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下り坂をそろそろと下る の商品レビュー

3.8

78件のお客様レビュー

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2017/01/20

 司馬遼太郎の「坂の上の雲」をモチーフにしながら、その真逆の世界観である衰退のための準備をするべきであると説く。  我々は拡大こそ正義、そして生きる条件だと信じ込まされてきた。経済や社会のインフラは成長するものであり、それは止まらないものだと。しかし、筆者によれば日本の社会は円熟...

 司馬遼太郎の「坂の上の雲」をモチーフにしながら、その真逆の世界観である衰退のための準備をするべきであると説く。  我々は拡大こそ正義、そして生きる条件だと信じ込まされてきた。経済や社会のインフラは成長するものであり、それは止まらないものだと。しかし、筆者によれば日本の社会は円熟期を迎え、今後は衰退に向かう。そのことを冷静に受け止めるべきだというのだ。  近年、いたずらに隣国を罵倒する風潮があるのは、この国の状況が分かっていないからであり、覚悟ができていないのだという指摘は一理ある。  劇作家である筆者は経済的な豊かさよりも心の豊かさを求める国家への移行を考えているようだ。その理想もうべなるかなである。  ただし、物質欲にどっぷりつかった我々の意識を変えるのはそれほど簡単なことではない。しんがり戦に敗れれば全滅というのが定石だが、日本がどのように今後を生きるべきなのかを考えらさせられた。

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2016/12/02

「子育て中のお母さんが、昼間に、子どもを保育園に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指をさされない社会を作ること。」母たちのサロンを開いていて感じたことは、日本人は自分を豊かにすること、文化への価値意識がとても低い。自分だけが楽しむことに罪悪感を感じる社会は、豊かさに欠け、彩りの...

「子育て中のお母さんが、昼間に、子どもを保育園に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指をさされない社会を作ること。」母たちのサロンを開いていて感じたことは、日本人は自分を豊かにすること、文化への価値意識がとても低い。自分だけが楽しむことに罪悪感を感じる社会は、豊かさに欠け、彩りのないつまらない世界だ。子育て中の母だけでなく、失業者でも、仕事詰めの社会人でも同じで、文化を娯楽とだけ捉えずに、自分を豊かにしていく大切な意味を持つ時間と捉えること。それがお互い当たり前にできる社会にしていくことが、労働力人口最前線である私たちの役割なのだと思った。とても新鮮で、おもしろい。平田オリザさんがとても好きになった。 —————————————————————————— 本当に、本当に、大事なことは、たとえば平日昼間に、どうしても観たい芝居やライブがあれば、職場に申し出て、いつでも気軽に休みが取れるようにすることだ。職場の誰もが、「あいつサボっている」などと感じずに、「なんだ、そんなことか、早く言ってくれよ。その仕事なら俺がやっておくよ。舞台を楽しんできな」と言い合える職場を作ることだ。それが、私の考えるコミュニケーションデザインであり、コミュニティデザインだ。そのためのコミュニケーション教育だ。競争と排除の論理から抜け出し、寛容と包摂の社会へ。道のりは長く厳しいが、私はこれ以外に、この下り坂を、ゆっくりと下っていく方法はないと思う。

Posted byブクログ

2016/11/15

衰退期に入った日本のあり方、日本での生き方についていろいろ詰め込まれてはいる。ただ、当たり前だが端々に著者がやっている活動に引っ張られている感があって、そこに共感できなかった。帯や広告を見て期待した程の内容ではなかった。

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2016/11/01

劇作家平田オリザ氏の著書。 氏が専門とする文化芸術からアプローチして、この国の大きな方向性とその国民の持つべきメンタリティをしっかりと示してくれている。文化芸術論から統治論まで昇華させることができるひとは平田オリザ氏以外いないと思う。読んだあと、「そうだよなー」と思うひとは多いの...

劇作家平田オリザ氏の著書。 氏が専門とする文化芸術からアプローチして、この国の大きな方向性とその国民の持つべきメンタリティをしっかりと示してくれている。文化芸術論から統治論まで昇華させることができるひとは平田オリザ氏以外いないと思う。読んだあと、「そうだよなー」と思うひとは多いのではないだろうか。 氏は、身の程をしっかりと理解しよう。話はそこからしか始まらないと言っている。国も自治体も、誰も彼も。自治体職員としては、豊岡市の取組みはとても参考になった。城崎温泉で有名な豊岡市であるが、氏が関わった城崎国際アートセンターは今では力ある劇団が国内外から殺到しているとのことである。その話の流れで氏は「これまでの「まちづくり」「まちおこし」に決定的に欠けていたのは、この自己肯定感ではなかったか」と述べ、豊岡市長がいつも「豊岡でいいのだ」という口癖を引用して、問題提起している。まさにそのとおりだと思った。自分がいる香川県でも地元のひとほど地元の名所に行かないし、説明できない。当たり前すぎて関心がわかないのだろう。しかし、それでは自己肯定感にはつながらないし、そういった考えを持つ大人の子どもは自分の地元に対して自己肯定感をどうやって持つのだろうか。まずは、しっかりと大人が「香川でいいのだ」と心の奥から思うことが大切である。そのための、施策をしっかりと打っていくことが肝要であろう。

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2016/10/31

何度も唸りながら読んだ。久々に心が震えた一冊。 日本人が受け入れなければいけない三つの寂しさ。その寂しさに気付かない人、薄々感じているけど見ないふりしている人、そんなものはないと声を荒げる人。誰をも否定せず、柔軟な寛容な社会を育んでいこうと説く。そしてそのために必要なのは地域が自...

何度も唸りながら読んだ。久々に心が震えた一冊。 日本人が受け入れなければいけない三つの寂しさ。その寂しさに気付かない人、薄々感じているけど見ないふりしている人、そんなものはないと声を荒げる人。誰をも否定せず、柔軟な寛容な社会を育んでいこうと説く。そしてそのために必要なのは地域が自己を認め「文化の自己決定能力」を持って自らが施策を推し進めることであり、それは教育と環境による文化資本の向上から成せるものである。 全てが日々感じている鬱々とした思いを見事に言語化されていたものだったし、単なる批判に留まらず常に現実的な展望とともに語られていて説得力があった。 自分がどこでどういう風に生きていくべきか、初めて考えようと思った。

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2016/10/11

日本という国が「下り坂をそろそろと下る」方法を書いた本だと思ったし、実際「私が本当に書きたかったことは、さほど多くはない」で始まる最後の20ページを読む限り、それは間違っていないはずなのだが、本書の大部分が著者が自ら仕掛けた、あるいは見聞きした地方振興の具体例に割かれている。書き...

日本という国が「下り坂をそろそろと下る」方法を書いた本だと思ったし、実際「私が本当に書きたかったことは、さほど多くはない」で始まる最後の20ページを読む限り、それは間違っていないはずなのだが、本書の大部分が著者が自ら仕掛けた、あるいは見聞きした地方振興の具体例に割かれている。書き手としての著者の力量は相当なもので、興味深くは読めたのだが、話の行く末がよくわからなくて、何度も?となった。たとえば四国の小さい町の地方振興の手法が、日本という国の撤退戦の参考になるということのようだが、それがいまひとつつながらない。著者は劇作家だから、本書も思いがけない場面転換の演出が施してあるのだろうか? と邪推してしまった。 戦後の焼け跡から出発して急な坂道を全力で登ってきた時代、そして世界第2位の経済大国というメダルを得てブイブイいわしてきた時代を経験しているベテランの日本人に、この国が下り坂に向かうというシナリオを受け入れるのは難しいだろう。だが駆け上る途中に振り捨ててきたものも多かった。きっと良い着地点があるだろうと思うのだが。

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2016/09/23

JAPAN AS No1と言われたのは30年前のこと、今の日本は、世界どころかアジアでも1番ではない。現実を認識して、新しい価値観でものを考える時代に来たことを考えさせられる本です。

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2016/09/20

右肩あがりの高度経済成長から停滞期を経て、いま日本はそろそろと下り坂を降り始めている。 産めよ増やせよ。 人が生まれ、そしてまた子が生まれ、成長が加速していった時代から、子どもが生まれなくなり、引き伸ばされた人生を生きるひと、疲れた人生を生きる人がだんだん多くなっていく。そして...

右肩あがりの高度経済成長から停滞期を経て、いま日本はそろそろと下り坂を降り始めている。 産めよ増やせよ。 人が生まれ、そしてまた子が生まれ、成長が加速していった時代から、子どもが生まれなくなり、引き伸ばされた人生を生きるひと、疲れた人生を生きる人がだんだん多くなっていく。そして、だんだん人が減っていく。 モノが作られ、売れてお金になって、さらにモノが作られ海外にも売れていった時代から、製造業が離れていく時代へ。 自分がいま下り坂に経っていることに、そろそろ気づいて坂道を下るということの意味を考えはじめる時期なんじゃないかという指摘。

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2016/09/19

20160919 途中間が空いてしまったが読み終えた。自分でも意識してなかったが今の日本の状況にいちいち思い当たる。下り坂をどう降りていくか?自分の人生でも同じだ。文化的な生活をできるように中年以上が頑張ってみるのも良いかも。

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2016/09/17

私の友達に 西アフリカ(ブルキナファソ)のミュージシャンがいる。 彼の国に寄せてもらった時に 彼の村に着くや否や バラフォン(西アフリカの木琴)の演奏が始まり そこら辺で布を丸めたボールでサッカーをしていた 子どもたちが、その音楽に合わせて 踊り始めた 後で聞くと 外から...

私の友達に 西アフリカ(ブルキナファソ)のミュージシャンがいる。 彼の国に寄せてもらった時に 彼の村に着くや否や バラフォン(西アフリカの木琴)の演奏が始まり そこら辺で布を丸めたボールでサッカーをしていた 子どもたちが、その音楽に合わせて 踊り始めた 後で聞くと 外から来た旅人(お客さん)に対して 「よく来たねぇ」の歓迎を そんな形であらわしてくれていたそうな 「文化」とは そのようなものだろう 「人が生きている」とは そのようなことだろう 「おもてなし」とはわさわざ取り繕うものではなく 自ずと あらわれてしまうモノであってほしい この国(日本)の「文化」とはどんなことだろう この国の「文化」とは 誰が担っていくものなのだろう いまこそ 私たちが 取り戻したい いまこそ 私たちが 身に着けたい そんな「文化」への提言が 易しい言葉で綴られている

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