人間味のあるやり取りが繊細な世界観で描かれており、読んでいて心地よかったです。最後のお話が特に好きです。あどけない女の子の友情が美しい。
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誕生日プレゼントはおすすめの本がほしいです!って言ったら大好きな先輩がくれた本。 すべての話がちょっとずつ繋がっている短編集で心があったかくなりました。 日常を切り取りつつ、きらきらとした夢を見せてくれる素敵な小説でした。 また読みたい。
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- ネタバレ
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自分を形成するものの中で他の人とは違う部分、欠けてる部分をどう変えていくか、折り合いをつけるか。 父の欠けた骨を埋めた景色が娘の骨を彩ってくれて良かったです。
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最近、再読したのですが、とても静かで心に染み入る本でした。 短編集なので読みやすいと思います。 最近とても充実されている彩瀬さんの世界に 足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
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