やがて海へと届く の商品レビュー
難しいテーマを選びましたね。今月の一番です。フカクフカクしみてくる。なんかいも読み返します。女子高生たちの、ちゃんと考えてるところいいよね。
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この本の作者は5年前、東北地方を一人旅している途中で東日本大震災に遭われました(その体験は「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出」という本になっている)。本書はそんな作者の実体験から生まれた小説です。 真奈の親友・すみれは旅先で震災に遭い、行方不明に。3年経っても遺...
この本の作者は5年前、東北地方を一人旅している途中で東日本大震災に遭われました(その体験は「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出」という本になっている)。本書はそんな作者の実体験から生まれた小説です。 真奈の親友・すみれは旅先で震災に遭い、行方不明に。3年経っても遺体すら見つからず、未だに真奈は親友の死を受け入れられない。しかしある日、久々に再会したすみれの恋人・遠野くんから「遺品を整理するから立ち会って欲しい」と頼まれ・・・。 正直言うと途中までは「期待していたよりも面白くない」と思っていました。話の構成も真奈が生きる現実と、誰のものだかよく分からない夢のようなものがごちゃ混ぜになっていて読みづらいし。印象が反転したのは7章から。普通の小説だと5章までで終わりそうな書き方で、「ここからまだ半分もどう話を展開するの?」と思いながら読んでいたら、まさかの展開が起こり。そこからよく分からないと思っていた夢の部分の意味もわかるようになり、「死を受け入れること」が二重の意味で本書のテーマになっていることに気付けました。深いです。ものすごく。なのでぜひ途中で挫折せずに最後まで読んで欲しいです。 印象的なセリフ、表現が多いのが彩瀬作品の特徴ですが、今回は色彩感覚もすごく印象的だった。この作品は映像にしたら綺麗だろうなと思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
3.11を経験したからこそ、執筆できる作品のようや気がしてならない。そして、この作品は彩瀬まるの新境地とも言える作品ではないだろうか。人の死を受け入れるのはとても難しい。しかし、死を受け入れる事によって新たなステップへと進む事ができる。主人公である真奈もスミレの死を受け入れたからこそ、前に進めたのだろう。喪失と再生って非常に難しい。
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本当に作者さんには大変申し訳ないのですが、やはり震災の場所なり、経験をしていない自分が読むには勿体ない作品でした。そういった関わりを持つ方が読むと何倍もココロに沁みてくる素晴らしい作品なんだと思いますが、正直自分にはじっくりと読み進めていく忍耐?が備わっておらず、本作の良さ、素晴...
本当に作者さんには大変申し訳ないのですが、やはり震災の場所なり、経験をしていない自分が読むには勿体ない作品でした。そういった関わりを持つ方が読むと何倍もココロに沁みてくる素晴らしい作品なんだと思いますが、正直自分にはじっくりと読み進めていく忍耐?が備わっておらず、本作の良さ、素晴らしさを十分に感じれなかったんだと思います。どこか天童荒太さんのような文学的な要素が含まれており、その雰囲気に最後まで入りきれなかった自分が悔しくもあります。本作での彩瀬さんは今までの作品とは別次元にいる書き手さんになってます。
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最初はよくわからなくて、いとうせいこうの「想像ラジオ」のような作品だと思った。 どちらも、震災が題材だし。 読み進めるうちに、やっぱりこれは彩瀬さんの作品で心の中で色んな感情が渦巻いた。 後半は忘れるということ、生きるということ、忘れないということ、自分だったらどうするか、どう感...
最初はよくわからなくて、いとうせいこうの「想像ラジオ」のような作品だと思った。 どちらも、震災が題材だし。 読み進めるうちに、やっぱりこれは彩瀬さんの作品で心の中で色んな感情が渦巻いた。 後半は忘れるということ、生きるということ、忘れないということ、自分だったらどうするか、どう感じるかを読みながら考えてしまった。 最後は泣いてしまった。 キノコちゃんとカエルちゃんの言葉が、冷たく感じつつも一番真実に近い気がしてなるほどと思った。
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《どこまでも行こうと思った。行ける、と信じていた。それなのに、気がつくと私だけが一人で歩いていた(本文より)》 すみれの章が印象的。 顔が草花で覆われたひとたち。 身体から花弁が散り、熊になって吠え、泥土なって崩れる自分。 こういう世界もあるんだな。 1度目は何言ってんのか何...
《どこまでも行こうと思った。行ける、と信じていた。それなのに、気がつくと私だけが一人で歩いていた(本文より)》 すみれの章が印象的。 顔が草花で覆われたひとたち。 身体から花弁が散り、熊になって吠え、泥土なって崩れる自分。 こういう世界もあるんだな。 1度目は何言ってんのか何が起こっているのかさっぱりだった。 2回目を読み出すと、すーっと染みるように読めた。 真奈のそばにはずっとすみれがいたのかなぁ。 それとも、過去やら未来やらは死んだらひとまとめで前後左右上下奥手前なんて関係ないのかしらん。 歩くというのが印象的。 死ぬことや生きていることを考えるのは難しくて、やり方を間違えれば不謹慎だと言われるけれど、それでもやはり考えずにはいられない、考える時が必ず来るものだと、改めて思った。
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現実と夢の境界が最初はなかなかつかめなくて混乱。 でも読み進むうちに震災の影響がかなりある夢だと気づいたところから、あの3・11の被害を受けて、大切な人を失ってしまったとしたらきっとこんな風に日常の中にいても夢と現実の狭間で苦しくなることがあるのかな・・・と思った。 自分は幸福に...
現実と夢の境界が最初はなかなかつかめなくて混乱。 でも読み進むうちに震災の影響がかなりある夢だと気づいたところから、あの3・11の被害を受けて、大切な人を失ってしまったとしたらきっとこんな風に日常の中にいても夢と現実の狭間で苦しくなることがあるのかな・・・と思った。 自分は幸福にも身近な大切な人を亡くした体験が今はないだけに、どれだけ苦しいかとか、 どうすればいいのかと悩む気持ちは想像しか出来ない。 想像するだけでこんなに辛いのだから、実際はこんな想像すら及ばないと思う。 自分の大切だった人とはもう二度と会えなくて、 それでも大切だった人と生きていたと言う思いは強くて、でも時が経つごとに思い出が消えていきそうな恐怖心。 でもふとした本当に何気ない瞬間に、実は自分の中にその大切な人との思い出と気持ちが生きているんだと分かる瞬間への流れが本当に、ほんっとうに滑るように表現されていて鳥肌がたった。
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「喪失と再生」についての静かな、でも確かな祈りに似た物語。彩瀬さんは文章がキレイだが、章ごとというか現実の世界に挟まれている章での書き方は幻惑的で『遁走状態』のブライアン・エヴンソン を思い浮かべた。 境界線があり、こちら側とあちら側にいる人の物語を綴るには、この小説で書かれたや...
「喪失と再生」についての静かな、でも確かな祈りに似た物語。彩瀬さんは文章がキレイだが、章ごとというか現実の世界に挟まれている章での書き方は幻惑的で『遁走状態』のブライアン・エヴンソン を思い浮かべた。 境界線があり、こちら側とあちら側にいる人の物語を綴るには、この小説で書かれたやり方が、いちばん読む側があちら側にいる人に想いを寄せている人に同化できるんじゃないだろうか。 口コミでどんどん広まって読まれていく作品になると思う。装丁も内容とあっていていい。
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私はこの物語を語る多くの言葉を持たない。けれどこの物語を誰かに手渡したいと言う熱い思いはある。 家族とか友だちとか恋人とか、親しい誰かを亡くしたことのあるヒトなら誰もが感じたであろう 「忘れる」という大きな罪悪感。 その人が感じた痛み、苦しみ、そして絶望を自分も同じように感じるこ...
私はこの物語を語る多くの言葉を持たない。けれどこの物語を誰かに手渡したいと言う熱い思いはある。 家族とか友だちとか恋人とか、親しい誰かを亡くしたことのあるヒトなら誰もが感じたであろう 「忘れる」という大きな罪悪感。 その人が感じた痛み、苦しみ、そして絶望を自分も同じように感じることで、忘れられない自分を作り、正当化し、そして守ろうとする。 忘れないでいること、は誰のため? 病気など、ある程度の期限と心の準備ができる別れとは別の、ある日突然日常から引きはがすように訪れる事故による死。何も残してもらえなかった、何も伝えられなかった、そんな悔いを持て余し痛みを免罪符にして心の糧として生きていく日々。 けれど、自分の中にしらないうちにあるんだと、知らない間に息づいている何かがきっとあるんだ。 忘れるわけじゃない、自分の中にずっと遺されているものたちに気付くこと、そこから自分の人生を生きる勇気が出て来る。それが赦しであり弔いであり救いであり、そして希望である。そうこの物語は教えてくれる。
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