眩 の商品レビュー
北斎の娘・葛飾応為こと、お栄の人生。 女ながらに父も認める才能ある絵描きだったお栄が、いきいきと描かれています。 天才絵師・葛飾北斎の娘、お栄は父の弟子に望まれて結婚するが、家事をする気もなく、絵に没頭。 お栄ほどの画才もない夫は、北斎の娘婿として仕事を増やしたかっただけらしい...
北斎の娘・葛飾応為こと、お栄の人生。 女ながらに父も認める才能ある絵描きだったお栄が、いきいきと描かれています。 天才絵師・葛飾北斎の娘、お栄は父の弟子に望まれて結婚するが、家事をする気もなく、絵に没頭。 お栄ほどの画才もない夫は、北斎の娘婿として仕事を増やしたかっただけらしい。 あっさり出戻ったお栄は、父と弟子たちとの暮らしに邁進し、気まぐれな父の世話をこなしつつ、画業に情熱を注いでいきます。 ひょうひょうとした兄弟子の善次郎とはそこはかとない信頼関係があり、お栄は惹かれますが‥ 口うるさい母や、ろくでなしの甥に悩まされつつ、さばさばと生きるお栄。 飾り気なく大胆で、当時としては相当変わり者だったんでしょうね。 古風な女らしさはないものの、その情熱がどことなく色気となっているよう。 北斎の有名な冨嶽三十六景の制作風景や、応為の代表作の吉原格子先之図などの描き方を工夫する様子も出てきて、臨場感を楽しめます。 応為には、どこまで絵師として認められるのか、長い年月の間、葛藤もあったことでしょうが。 やりきった感もあったのか、どこにいてもやっていけると思うようになった勁さ。 清々しい読後感でした☆
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浮世絵、葛飾北斎、全然興味ない世界だったのに、この本を読んで、北斎の娘、葛飾応為の魅力にすっかり虜になってしまった。もっと他の応為のことがわかる作品も読んでみたいし、美術館で絵も観てみたい。 こんなに興味の幅を広げたのは、朝井まかてさんのおかげです。
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現代でも、その生き方は、きっと貫くのは大変だ。 だからこそ、ラストシーンには、元気をもらえる。
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葛飾北斎が引っ越し魔であったことを知っていたので,娘のお栄がどのような対応だったかに興味があり,楽しく読めた.馬琴など有名な名前も出てくるが,善次郎の存在が大きい.摺師と彫師など浮世絵に絡む職人が集まって冨嶽36景を製作するp195の場面は良かった.それにしても時太郎の不始末を黙...
葛飾北斎が引っ越し魔であったことを知っていたので,娘のお栄がどのような対応だったかに興味があり,楽しく読めた.馬琴など有名な名前も出てくるが,善次郎の存在が大きい.摺師と彫師など浮世絵に絡む職人が集まって冨嶽36景を製作するp195の場面は良かった.それにしても時太郎の不始末を黙々とやってのける北斎の姿は,祖父の顔が見えるが,それを苦にせず作画に打ち込むところが良い.お栄の生涯を描く話だが,江戸の情景がありありと目に浮かぶ.
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葛飾北斎の三女、応為の話し。 テレビで「吉原格子先之図」が映ったのをたまたま見た。驚いた。 それがこの本を手に取ったきっかけ。 嫁いでも家事をせず、絵を描いている。 離縁され、「これで自由に絵が描ける」と。 お栄、すごく真っ直ぐな人だと思った。
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天才絵師・北斎の娘として生まれ、自らも画業に魅入らられた葛飾応為ことお栄。火事は好きだが家事嫌い、春画は描けるが色気はない。他人から見れば扱い難い出戻り女。それでも「吉原格子先之図」を描き切った彼女の生涯には、魅了されてしまった。
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周防柳を読んで、朝井まかてを思い出し、その後(西鶴のあと)何かあるかと検索したら出てたので、読んでみた。 『恋歌』『阿蘭陀西鶴』ほどの良さはなかったが、葛飾応為の存在を知れたのは収穫。 江戸末期の庶民生活の詳細な描写は巧みだし、応為の画風の成り立ち、父親北斎や弟子や業界とのやりとりはリアルで活き活きと描かれている。 なのにイマイチな、前作との差を感じるのは、あまりに素直に時系列をなぞった物語展開だったからだろうか。あるいは視点の平易さからか(基本、応為=お栄の視点から)。『恋歌』の入れ子的な構成でもなく、西鶴の姿を愛娘の視点から描いたのでもなく(盲目なのに視点ってのも変だが、そこが妙だった)。 応為の代表作の制作が晩年だったことも災いしてか、ストーリーが3分2ほど進むまでが、なんとも倦む日常なのが、ちょっと辛かった。 もちろん、そこで親父北斎や母親との暮し、懸想人の兄弟子善次郎との日々、厄介者の甥の存在などが具に語られるから終盤が活きるのだが、ちょっと長かったかな。 とはいえ、元禄のただただ華やかな文化と異なり、やや廃頽的な江戸末期の天保の文化の担い手たち。どことなく陰影の濃い世相を巧くアレンジし、日本人離れした応為の画風を彷彿させる作品トーンは、さすがの筆力だとは思う。 応為の作品が少ないこと、江戸のレンブラントと称される西欧絵画風の作品のヒント、北斎との共作のあれこれ。歴史の謎をひとつひとつパズルを嵌めていくように、応為の人生の中に散りばめてあり楽しめた。 なにより、画業に人生を捧げた応為が魅力的に描かれている。最後にこうい言い放つ姿が清々しい。 「あたしは、どこにだって行けるのだ。どこで生きても、あたしは絵師だ。」
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おもしろかった。最近浮世絵や江戸時代の絵画に興味がわいてきていたので、とても興味深く読めた。善次郎が素敵すぎる。それにくらべて時太郎がひどすぎ。でもこーゆー奴っていつの時代にもいるもんだよねって思わされた。
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葛飾北斎の娘,葛飾応為(おうい)を主人公に書かれた小説。 葛飾応為(おうい)は北斎の娘で,絵師のもとに嫁いだものの,夫の絵を鼻で笑って離縁され,北斎のもとに出戻って,父とともに工房で画を描いて暮らしている。 その腕は確かで,父の北斎も「美人画は応為にかなわない」とまで言わ...
葛飾北斎の娘,葛飾応為(おうい)を主人公に書かれた小説。 葛飾応為(おうい)は北斎の娘で,絵師のもとに嫁いだものの,夫の絵を鼻で笑って離縁され,北斎のもとに出戻って,父とともに工房で画を描いて暮らしている。 その腕は確かで,父の北斎も「美人画は応為にかなわない」とまで言わしめるもの。 出戻った娘に対しなにかと五月蠅い母,悪事を働き続ける甥,善次郎への思い。 どんなことがあっても,お栄が絵筆を持ち動かしていくと,全ての雑念が失せ画に集中していくのであった。 江戸時代,今より封建的なときに,お栄(応為)は画に打ち込んでいました。 父親譲りの才能だけでなく,精魂こめて絵を描くということ。 貝殻や石や膠などの素材を絵の具にしていくことも苦でなかった。 絵師として生きる,絵師としてしか生きられない人生だったのかと感じました。 この物語に出てくる「吉原格子先之図」はこの本の表紙となっています。 その頃江戸で描かれてきた浮世絵とは全く違う。光と影。 そう思ってまた読むと,『眩』の小説のなかで画が描き上げられていく過程が緻密に書かれていることに気づきました。
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マハさんのアート小説よろしく今回もスマホ片手に絵画鑑賞をしながらの読書。 葛飾応為…存在すら知らなかったのだがその作品の素晴らしさときたらどうだ! 先ず目を惹くのが絶妙な浮世絵と西洋画の融合、そして本文中にもあるが色彩への拘りと鮮やかに織りなす光と陰の美しさが視覚を通して心に響い...
マハさんのアート小説よろしく今回もスマホ片手に絵画鑑賞をしながらの読書。 葛飾応為…存在すら知らなかったのだがその作品の素晴らしさときたらどうだ! 先ず目を惹くのが絶妙な浮世絵と西洋画の融合、そして本文中にもあるが色彩への拘りと鮮やかに織りなす光と陰の美しさが視覚を通して心に響いてくる、そうこれまでに見たことがないような日本画であるのだ。 調べてみれば本人は見目麗くもなくまるで男のような扱いなのだがそこはまかて流、作品にも劣らぬ色香溢るる女絵師が描かれており読み物としても面白い。 わかりやすさから言えば恋歌も超えたかもしれない傑作でした
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