やがて海へと届く の商品レビュー
あの日、どうしても死ねないと思いながら、たくさんの人が元にいた場所に帰れなくなってしまった。震災により親友のすみれを亡くした主人公の喪失感が、彩瀬さんの繊細な筆致でひたひたと胸に迫ってくる。遺体を見ることができれば、諦めもつくかもしれないが、行方不明のままで気持ちが宙ぶらりんにな...
あの日、どうしても死ねないと思いながら、たくさんの人が元にいた場所に帰れなくなってしまった。震災により親友のすみれを亡くした主人公の喪失感が、彩瀬さんの繊細な筆致でひたひたと胸に迫ってくる。遺体を見ることができれば、諦めもつくかもしれないが、行方不明のままで気持ちが宙ぶらりんになってしまい、前に進めなくなってしまう彼女が痛々しくて仕方なかった。自分自身が前に進むことは、決して死者を置き去りにすることではないのだと、私も思う。光が射しこむような最後で良かったと心から思った。
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2016/06/02読了 「目玉が溶けるほど大泣きする日なんか来なければいい」 . 3.11で親友が行方不明に。友人の死を受け入れられないまま 幻想と現実の間で悩み苦しみながら前に進んでいくお話。
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※このレビューにはネタバレを含みます
3.11震災で、唯一無二の大切な友人を失ってしまった主人公と、その友人のさすらう魂の物語。 震災そのもののインパクトがが大きすぎて、物語がその規模に呑みこまれてしまっている感がある。綾瀬さんにとって逃げたり避けたりするわけにはいかないテーマなんだろうけど、この作品辞典ではもてあましている…というか、震災にもてあそばれてしまっているように読めた。3.11は、それだけ大きな衝撃だったんだということ。 成仏という言葉があるが、友人の魂(意識?)が収まるところ、主人公が生きている現実とのリンクが非常に良かった。生きてるだけでまるもうけ。死んで花実が咲くもんか。親しい人の死を乗り越えるのか、寄り添うのか…。ほとんど多くの人が親しい人を失くす経験をするし、俺もこれからもしていくのだろうけど。 亡くなった人の魂は、こうやって浄化するんかもなぁ。って、その時にこの物語を思い出せたら、少しは助けになるだろうか。
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言葉が綺麗です。 「葡萄色の空」という表現がとても素敵だなぁと思いました。 空を見て葡萄色だなんて思ったことなかった… 表紙もお洒落。 静かだけど、少しあたたかい…そんなお話です。
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現実と交互に語られる抽象的な世界がなんだかとにかく苦手だった。喪失と再生の物語なら現実のシーンだけで良かった。俺にはあの抽象的な世界が届かなかった。
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震災で、大好きな大切な友が消えた。死んだなんて思いたくない。 夢と現実が交錯するような思考の中で、辛い月日が流れた。 喪失から立ち直ることの辛さや、受け入れてしまうことの罪悪感がひしひしと感じられた。 彩瀬まるさんのちょっと悲しげなトーン、いい作品だと思った。
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震災によって失われた親友すみれへの思いを捨てきれず、夢と現実が交錯する生活をしていた湖谷真奈は、彼女に代わる存在を見つけることで、すみれの死を受け止め未来へと足を運び始める。 それは大切な人を失った全ての人に対する作者のメッセージであるように感じた。 彩瀬まるさんが描く、喪失感...
震災によって失われた親友すみれへの思いを捨てきれず、夢と現実が交錯する生活をしていた湖谷真奈は、彼女に代わる存在を見つけることで、すみれの死を受け止め未来へと足を運び始める。 それは大切な人を失った全ての人に対する作者のメッセージであるように感じた。 彩瀬まるさんが描く、喪失感を持ったまま生きる人間の物語は癖になるし、幻想的な世界の描写力は作品を重ねることにパワーアップしている気がする。
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震災から5年半たった今でも、2500余人が行方不明だ。 その中には、死亡届けを出せない人も多くいる。 行方不明の友人を、忘れることなど出来ない。それを伝える文章に胸が詰まる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館で借りた本。 震災で行方不明になったすみれを取り巻く人たちの、待ちたい気持ちとあきらめの葛藤。現実の話は引き込まれたけど、時々空想(夢?)の話も入ってくる。空想の話は理解が難しかった。現実と空想を織り交ぜてこそ、この話は完成するのかもしれないけど、空想の話についていけなかったのは、自分の想像力の欠乏か?
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私たちは「忘れない」ことで何を償ったつもりでいるのだろう。誰に許しを乞うているのだろう。 苦しいことや悲しいことを風化させないために過去を楔として覚えていることより、楽しいことや嬉しいことを励みや生きがいにして未来に踏み出す勇気に変えることこそが私たちに託された生きるということで...
私たちは「忘れない」ことで何を償ったつもりでいるのだろう。誰に許しを乞うているのだろう。 苦しいことや悲しいことを風化させないために過去を楔として覚えていることより、楽しいことや嬉しいことを励みや生きがいにして未来に踏み出す勇気に変えることこそが私たちに託された生きるということではないだろうか。 生きるということは時を刻むということ。 止まってはいられないということ。 立ち止まってはいけないということ。 植物が芽吹き、花が咲き、そして枯れ、種が散る。そして芽吹く。人が歩くことに繋がるものがある。
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