あひる の商品レビュー
父親の同僚から譲り受けたあひるを庭で飼い始めると、静かだった家に急に来客が増えた。だが間もなくあひるは体調を崩し…。表題作他2編。 アメトークで読書芸人たちがこぞって勧めていた本。先に『こちらあみ子』を読んだのだけど、共通する独特の空気感は好き嫌いが分かれると思う。 児童小説の...
父親の同僚から譲り受けたあひるを庭で飼い始めると、静かだった家に急に来客が増えた。だが間もなくあひるは体調を崩し…。表題作他2編。 アメトークで読書芸人たちがこぞって勧めていた本。先に『こちらあみ子』を読んだのだけど、共通する独特の空気感は好き嫌いが分かれると思う。 児童小説のような優しい言葉で書かれた文章の所々に唐突に差し込まれる不穏なワード、でもその説明はされず周知の事実のように流され、読む方は不安が募っていく。 社会的弱者の心の動きを表現することに長けた作家さんだと思う。 最後の『森の兄妹』は、これも今村テイストなのだろうと警戒して読み進めたら意外や子供の心理を上手に掬い取った後味の良い作品で、自分が小さかった時の心細さや葛藤を生々しく思い出した。 2編に登場する「クジャク」から、もしかして3篇とも山間の同じ町が舞台なのではないかと推測した。
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テレビで紹介されて、そして、装丁のかわいらしさに惹かれて読みましたが、面白くて一気に著者のファンになりました。 平穏な生活のなかに潜む影や胸がざわざわするような…些細なことなのに落ち着かないような日常のひとコマが丁寧にすくいとられていて、読んでいる側も胸がざわざわするのに、続き...
テレビで紹介されて、そして、装丁のかわいらしさに惹かれて読みましたが、面白くて一気に著者のファンになりました。 平穏な生活のなかに潜む影や胸がざわざわするような…些細なことなのに落ち着かないような日常のひとコマが丁寧にすくいとられていて、読んでいる側も胸がざわざわするのに、続きが気になるし、読んでいて心地がよかったです。 あひるは短編。 残り2作は連作短編集でした。 違う作品も読んでみたいです。
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子供達を可愛がることに生きがいを見つけたように元気になって張り切るお年寄りと興味を向けるものがすぐに移り変わっていく子供達との間に出来ていくひずみ。かわいい挿絵とやさしい文章なのに心がずっしり重くなった。 「おばあちゃんの家」と「森の兄妹」のおばあちゃんは同じおばあちゃん?
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著者初読み。新聞の書評にて気になって読んだ作品。ほっこりとした、どこか懐かしく、ゆったりとした時間の流れが感じられる読後感。おばあちゃんの家に遊びに行き、おばあちゃんや近所の方と会話して世代を超えた交流が感じられ、賑やかだけど穏やかな部分があり、子供とは違い、純真無垢ではなく、子...
著者初読み。新聞の書評にて気になって読んだ作品。ほっこりとした、どこか懐かしく、ゆったりとした時間の流れが感じられる読後感。おばあちゃんの家に遊びに行き、おばあちゃんや近所の方と会話して世代を超えた交流が感じられ、賑やかだけど穏やかな部分があり、子供とは違い、純真無垢ではなく、子供から見た大人の世界の怖い部分、興味をそそられる部分もあるなど、子供と大人の世界観が交わるような感じである。様々な表情が垣間見え、素朴で素直さが見え隠れていた印象である。
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どうにも座りの悪い家族ばかり。 誰と誰が悪意があって、誰と誰に向かっているのか。 静かなだけに、冷え込む。
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何というか、不思議な小説である。表題を含む3編の短編集だけれど、どの作品も、何気ない家族の話なのだが、何故か背筋が寒くなる感じがしたのは何なのだろう? よくわからないが、普通の日常に潜む影がそこかしこに出てくる。普通に読んでいたら気がつかないようなちょっとしたことだけど、妙に尾を引くし、何かが頭に引っかかる。 これが「今村夏子」ワールドなのかも・・・・。この作品だけでは何とも言えないけど、先の「祐介」よりは、まだこちらの方が何か読みやすい。ただ、読みやすさは逆に怖ろしさであるかもしれない。とにかく不思議な作品だった。
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よくある日常の出来事。そこに潜むものが、実は一番怖いものかもしれないことを、改めて考えさせられました。
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ずっと読むのを楽しみにしていた今村夏子さんの新作。前作に引き続き、心が澄んでいくような、ギュッと苦しくなるような、そういう感覚。 今村さんは子どもの頃の、純粋で残酷で綺麗な感情を小説にしてくれる人。だからこんな気持ちになるんだな。 挿絵もとても合っていて素敵です。
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ほっこりしました。 それでいて、少しだけきゅうっと、胸を締め付けられるような。 何となく家族や昔からの友達に会いたくなって、 「ねぇねぇ、今日、こんなことがあったんだよ」と、 取り止めもない話を聞いてほしくなるような。 物語はどこで生まれるのだろう、ということを考えた。 物...
ほっこりしました。 それでいて、少しだけきゅうっと、胸を締め付けられるような。 何となく家族や昔からの友達に会いたくなって、 「ねぇねぇ、今日、こんなことがあったんだよ」と、 取り止めもない話を聞いてほしくなるような。 物語はどこで生まれるのだろう、ということを考えた。 物語はただの現象ではなくて、人の周りに生まれるのだろう。 あひるが家に来て、それで家族はどうなったのか。 私は何を感じて、どう考えたのか。何が変わったのか。 それは「人は小説のどこに胸を打たれるのか」ということと同じ答えのような気がする。 人は小説のあらすじではなくて、そこに描かれる人物にこそ感動するのだという、ある人の言を思い出した。 この小説に、そしてこの中に生きている彼らに、彼女らに出会えたことは、 日々の小さな幸せだと思う。
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それほど恵まれておらず寂しい思いをしている人に優しさとユーモア、時に辛らつな感じもありながらもやっぱり暖かい、誇張もあまりなく、それでいて面白い大変なセンスを感じる。 おばあちゃんや両親が悲しい思いをしそうになるのが読んでいてハラハラする。 『こちらあみ子』が大変な傑作だったので期待して読まずにいられない。比較すると地味ではあるもののとても面白かった。『こちらあみ子』を読んでいなくても充分面白いと思うけど、読んでいればより膨らみを感じることができる。
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