サピエンス全史(下) の商品レビュー
人間社会における宗教の意義と役割、イデオロギーを宗教と同じものであるとする説明はおもしろい。 宗教は、貨幣や帝国と並んで人類を統一する要素のひとつで、超人間的な秩序の信奉に基づく人間の規範と価値観の制度と定義できる。超人間的な秩序の存在を主張することによって、それが人間の気まぐ...
人間社会における宗教の意義と役割、イデオロギーを宗教と同じものであるとする説明はおもしろい。 宗教は、貨幣や帝国と並んで人類を統一する要素のひとつで、超人間的な秩序の信奉に基づく人間の規範と価値観の制度と定義できる。超人間的な秩序の存在を主張することによって、それが人間の気まぐれな合意の産物ではなくなる。さらに、広大な領域を傘下に統一するためには、いつでもどこでも正しい普遍的な超人間的秩序を提供し、それをすべての人に広めることを求めなけれなならない。普遍的で宣教を行う宗教は、紀元前1000年紀に現れた。 動植物は、狩猟採集社会では霊的な円卓を囲む対等のメンバーだった。農業社会になると資産に格下げされたが、動物を確実に繁殖されることも、流行病の発生を防ぐこともできなかった。豊穣の女神や空の神、医術の神などは、人間と動植物の仲立ちをするために現れ、人間の動植物の支配権と引き換えに、神々への永遠の献身を約束するものだった。多神教は、世界が雨の神や軍神などの一団の強力な神々によって支配されていると考えた。やがて多神教の信者の一部は、自分の守護神が唯一の神で、宇宙の至高の神的存在であると信じ始めて、一神教が生まれた。その神は、関心を持ち、えこひいきすると考え続け、取引ができると信じ、病気から快復したり、戦争で勝ったりできるよう嘆願した。 イデオロギーは言葉の綾に過ぎない。共産主義は、プロレタリアートの必然的勝利で間もなく階級闘争の歴史は幕を閉じると予言する資本論が聖典や預言の書に類似しており、宗教と遜色ない。近代の信念のひとつである人間至上主義は、人間が独特で神聖な性質を持っており、他の動物や現象の性質と根本的に違うという信念で、3つに分けられる。自由主義は、人間性とは個々の人間の特性であり、個人の自由がこの上なく神聖であると信じるもので、各個人には自由で永遠の魂があるとするキリスト教の遺産。社会主義は、人間性は個人ではなく集合的なものと信じるもので、全人類の平等を求めるが、あらゆる魂は神の前に平等であるという一神教の焼き直しに過ぎない。進化論的な人間至上主義は、人類が不変で永遠のものではなく、進化も退化もしうる存在と信じるもので、ナチスが利用した。 近代科学とヨーロッパの帝国主義は、自らの無知を認め、外の世界に出て新たな発見をすることで世界を制するという願望を持って絆を結んだ。それ以前の帝国は、自分たちの世界観を利用して広めるために征服を行った。
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さまざまな意味で、示唆に富む本です。 歴史を、ある時代だけを切り取って見ていたのでは分からないことが、ホモ・サピエンスの通史として、全体を通すと見えてくるものがあります。 「歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なもので...
さまざまな意味で、示唆に富む本です。 歴史を、ある時代だけを切り取って見ていたのでは分からないことが、ホモ・サピエンスの通史として、全体を通すと見えてくるものがあります。 「歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ」 超お勧めの本です。
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ホモ・サピエンスは最強なのは、絶対的な時間軸の上では、ほんの一瞬のこと。 想像豊かな能力が未来のどこに向かうのか… まだ間に合うのだろうか? 最強でいられる時間は、どのくらい残されているのだろう? 消えてしまう、時間を越えられない、 最後のとき、信じるもの。 今はあると力強く言え...
ホモ・サピエンスは最強なのは、絶対的な時間軸の上では、ほんの一瞬のこと。 想像豊かな能力が未来のどこに向かうのか… まだ間に合うのだろうか? 最強でいられる時間は、どのくらい残されているのだろう? 消えてしまう、時間を越えられない、 最後のとき、信じるもの。 今はあると力強く言える。十分。。。
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★SIST読書マラソン2017推薦図書★ ★科学道100 / めくるめく失敗 【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&mater...
★SIST読書マラソン2017推薦図書★ ★科学道100 / めくるめく失敗 【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11700189
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全史と銘打つとおり実にさまざまな切り口からサピエンスの歴史が語られる。非常に面白い。そのなかでも、歴史が人類の幸福にどう影響したかという視点は重要な指摘に思われる。結論としては、大きな進歩を遂げたが別に人類は幸福になったとは言えず、またこれからどうなるかもわからない、といったとこ...
全史と銘打つとおり実にさまざまな切り口からサピエンスの歴史が語られる。非常に面白い。そのなかでも、歴史が人類の幸福にどう影響したかという視点は重要な指摘に思われる。結論としては、大きな進歩を遂げたが別に人類は幸福になったとは言えず、またこれからどうなるかもわからない、といったところ。 著者の主張はあとがきの項によく要約される。『自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?』
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目から鱗の作品。上巻ほどの衝撃はないが、科学や資本主義がいかに人類を発展させたか新しい視点から解説している。
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遺伝操作、サイボーグ、脳内を見る等これからどんどん科学技術は進む中、サピエンスを肉体的にも精神的にも越える知的な生命体がいつか生まれる。 科学の進歩は死や老や病から逃れるために進むことを止めることはできない。 サピエンスはネアンデルタール人と同じ運命になるのか・・
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ものすごいボリュームでとても1度読んだだけでは消化しきれない。印象に残ったのは、私たちは壮大な虚構の中に生きているという見方。
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上下巻なんとか読み終わった。 人類(サピエンス)の歴史、これからどこへ向かってくのかがまさに目から鱗。 読み落としてる所もかなりありそうなので、もう一回読まなきゃと思わせられるがいつ読めるかなぁ
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『サピエンス全史(下)』 まだまだ、辿り着けない深い場所があるのはわかるのに、そこにはまだ近づく力がないことを感じさせられる。しかし、いまの自分で感じとれるすべてを出し切って探検してきた読後感がある。 静かな森のなかの小さな沼の横で、カラダを乾かしながら、永い人類の過去とこれか...
『サピエンス全史(下)』 まだまだ、辿り着けない深い場所があるのはわかるのに、そこにはまだ近づく力がないことを感じさせられる。しかし、いまの自分で感じとれるすべてを出し切って探検してきた読後感がある。 静かな森のなかの小さな沼の横で、カラダを乾かしながら、永い人類の過去とこれからも続くであろう未来を、今現在の自分を起点に想像している。 『マクロ歴史学』という言葉が想像させる、“歴史”を俯瞰したうえで、再度歴史の様々な事象に可能な解釈を施し、未来への物語りを紡いでいく壮大な試み。 それは著者が言葉にした「歴史を研究するのは未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然的なものでも、必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ」という定義を前提にしている。 あたまのなかに永い人生をかけて蓄積されてきた既成のテンプレートを、もう一度無限のピースに砕いて再構築させてくれたような感覚が、いま目の前の世界を映している。 2017/06/03
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