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江戸川乱歩名作選 の商品レビュー

4.2

59件のお客様レビュー

  1. 5つ

    23

  2. 4つ

    19

  3. 3つ

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2020/11/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『押し絵と旅する男』 この作品では、額に入った兄の人間的生命の美しさと、押し絵に描かれた娘の芸術的(表面上の)美しさを対比させ、二つの面の美しさを表しているのではないだろうか。 まず、私(主人公)が汽車の中で、「四十歳にも六十歳ぐらいにも見える」男に出会い物語は進んでいくが、その際にその男の特徴として「私」は「顔じゅうにおびただしい皺があって」や「色白の顔面を縦横にきざんだ皺」など年老いた人間にしか見られない「皺」があることを述べ老人という人間の老いを連想させ、その後に「十七、十八の水のたれるような結いの綿の美少女が」で人間の若々しい美を連想させるような書き方をしていた。また、その続きに「その老人の洋服の膝にしなだれかかっている」と書いてあり、これは「私」も「額の持ち主の老人にそのままばかりか(中略)そっくりであった」と書いてあるので、先ほども述べたように持ち主の老人には顔に「皺」があるということだったので、額の中の人物も老いているということ、また人物が似ているということだったが作品を読めば分かる通り兄弟なので(額の中にいるのは)兄と持ち主の弟で事実的には同一人物ではないということが分かる。しかし、二人の共通点として人間の老いという意味では、兄と弟は同じ分類として分けられ、また、押し絵として作られた「娘」は兄や弟よりも若く綺麗で、芸術(押し絵)だからこそ手に入れられる永遠の若さつまり、美しさがあるということが言える。さらにその後「私」はその押し絵を見て「押絵の人物が二つとも生きていた」と言ったことから、老いている兄(加えて弟)と若い娘(美少女)を同じ天秤にかけ比較する前触れだと予測することができる。 なぜ、このように人間の生命について、特に美しさなどをこの作品で述べているのか、判断することができるのか、というと後半のセリフで弟が「私」に「悲しいことには、娘の方は、いくら生きているかといえ、もともと人のこしらえたものですから、歳をとることがありませんけれど、兄の方は、押絵になっても(中略)人間ですから私たちのように歳をとって参ります」つまり、弟は兄の老いが悲しいと言っている。ここだけを読むと読者は、人間は老いるよりも若い方が何でも美しいのだろうと考えてしまうかもしれないが、この作品を全体的に見れば、この作品をどう考えることができるか。様々意見はあるだろうが、弟は(自分が老いてもずっと兄のことを考え、兄に新婚旅行をさせたいなど)非常に兄思いであるということが分かると言える。 このことから、「美しさ」は若い人間だけにあるわけではなく、老いるという中身の美しさ、今までしてきた経験、キャリア、人情がその人を作りその人間の美しさを表すということであり、娘の芸術的な永遠の美しさ(表面上の美しさ、中身はない)の二つの面を対比させ、人間にしかない老いることでの美しさと芸術的的な表面上の美しさを対比させ、人間にしかない生命の美しさを作者は強調させたかったのではないか、と考える。

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2020/11/16

「石榴」石榴と表現されるのは大変グロテスクなものなのだが、ふわりふわりと「私」と一緒に事件の周辺を漂うこの空気感が乱歩らしくて愛おしい。思いがけないラストシーンが絵のように浮かぶ。ふと思い立って調べてみたら石榴の花言葉は「円熟した優雅さ」実の花言葉は「おろかしさ」「結合」だそうだ...

「石榴」石榴と表現されるのは大変グロテスクなものなのだが、ふわりふわりと「私」と一緒に事件の周辺を漂うこの空気感が乱歩らしくて愛おしい。思いがけないラストシーンが絵のように浮かぶ。ふと思い立って調べてみたら石榴の花言葉は「円熟した優雅さ」実の花言葉は「おろかしさ」「結合」だそうだ。読後それがしっくりくるような気さえする。ラストの中編「陰獣」も少しやり過ぎにも思えるミステリの醍醐味を堪能。間に挟まる短編5つのうち4つは既読だったが、どれもお気に入りで再読でもじっくり楽しんだ。

Posted byブクログ

2020/06/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2020/06/28〜6/30 【感想】 初めて江戸川乱歩読んだ 奇妙、不気味という印象 「石榴」 話の流れがすごく面白かった! でも、絹代の証言がかなり疑問 ・万右衛門は黙っていたのか喋っていたのか ・抱擁(P55)する距離まで近づいたなら主人か否かわかるだろう このふたつが気になって後半入ってこなかった、もっとしっかり読めばわかるのかなあ? 「押絵と旅する男」 奇妙だけど引き込まれてしまう 老人も押絵の話も蜃気楼みたいだなあ 名作選の中でいちばんすき 「目羅博士」 導入のサルの話が個人的に好き まるで相好が変わって、顔じゅうが皺くちゃになって、口だけが、裂けるほど、左右に、キューッと伸びたのです(P141) →不気味さを強く感じる表現だな、と ※ルンペン=浮浪者 「人でなしの恋」 面白かった、読みやすかった 恋愛感情の表現が繊細で恋愛小説書いて欲しくなるwww 「白昼夢」 不気味、に尽きる 「踊る一寸法師」 気分悪くなってしまった 「陰獣」 面白かった 事実が最後までわからない、ここまで読み応えがあるのにもやっとさせるのすごいなあ

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2020/05/09

だいぶ前に買って積んでた本。 友達が乱歩にハマってるらしく話題に上がったのでやっと読みました。 子供の頃に読んだ気がするのがちらほら。でも覚えてないものですね。 乱歩の思惑通りの場所でハラハラワクワクして、見事に楽しませられたかんじ。

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2020/04/27

『江戸川乱歩傑作選』が藤子・F・不二雄なら『江戸川乱歩名作選』は藤子・A・不二雄だ。(知らない人は御免なさい)ダークサイドの濃い江戸川乱歩作品が並ぶ。 自身を揶揄したかのような『陰獣』も面白かったが、個人的には『踊る一寸法師』が好みだった。本作品が持つ何とも奇妙で妖しい雰囲気が...

『江戸川乱歩傑作選』が藤子・F・不二雄なら『江戸川乱歩名作選』は藤子・A・不二雄だ。(知らない人は御免なさい)ダークサイドの濃い江戸川乱歩作品が並ぶ。 自身を揶揄したかのような『陰獣』も面白かったが、個人的には『踊る一寸法師』が好みだった。本作品が持つ何とも奇妙で妖しい雰囲気が良い。巻末には江戸川乱歩自身の各作品の寸評が収録されておりこちらも楽しい。

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2020/03/30

推理系は正直なところパターンが読めてきてしまう。 とはいえ『白昼夢』とか『踊る一寸法師』のような、怪奇幻想系はやたらと引き込まれる。 『陰獣』では自身の作品のオマージュが出てくるけど、なるほど江戸川乱歩は春泥側の人間やと。

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2020/01/11

乱歩らしさがしっかり詰まった短編集。怪奇とミステリーの世界観。「踊る一寸法師」が不気味で良かった。 「陰獣」には、乱歩の別作品のパロディ的な部分があるため、名作選を読む前に、同じ新潮の江戸川乱歩傑作選を読んでおいた方が良い。

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2019/12/20

全集も何度も刊行されているし今親しんでいる和製ミステリの生みの親育ての親で、これが読めるのは嬉しかった。横溝正史や高木彬光などを見つけ出した大乱歩の探偵小説。ミステリといわないところに重みを感じます。 目次は「石榴」「押絵と旅する男」「目羅博士」「人でなしの恋」「白昼夢」「踊...

全集も何度も刊行されているし今親しんでいる和製ミステリの生みの親育ての親で、これが読めるのは嬉しかった。横溝正史や高木彬光などを見つけ出した大乱歩の探偵小説。ミステリといわないところに重みを感じます。 目次は「石榴」「押絵と旅する男」「目羅博士」「人でなしの恋」「白昼夢」「踊る一寸法師」「陰獣」です。 どれも何度も取り上げられていたのでずいぶん前に読んでいました、ストーリーはきちんと覚えてはいないのですが、肝心の解決部分の方を覚えていたのが多かった、残念。 それで謎解きというより改めて背景になっている幻想的な表現を読むと、当時の珍しい風俗などくっきり鮮やかな手並みで書いてあるのが改めて印象的でした。ジャンルとしては推理小説ですが、多少エロティックだったりグロい所もあって、短編でもずいぶんひねりが効いて面白かった。 最後に載っているのが長編の「陰獣」 これは初めて読んだのですが「陰獣」は今では年のせいか恐怖感にも慣れてしまっていたけれど、書き出しから興味深かった。 私は思うことがある。 探偵小説家というものは二種類あって、一つの方は犯罪者型とでもいうか、犯罪ばかりに興味を持ち、たとえ推理的な探偵小説を書くにしても、犯罪の残虐な心理を思うさま書かないでは満足しないような作家であるし、もう一つの方は探偵型とでもいうか、ごく健全で、理知的な探偵の径路のみ興味を持ち、犯罪者の心理などには一向頓着しない作家であると。 「陰獣」にはこの二つのタイプの探偵作家が出てくる。 殺人事件が起き、それの回顧録をノートに残しているのはもちろん理知的な後者で、自分は全くのおひとよしの善人だと言っている、確かにその通りなので事件に巻き込まれる。 事件当時世間に受けているのは犯罪を煽情的にこれでもかと書く大江春泥などで前者だった。 私(善人という作家)は博物館でそっと隣に立った女性に一目でひかれた。言葉を交わしてみると彼女は私の小説のファンだと言って、ときどき手紙が来るようになった。その女性・静子は実業家小山田氏の妻だった。 相談があるという手紙で出かけてみると、彼女は身の上話をした。 女学生時代の大恋愛の相手だった平田という男がいまだにつき纏ってくるので恐ろしい。いつもどこかで平田の気配がする。耳を澄ますと天井から時計の音がする。 平田の筆跡で手紙が来る、その手紙を見ると、平田は今では売れっ子の大江春泥だと書いてあった。 あの血みどろで悪趣味な小説を書き、そこが世間に受けている春泥だから何をされるか、と怯えていた。 たびたびあっているうちに静子と深い恋愛関係に堕ちてしまった。借りた土蔵の二階を静子の趣味でしつらえ遊戯と称して関係を持つようになる。 二人が夢中になって遊び耽っている間に、静子の夫の死体が隅田川に流れ着き乗り合い汽船のトイレで発見された。 恨んでやる殺してやると手紙に書いてきた春泥が実行したのか。 しかし彼は人嫌いで世間に顔を見せるのを極端に嫌い転居を繰り返していたが、事件の後ふっつりと後を絶ってしまった。 さぁ、静子は?春泥は?犯人は?私の日記は克明に経緯を記してあったがその後春泥は見つからず、脅迫の手紙も来なくなった。 事件の様相は二転三転、最初に書いたように、善良な作家である私は、腑に落ちない時間の矛盾に気が付く。 残りの6篇も、オチが鮮やかなもの、もの悲しい結末をにおわせるもの。思いもよらない真実が隠されていたもの。酔っ払いの悪い冗談で辱められた男の胸のすく復讐譚など。やはり面白かった。 再読して乱歩の世界に浸ることができた。

Posted byブクログ

2019/11/03

前から読んでみたかった。プレミアムカバーのデザインが綺麗で買いました。全部良かった。人間の欲深さ、業の深さを感じました。世界観が最高で読んでいると入り込んでしまいます。まだまだ読みたい。

Posted byブクログ

2019/10/31

意外と読んでいなかった江戸川乱歩を改めて読んでみた。一作目から引き込まれていって、すごいなあ!ちょっと映像では怖そうだなと思うお話が多いけど、雰囲気頼みにならず、ただ不思議や怖さだけでなく、しっかりお話が組み立ててあって、どんでん返しが2回以上、雰囲気を壊さず新鮮な驚きでやっての...

意外と読んでいなかった江戸川乱歩を改めて読んでみた。一作目から引き込まれていって、すごいなあ!ちょっと映像では怖そうだなと思うお話が多いけど、雰囲気頼みにならず、ただ不思議や怖さだけでなく、しっかりお話が組み立ててあって、どんでん返しが2回以上、雰囲気を壊さず新鮮な驚きでやってのけてるから偉大だなと思った。今読んでもこの感動なんだから当時の驚きはすごかっただろうなあ。新作として江戸川乱歩の本を読める当時の人がちょっと羨ましいです。

Posted byブクログ