学校が教えないほんとうの政治の話 の商品レビュー
いやー、よかった。文芸評論家の斎藤美奈子氏による政治参加とは何か、選挙に行くのが楽しくなるにはを解説する。そもそも右翼と左翼ってなに?保守とリベラルってどういうこと?というような政治参加の頻出語を日本の政治史を追いながら説明していき、また当時の日本といまの日本で状況がどう変わって...
いやー、よかった。文芸評論家の斎藤美奈子氏による政治参加とは何か、選挙に行くのが楽しくなるにはを解説する。そもそも右翼と左翼ってなに?保守とリベラルってどういうこと?というような政治参加の頻出語を日本の政治史を追いながら説明していき、また当時の日本といまの日本で状況がどう変わっているのかを紐解いている。口語体で書かれているため、かなりとっつきやすく読みやすい。また前の項目で出てきた用語を所々で振り返ってくれるので、あれ。どういう意味だっけ?と前のページに遡ってはわからなくなる新書挫折を起こしにくい作りになっている。ちくまプリマーということで本来は20~25歳を想定しているらしいけど、いくつになっても読んでほしいし、政治史の流れとか言葉の意味を改めて確認しておきたい、という人にはぴったり。また刊行当時は2016年なのだけれど2024年になって読んでみると、斎藤美奈子氏の予想が悪い方向で当たっていたりもして、いまのこの状況は見る人が見れば予想していた通り、ということなんだろうなあ。何にせよ何となく選挙に行ったり行っていなかったりしている「ゆる体制派」のような:人たちに、この本が1冊でも多く届けばいいと思う
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「日本国憲法って太っ腹でしょ。『国家によって侵されない自由』と、『国家にいろいろ要求する権利』の両方を認めている。まるで国民が主人で、国が家来のようです」 語気には棘があって、ちょっぴり挑戦的。書かれている内容も確かに学校では教えない。というか、表立って教えられない。政治に明る...
「日本国憲法って太っ腹でしょ。『国家によって侵されない自由』と、『国家にいろいろ要求する権利』の両方を認めている。まるで国民が主人で、国が家来のようです」 語気には棘があって、ちょっぴり挑戦的。書かれている内容も確かに学校では教えない。というか、表立って教えられない。政治に明るい知人から話を聞いているような感覚だった。 けれどもここまでサクサクいけたのは、自分も今の政治に思うところがあったからなのかもしれない。(きっと自分は、本書で言うところの「ゆる反体制派」なのだろう) 普段耳にする政治用語をよく理解せぬまま使っていたりと気づきも多かった他、自分ごとで政治を捉えるきっかけの一つにもなった。 中高生より大人の方がチクリ(あるいはヒヤリ?)とくるだろうが、それは真実がまるごと自分の中に浸透し始めている兆候なのだと信じたい。 本書では日本史の出来事を交えながら、体制派・反体制派、右派・左派について洗い直し、我々と政治との関係性を改めて見つめ直している。 政治家でなくても、政治には参加できる。投票だけでなく、正しい知識のインプットや自分の立ち位置(政治に何を求めるのかや派閥等)を定めたり、必要なら声を上げたって良い。 「どうしてワタシがこんな目にあわなくちゃいけないわけ?どうして彼や彼女がああいう境遇に置かれてるわけ?そう思った瞬間から、人は政治的になる。[中略]すべてのスタートは『こんちくしょう』です」 労働や社会福祉問題が「こんちくしょう」の最たる例だろう。 近年よく持ち上げられている北欧諸国の「高福祉・高負担」は、政府と国民との間に強い信頼関係がないと成り立たない。夢のような政策でも、日本では実現できない理由が必ずある。 でもベターな世界があることを知った以上、動かないという理由もない。「国益より人権のほうが上。国家より個人のほうが大切。これが近代国家の原則であり、国際社会の常識」なのだから、一人ひとりが生き延びて何が悪い。 「個人」で思い出したが、「個人と全体」についても多く触れられている。 中でも四大公害病を例に、個人の幸福を追求するとは何かを考えるくだりが揺さぶられた。こうして洗い直してみると大変理不尽な話で、被害者やご遺族は国や大企業を相手に20年、またはその倍の年月訴え続けなければならなかった。 しかしその働きかけは実を結び、環境に配慮した政策が次々と打ち出されていったのである。「個人の権利の主張は、全体を救うことにもつながる」…。ここで揺さぶられたのだった。 一方で自分が正しいと思ったことは、実行すると、どのように伝播していくのかを思索するのも大切だと思う。 「政治を考えるのに『中立』はない」と、著者は序盤で断言している。 一番いけないのは、どっちつかずでいること。でも現代の風潮は我々に「中立」を求め、政治トピックを持ち出そうものなら危険人物認定されてしまう。 しかし「中立」であることは即ち、お上のなすがままということになる。それは自分たちの生活を放棄しているってことになるのでは?と薄寒くならないだろうか。
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◆誰に投票すればいいか、わかるようになるために 中高生向けの「ちくまプリマー新書」には、大人でもためになる、いい本がたくさんあります。 この本もそのひとつ。わかりにくい政治の世界を、5つの対立軸で見事に整理してくれます。 そして、スポーツと同様、政治でも「ひいきのチーム」を...
◆誰に投票すればいいか、わかるようになるために 中高生向けの「ちくまプリマー新書」には、大人でもためになる、いい本がたくさんあります。 この本もそのひとつ。わかりにくい政治の世界を、5つの対立軸で見事に整理してくれます。 そして、スポーツと同様、政治でも「ひいきのチーム」を持つことの大切さを説いています。 「ひいきのチーム=ホーム」を持てば、やる気も出て、友達も増え、アウェイにも関心がでるというもの。 この本、以前から推薦していたのですが、2019年7月4日の朝日新聞『天声人語』でも、紹介されていました。 ちなみに、著者は学者ではなく、知る人ぞ知る毒舌の書評家。 この本の口調が気に入ったら、是非、彼女の他の本も、手に取ってみてください(もっと過激です)。
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現在の複雑な政治状況の見取り図を、いくつかの対立軸を使って、わかりやすく描き出している。書きぶりはぶっちゃけ話のようだが、混乱しそうな概念を慎重に段階を踏みながら上手に整理している。物事をあえて単純化しているようで、じつは対立軸の組み合わせや展開によって、実際の事態や概念が複雑で...
現在の複雑な政治状況の見取り図を、いくつかの対立軸を使って、わかりやすく描き出している。書きぶりはぶっちゃけ話のようだが、混乱しそうな概念を慎重に段階を踏みながら上手に整理している。物事をあえて単純化しているようで、じつは対立軸の組み合わせや展開によって、実際の事態や概念が複雑であることを理解できるようになっている。そして自分の声をなんとか若い人たちに届けなければという、著者の切実な危機感、というか強烈な熱意を感じる。これはいろいろな意味で学者には書けない本だなと思う。
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これぐらいの内容を頭に入れておけば、日本の政治について相当程度語れる。授業においては、この本に書かれている内容にどのような教材で迫っていくか、この本で提示されている対立軸をめぐってどう意見形成してもらうかがポイントとなろう。
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今の中学生、高校生、それに政治の知識にうとい大人達に、ぜひ読んでもらいたい本。特に、選挙にも行かない今の大人達には、この本に書かれている基本的な教養すらない人がほとんどだろう。前半から日本で起きた歴史の出来事を軽く交えるなどして、政治の基本、考え方などから、「右翼・左翼」「保守・...
今の中学生、高校生、それに政治の知識にうとい大人達に、ぜひ読んでもらいたい本。特に、選挙にも行かない今の大人達には、この本に書かれている基本的な教養すらない人がほとんどだろう。前半から日本で起きた歴史の出来事を軽く交えるなどして、政治の基本、考え方などから、「右翼・左翼」「保守・リベラル」など勘違いしている人が多い部分にも、しっかり触れていて、政治の教養がある人でも十分読める。 すでにこれらの知識はあったものの、政治にうとい人にどのように説明していいか困る事も多かったため、「なるほど、確かにこう言えば理解してもらえるな」といった新しい気づきもあったため、個人的に文句なしの良書である。
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今の政治状況に繋がる日本の近代史が簡潔に読みやすく書かれており、サクッと読めました。 若い頃、「物は言いよう」に救われた身としては、相変わらず美奈子節が炸裂していて爽快でした。 最近「モダンガール論」「妊娠小説」を読み返し、改めて斎藤美奈子は分かりやすく物事を(茶化したりふざけた...
今の政治状況に繋がる日本の近代史が簡潔に読みやすく書かれており、サクッと読めました。 若い頃、「物は言いよう」に救われた身としては、相変わらず美奈子節が炸裂していて爽快でした。 最近「モダンガール論」「妊娠小説」を読み返し、改めて斎藤美奈子は分かりやすく物事を(茶化したりふざけたりしながらも)伝える天才だと思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
安倍晋三元首相の国葬の是非をめぐり、また北朝鮮拉致被害者の帰国から20年という節目を迎えるにあたり、「政治」に関心を集めたいと思って本を探している中で出会った一冊です。 学校では特定の政党や政治スタンスについての授業(指導)ができない(教員個人の意見表明、という形であっても非常に神経質にならざるを得ない)という事情がある一方で、生徒に対しては「政治に関心を持つように」指導してゆかねばならないというジレンマがあります。 なぜ、政治に関心が持てないのか、それは「自分のスタンス」と「推しが誰(何)か」が明確になっていないからだ、と筆者は主張します。 そして「右派/左派」「保守/リベラル」「体制派/反体制派」などの対立軸を設定して社会問題を紹介し、「政治スタンスに”中立”はない」と繰り返し主張します。 自分自身がどのような政治スタンスなのか、今の世の中に対して「このままでよい」と思っているのか「変えなければならない」と感じているのか。 私憤や義憤を抱いたところから、人は政治的になる、という筆者の「あとがき」に共感しましたし、ぜひ生徒に紹介してみたいと思う本でした。 文章は中学・高校生を意識したのか、少しフランクすぎる印象もありますが、「何をめぐって”対立”しているのか」ということがわかりやすく解説されていますし、自分がそれぞれの立場に「賛成」なのか「反対」なのかを考えるきっかけを与えてくれる本だと思います。
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わかりやすい文章を書く著者でした。 政治を語る上で中立はあり得ないという切り口、ほんと、その通りだと思います。 学校では政治的中立を守って授業しなければならないと学習指導要領に書いてあるので、社会の先生たちはよほど勇気がないかぎり、踏み込んだ授業ができないと思う。でも、こういう風...
わかりやすい文章を書く著者でした。 政治を語る上で中立はあり得ないという切り口、ほんと、その通りだと思います。 学校では政治的中立を守って授業しなければならないと学習指導要領に書いてあるので、社会の先生たちはよほど勇気がないかぎり、踏み込んだ授業ができないと思う。でも、こういう風に学校教育で政治的中立を掲げているから、みんな政治に無関心になっちゃうんじゃないの?って思ってしまいます。若者が投票行かないのは、馬鹿だ、じゃないよ、興味を持たせられるような授業がマニュアルで禁止されてる体制に問題があると思うよ。ほんとに。 …脱線してしまいましたが、著者は結構リベラルな思想なので、右派の人が読むとイライラしてしまうのかもしれません。ですが、右派の人にも読んでほしいと思います。右派にとっては敵であるリベラルの考え方がわかる本になってますから。あと、右派の考え方も同時にわかるようにもなっているので、再確認ができるかもしれません。
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プリマー新書は取っつきやすくて良い。好みの著者だったり、興味のあるジャンルだったりするとなおさらのこと、良い。そんな自分的に、本書がプリマー新書の理想的なラインナップと思える。その道の専門家じゃないからこそ書ける、初心者に理解しやすい入門書。本書を読めば、『選挙権を持つ年齢にはな...
プリマー新書は取っつきやすくて良い。好みの著者だったり、興味のあるジャンルだったりするとなおさらのこと、良い。そんな自分的に、本書がプリマー新書の理想的なラインナップと思える。その道の専門家じゃないからこそ書ける、初心者に理解しやすい入門書。本書を読めば、『選挙権を持つ年齢にはなったけど…』っていう心理的ハードルを、大胆に下げてもらえること請け合い。何を判断基準にすれば良いのかってあたりも、すんなりと腑に落ちる。これ、中高生時代に読みたかったな。政治・経済や現代社会の教科書より、こっちをまずは当たった方が良いのでは、とすら思う。
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