壁の男 の商品レビュー
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伊苅さんっていう一人の人間を形成する過去を 少しずつ剥がしてくお話。 大切なものを少しずつ失くしていく男の 悲しいけど、悲しいだけじゃないお話。 でもやっぱ悲しかった 私は。 小さくって愛おしい存在を失うお話は 母親となって以来ほんとうにしんどい。 凡庸な言い回しだけど 絵とか音楽とか 生きてくのに決して「必要」でないものが ひとを生かしてくことって確かにあると思うんだ。 創るほうだけじゃなく それがそこにあることが「必要」なひともいるし ね。 ■ ■ ■ ■ ■ 闇をまとうほうの「貫井作品」を期待して読んだひとは ちょっとがっかりかも。 帯の惹句にあるような『感動』はともかく 『衝撃』はぶっちゃけあんま無い。 っちゅうことで、フラットな気持ちで読むことをお勧め。
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北関東のさびれた町。その町全体を覆いつくす芸術とは程遠い、思わず苦笑してしまうような絵。しかし、その絵には見る者に訴えてくる力があった。ネットで話題となり、今や観光地となったその町の、その絵に興味を持ったルポライターが取材を試みる・・・ その絵を描いた男の孤独な半生が、淡々と描か...
北関東のさびれた町。その町全体を覆いつくす芸術とは程遠い、思わず苦笑してしまうような絵。しかし、その絵には見る者に訴えてくる力があった。ネットで話題となり、今や観光地となったその町の、その絵に興味を持ったルポライターが取材を試みる・・・ その絵を描いた男の孤独な半生が、淡々と描かれる。 たった一人の娘を病で失い、妻も職も失い故郷に帰ってきた男は、昔の同級生からもよそ者扱いされる。 心の空白を埋めるように男が自宅の壁に描いた絵が、いつしか町全体を覆いつくすに至った経緯。絵の持つ力。 時系列が頻繁に前後して、ちょっとわかりづらい。 男の哀しい半生も、絵を描く動機もわかるのだけど、終わり方も唐突な感じがして、帯にあるような「ラストには言いようのない衝撃と感動が待ち受ける・・・」とはならなかったのは私の読み込み不足?
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素晴らしい出来栄え。 描くべきところをきちんと描き、いらないところは完全に削ぎ落とされた、完璧とも思える作品だった。 物語への引き込み方、それぞれの登場人物の思いの描き方はとても丁寧で、言葉も美しく柔らかだ。 1人の人生を矛盾なく、しかも効果的な順で描く手法には脱帽です。
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なるほどそういうことかというのはあった。それにしても利絵子が結局どうして伊苅と結婚したのか?利絵子は笑里をどう思っていたのか?堀越はあれだけのことだったのか?もっとストーリーの中で複雑に絡んでいたら面白かったのではないかと思った。
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貫井徳郎作品はすべて読んでいるし、重くしんどい作品も多かったけれど、ある意味、今回の新刊ほどしんどい作品は初めてだろう。 ある北関東の集落で、家々の壁を彩る奇妙な絵。決して上手くはないが、なぜか見る者を惹きつけてやまない。ちょっとした観光スポットになった町に、フリーライターの男が、絵を描いた人物を訪ねるが…。 当然ながら、容易に心を開かない、作者の伊苅。絵を描くようになった経緯に、フリーライターの男も何とか迫ろうとするが、物語の大部分は、伊苅の独白によって進む。各章が時系列順になっていないのは、理由がある。 伊苅の母は美術の教師であり、二科展に入選するほどの腕前。それなのに絵が下手なことに、彼は幼少時から劣等感を抱えていた。彼だけではない。父もまた、妻に劣等感を抱えていた。僕自身、劣等感を抱えて生きてきたので、2人の気持ちはわかる気がする。母の言葉は正論だが、正直割り切れなさも残る。 伊苅以上に、後に妻となる女性の生い立ちも、歪んでいる。伊苅だからこそ、理解してあげられたのか。幸せな結婚生活は、長続きしないとだけ書いておく。僕自身が家庭を持ち、子を授かった今、こういう話にはめっきり弱くなった。 帰郷する前、彼は会社員として真面目に勤めていた。子会社を見下ろす態度をとる本社の人間というはありがちだが、彼は常に対等に向き合う。だからこそ、家族ぐるみで付き合う関係になった。だからこそ、こんな悲劇に直面した。 その名前が出てきた時点で、え? と思ったが、これは酷い…。これはないよ貫井さん…。現実にこれに近いことが起きているだけに。しかも…。これほど運命に翻弄されれば、なるほど下手な絵にもパワーが宿るだろう。 今なら、『慟哭』も読めないかもしれない。本作を読み終え、そう思った。貫井節の筆致が円熟味を増しているだけに、しんどい1冊だった。でも、読んでよかった。
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北関東の小さな集落で、家々の壁に子供の落書きのような奇妙な絵を描く伊刈。 伊刈の半生を描いた感動作です。
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なんとも切ない物語。栃木県のある街は異様な光景が広がっていた。家々の壁に稚拙な絵が描かれている。その絵を描いた男、伊苅。伊苅はなぜこのような絵を描いたのか。ラストには全てが解き明かされる、というか、心に染み渡ってくるのだが、ラストに至るまでの経緯が本当に丁寧に描かれている。 ...
なんとも切ない物語。栃木県のある街は異様な光景が広がっていた。家々の壁に稚拙な絵が描かれている。その絵を描いた男、伊苅。伊苅はなぜこのような絵を描いたのか。ラストには全てが解き明かされる、というか、心に染み渡ってくるのだが、ラストに至るまでの経緯が本当に丁寧に描かれている。 この物語は、伊苅側からの視点と、この絵を描いた男に興味を持ったノンフィクションライターの鈴木の視点から成り立っている。読者もこの鈴木と同じく、なぜ伊苅はこのような絵を描くことになったのか。そして、伊苅の人となりが語られていく中で、伊苅自身に興味を持つことになる。 そして、読み終えると、静かな感動に浸ることになるだろう。
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【絵を描き続ける孤独な男の半生と隠された真実】小さな町の家々の壁に、ひたすら壁画を描き続ける男。笑われても笑われても理由を語らぬその沈黙の裏には、ある哀切に満ちた理由が。
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