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マチネの終わりに の商品レビュー

4

541件のお客様レビュー

  1. 5つ

    171

  2. 4つ

    160

  3. 3つ

    114

  4. 2つ

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  5. 1つ

    9

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2016/08/21

昔テレビで、『未来日記』という番組があった。 見ず知らずの男女が未来日記に書かれたとおりの言動をしなくてはいけないのだが、次第に惹かれあう二人が最高潮に達する直前で無惨にも引き裂かれてしまう。 日記に翻弄される様は涙を誘い、感動を呼んだ。 ギタリストの蒔野聡史とジャーナリスト...

昔テレビで、『未来日記』という番組があった。 見ず知らずの男女が未来日記に書かれたとおりの言動をしなくてはいけないのだが、次第に惹かれあう二人が最高潮に達する直前で無惨にも引き裂かれてしまう。 日記に翻弄される様は涙を誘い、感動を呼んだ。 ギタリストの蒔野聡史とジャーナリストの小峰洋子。独りよがりな恋愛に突き進むほど、彼等は若くない。 それぞれ大人な対応をしていく中で描かれるアーティスティックな描写と二人の距離感が心地よく読む手が止まらない。 読後に誰がいい、悪いと話をするのはそれこそ大人ではないのかもしれない。 充分に官能的で、充分に芸術的で、充分に感傷的な、悲劇であり喜劇だと思う。

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2016/08/21

「未来は常に過去を変えている」。 確かに、知らなかった過去の事実を後から知ることで、その過去に対する認識は変わる。人とのすれ違いは、この物語ほどまではいかなくても、そうした知りえなかった事実や認識の違いの積み重ねで起こる。それを偶然と思うか必然と思うか。それに第三者の意図が加わっ...

「未来は常に過去を変えている」。 確かに、知らなかった過去の事実を後から知ることで、その過去に対する認識は変わる。人とのすれ違いは、この物語ほどまではいかなくても、そうした知りえなかった事実や認識の違いの積み重ねで起こる。それを偶然と思うか必然と思うか。それに第三者の意図が加わったらどうなのか。運命と諦めるのは簡単だが、何か出来たかもしれない。あるいはしない方がよかったのかもしれない、と思うと運命では片付けられない。 「過去を変えながら、現在を変えないままでいる」ことが可能であれば、そうしたいと思うことが私にもある。しかし過去の事実を知りようのない今は、現在を変えずに生きていくしかない。

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2016/08/11

平野啓一郎、文体があまり好きじゃない 三谷がふつうに悪いヤツでしょ ふたりのやりとりとかラストとか 想い合う様子、描き方は良い、かなあ

Posted byブクログ

2016/08/10

蒔野聡史と小峰洋子という互いに40代に差し掛かる男女の恋愛。本作で平野啓一郎初読。 本流は40代の男女の恋愛にありつつ、国際問題、政治・社会問題や文学・音楽といった芸術関係等々をこれでもかと配置することで非常に立体的な印象のある作品。この手の作品は、無知な僕から見ると知識のひけ...

蒔野聡史と小峰洋子という互いに40代に差し掛かる男女の恋愛。本作で平野啓一郎初読。 本流は40代の男女の恋愛にありつつ、国際問題、政治・社会問題や文学・音楽といった芸術関係等々をこれでもかと配置することで非常に立体的な印象のある作品。この手の作品は、無知な僕から見ると知識のひけらかしに思えて「鼻持ちならねえ」みたいな感想に辿り着きがちなんだけど、本作は全くそんなことがない。それは、繰り返すけど本作の本流はあくまで男女の恋愛にあり、40代のいい大人が初対面で恋に落ちてしまうその様を、「直感」だとか「運命」みたいな安易な言葉で表現したって全然許されるはずのところを、二人の感情をしつこいくらいに丁寧に、胸焼けするくらいに流麗に描いてくれる作者の筆力が、膨大な知識を単なる装飾とした恋愛小説に仕上げていてくれるから、ということなんだと思う。 読み終わった今でも、僕はこの二人の恋愛は「運命」としか言えないものだと思っている。それは運命に対する僕の個人的な考えから出てくる感想であって、人生は「なるようにしかならない」くらいの考えしか持っていない僕には、この二人のそれぞれの運命とそこから沸き立つ感情が、お互いのライフステージを伴ってここまで著しくリンクする奇跡というのがとてもじゃないけど許容できない。許容できないけど目の前に立ち現れることは神の思し召しとでも位置づけるしかなく、そういう意味でこの二人の出来事は僕にとっては「運命」となる。 そんな運命的な出来事を、置かれた状況も立場も違う男女を使って描き切る作者が凄すぎる。この二人にはモデルがいると序文で言ってるけど、「嘘だろ絶対」と未だに思っている僕が居つつ、本作には「お前には分からんよ」と僕には想像し得ない事実を突きつけるような説得力と、何より事実であってほしいと思わせる魅力に溢れている。 物理的な離別の時でさえお互いの感情は非常に近いものがあったと思うので、本作は断じて「悲恋」ではなく、なんなら高尚な「純愛」だと言い切っちゃってもいいくらいに思っているけど、それでもやっぱり、心身ともに二人には幸せになって欲しいと願わずにいられない程度には、悲劇的な話だった。キーマンとなる三谷ほど、自分の生き方に確固たる信念を持っているわけではないけど、あの嘘のメールを送ってしまう心境にはとても共感してしまって、心を揺さぶられてしまった。意識的にか無意識的にか、三谷の取ってしまった行動に近いことって僕も絶対やってきただろうなと、自分と三谷を切り離して見ることができなくなってしまった。主役の二人がある意味近寄りがたい人間に思われるだけに、三谷に感情移入してしまう人ももしかしたら結構多いんじゃないかな、と思う。 読了後、揺れっぱなしの気持ちのまま序文を読みなおして、さらに気持ちが揺れ動いた。決して長くはない文章の中にこの二人の恋愛の物悲しさが凝縮されている気がして。余計な断りとして、わざわざ「あとからここに添えられたものである」と記した作者も、もしかしたら今の僕と同じような気持ちでこれ書いたのかもしれないという予感がして、なんとなく作者に対して親近感が湧いた。 揺れっぱなしの気持ちの余韻に浸るのも悪くはないんだけど、今はあえて他の作品を読んで気持ちを上書きしてしまいたい。僕は日頃全く読書をしない人間だが、読書の愉しみというのはこういうことでもあるのかもしれないと気づかせてくれたことだけでも、僕にとっては本作を読んだ意義がある。とても辛くて、よい作品だった。

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2016/08/09

途中の偶然にもほどがある出来事で少し興ざめした。 しかし、それを補ってもあまりあるほどのラストは本当に良かったと思う。

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2016/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

思想が各論点においてすべて浅い。20歳そこそこレベル。他の部分は恋愛絡みのNaverまとめ読んでるみたいな感じ。あと、経済学をきちんと勉強したことがないのに、洋子と夫の会話周辺で金融を題材に用いて語りまくってますが、まともな人間には影で嘲笑されるのでやめたほうがよいかと。 一方、数回しか会わないなかで深まっていく関係という設定は確かに見どころ。

Posted byブクログ

2016/08/03

あちこちで絶賛されている本書だったので、初読みの作家さんだったけれど手に取ってみた。 むむ。 どうなんでしょうか。この安っぽいストーリー。 これが新聞連載が終わった時にはマチネロスに陥った読者多数とも言われた小説なのか? アマゾンの評価もぶっちぎりの高評価だけれども・・・。 ...

あちこちで絶賛されている本書だったので、初読みの作家さんだったけれど手に取ってみた。 むむ。 どうなんでしょうか。この安っぽいストーリー。 これが新聞連載が終わった時にはマチネロスに陥った読者多数とも言われた小説なのか? アマゾンの評価もぶっちぎりの高評価だけれども・・・。 物語は簡単に言ってしまうとクラシックギタリストの蒔野とジャーナリストの洋子の恋愛もの。 強く惹かれあう二人は運命のいたずらかすれ違い別々の人生を歩むようになる。 何度も繰り返される「未来は過去を変えてくれる」の台詞だったり、国際政治問題への提言の数々、豊富なクラシックの知識を土台に芸術家特有の苦悩を描く筆力、などなどなど、完成度の高い作品であることには間違いがない。 でも、いかんせん陳腐だよ。 使い古したネタが昭和かよってつっこみたくなってしまうメロドラマ感・・・。 もしやこの小説はストーリーはさておき、登場人物一人ひとりの綿密な心理描写だったり、ストーリーに肉付けされた芸術性やら政治問題を堪能するものだったのか。 それだったらもうちょっと楽しめたのかもしれないなぁ。 ごめんなさい、どうしても世間の評価と乖離があるようで・・・。

Posted byブクログ

2016/07/30

出来事だけ見れば、ひどく滑稽で、リアルっぽいフィクションである。現実でも自分や他者をこういった視点で見ることはできない。そのため、なにかに振り回されているような感覚を持つことがある。p.397 に出てきた〈ハイパー・ロマンティシズム〉は全く知らない言葉であった。こういうものことか...

出来事だけ見れば、ひどく滑稽で、リアルっぽいフィクションである。現実でも自分や他者をこういった視点で見ることはできない。そのため、なにかに振り回されているような感覚を持つことがある。p.397 に出てきた〈ハイパー・ロマンティシズム〉は全く知らない言葉であった。こういうものことかと思うほど、よくも丁寧に語彙豊富に描けるものだなと感心していた。それは著者のねらうところではなく、自分の不勉強のせいである。 登場人物のように、バイリンガルであったり、何ヵ国も跨いでいるアイデンティティーを持つ人の世界の見え方は、全く想像が難しい。今、インターネットが普及しているエリアにおいては、以前より境目が曖昧になってきている。そういう視点を持ちやすくしている。 著者がツイッターでつぶやいているような出来事が、事実としてしっかり織り混ぜられていた。関心が気になるの人なので、他作品も読みたい。 ツイッターで流れてきた断片に惹かれて読むに至った。いくつかを引用する。 p.40 『ーー生きることと引き替えに、現代人は、際限もないうるささに耐えてる。音ばかりじゃない。映像も、匂いも、味も、ひょっとすると、ぬくもりのようなものでさえも。・・・・・・何もかもが、我先にと五感に殺到してきては、その存在をめいっぱいがなり立てて主張している。・・・・・・社会はそれでも飽き足らずに、個人の時間感覚を破裂させてでも、更にもっとと詰め込んでくる。 p.150 幸福とは、日々経験されるこの世界の表面に、それについて語るべき相手の顔が、くっきりと示されることだった。 20160730

Posted byブクログ

2016/07/29

すれ違いで別れてしまった蒔野と洋子。あの時ああしていれば、こうだったらと考えてしまう。別々の人生を生きながらもどこか深いところで繋がっているような相手を思い合う気持ちが切なくて、どうか二人が再会できますようにという願いで読んでいた。

Posted byブクログ

2016/07/28

とにかく、文章のひとつひとつがしっくりくる。 ハーレクインロマンス的な設定であるにもかかわらず、政治的な問題を不自然でなく絡めて、読み応えのある作品になっている。 このユーゴスラビアの映画監督のモデルは誰?

Posted byブクログ