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やがて海へと届く の商品レビュー

3.7

89件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

    34

  3. 3つ

    23

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

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2018/03/20

彩瀬まるさん二作目。 正直、『あの人は蜘蛛を~』ほどの衝撃、見透かされてるようなざわざわ感はなかった。 基本的に「忘れない」ことが大切だと考えている私にとって、新しい視点をくれる作品だった。 それでも忘れたくないと思うんだけど。 いなくなった人を、というよりも、あの日の出来事と...

彩瀬まるさん二作目。 正直、『あの人は蜘蛛を~』ほどの衝撃、見透かされてるようなざわざわ感はなかった。 基本的に「忘れない」ことが大切だと考えている私にとって、新しい視点をくれる作品だった。 それでも忘れたくないと思うんだけど。 いなくなった人を、というよりも、あの日の出来事とか、そこからの悲しみとか。 大好きなあの街が、少し目を離した隙に別物になってしまうということが、いまでも信じられない。 だからこそ、忘れたら、私は私じゃなくなると思っている。 読んでいて、独特の雰囲気もあり、読み進むことが難しかった。 だけど、中盤の衝撃からは一気に引き込まれた。 具体的に震災をテーマとするよりも、モチーフだけの方が、読み手を引き付ける文章を書ける人なのかも…と少し思ったり。

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2018/03/05

大事な人を失った「真っ暗」の中で踠きながら歩いていく話。 残された人だけじゃなく、大切な人を残して帰れなくなってしまった人も苦しんで踠いて、それでも前に進もうとする。 大切な人の死を受け入れることは難しい。 だけど、 「忘れないって、なにを忘れなければいいんだろう。」 この言葉...

大事な人を失った「真っ暗」の中で踠きながら歩いていく話。 残された人だけじゃなく、大切な人を残して帰れなくなってしまった人も苦しんで踠いて、それでも前に進もうとする。 大切な人の死を受け入れることは難しい。 だけど、 「忘れないって、なにを忘れなければいいんだろう。」 この言葉は真意を突いている気がした。 被災地で震災を経験した私は、「震災を風化させてはいけない、忘れてはいけない」という言葉をずっと聞かされてきた。 でも、いつまで"被災地"、"被災者"でいなければいけないんだろう。悲しい記憶をずっと持ち続けることが果たしていいことなんだろうか。と、もやもやした気持ちでいた。 その気持ちに応えてくれたような言葉だった。

Posted byブクログ

2024/07/26

震災で亡くなったすみれとその友人真奈と、すみれの恋人遠野。それぞれがすみれへの想いを消化できず受け止められずもがき、またすみれも震災の恐ろしさをもがくお話。 少しだけファンタジックで、ちょっと私には展開というか上手く理解しきれなかったが、死者への祈り、また死者の願い、もがきが描か...

震災で亡くなったすみれとその友人真奈と、すみれの恋人遠野。それぞれがすみれへの想いを消化できず受け止められずもがき、またすみれも震災の恐ろしさをもがくお話。 少しだけファンタジックで、ちょっと私には展開というか上手く理解しきれなかったが、死者への祈り、また死者の願い、もがきが描かれていました 2回目読了 6年前に読んだのに全く覚えてなかった…笑 ただ2回目に読んだ方が☆3▶︎4へ上がりました 恐らく、すみれが死後の世界でもがく様子、歩き続けて最期に救われる様子は、多くの人の願いなのでしょう。

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2018/02/06

2018.2.1- 美しい文章が、より悲しさを際立たせる。 感想は持てない。 ただ、この事実を受け止める。 こういうことがあり、こういうことに直面した人達の話を受け止める。 忘れてはいけないって、何を?という女子高生の言葉が、リアルに響いた。 あの揺れは少し離れたこの場所で...

2018.2.1- 美しい文章が、より悲しさを際立たせる。 感想は持てない。 ただ、この事実を受け止める。 こういうことがあり、こういうことに直面した人達の話を受け止める。 忘れてはいけないって、何を?という女子高生の言葉が、リアルに響いた。 あの揺れは少し離れたこの場所ですら、とてつもない恐怖を置いていった。臨月の妊婦だった私は、祈るように固まっていた。 私はこの本を祈るように読んだ。

Posted byブクログ

2018/01/26

知らないで読み始めたけれど、3.11の震災絡みの物語だった。 親友のすみれが消息を絶ってから3年。主人公・真奈の働くダイニングバーに、かつてのすみれの恋人・遠野くんが現れた。 彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。 親友を亡き者として扱う...

知らないで読み始めたけれど、3.11の震災絡みの物語だった。 親友のすみれが消息を絶ってから3年。主人公・真奈の働くダイニングバーに、かつてのすみれの恋人・遠野くんが現れた。 彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。 親友を亡き者として扱う遠野くんやすみれの母親を許せず反発を覚える真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨うすみれと繋がっていたいと願うが…。 突然、というかたちで大切な人をなくす。予兆も、覚悟もなく。 そういう経験をしたことがある人ならば、真奈の気持ちが痛いほど解るのではないかと思う。 私にもそういう経験があるけれど、だいぶ年月が過ぎた後だと「結局は時間が解決する」とざっくり言えるのだけど、やはりその間にはたくさんの葛藤があったり意識して気持ちを整理するよう心がけたり、色んな感情の行き来があってその結論に到達したのだと思う。 同じかたちで同じ人をなくした真奈と遠野くんだけど、なくした側の性格や考え方が違うから、気持ちの整理の仕方や立ち直り方もやはり異なる。その人の持つ“死生観”も大きく関わってくる。 すみれは恐らく震災で亡くなったのだけど、まだ遺体は見つかっていない。 流れる風のように生きていた彼女だから、きっともう成仏しているだろう、という考え方も解るし、突然とても辛い死に方をしたのだからまだどこかで彷徨っているだろう、という考え方も解る。 死んだ人がその後どうなるかは、誰にも分からない。だからその人なりのやり方で、乗り越えていくしかない。 とても幻想的な構造で、真奈視点と(恐らく)すみれ視点の章が行き来する。 はじめ、すみれはまだ旅を続けている。そして終わりに向けて、様子が変化していく。 それと同時に真奈にも変化が訪れる。 死んでしまった大切な人に関しては、忘れていくことと忘れないことのバランスがあって、忘れることも忘れないこともたぶん両方とも悪ではないし、それは理屈でもない。 最初は悲しみしかなくても、いつかその人の思い出話を笑いながら出来る日が訪れる。 「人の心の中で生き続ける」という表現はよくされるけれど、本当にその通りなのだと思う。 泣くのとは別の場所で“じーん”とくるものがある物語だった。

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2018/01/12

内容(「BOOK」データベースより) すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。地震の前日、すみれは遠野くんに「最近忙しかったから、ちょ...

内容(「BOOK」データベースより) すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。地震の前日、すみれは遠野くんに「最近忙しかったから、ちょっと息抜きに出かけてくるね」と伝えたらしい。そして、そのまま行方がわからなくなった―親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが―。死者の不在を祈るように埋めていく、喪失と再生の物語。 人が死んで存在しなくなる事。それでも時間は過ぎて痛みは消えずとも次第に薄れていく。そんな自分を冷たい人間だと思って自己嫌悪に陥る。分かる気がします、でも体験していないので本当に分かるとは言えないです。主人公の真奈が親友すみれの死を受け入れることを拒否して日々を過ごしていく姿と、抽象化された死後の世界をさまようすみれの姿が交互に描かれています。作中で語られる「忘れない」という事は、いったい何を忘れないという事なのかを考えてしまいます。真奈は自分でも知らない内にすみれのいない新しい世界を受け入れて、新たに大事なものを見つけて進んで行きます。それでいいんだと思います。

Posted byブクログ

2017/06/01

ただ一人の親友をある日突然、津波で失う物語。 友人を亡くした湖谷の描写と、もうひとつ田舎の駅や畑をさまよう誰かの描写が交互に続くのだが、読み始めて3分の1くらいまで、その誰かが分からなかった。 もやもや暗い話しに飽きて読むのをやめようかと思ったところで、その誰かがすみれである...

ただ一人の親友をある日突然、津波で失う物語。 友人を亡くした湖谷の描写と、もうひとつ田舎の駅や畑をさまよう誰かの描写が交互に続くのだが、読み始めて3分の1くらいまで、その誰かが分からなかった。 もやもや暗い話しに飽きて読むのをやめようかと思ったところで、その誰かがすみれであることに気づき、突然話しがくっきりと浮き上がり、生きることが突然終わってしまったすみれが悲しくて苦しくて、読むのがとまらなくなる。 主人公の湖谷は、ちょくちょく泣くのだが、読んでいるこっちは泣けない。安い涙を誘う感動の話しではなく理由も神もなく突然、死んでしまう理不尽と残されて生きている人間がきちんと書かれている。 たぶん、この本の二人と同じくらいの年齢のときに友人が突然死んでしまったことが、どうしても思い出されて、死んでしまう偶然と生きている偶然に久しぶりにうちのめされる。 帯のコピー「喪失と再生の物語」というのが、どうにも本で描かれている内容に比べて、うすっぺらくてなんだか嫌だ。 そんなきれいな腑に落ちる美談ではない。

Posted byブクログ

2017/04/07

現実と、夢の世界とが章の度に交差しており、読むテンポを乱された。 夢の世界が、結局誰の世界の中だったのかとか、表現もしっくりままで、もやもやした。 津波で失った親友の死を受け入れられないというテーマは良いが、抽象的な表現が多く悲しみの部分があまり伝わってこなかった。

Posted byブクログ

2019/09/19

地震と津波で友人を失い。 職場の店長が電話の直後に自殺し。 忘れることに罪悪感を感じる。 やがて海へと届く。あれから6年。 この作者の作品を読んでいると、涙が止まらなくなることがある。

Posted byブクログ

2017/03/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東日本大震災で、すみれを亡くしてからの日々。 大学時代のすみれとの思い出、 早々に彼女を死者として受け入れているすみれのお母さんへの嫌悪感、 すれみの恋人だった遠野くんとの悲しみの違い。 前触れもなく自殺してしまった仕事先の店長。 同僚の国木田さんの優しさ。 津波で行方不明になったままのすみれの死を、 三年経っても受け入れることが出来ず、 悲しみや痛みに触れていなければ、彼女を見失うのではないかと もがいた日々。 3.11から一歩も前進できていなかった真奈が、 時間をかけてすみれの運命を受け止めるまで。 最初、何の話かわからなくてだらだら読んでいて、 やっと真面目に読み進めて震災の話だと気付いた日が ちょうど3月11日だった。タイムリー。 あれから六年経ちました。 女子高生と国木田さんin埼玉が重要。 夜に読んでて思わず泣いた。 大きな衝撃のあとの静かな悲しみ。

Posted byブクログ