静かな雨 の商品レビュー
貸し出し予約していた図書館で本を受け取ったとき「薄っ!」とびっくりした。ページ数は107頁。字も大きいし余白も広い。1日で読めた。一気読みと言ってよい。淡々とした世界感がタイトルとよく合っている。読み終わったあともまだストーリーが続いている余韻がある。そして1日で読み切れる理由が...
貸し出し予約していた図書館で本を受け取ったとき「薄っ!」とびっくりした。ページ数は107頁。字も大きいし余白も広い。1日で読めた。一気読みと言ってよい。淡々とした世界感がタイトルとよく合っている。読み終わったあともまだストーリーが続いている余韻がある。そして1日で読み切れる理由がわかった。ヒロインの記憶が1日しかもたないからだろう。そして次の日には存在しない1冊の本が生まれる。それは幾度も繰り返される一話完結の物語。活字だけでなく本そのものが作品なのだと思う。
Posted by
事故で記憶が1日しか保たれなくなってしまったこよみさんと、足にハンデがある行助君の静かな交流。 日常のような非日常のような、ふわふわと過ぎていく日々の浮遊感が心地いい。 こよみさんの発する何気ない言葉が人生の本質をついていて、ドキリとする場面も。
Posted by
頁数は107頁で、概算しても50,000字足らずの作品です。2時間程度で読了できる程度の小作品ですが、こよみとユキの何のてらいもない生活の心地よさに包まれる快感と、清廉とした読後感が素晴らしい。 ふと目が覚めると部屋はうっすら明るかった。空気の粒子が細かくて、しっとりと落...
頁数は107頁で、概算しても50,000字足らずの作品です。2時間程度で読了できる程度の小作品ですが、こよみとユキの何のてらいもない生活の心地よさに包まれる快感と、清廉とした読後感が素晴らしい。 ふと目が覚めると部屋はうっすら明るかった。空気の粒子が細かくて、しっとりと落ち着いている。静かだった。明け方だろうか。眠くはない。目は冴え、肩が軽かった。枕のくぼみも、天井の高さも、窓のほうを向いて眠っているこよみさんの背中も、すべてがあるべきようにあるように思えた。このままがいい、と思った。このままずっとここでこうして生きていたい。僕のいる世界は静かで、まるで自転をゆるやかに止めてしまったみたいだった。音もなく雨が降っていた。(98頁) 雨だ、と僕は音のない世界を乱さぬようにそっと声に出してみた。雨。こよみさんが向こうを向いたまま囁いた。 「月が明るいのに雨が降っている」 泣いている。こよみさんは泣いている。今夜の満月は覚えているのだと不意に思った。(99頁) 「まるきり思い出せないわけじゃないの」とあるときこよみさんはいったのだ。「昨日見た夢が脳裏をよぎるみたいに、いつかの場面が一瞬よみがえることがあるの。でも、速すぎてつかまえられない。そこにあった色や形みたいなものが、目の前をかすめてゆくの、まだ温かいままで。ふっと残像が消えて、もう戻らない」 こよみさんは静かに泣いている。眠れば消えてしまう月。その光に照らされて雨が降り続いている。僕は白い月のこちら側に細い細い雨が降っている様子を思い浮かべた。こよみさんは静かに泣きつづけている。(99頁) (内容紹介) 新しい記憶を留めておけないこよみと、彼女の存在がすべてな行助の物語。忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない。
Posted by
『羊と鋼の森』で本屋大賞を受賞した宮下奈都のデビュー作。 本作で文學界新人賞佳作に入選。 彼女の作品らしく心地よく、淡く、暖かい、たった107頁の切ないラブストーリー。 こよみさんが、焼いたたいやきを食べてみたい。
Posted by
宮下奈都さんの作品、久しぶり。 松葉杖で、少し内気な行助、たい焼き屋さんで絶品たい焼きをやくこよみさん。なかなか自信が持てない行助と、こよみさんと少しづつ近づいていく最中に、こよみさんが事故にあってしまう。 2人の障害はそれぞれ違うけど、お互いの世界の中に、小さくお互いがいればよ...
宮下奈都さんの作品、久しぶり。 松葉杖で、少し内気な行助、たい焼き屋さんで絶品たい焼きをやくこよみさん。なかなか自信が持てない行助と、こよみさんと少しづつ近づいていく最中に、こよみさんが事故にあってしまう。 2人の障害はそれぞれ違うけど、お互いの世界の中に、小さくお互いがいればよい。確かに、そうだな。一緒にいられれば、カタチは関係ない。一気読みでした。
Posted by
良かったけど、本の中でも出てくる本の話と同じ設定の割には感動は浅く、なんでわざわざこんな短い話で出版したんだろう?と不思議でたまらない。
Posted by
相変わらず綺麗な文章。だが、107ページの物語はあっという間に読み終わってしまう。 あまりに淡々としていて、少し勿体無い気がした。
Posted by
前に何気なく話した小さなことでも、 相手がちゃんと覚えていてくれていたりするととてもうれしくなる。 反対に前にキチンと話したはずの事を、また尋ねられたりすると あぁ・・・この人ほんとは、ワタシに興味なんてないんじゃないか?なんて思っちゃったりして。。。 記憶がないということが相手...
前に何気なく話した小さなことでも、 相手がちゃんと覚えていてくれていたりするととてもうれしくなる。 反対に前にキチンと話したはずの事を、また尋ねられたりすると あぁ・・・この人ほんとは、ワタシに興味なんてないんじゃないか?なんて思っちゃったりして。。。 記憶がないということが相手を傷つけてしまうことって意外と多いのではないだろうか。 そう考えると、主人公の女性が背負った 『一日しか記憶が持たない』という症状が、 いかに彼を傷つけているのかに思いが至り 胸が苦しくなるのです。 タイトル通り、物語を通して静かで優しい糸雨がずっと降り続いているような小説でした。
Posted by
2004年の作品を一冊の本として出版しているので、短編作品を読んでいる感覚でした。装丁や紙の上質さがこだわりを感じさせます。障害を持っている主人公ですが、好きな女性が不慮の事故に遭いその後一緒に暮らす事になります。決して明るい未来ではないのに、静かで穏やかな内容となっておりました...
2004年の作品を一冊の本として出版しているので、短編作品を読んでいる感覚でした。装丁や紙の上質さがこだわりを感じさせます。障害を持っている主人公ですが、好きな女性が不慮の事故に遭いその後一緒に暮らす事になります。決して明るい未来ではないのに、静かで穏やかな内容となっておりました。しなやかな文章はやはり作者の人柄がにじみ出てくるものだと毎回、読んでいて思ってしまいます。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
宮下さんらしい、静かで優しい世界。ときどき、はっとするような言葉に出会う。 交通事故に巻き込まれ、後遺症で昨日のことを記憶していられなくなったこよみさんと、生まれつき脚に麻痺のあるユキスケの静かな日々。 ーー人は何からできているのだろう? ユキスケは考える、 「朝ごはんにおいしかった干物だとか、選択物を干すときの癖だとか、二人で歩いた帰り道に浮かんでいた月だとか、そういう日々の暮らしの記憶・・・その些細なことこそが人間を作っているのではないか?」 であるなら、昨日のことを覚えていられなくなった人は、どうやって生きていけばいいのだろう。 悩み続けたユキスケが行き着いた思いとは・・・ ラストの静かな雨の光景に胸がしんとなる。 いい話なんだけど、、、2004年の文學界新人賞入賞作、本になっていなかった作品を、羊が本屋大賞をとったから単行本にしました感は否めない。 短い作品で、あっという間に読み終わり、1冊の本としては少し物足りなかったのが残念。
Posted by