図書館の魔女(第二巻) の商品レビュー
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ラストシーンが切なかった。 マツリカとキリヒトの主従関係のバランスがあまりに危うい。 美しい言葉と繊細な筆致で描かれる、触れると壊れそうなその危うさが、心に痛くて涙が出た。 『図書館の魔女 第二巻』 高田大介 (講談社文庫) 離れの中庭の涸れ井戸から地下水道を通って、誰にも知られずに城外へ出るという秘密を共有するマツリカとキリヒトは、日がたつにつれその距離を縮めていった。 二人の間でしか通じない“指話”は密度を増し、互いが特別な存在になっていく。 そんな中、一ノ谷政界の混乱を望む勢力、ウルハイとニザマの脅威が一刻の猶予もなく迫っていることを図書館の魔女たちは知る。 マツリカの鋭い洞察力により事実を掴んだ執政官総督ヒヨコ含め図書館側は、敵に対抗するための策を練るが…… 「僻遠に煙り立つ野火のごとくに詭計は迅速、遠しと見ても遽然火の手は足許に迫り、やがて凶刃は身辺に閃く。」 そうなのだ。 魔の手はすぐそこまで迫っていたのだ。 ここから一気に物語が動く。 もう何といってもこれ。 キリヒトの正体。 震えた。かっこよくて。 物語の冒頭で、ハルカゼやキリンが間者だと知った時にはすごくびっくりしたが、このことに比べりゃそんなことは取るに足りないことだった。 川遊びに出かけたマツリカ一行がニザマの刺客に襲われる。 衛兵たちが次々と重傷を負う中、マツリカを守ったのはキリヒトだった。 キリヒトが武器も持たずに体ひとつで巨漢を倒す描写が圧巻で、目が離せず息もつかずに読み進んだ。 鎚を振り回す巨人の、腕の伸筋と縮筋の動きの入れ替わる一瞬、“上死点”をキリヒトは狙った。 上死点。 初めて聞いた言葉だけど、何だかかっこいい。 上死点、覚えておこう。 実はキリヒトは、図書館の先代タイキが遣わしたマツリカ専属の護衛だったのだ。 いや護衛というよりはもっと直接的な、マツリカに害をなす者を確実に“殺す”という役目を負ってここへ来たのである。 “キリヒト”とは“切人”。 彼は“キリヒト”の家系に生まれた少年だった。 物語の三分の二ほどは、詭計、奸計にまみれた殺伐とした話が続くが、キリヒトの正体が分かってからの展開は、人々の感情が中心に描かれていてとてもよかった。 みんなキリヒトにどう接したらいいのか分からなかったんだよね。 怒ってしまうのだ。騙されていたと。 その不穏な空気を一変させたのは、天真爛漫な厨房の番人イラムだった。 一国の行く末を難しい言葉で話し合っていた人たちとは思えないほど感情をあらわにする彼女たちがとても微笑ましいし、みんなに冷たくされてしょんぼりするキリヒトは可愛いしで、後半はすごく楽しかった。 刺客に襲われた河原で、マツリカはキリヒトの悲しみを見た。 このままただの手話通訳として暮らしていければどんなによかったか。 しかしキリヒトは諦めたのだ。 マツリカは思う。 キリヒトは暗殺者として育てられることを望んでいただろうか。 その夜、眠れないマツリカが地下に降りていくと、そこにはキリヒトがいた。 キリヒトの手に唇をつけて水を飲み、指を絡ませて会話をする。 しんと冷たく澄んだ地下のシーンが美しい。 「この子は私と一緒だ。私が望んで図書館の番人の家に生まれてきたのではないように、望んで特殊な教育を受けてきたのではないように、この子だって“キリヒト”の出る家系とやらに望んで生まれついたわけではないだろう。私が高い塔の魔女であることが私の選んだことではないように、この子が“キリヒト”であることは彼が選んだことではない。」 自分とキリヒトの境遇を重ね合わせる。 キリヒトの感じている痛みがマツリカの胸を締め付け、キリヒトの後ろでマツリカは、暗闇の中、気配を殺して涙を流し続けた。 あえかな、と形容するしかないような恋愛感情が二人の間には確かにあって、でも主従であり同士であり。 二人の間でしか通わない何かは背負った十字架の重みにも似ていて、彼らのこれまでとこれからを思うと苦しくなる。 権謀術数だけでなく、人の心のものすごく繊細な部分が描かれているところがとてもいい。 ハルカゼやキリンがマツリカに忠誠を誓ったことで、高い塔の結束は強まり、キリヒトという護衛も得て、これからどう物語が動くか楽しみになってきた。 三巻へ!
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いよいよ2巻中盤あたりから、物語が動き出しおもしろくなってきた。2巻前半の井戸のくだりとかはこんなに費やす必要ある?って感じでややだるかったが、中盤からの陰謀劇の開始、それに対する作戦会議から、ピンチになってキリヒトが…っていう流れは面白すぎた。ファンタジーっぽいガジェットも出て...
いよいよ2巻中盤あたりから、物語が動き出しおもしろくなってきた。2巻前半の井戸のくだりとかはこんなに費やす必要ある?って感じでややだるかったが、中盤からの陰謀劇の開始、それに対する作戦会議から、ピンチになってキリヒトが…っていう流れは面白すぎた。ファンタジーっぽいガジェットも出てきて、物語の全体像と進む方向がなんとなく見えてきて、いよいよ本番開始という感じだった。まだ、半分だから、これからひっくり返されることもたくさんあるだろうが、これは続きを早く読みたいと思わせる面目躍如の巻だった。
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前回気になるところで終わったから、すごく楽しみにしてた! 相変わらず言葉が難しい。 ファンタジーなんだけど、ゴリゴリの政治問題みたいな感じで、すごい難しいんだけど面白い。 マツリカが襲われた辺りから一気に面白くなった。 キリヒトの役割。伏線はチラチラ出てたんだろうけど、全然気づいてなかった(笑) マツリカとキリヒトは今後どうなっていくんだろうな。 個人的にはもっと仲良くなってほしい。 次巻どう展開していくんだろう。 気になる!
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第二巻を読み終えて、いまだに困っている。 たしかに第一巻よりは物語性が出てきたように思う。 アクションもあった。 しかし……なんとも大人しいというか、静かなファンタジーだ。 キリヒトの正体については、なんとなく予想がついていたし、そうでなくては物語にならないだろう。 図書館の...
第二巻を読み終えて、いまだに困っている。 たしかに第一巻よりは物語性が出てきたように思う。 アクションもあった。 しかし……なんとも大人しいというか、静かなファンタジーだ。 キリヒトの正体については、なんとなく予想がついていたし、そうでなくては物語にならないだろう。 図書館の魔女たるマツリカの異能にも、あまり驚きが無い。 ああ、そうか。 ファンタジーのわりに、ドキドキもワクワクも感じられないのだ。 政治闘争みたいな話が多いし。 登場人物のほとんどが冷静で感情を表に出さない。 だから本来は主要登場人物になり得ないはずの家政婦役のイラムの感情丸出し発言に、最も惹き込まれて好感が持ててしまう。彼女が登場するとホッとする。 そして、あいかわらず難読語句のオンパレード。 蒲柳の質。 一入。 無聊を託つ。 借問。 掉尾。 これらが登場人物のセリフや思考であるなら、まだ意味は分かる。世界観のためだろうと。 しかし、地の文でこれが出る。なぜ。誰のため。 無聊を託つ、なんて「退屈」でいいじゃん! 次のページでは「退屈した~」と、使ってるんだからさ! ……さあ、第三巻。買うべきか。もう、なげてしまおうか。 困ったな……。
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片手にこの小説、片手に辞書、それでもわからないときはインターネットで言葉を調べながら読んだ作品です。これまで読んできた中で読み終わるまでに一番時間がかかりましたが、それに見合う読書体験ができました。人生で一番読み応えがあって、感動し、満足させてもらいました。こんなに趣味が読書で...
片手にこの小説、片手に辞書、それでもわからないときはインターネットで言葉を調べながら読んだ作品です。これまで読んできた中で読み終わるまでに一番時間がかかりましたが、それに見合う読書体験ができました。人生で一番読み応えがあって、感動し、満足させてもらいました。こんなに趣味が読書で良かったと思ったことはありませんし、今小説を読んでいる!という充足感が最高です。
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上下巻の上巻後半にあたる本巻、少し安心した。蘊蓄話で終始するかと思いきや、巻末で思いっきりエンタメに振ったのである。 ひとつの「会話」から、鮮やかな「展開」が描かれ、畳み掛けるように「危機」が訪れ、それを思いもかけない方法で「回避」する。当然、世の事象を見事に分析することができ...
上下巻の上巻後半にあたる本巻、少し安心した。蘊蓄話で終始するかと思いきや、巻末で思いっきりエンタメに振ったのである。 ひとつの「会話」から、鮮やかな「展開」が描かれ、畳み掛けるように「危機」が訪れ、それを思いもかけない方法で「回避」する。当然、世の事象を見事に分析することができるのが「高い塔」スタッフなのだから、前半部分で細かく張り巡らされた伏線は、多くは回収される。 さて、ここまで読んできても未だ私は、この作品が何を描きたいと思っているのか測りかねている。「いや、普通にわかるでしょ?図書館の魔女が実現する世界の平和しょ」と言われるのを承知で言う。 もしそうなのだとすれば、今のところ、権謀術数でしか平和は訪れない、となる。 そもそも、この世界は著者の思うようにつくっているのだから、将棋の棋譜を完璧にすることは容易くはないが可能だろう。 著者の描きたいのは「世界の平和とは何か」ではない、と今のところ思う。 後半に期待したい。
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図書館の魔女マツリカは 有能なスタッフキリンやはるかぜと 政治的なやりくりをしている。 あそこを動かすと ここがこう動く 将棋のような世界だ。 ここに送り込まれたキリヒト マツリカの手話通訳として仕えていたが 川遊びの時 本来の警護役になる。 ここが 急にマンガに出...
図書館の魔女マツリカは 有能なスタッフキリンやはるかぜと 政治的なやりくりをしている。 あそこを動かすと ここがこう動く 将棋のような世界だ。 ここに送り込まれたキリヒト マツリカの手話通訳として仕えていたが 川遊びの時 本来の警護役になる。 ここが 急にマンガに出てくるような巨人ふたりが襲ってくるシーン キリヒトが マンガに出てくる忍者みたいに強くてやっつけるシーン 急に生き生きとした動きのあるシーンになって いいですね。 図書館に長いこと勤めている老人のカシム ご飯作ってくれるイラムが キリヒトの理解者になって ありのままを受け止めていてくれる。 キリヒトが 人を手にかけることの悲しみをマツリカは 感じているところに 心の交流がある。 私は 端っこで支えている現実味をもった温かいカシムとイラムが好きですね。
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秘密を明かすことになってしまった キリヒトの、悲しい笑顔。 その秘密と笑顔に困惑するマツリカ。 終盤の、地下から階段を上がる数ページは 心臓がじりじりした。 ーーお前はずっと私の手をとっていなければならないだろう。このように。 マツリカのこの言葉に、キリヒトはどれだけ救われ、迷うんだろう。
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第二巻。 キリヒトが気付いて、マツリカが発見し、確信した、 地下にある忘れ去られた設備。 側近であるハルカゼとキリンにも秘密とされた理由。 暗闇の中、予測に基づいた探索と新たな発見と考察。 それにより先人達の知恵と知識と謎に触れる。 探検の後、秘密の市中の散策と約束。 そして知...
第二巻。 キリヒトが気付いて、マツリカが発見し、確信した、 地下にある忘れ去られた設備。 側近であるハルカゼとキリンにも秘密とされた理由。 暗闇の中、予測に基づいた探索と新たな発見と考察。 それにより先人達の知恵と知識と謎に触れる。 探検の後、秘密の市中の散策と約束。 そして知ることになるキリヒトの本当の使命。 キリヒトの悲し気な笑顔が切ない(T□T) マツリカ達は政治的にどう動く! 最後のシーンは本当に切なくて、それでも二人は どこか似たような境遇だから、きっと通じ合っていると信じてる! 全く、次から次へと降りかかる事件が多すぎます! ワクワクだけでなく、心臓に悪いドキドキが追加されて ますます目が離せません。
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途中で投げ出すのを覚悟で読み始めたが キリヒトの素性がわかって面白くなってきた 頑張って続けて読んだ甲斐があった
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